月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 両生類  

あぶれオスたちの生き様



 久しぶりの通常運行ということで、まず何から載せようか考えた結果、せっかくなので今までできなかった旬な生き物の記事を。先日、モリアオガエル Rhacophorus arboreus を求めてフィールドへ行ったわけだが、雨の具合と気温をみて、ここだというタイミングが私の休日にバッチリ合致したので、見に行ってみたらめちゃくちゃフィーバーしていた。
植物にしてもカエルにしても、結構季節的なネタなので、できるだけ新鮮な内にブログに書きたいやね。





モリアオガエル1
モリアオガエル 


 ここのモリアオガエルたちは斑紋が多く、色鮮やかな色彩の個体群のようだ。この時、数多くの個体が産卵に参加していたのだが、無紋型を見た記憶がないほど有紋型ばかりが目についた。
 



モリアオガエル2
モリアオガエル


 山中にある池に、多くの個体が集まってきており、木の上から、池の周りから、いろんなところでオスがコーリングしている。産卵期のタイミングにバッチリだったので、 「 コロロロ、コロロロ ・・・ 」 とまるでシシ神の池でコダマたちが首を振っているような不思議な空間となっていた。
 オスの多くは池の岸辺で盛んにコーリングをして、ペアになったら産卵に適した木々にメスがおんぶする形で登っていくようだった。





モリアオガエル3
モリアオガエル



 昼間から既にペアリングを済ませ、これから産卵にでも向かおうかというペアをいくつも見かけたが、今回はそんな幸せムード全開のカップルの話ではない。







モリアオガエル4
モリアオガエル  ( 1つ前のペア写真の後ろ側 )


 そんな幸せの後ろに忍び寄る、哀れなあぶれオスたちにスポットライトを当てた話である。







モリアオガエル5
モリアオガエル


 あぁ、私の大好きな大好きなあぶれオス。この時はあぶれているだけではなく、ペアに羨望の眼差しを向けている可哀想で愛おしいあぶれオスたちを何個体と見つけることができ、出会うたび、私はそんな彼らを同情してやっていた。





モリアオガエル6
モリアオガエル


 “ それっぽい形の動くモノ ” があれば、とりあえずは飛びついてみるようだけど、だいたいは自分と同じあぶれオス。 「 貴様もあぶれオスか 」 と、わかれば途端に態度を変えて、押し退けては自分が上になってやろうと、惨めな争いが始まる。






モリアオガエル7
モリアオガエル


 そんな哀れな輩どもの目をかいくぐって、二人っきりで池に突き出した枝先まで辿り着いたカップル。昼間だけども、なんだかいよいよ産卵が始まりそうな雰囲気。
 包接しているオスは、メスの背中越しに 「 クルッ、クルッ 」 と小さい声で鳴くようにして鳴嚢を細かく膨らませて、メスに産卵を促しているように見えた。




モリアオガエル8
モリアオガエル


 そんな彼らの周りの枝先にも、実はあぶれオスたちがいるのだ。冒頭で、だいたいオスは池の周りで鳴いていると書いた。それもそうだ、メスが急に枝先に現れるわけじゃないんだから、池に集まってくるメスに抱きつくには池付近の地面なり、岸辺にいる方がメスをゲットできる確率も上がるではないか。
 ではなぜペアリングしたカップルしか上がってこないような、そんな不利になるところにたむろしているオスがいるのだろうか ?


 昔、どこかの議員さんが言っていた 「 2位じゃダメなんでしょうか ? 」 ってやつだ。そう、彼らは熟練のあぶれオスなのだ。どうせあぶれるのがわかっているのなら、2番手、3番手で良いじゃないか、という戦略をとっているようで、端っからペアリングをする気がないのだ。
 下からペアになったカップルが登ってきてそいつらが産卵を始めたら、それに便乗してしまえと、1番手のオスの上だったり横だったりに引っ付いて、一緒に射精をするのだ。




モリアオガエル9
モリアオガエル  ( 2つ前の写真のつづき )


 この時もそうだ。二人っきりの時間は束の間で、ペアリングしたオスが発する小刻みなコーリングが、ある種の “ 産卵を促す特徴的な声紋 ” でもあるのだろう。それを聞きつけてやってくるかのように、熟練あぶれオスがそそくさと現れて、二人の時間を引き裂いていく。
 もう特徴的な泡が出てきて、後ろ足がかき混ぜているというのに ・・・





モリアオガエル10
モリアオガエル


 ぴたっと1番手のお隣をゲットした2番手の熟練あぶれオス。何食わぬ顔で一緒になってメスが出した泡をこねくり回し、そして自分の精子をブレンドしていってる姿はさすがとしか言い様がない。




モリアオガエル11
モリアオガエル


 卵嚢の泡はあっという間にできあがるのかと思ったら、案外ゆっくりしているようだった。この時は泡が出始めて1時間半ほど経ったところで、まだこれだ。案外鈴なりになって枝先に付いている状態になるまでは結構な時間を要しているのかもしれない。
 私はフィールドの後に用事があったため最後まで見届けることはできなかったのだが、まだ数時間は続いていたに違いない。そう考えると、まだまだ熟練あぶれオスどもが入り込む余地が大いにあるということだ。やはり戦略的には賢いのだろうな。

 下界でメスともオスとも区別のつかないような奴らに抱きついてみてははじき出されて体力を消耗するよりも、安全な木の上で高みの見物をしておいて、頃合いを見計らってそそくさと自分が紛れ込むなんて実に効率的ではないか。泡での産卵だから2番でも良いんですよ。



モリアオガエル12
モリアオガエル


 涼しい顔してかっこよく写っているけれど、こいつも卓越した熟練あぶれオスに違いない。まぁ、枝先にちょこんとついているのは “ tree frog ” なだけあって見栄えが良くてかっこいい。









アカハライモリ13
アカハライモリ Cynops pyrrhogaster


 だが正攻法で包接しようとも、熟練のあぶれテクニックで紛れ込んで、我が子のオタマジャクシが誕生しようとも、そんなベビーたちが雨によって流れ落ちるその先の池には、同じく誕生を待ちわびる捕食者どもが腹を空かせて待っている。イモリたちもちゃんとわかっているのだろう。彼らにとってはまさに天からの恵みである。

 オタマジャクシのその多くは、成体になる前にイモリやアメンボ、サギなどに食われてしまう運命なので、ほんの一握りのヤツだけが成体になれるのだ。またその中のさらに一握りだけが、メスを1番手でゲットできるスーパーエリートのオスになれるのだ。




モリアオガエル14
モリアオガエル


 ということであぶれオスも捕食者の攻撃をかいくぐって大人になったので、エリートと言えばエリートなのだ。蔑みの目でみてやるようなことは止めてあげようじゃないか。


 もしも来世がモリアオガエルだったならば、私は確実に熟練あぶれオスだろうなぁ。正攻法じゃ勝てないよ。そして残念ながら、人間はそういった繁殖形態ではないので、万年あぶれオスでは子孫は残せぬ・・・







 ここ最近の旅記事は 【 私がどうしたこうした 】 という自分主軸の自己顕示欲バリバリで、 “ 生き物主体の記事 ” というか、 “ 私主体の記事 ” ばかりだった。ただただ珍道中をうだうだ書いているだけだったので、退屈だった方も多かったに違いない。

 今回は生き物をメインに置いた記事。以前はこんな感じで生き物についてあれこれ書き綴るブログのはずだった気もするのだけれど ・・・ ブログを始めた8年前の2009年はまだ私は大学生で、仲間と誘い合ってフィールドに出向くことが多かった。それが社会人になって1人でフィールドに出る機会が途端に増えたので、きっと誰かと旅をして感動を共有できたのが嬉しかったんじゃないかな。
 考えてみたら今月でこのブログも8周年ですわ。



 まぁ旅記事もそれはそれで楽しいので、気が向いたらまた書いちゃいます。ということで、しばらくは生き物主体の生き物ブログということでやっていきますので、改めてよろしくお願いします。


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