月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

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 なんだかんだで、 【 台湾 ( 一昨年の夏 ) 】 、 【 四国 ( 去年の春 ) 】 、 【 沖縄 ( 去年の夏 ) 】 、 【 ボルネオ ( 去年の夏 ) 】 と、遠征での連作記事がずっと続いていて、季節的な記事だったり、直近の近況報告なんかも約1年半ほど載せられていなかった。遠征記事を書いている間も、生き物を探しに出掛けていたのだけれども、載せる暇も、そして旬も逃してしまっていた。ようやくボルネオ記事が終わって通常運行に戻るということで、それらを少しずつ紹介していければなぁと。
 それでも私の自己顕示欲が多少ザワつき出すので、とりあえずはざっくりと 「 こんなん見てましたー 」 っていうのを羅列するだけの記事。







まぜこぜ


 高い山は空気が澄んでいて気持ちが良いけれど、洞窟の中はどうにも湿っぽくて息苦しい。











爬虫類


 トビハミがライトに照らされて、にょろりとヘビがすり抜ける。











両生類


 カエルたちは恋の季節を喜んで、キンネブリだって掘り当てられた。











その他


 各地で珍妙なモノたちと対峙したあとは、月を見上げて酒を飲む。











 海外には様々な生き物がいるけれど、日本各地にだってまだまだ面白い生き物たちがたくさん棲んでいる。それに加えて、まだまだ知らない珍妙なモノが、美味いモノが、絶景なモノが、我が国には溢れているという。
 体力的にも、休日的にも、体一つじゃ足りないわ、だってそろそろいい年だもの。


 ということで、じじいになって後悔しないよう、行ける時に行きたいところへ行く。気持ちだけでもフットワークは軽くしておこう。






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未知へと続く道


● 亜細亜の熱帯雨林、ボルネオの旅 ●
プロローグ. 暗黒大陸への渡航
1. 旅の終わりは、旅の始まり
2. エアアジアの激情
3. それぞれの乾杯で繋がる世界
4. 伏線のポッポヘジュセヨ
5. 森の人の恩返し
6. ジープが停まる理由
7. Monster Monkey Morning 
8. まるまるこのもり
9. 虎とか豹とか虎とか
10. 熱帯猿紀行
11. ジュラシック・リバー・クルーズ
12. クルーズ拒まず、サルを追う
13. 真っ暗闇に漕ぎ出して
14. 真っ暗闇を抜け出して
15. おはようボルネオ
16. 花束を君に
17. 支流の小径
18. 尻尾の理由を聞かせておくれ
19. 未知へと続く道



 夕日に染まるサンダカン空港でイアンと別れる。空港内はスカーフを被ったマレー系の女性だったり、明らかに声がデカい中華系のおばちゃんだったり、さすがは多民族国家のマレーシアといった様相で、色とりどりの人々が行き交っていた。
 あとは帰るだけだったので、これまでの張りつめていた緊張感が一気に解けるようで、どっと疲れが押し寄せる。 『 とりあえずはどこかに腰を下ろしたい 』 、そう思って少し早めの晩メシを空港内のレストランでとることに。



ミーゴレン
ミーゴレン


 またもやミーゴレン食っている。こちらのはモヤシとシーフードが特徴的な甘ったるいミーゴレン。なんだかんだでマレーシア料理だったらコレが一番口に合う気がする。
 帰国後も日清から出ているカップヌードルのミーゴレン味 ( カップ焼きそばみたく湯切りするやつ ) を大人買いして食ってるし、ミーゴレンに依存気味。



 しばらく腰を下ろして休息をとったこともあって体力は回復しだし、 「 いざコタキナバル空港へ 」 と、検査場を通り抜けて出発ロビーで飛行機を待っていたがなかなか出ない。ただでさえ乗客が少ない関係で便をまとめられて出発が遅いのに、これじゃあ全然予定通りに行かないじゃないか。。

 結局約1時間ほど遅れてコタキナバル空港着。本来はここでディクソンという男と待ち合わせの予定だったのだが、約束の時間はとうに過ぎている。彼とはここからダウンタウンのホテルまで車で連れて行ってくれる約束だったが、フライトが遅れてしまったためだろう、空港では姿を見つけられなかった。
 このディクソンという男、実は行きに香港国際空港からこのコタキナバル空港に降り立った時に出会っていて、顔馴染みであった。出国前、旅行会社に電源プラグのことを相談したら、 「 それでしたら現地のスタッフに私のプラグを渡しておきますよ 」 と言われていて、いざコタキナバル空港に着いたらいきなりこのディクソンという男にアポなしで呼び止められたのが出会いだった。宿とかで渡されるかと思いきや、急に空港で訛った口調で私の名前を連呼しながら怪しい男が近づいて来るんだもの、さすがにびっくりしたな。それでいて自己紹介も手短に済ませて、左手に持っていた30cmくらいの長さの、5口くらいあるタコ足配線をこちらに渡してきてようやく意図が理解できたのだった。
 手渡されたタコ足を見てみると、ボディのところに 「 DICSON 」 とマジックで書かれていたが、慌てて書いたのだろうか日本語で表現するならば 「 でぃくそん 」 みたいな感じでヘロヘロの文字で書かれていた。聞いていた話だと日本人の旅行会社の方が貸してくれるはずだったのだが、そのオーナーから私たちに貸し付けるよう無理矢理にでも言われて、仕方なく家から引っ張り出したような、そんな生活感丸出しのタコ足だった。


 というわけでそのタコ足を返す義理もあるので、タクシーでホテルを目指すわけにも行かず、しかたなく公衆電話を使って旅行会社に国際電話。なんとかディクソンに取り次いでくれたようで、およそ30分くらいして彼が自家用車で迎えに来てくれた。
 その間怪しげなタクシーの客引きから逃れながら待つ時間は果てしなかっただけに、感動の再会だ。深夜だというのに彼はイヤな顔をせず迎えに来てくれ、さらには明日の早朝はホテルの黄色いボディのタクシーを使うんだよ、と親切に念を押してくれた。そして10分くらいでコタキナバルのダウンタウンにあるホテルにたどり着き、ホテルの前でディクソンと別れた。



 ようや着いたホテルで重たいザックを下ろして一息ついたら、翌朝は4時半出発と猛烈に早いが、やはり現地の飲み屋で一杯飲もうと言うことで、深夜の街中へと繰り出した。時間にして深夜23時半。


 蒸し暑いのでとにかく通気性を重視して、ラフで小汚いタンクトップで繰り出した私と、 『 日本人感を出したい 』 というよくわからん願望でのコーディネートで、甚平を着て練り歩くルンチョロサン、といういかにも頭の悪そうな身なりでふらつく。
  「 せっかくだし、アジアを堪能するためにも小綺麗なとこに行くよりも、現地の人が行くような大衆酒場的なところに行こうや 」 、ということで、しばらく深夜のコタキナバルを怪しい格好でうろつくいて店を探索。



コタキナバル
コタキナバルの街並み


 路上にはベロベロに酔っているオヤジやら、いかがわしいお店のオネーチャンとか、路上で寝ているおばあさんとか、とにかくそれらしい少し危なそうな雰囲気だった。良さげな店をなかなか見つけられずにしばらく彷徨っていると、どこかで見たことのある青年が目に入る。

「 あ、ディクソン !! 」

 なんとそんな怪しげな人々に紛れて、ほっつき歩いているディクソンを発見。束の間の再開に変な感じがしたが、とりあえず 「 大衆酒場みたいなとこで一杯飲みたいんだけど、どっか良いとこ知らない ? 」 と聞いてみると、 「 おお、じゃあ案内してやるよ 」 と言われ10分も歩かないところの飲み屋に連れて行ってくれた。



炭火とチキン



 道路に面したビルの1階が窓も無く吹き抜け的になっている、アジアではよく見る造りの店。路上で煙をモクモクさせながら、いかにもスパイシーな真っ赤なチキンを焼いている店だった。

 「 それじゃあ、明日はちゃんと早起きしろよ 」 と、ディクソンは案内をしてくれただけで、まだ用事が済んでいなかったのだろうか、別れを告げて深夜のコタキナバルへと消えて行ってしまった。タコ足の恩もあるし、せっかくだから一杯くらい奢ってあげようと思ったのに、まぁ良いか。 ( 彼はドライバーなのでノンアルだけど。 )



 さっそくチキンを1プレートと 350ml のビールをオーダー。 「 まずは一段落、フィールドお疲れさん。 」 ということで、毒蛇に噛まれることも、遭難することも、食あたりすることも無く、無事にフィールドを乗り切ったことに乾杯した。


ビールとチキン
ビールとチキン


 チキンは見た目通りスパイシーな味付けで香辛料をすり込まれているよう。それを甘辛のタレにつけて食べるのだが、これがうまいのなんのって。最高にビールに合う !! つまみにピッタリの味付けじゃんか。それでいて半分外で飲んでいるようなもんなので、心なしかバーベキュー気分。


大衆酒場


 店内から見える景色は、これまでの観光客目線の景色ではなく、現地民の景色に映った。ボロボロになっても使い続けている車が前を横切り、現地のオヤジは新聞を読んだり現地のテレビを見たりしながら安酒を傾け、深夜なのに子供がウロチョロしていたり。
 目線は現地民でも、格好や存在感がツーリストだったり違和感のある人間なんだろうか、店にいたちびっ子たちはタンクトップと甚平を着た男らを、チラチラと横目で見てはクスクス笑っていた。笑われていたのだろうが、なんだかその楽しそうな笑顔が見られるなら幸せだなぁと感じたり。無垢な笑顔が旅先で見られるならば、笑われて行こうじゃないか、何事も。



 たらっと飲んで良い感じにほろ酔いのままホテルに戻って、ベッドで即爆睡。翌朝起きられるか心配だったが、そこはやはり海外という緊張感からだろう、太陽が昇るより前、4時には起きて荷物をまとめてフロントへ。
 チェックアウトのためにフロントまで降りてきたところで、 「 あれ、また見たことがある人が ・・・ 」

 まだ夢でも見ているようだった、なんとこんなクソ早い朝にも関わらず、そこにはディクソンの姿が ?? !!  「 え、なんで ?? 、どうしているの ?? 」 と聞いてみると、 「 君らがちゃんと起きているか心配でね。 ちゃんと君らが帰国しないとなんかオレがボスに怒られちゃいそうで 。。 」 とか言っている。
 別に彼の運転で行くわけでもなくタクシーで空港に行くのに、それなのにわざわざ心配で見に来るとかどんだけ良いヤツ ( どんだけ心配性なヤツ ) なんだよ、ディクソン !!  たぶん家はここら辺じゃないだろうし、相当早起きしてくれたんだろうな。 と、昨日飲まずにすぐに別れた理由が想像できて、つくづく彼の優しさが身に染みる。なんだか朝から心が洗われたぜ、マレーシア人は良い人ばっかだな、まったく。

 そしてディクソンに見送られてホテルを発つ。そこからはただただ泥のように眠りながら乗り継ぎで帰国する時間が続いた。予算の都合上、ダナンバレーの高級宿との帳尻を合わせるために、帰りはLCCを使って台北経由で成田空港へ。
 1年前の台北ではちょっとした諸事情により土産を選んでいる時間もロクにないような帰り道の台北空港だったわけだが、今回は乗り継ぎ便で時間もかなり余裕があったので、フードコートにて少し早い昼食とおビールを。


ビールと牛肉麺


 牛肉麺に台湾ビール、あぁ極楽極楽。やはり台湾ではうまいメシとビールで飛行機待ちたいっすね (笑)  何事も余裕が大事だなぁと、しみじみ感じてちょっぴり涙したとかしていないとか。
 今回の記事は大半が飲んでばっかですが、帰りも移動ばかりでやることがないんで許しててくだせぇ。酔っ払えば飛行機の中で爆睡できるので、気がついたらあっという間に日本帰国ですよ。


 そしてようやく我が家に帰宅。今回も怪我なく無事に旅は終了です。海外遠征は、たとえ生き物が全然見られなくとも、無事帰って来られればまずは成功なのだ。



ボルネオ組写真


 とは言っても生き物は色んなヤツらに会えた。両爬屋としては少し残念な両爬の成果となってしまったが、それでもボルネオを象徴するような様々な生き物に出会えたのは、それはそれで代え難い体験をした。
 日本だけでは味わうことのできないようなアプローチの方法で、未知の生き物たちに遭遇するこの感動はなかなか言葉で表現するのは難しい。ただそれを体感した人にはわかるだろう、 「 アレはすごかった、コレはとんでもなかった 」 と。




ボルネオの道



 だから旅に出るのだろう。 未知へと続くこの道を、ドキドキしながら歩いて行く。



 旅が終わった瞬間から、次の旅の始まりだ。








 ということで長かったボルネオ編はこれにて終了です。最後までだらだらと記事を書いてしまうクセが抜けず、読みにくかったところも大いにあったかと思います。それでも最後までこの拙い記事を読んでいただきまして、ありがとうございます。
 次回の記事からはようやく通常運行です。今後ともよろしくお願い致します。



Category: 哺乳類  

尻尾の理由を聞かせておくれ


● 亜細亜の熱帯雨林、ボルネオの旅 ●
プロローグ. 暗黒大陸への渡航
1. 旅の終わりは、旅の始まり
2. エアアジアの激情
3. それぞれの乾杯で繋がる世界
4. 伏線のポッポヘジュセヨ
5. 森の人の恩返し
6. ジープが停まる理由
7. Monster Monkey Morning 
8. まるまるこのもり
9. 虎とか豹とか虎とか
10. 熱帯猿紀行
11. ジュラシック・リバー・クルーズ
12. クルーズ拒まず、サルを追う
13. 真っ暗闇に漕ぎ出して
14. 真っ暗闇を抜け出して
15. おはようボルネオ
16. 花束を君に
17. 支流の小径
18. 尻尾の理由を聞かせておくれ
19. 未知へと続く道




 マースに連れられてジャングルを歩く。ジャングルといっても彼にとっては裏山みたいなモンなんだろう、いつもの散歩道を歩くようにヘッコラヘッコラと前を行く。風貌からは似合わないが一応ガイド的な事をしようと、道すがら生き物に関する面白いものがあれば我々に教えてくれる。



ドリアン
ドリアン


 「 コイツはオランウータンが食ったヤツだ。 」 そう言っておもむろに拾ったのは本人曰わくドリアンの仲間らしいフルーツ。画像検索しても浅学な私にはコレが何という種なのかは結局突き止められなかった。ボルネオにある赤ドリアンにも似ているが、可食部が赤くなかったのでそれも違う。

 とにかくそんな果実を拾っては、我々に見せてくれるのだ。 「 ここはゾウたちの通り道だ。ほら、ここに体を擦った痕があるだろう。 」 といって泥の付いた樹だったり、ぬかるみに残った巨大な足跡なんかも教えてくれる。
 今度は 「 面白いものがあるから来てみろ。 」 と言われ、巨木の立ち枯れに案内された。



立ち枯れ
巨木の立ち枯れ


 この樹の根元に直径わずか 50 cm ほどの穴があり、ここから巨木の中に入れると言う。 『 最近太って太って仕方がない私だ、ケツでも引っかかって黄色いクマさんみたいなことにならないだろうか ? 』 と心配していると、案内したマースは腰を下ろして休憩モードで、 「 入れ入れ。 」 と笑顔で促すだけだった。


 入ってみると成人男性が4人ほどは入れるほどの空間になっており、中は空洞だった。上部もすっぽり抜け落ちてしまっているので、太陽の光が中に差し込んできていてそれなりに明るい内部。 『 さて、マースの言っていた面白いものとは ・・・ 』 と探すまでもなく、私が入った瞬間からそれは飛び回っていた。




コアラコウモリ
コアラコウモリ Megaderma spasma


 それは小型コウモリだった。 「 キーキー 」 という可聴音に加えてパタパタと飛び回る羽音が、耳元すぐ近くをかすめながら飛んでいく。見るとすぐ近くに 3, 4 個体、もっと上のほうに 7, 8 個体がいるようだった。

 大きな耳にキクガシラコウモリRhinolophus ferrumequinum などとは違った特徴的な鼻葉の形態から、コアラコウモリだということがわかった。ちなみに和名はユーカリ食べてるアイツじゃなくて、 “ コ ・ アラコウモリ ” 、lesser なアラコウモリね。



 アラコウモリ類はカエルやトカゲ、それにネズミや他種のコウモリなどの小型哺乳類に加え、鳥類までも捕食するという気性の荒いコウモリのグループ。その獰猛な食性から荒蝙蝠という和名があてられた。
 調べてみるとアラコウモリの仲間は尾が短く、ほとんど見えないようだ。自分の写真を見返してみても確かにそうだ。それがなんだという話だけども、私は “ ある仮説 ” が閃いた。 ( まぁ既に知られている事実かもしれないけども。 )


 我々日本人に馴染みのあるアブラコウモリPipistrellus abramus を始めとする小型コウモリ類の捕食行動は、後肢と尾の間にある尾膜を使い、網ですくうように飛翔昆虫を捕らえる。本でそれを知り、以来コウモリという生き物はそうやって餌を捕るもんだと思っていた。
 しかし、このアラコウモリたちが他のコウモリを襲うシーンをナショジオのムービーで見たのだが、まるでマントで覆い被さるように翼で包み込むようにして他種のコウモリを捕食していたのだった。既成概念でガチガチだった私は衝撃を受けた。 『 何だこの食い方は ・・・ 』
 そして同時にあることを思い出した、 “ アラコウモリの尾は短い ”

 ということはコウモリにとっての尾というのは、尾膜を発達させて餌の捕獲に役立てているのではないだろうか ?  裏を返せばそういう捕食をしないコウモリたちにとっては尾は不要なものであり退化傾向を示すのではないだろうか ?
 そう思って、パッと思いつく昆虫食ではないコウモリたちの尾を調べてみた。果実食のオオコウモリ類、花の密を舐めとるヘラコウモリ類、家畜の血を吸うチスイコウモリ類、爪で魚を釣るウオクイコウモリ類、カエルに直接かぶりつくカエルクイコウモリ類。なんとどの種も尾がなかったり退化傾向を示すではないか。ということは、これはそういう事なのではないだろうか。

 つまり飛翔昆虫を尾膜で捕らえるコウモリたちは、尾を支柱にして尾膜を折りたたみその中に捕らえるようにしていると。そういった獲物ではなく、植物や大型の動物を食べる場合には尾膜を使って食事をするわけではないので、尾が不要になり退化していったということだろう。アラコウモリたちも獲物が大きく尾膜で押さえられないので狩りの方法も異なり、尾が退化していったのではないだろうか。
 残った尾膜は使えたとして舵取りとかブレーキの役目があるのだろう、尾膜は残っている種も多い。ただ面白いことに、羽音で獲物に気づかれてしまうため、ロクに飛びもしないでピョンピョン跳ねて狩りをするチスイコウモリ類に至っては、その尾膜さえ退化傾向である。


 そして今度気になるのが、日本にも分布するオヒキコウモリTadarida insignis だ。彼らは尾は普通にあるものの、尾膜が退化傾向なのだ。尾膜が発達してないことから、捕食方法はアブラコウモリなどとは異なる事が想像できるが果たしてどのようにしているのだろう。そして尾が退化していないのはなぜだろうか。
 たとえば 【 小型コウモリ類が分化するにあたって、途中で尾を支柱にして尾膜で捕獲するグループが出てきてそこにオヒキコウモリの祖先が属していたとか。そしてその形質が発生上重要な遺伝子座にあるもんだから、オヒキコウモリは尾の退化には至らなかった。 】 とかだったら私の説が支持されたまま面白い話になりそうなんだけども、小型コウモリの系統関係を見てみるとちょっと無理があるっぽいな。
 まぁいろいろ語るにはもうちょっと知識が必要なので妄想はここら辺にしておこう。でも久々に生き物で面白い気づきがあって楽しい。そういう観点でコウモリを見てみるとこれまた面白い生き物だ。



 と、あまりにも妄想が長くなったがコアラコウモリだ。気性が荒いと言われようとも、その顔はずいぶんと可愛らしく愛嬌のあるコウモリだった。
 そうして楽しいトレッキングを終えて宿に戻ってくると出発に良い時間。ささった準備をしてロビーに向かうと、前日にラハダトからこの宿まで送迎してくれたガッチリ体型のイアンが迎えに来ているではないか。しばし再会を喜びながら、さっそく車に乗り込み、キナバタンガン河を後にする。前日助手席に乗っていたイアンだが、今回はドライバーだ。
 滞在時間こそ短かったものの、ここキナバタンガン河での生き物との出会いは実に濃厚だった。ダナンバレーのジャングルとは違う、大河を生き抜く生き物たち。そんな彼らとの思い出を反芻しているうちに、気がつけばまた移動の車内で眠りにつく。ここから約2時間半かけて空港近くまで行くので、これも貴重な休憩時間。


プランテーション
アブラヤシのプランテーション


 時々目を覚まして外の景色でも眺めてみようと思うものの、車窓から見えるのは高確率でアブラヤシのプランテーションばかり。道路の両サイドまでせり出すほどにアブラヤシ天国だ。本当にこの土地ではこのアブラヤシから採れるパーム油が産業として大きく成り立っているのだろう。
 ボルネオ関連の書籍を読むとこれ見よがしに 『 アブラヤシのプランテーションによって貴重な熱帯雨林が失われて~、 』 とか 『 動物たちの生息地が奪われて~、 』 なんて話をよく目にするけども、ここまでプランテーションが随所に見られればそれについて触れたい気持ちもわからなくもない。事実、私もこうして言及しているわけだけど。

 ただやはり現代の我々の生活ではパーム油は切っても切り離せない存在になっており、世界的にも消費量第2位の油脂であることから、現実的にはこのプランテーションの増加を止めるのは難しいのではないだろうか。何億人もの人間を支えるために生産されているパーム油を、 【 動物たちのために ・・・ 】 なんてのは現実的ではないと感じてしまう。みんなその恩恵にあずかっちゃっているわけだしね。理想だけを語るならそうなんだろうけども、現実はそううまくはいかないね。
 それこそある漫画の冒頭にあるように、


   人間の数が半分になったら、いくつの森が焼かれずにすむだろうか ・・・・・
   人間の数が 100 分の 1 になったら、たれ流される毒も 100 分の 1 になるのだろうか ・・・・・


 ってな話になるんなら、もしかしたら ・・・  そんなどうしようもないことを考えてしまうほど、規則正しく並んだアブラヤシだらけの情景は、疲れた私の脳をわけのわからん方向へと誘ってくれる。



ナシチャンプル
昼食


 途中コタキナバタンガンの街で昼食をとる。今日のランチは屋台のナシチャンプル ( ぶっかけ飯 ) だ。ライスを基本に好きなおかずを皿に盛っていくご飯。 【 ナシ ( ご飯の意 ) + チャンプル ( 混ぜるの意 ) 】 という意味のようだ。
 沖縄のゴーヤチャンプルーだったり、長崎のちゃんぽんなどと語源は同じ ( 混ぜるの意 ) である。 ( 沖縄のチャンプルーはちゃんぽんの沖縄方言読みらしい )  何でかわからんが同じ意味を持っていて、同じ呼び方をしているマレーシアと沖縄。これはまた面白い共通点だ。


 遅い昼食を済ませてしばらく走ると目的地が見えてきた。


看板
ラボックベイ


 ここは “ ラボックベイ テングザルサンクチュアリ ” という、テングザルの餌付けに初めて成功した施設で、保護活動も行っているところ。テングザルは特殊な食性から餌付けは難しいと言われていたが、この施設ではそれがうまくいったようで3グループのテングザルの群れが訪れに来るという。

 コタキナバルに戻るための国内線空港であるサンダカン空港近くにこの施設があるため、最後にこちらに寄り道して時間調整をする。





テングザル
テングザル Nasalis larvatus


 群れで集まって食事をする。中央部には鼻が肥大化したボスがどっしりと座り、辺りを警戒しながら食事に勤しむ。もし近くに別の群れの連中が来たならば、真っ先に 「 ノ、ノ、ノ、ノ、ノ、 」 と鼻を浮かせながら威嚇をし、それでも近づくようならば牙をむき出しににして追っ払う。



テングザル
テングザル


 振り返り様にこの眼光だもの、威圧感ありすぎ。他のオスよりもボスは体格も大きくなり肩も盛り上がるようにモリモリになるので、首元から肩にかけて生える白い体毛もフサフサでまるでマフラーでもしているよう。
 やはりサルはボスの厳つさに限るね。カッコイイ。



シルバーコノハザル
シルバーコノハザル Trachypithecus cristatus


 和名的にはシルバーリーフモンキーやシルバールトンの方がポピュラーな感じ。テングザルの餌付けに紛れておこぼれをもらいにきた奴ら。いつしか施設に普通に出入りするもんだから、いつの間にか彼らにも餌が与えられるようになったようだが、さすがにテングザルのを奪うまでの力関係ではないので、別の餌が与えられていた。



 しばし近い距離でのサルたちを観察した後、イアンの待つ車に揺られてサンダカン空港へ。気がつけば陽もだいぶ傾いて、西に沈む太陽の淡い光が、見飽きたアブラヤシのプランテーションをオレンジ色の姿に染め上げていた。
 なんだか一概にプランテーションを責めたりはできないなぁと思いながらオレンジ色の車窓は流れていった。

 ついにこれでボルネオもあとは帰るのみとなってしまった。ただまぁ距離が距離なので、自宅に帰るまでが旅である。次回の記事でようやく帰宅となる予定。







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