月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 鳥類  

花束を君に

 ● 亜細亜の熱帯雨林、ボルネオの旅 ●
プロローグ. 暗黒大陸への渡航
1. 旅の終わりは、旅の始まり
2. エアアジアの激情
3. それぞれの乾杯で繋がる世界
4. 伏線のポッポヘジュセヨ
5. 森の人の恩返し
6. ジープが停まる理由
7. Monster Monkey Morning 
8. まるまるこのもり
9. 虎とか豹とか虎とか
10. 熱帯猿紀行
11. ジュラシック・リバー・クルーズ
12. クルーズ拒まず、サルを追う
13. 真っ暗闇に漕ぎ出して
14. 真っ暗闇を抜け出して
15. おはようボルネオ
16. 花束を君に
17. 支流の小径
18. 尻尾の理由を聞かせておくれ
19. 未知へと続く道




ウオクイワシ
ウオクイワシ Ichthyophaga ichthyaetus


 一羽のワシがボートに沿って飛んでいく。豊富な資源をたたえるキナバタンガン河の上を悠々と。本種はもっぱら魚類を主食とする大型の猛禽類で、日本でいえばミサゴPandion haliaetus のようなポジション。日本で魚食性大型猛禽類といえば、北海道や東北にオオワシHaliaeetus pelagicus 、オジロワシHaliae. albicilla がいるものの、本州の大部分ではミサゴ一強で、ほぼ競合相手がいないように思えるが、ボルネオではウオクイワシの他に同属のコウオクイワシI. humilis や前述したミサゴ、シロハラウミワシHaliae. leucogaster など複数種が生息しており、ライバルも多い。
 その上に夜は夜でマレーウオミミズクBubo ketupu だ。ボルネオの魚たちはいつなんどきも、空からの敵襲に怯えて過ごさなくてはならない。



シロガシラトビ
シロガシラトビ Haliastur indus


 別の空では、2羽のトビが二重の円を描きながら旋回している。日本でも稀に記録のあるシロガシラトビだ。翼を持つ生き物は海を越えることができるわけで、分布域の線引きは難しい。
 ここキナバタンガン河では、最も目にした猛禽類であった。



 川面に視線を戻すとボートが進むその先に、水上一面を覆う緑、緑、緑。それらは元々、この土地にはなかった者たちの絨毯爆撃。


オオサンショウモ
オオサンショウモ Salvinia molesta


 熱帯アメリカ原産のシダ植物。流れの少ない場所で猛烈に繁殖している。こいつはまだ序の口。



ホテイアオイ
ホテイアオイ Eichhornia crassipes


 繁茂するのは南米の浮き草。熱帯魚屋でもよく目にするホテイアオイだ。ただこれまで意識していなかったのだが、花は鮮やかな薄紫色で真上の花弁には黄色のスポットが入る綺麗な花だった。
 ホテイアオイは爆発的に繁茂し、河の流れをとめてしまうほど環境への影響も大きい。

 緑の絨毯で猛威を振るうホテイアオイも、花が美しいのでオヤジがボートを寄せて一つとってくれた。それをオヤジが例の男前くんにくれてやったわけだが、こいつがまた紳士なヤローで、さっそくホテイアオイの花束を奥さんにくれてやった。



花束
花束


 チクショー、悔しいが絵になるな。花束が一番美しいのは、束にした新鮮な時でもなく、女性が抱えている時でもなく、煌びやかな花瓶に飾られている時でもない。それは男性から女性に贈られるその瞬間こそが一番美しく輝くと思うわけで、異国のボートの上で美男が美女にホテイアオイの花を手渡す雰囲気の良きことよ。
 思わず写真を撮らせてもらっちゃった。そんな羨望の眼差しを送っていたアジア人の私に対し、 『 ほら、こういうのが撮りたいんだろぅ ? アジアンくん。 』 と言わんばかりに、花を顔の横まで持ち上げて私のカメラに向かってドヤ顔の微笑みをくれた。
  『 ぐぬぬ、この私を女っ気のないウブなアジア人だと侮っていやがるな ・・・ 』 と思いつつ、体は素直なもんで、気がつけば私の右人差し指はシャッターを目一杯押していた。

 その時の写真は顔がモロに写ってるので載せないが、なんだか電機屋に置いてあるカメラのカタログに出てくるような雰囲気のある写真が撮れて大満足。半逆光で金髪は透けるように輝き、弾ける笑顔とホテイアオイの鮮やかな薄紫色。PENTAXでもこんな写真撮れるのかと思うほど。



 ちなみにホテイアオイの花言葉は 【 揺れる心 】 【 恋の悲しみ 】 のようで、恋人には贈らない方が良い花らしいですよ、奥さん。そんなホテイアオイを旦那からもらった美女が微笑みかけてくるなんて、なんだか昼ドラの不倫が始まる瞬間みたいっすな。
 ただ残念ながら、私のクロコダイルはコビトカイマンPaleosuchus palpebrosus 級なので、奥さんを前にして大暴れすることはなかったわけだが ( 笑 )



ダイサギ
ダイサギ Ardea alba


 そんな緑と紫で彩られたホテイアオイ群落に、飾り羽をあしらったダイサギが佇んでいた。日本でも見ることのできるダイサギだが、こんなシチュエーションで出会う事がなかったので、とても新鮮な気持ちだった。

 よくライフリストばかりを気にされている鳥屋さんは、その種を今までに見たことが “ あるかないか ” で大きく価値観が左右されてしまうように感じられるが、見たことある種でも出会う環境や個体、季節などの違いにより全く違う装いを見せる場合も多いので、一見さん以外も楽しめるはずである。まして夏だけとか冬だけに日本に渡ってくる鳥なんて、それ以外をどう過ごしているか知りたいと思うもんじゃないのかなぁ。
 もちろん見たことがない生き物を見たいという気持ちはわかるんだけどね。珍鳥との一瞬の出会いで、その鳥を知った気になってさぁ次へ行こう、ってのはナンセンスじゃないかなぁと。わかる “ 広さ ” も大切だとは思うが、その一方で “ 深さ ” も面白みの1つだとも思うところ。



ブッポウソウ
ブッポウソウ Eurystomus orientalis


 こちらも日本で見られる鳥で、我が国には夏鳥として飛来する。 『 日本の鳥とされるものは、まず日本で見なくては 』 という国産第一主義みたいな人がたまにいるけど、やっぱりそれって良くも悪くもリストを意識しすぎている気がする。さっきの深みの話だけど、日本に来たその瞬間だけでその鳥を知れるわけじゃないし、その鳥のポピュラーな姿を見られれば良いんじゃないかなぁ。

 ちなみに私は別に鳥屋さんが嫌いなわけじゃないですよ、一応。やはりやってる人口が多いだけに、 『 なんかこの人は自分とは感覚が違うなぁ 』 って人の割合が多いだけ。もちろん逆もあるわけで、鳥屋の大半からは 『 サンショウウオの産卵時期に石めくりしてるなんてけしからん 』 とも思われているかもしれないわけだしね。なので綺麗事を言えば、お互いの妥協点が見つかれば良いなと思うわけで。

 おっと、だいぶ話が逸れてしまった。ボルネオに戻そう。



コウハシショウビン
コウハシショウビン Pelargopsis capensis


 昨晩見た時の印象とはガラリと異なり、ハツラツと大河を飛びまわって獲物となる小魚を求めていた。太陽の下ではやはり翼の水色が鮮やかで、特徴的な大きい真紅の嘴との対比が美しい。
 コウハシショウビンはサイズこそボルネオ最大のキングフィッシャーではあるが、動きはカワセミ類のそれと同じように直線的にキビキビと飛んでいく。ただあの真紅の嘴がいやでも目につくので、遠目には赤い矢が一直線に放たれているようなカッコ良さがあった。




 ボルネオの鳥記事を書いているとふと気がつく事があった。それはボルネオ渡航前に書いたこちらの鳥記事での 【 ボルネオで見てみたい鳥たち 】 の記述。なんとそのほぼすべてが見られていた。 ( ショウビン類を特定してミツユビカワセミCeyx erithacus と書いてしまっていたが、コウハシショウビンやルリカワセミAlcedo meninting がニアピン賞だろう。 )



ボルネオの鳥
上から、
コウハシショウビン
ウォーレスクマタカ Spizaetus nanus
ツノサイチョウ Buceros rhinoceros
ボルネオクモカリドリ Arachnothera affinis
マレーウオミミズク
アジアヘビウ Anhinga melanogaster


 そういう意味では鳥の成果は良かったのだろう。渡航前にパッと思いついた 【 見たい鳥 】 たちではあるが、それがここまで見られるとは正直思っていなかった。そしてあんなにサイチョウ類がたくさん見られるとは。完全にやつらに心を掴まれてしまった。


 素人の私でさえこれだけみられるのだから、ボートクルーズというのは確かに水辺の鳥見には最適なのかもしれない。効率も良いし見つけやすい環境でもあるし。
 とまぁ鳥についてつらつら書いてもアレなので、次回は爬虫類記事でキナバタン河のボートクルーズを締めくくろうと思う。



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