月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 爬虫類  

石化け


- - - - - 「 たまにはのんびり沖縄を旅するのも良いんじゃないですか ? 」

 大学のサークル仲間で飲んでいたとき、ふっと湧き出たようにそんな話題が出た。いつものパターンだと那覇空港に着くや否やヤンバルに直行し、昼も夜も生き物探しに明け暮れて、観光などろくすっぽしないのがお決まりになっていた。
 そもそも 『 沖縄に行きたい ! 』 と衝き動かすのは、 『 沖縄に棲まう生き物に会いたい 』 という欲求であって、それ以外の例えば 『 常夏のビーチでバカンスしたい 』 とか 『 美ら海水族館を見学したい 』 とか 『 新垣結衣みたいな沖縄美人と出会いたい 』 といった理由から、沖縄を訪ねたことがなかったのだ。そんなもんだからゆっくりと沖縄の地を観光した記憶が高校の修学旅行以来なく、言われてみれば確かにのんびり旅をするのも良いかもしれない。

 と、妙に納得してほろ酔いでその夜は帰った。後日1回の打ち合わせを経て、大学時代の後輩2人と共に2泊3日の沖縄旅に出掛けることとなったのだった。






 仕事を抱え込んで一気に終わらせた木曜日。この日の深夜が旅の出発日だ。振替休日を金曜日に持ってきて、土日と合わせる3連休。木曜日の終電で羽田空港に向かい、翌日金曜日の早朝便で沖縄へ向かう旅程である。
 なので冒頭2泊3日と書いたが四国遠征同様に、正確には3泊3日の沖縄旅。


 早朝便は家から間に合わない私ともう1人が空港で夜を明かす。台湾旅の時に友人たちの優しさにより、 “ 床で寝させていただきました ” ので空港の床で寝ることに何の抵抗もなくなっていた私。今回も当然のように床で寝る算段をつけていた私だが、一緒の後輩は人間の尊厳を捨ててはいないようで 「 床で寝るのはどうですかね、私はこの机に突っ伏して寝られれば ・・・ 」 なんて言っている。
 そもそも周りは床で寝ている人間などおらず、成田空港の第3ターミナルとの品性の違いをまざまざと見せつけられていたが、こちとら床で寝られるように底冷え防止のマットを持参し、ビール片手に電車でやってきたのだ。もう床で寝る以外の選択肢など考えられなかった。

 とはいえ久々に会ったのでいろいろ話したかった事もあり、談笑しているうちに夜明けも近くなってきてしまった。 「 とりあえず一眠りはしよう 」 ということで追加の発泡酒を飲み干し、彼は机に、私は床に、泥のように溶けて眠った。今回の空港1泊は快適そのもの。
 それもこれも、きっと優しいTOGUくんとFくんが親ライオンのように私を崖から落としてくれたおかげなんだろう。対策を立てればこんな快適なことはない。あぁ、ありがとう、お二人さん。




 そして話は飛んで沖縄着 !!

 レンタカーを借りたら近くの道の駅で朝食を調達。



ポークたまごおにぎり
ポークたまごおにぎり


 やはり沖縄のソウルフード 『 ポークたまごおにぎり 』 は塩気があってうまい。スパム文化最高。



マース煮
たまんのマース煮


 北上して名護で昼食。名護漁港にある食堂で現地では “ たまん ” と呼ばれているハマフエフキLethrinus nebulosus を、 『 マース煮 』 と呼ばれる塩と泡盛で煮た料理を食す。上品で淡白な肉質であり、それを塩で似るシンプルな味付けは “ たまん ” の旨みを純粋に味わえる食べ方だ。水揚げされたばかりの鮮度の良い魚を調理できる、漁港の食堂ならではのグルメ。



 そして北上北上でついにヤンバル着。 「 観光で沖縄来た 」 と前述しておきながら1日目はヤンバルでフィールディングの日。


林道


 到着当初はスコールが降りしきりしばらく侵入を拒まれたが、雨が上がると湿度ムンムンのジャングルへと変貌し、何年ぶりかのヤンバルに心が躍った。やっぱり本土とは違った雰囲気で、林床にはクワズイモAlocasia odora 、樹上にはタニワタリ類Asplenium sp. と、こういった林道を歩くだけでも癒やされるわけで、興奮気味な精神状態と高い空中湿度によってあっという間に背中はびっしょり。




ヒメハブ
ヒメハブ Ovophis okinavensis


 沢を散策していると、昼間だというのにヒメハブが堂々と待ち伏せしていた。それも私は踏みかけた。長靴は履いていたとはいえ、久々にギョッとした。
 沢を上っている時、中州のような沢の中央の陸地に足をかけようとした際、 『 どこかで見た模様だなぁ ・・・ 』 と、ふと脳裏によぎるモノがあった。足を接地する直前になって、 「 うわっ、これヒメハブだ ?? !! 」 と気がつき足を引っ込めることができたが、その違和感に気がつかなかったら確実に踏んづけてしまう位置にヒメハブは鎮座していた。それもシダの茂みに隠れており、本当によくよくカモフラージュしている。




ヒメハブ
ヒメハブ


 久々に毒蛇で危機を感じて焦っていたが、昼間に見るヒメハブは新鮮でこれはこれで面白い。薄曇りの空に湿度の高い沢、そこで出会うヒメハブに脅威を感じつつも、見慣れた姿ではないいつもと違う印象を受けた。






リュウキュウヤマガメ
リュウキュウヤマガメ Geoemyda japonica


 3時間ほどしかフィールディングできなかったが、3個体ものヤマガメが出迎えてくれた。それもスコール後なので甲羅が綺麗に洗われて小汚くないヤマガメに。

 彼らは “ 石化けの術 ” を使う。初めの個体は、私がイボイモリEchinotriton andersoni を見つけて2人のところへ呼びに駆け寄ったら、ちょうど我々の魔のトライアングルの中にいるというミラクルな見つけ方。いつの間にこんなとこにいたんだよって出会い。
 どう考えてもさっきまでそこにはヤマガメがいないと思っていたのに、急にフッとヤマガメが現れる。まるで今まで石に化けていたのが解けたかのよう。
 2個体目なんか、この1個体目を撮影している最中、急に 「 フシューフシュー 」 と荒い息づかいが聞こえると思ったら隣に現れた。つまり広くてもわずか10 m程の範囲内に2個体ものヤマガメがいたということで、数分前にはどちらにも気がついていないことになる。これはもうさっきまで石としてそこにいたに違いない。何かの拍子に石化けが解けて、姿を現すのだろう。
 だからきっと、ヤンバルにある手頃な石は、大半がヤマガメが石化けしたもの。パイレーツオブカリビアンに出てくるカニみたいな感じ。何がカギになって目の前に現れてくれるかはわからないが、とりあえず言えることは我々は運が良いということ。

 大学4年の時にヤンバルを訪れた時も、5人が縦一列になって歩いていると前の4人は足下のヤマガメにはまったく気がつかず、最後尾にいた私が 「 あれ、ヤマガメいるじゃん 」 と発見に至った。
 その時は内心 「 みんなまだまだだなぁ~ 」 と見つけた自分を褒め称えていたが、今思えばあの時も石化けだったのかもしれない。4人分はやり過ごせたものの、最後の最後で解けてしまったに違いない。




いのぶた丼
猪豚丼


 道の駅 『 ゆいゆい国頭 』 に戻って晩飯を食らう。大学生最後のヤンバルで食べたあの味が忘れられず、またあの 『 わぁー家~ 』 の猪豚丼をオーダーする。甘辛のタレが豚本来の甘い脂身とマッチして、ガンガン米が進むがっつき飯。フィールドで腹ペコになった胃袋に一気に詰め込み、懐かしさとおいしさを堪能する。
 健康診断で血圧のことをチクリと言われ、塩分は控えなければならない私だが、朝昼晩と塩分たっぷりな食事事情。まぁたまには、というか旅の時くらい良いじゃないかと自分を甘やかして贅沢をする。


 観光観光言っても、我々の性分としては生き物も見たいので1日目はフィールディングに車中泊。グルメ成分が多いもののいつもと変わらないパターンでもある。
 ぐっしょりとした汗を洗い流すため風呂に入り、夜に備えるとする。



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