月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 草本類  

山椒魚より天南星


 山椒魚を求めて訪れた山深き四国。見つけたかった山椒魚の一つ、イシヅチサンショウウオHynobius hirosei は私の前には現れてくれなかった。以前紀伊半島で見たオオダイガハラサンショウウオH. boulengeri のそのガッチリとした体躯や深い藍色の体色に魅了され、近縁であるイシヅチをぜひとも見たいと思っていただけに悔いが残る。



イシヅチテンナンショウ
イシヅチテンナンショウ Arisaema ishizuchiense


 とは言いつつ、別の素敵な “ イシヅチ ” を見つけられて内心ホクホクしたりもする。欲しい欲しいと思いつつ、毎回隣町の図書館まで閲覧しに行くマムシグサのバイブル 『 日本のテンナンショウ 邑田仁 著 』 に載っている姿を、初めて読んだ時から一目惚れしているこのイシヅチテンナンショウに会えるとは思っていなかった。
 今回はサンショウウオメインのフィールディングを想定していたのでノーマークだったわけだが、山登りをしていて自分の目線と同じ高さに咲くこの細部まで美しいテンナンショウと目が合った時に、すぐに憧れのそれだということを理解して歓喜した。





イシヅチテンナンショウ
イシヅチテンナンショウ


 斑状に入る毒々しい紫と、控えめで落ち着いた地色の緑。こんなにも作り込まれたような色彩のマムシグサはそういない。舷部は短く仏炎苞は全体的にガッシリと丸みを帯び、棍棒状に膨らむ付属体にまでも毒々しい紫の斑点が浮かぶ。
 こんなにも妖しげな様相をしているにも関わらず、咲いているのはジメッとした暗い林床ではなく、標高1500m付近の陽当たりのよい登山道沿い。ただ、陽当たりが良いだけでは乾燥しすぎて彼らにとっては生育しにくいのだろう、いくつか見た自生地では必ず近くに湧き水や沢などの水環境があったので、土中はそれなりに湿っていると思われる。
 特に開けた風通しの良い場所に咲いている株については他のテンナンショウのように偽茎部を伸ばすことはなく、1枚目の写真のように地面スレスレに仏炎苞を開くのも、風の吹き荒れる高山に適応したものだろう。



 両爬探しで訪れたものの、沢が見つからなかったりで気がついたら植物目で歩いてしまうため、途中からは結局いつもの植物探しに。



ミツバテンナンショウ
ミツバテンナンショウ A. ternatipartitum


 小葉が3枚しかない特徴的なテンナンショウで、それが由来の和名でもある。小葉が3枚しかないテンナンショウは他にムサシアブミA. ringens など少数存在するが、日本の多くのテンナンショウは5枚以上の小葉を持っている。


アオテンナンショウ
アオテンナンショウ A. tosaense


 本種も特徴的なテンナンショウで、舷部が糸状に長く伸びる。ウラシマソウA. urashima やカラスビシャクPinellia ternata などの糸状の部分は付属体の先端部が伸びたものだが、本種は舷部が糸状に長い。


ユキモチソウ
ユキモチソウ A. sikokianum


 憧れのテンナンショウ、ユキモチソウ。 「 マムシグサ、マムシグサ 」 と気持ち悪がれ敬遠されがちなテンナンショウ界で唯一、万人受けする麗しいテンナンショウ。その純白で柔らかそうな丸い付属体が特徴で、雪見大福と見間違えてしまいそうな見た目。
 あいにく私が訪れたタイミングは時期が遅く、花期を過ぎていたため仏炎苞を枯れ果てている株が多かったが、なんとか特徴的な付属体が残っていたので、その存在がわかった。あとは時期を見極め、この地を再訪すればそれはそれは麗しいユキモチソウと再会できるだろう。


 サンショウウオだけでなく、植物の面からも四国を再訪する理由ができた。これはなんとしても再び四国を訪れ、イシヅチサンショウウオを始めとする流水性サンショウウオや、ユキモチソウ・オモゴテンナンショウA. iyoanum などのテンナンショウ類を舐りたいと誓うのであった。

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