月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 両生類  

好物を舐る


 というわけで、四国に山椒魚探しに行ってきた。狙いとしては四国の深山に産する流水性サンショウウオ3種。


  イシヅチサンショウウオ Hynobius hirosei
  コガタブチサンショウウオ H. yatsui
  シコクハコネサンショウウオ Onychodactylus kinneburi



 私が生き物を熱心に追い求めるようになった大学時代はそれぞれがまだ、

  オオダイガハラサンショウウオ H. boulengeri
  ブチサンショウウオ H. naevius
  ハコネサンショウウオ O. japonicus

 と、分けられる前の名を冠していた。ここ数年で我が国に産する有尾類の種数は細分化により急増し、情報収集を怠ればあっという間にその土地の山椒魚が何サンショウウオなのかがわからなくなるような状況になっている。といってもそこに棲まう山椒魚自体は代わることのない存在で素敵な生き物なのだけども。






コガタブチサンショウウオ
コガタブチサンショウウオ


結論から言えば3分の1の成果。このコガタブチが出てくれなければ、惨憺たる結果で四国を後にすることになっていた。とはいっても初の四国でのフィールディング、それもサンショウウオ探しだ。1種でも見られれば良い方ではないか、と自分を慰めてやる。

 ということでコガタブチ。ブチサンショウウオから分けられたコガタブチサンショウウオだが、一口にコガタブチといってもいろんなヤツがいるのは図鑑を見れば一目瞭然だろう。ある程度、地域や沢によって見た印象が異なるのがサンショウウオなので、 『 種 』 という単位でみるよりも個体群、さらには個体毎にみる必要があるように感じる。
 初日に1個体、最終日に別の沢で2個体と見られたわけだけど、ここいらのコガタブチはいわゆる四国の高標高に生息するタイプの個体群のようで、黄白色の斑紋を持つ。私が見たどちらの沢も標高1500m付近の源流域で、かつ水量が少なくところどころ伏流になるような枝沢での発見だった。
 共通認識しやすいのは図鑑だと思うが、私が学生時代から愛用している通称 “ 両爬の赤本 ” である 『 決定版 日本の両生爬虫類 内山りゅう他 』 のブチサンショウウオの頁に載っている愛媛県と徳島県の写真に近い。


 四国の流水性サンショウウオでは本種が見つけづらく、他の2種をよく見るなんて話を散見するが、今回の旅では逆の結果となった。おそらく予定通りにフィールディングが出来ていれば同じような感想が漏れ出たかもしれないが、林道の通行止めや登山道の閉鎖など、目星をつけていた沢への行く手をことごとく阻まれていた。
 そのためイチから沢探しを現場でする羽目になり、地図と足とでやっと見つけた沢だった。




コガタブチサンショウウオ
コガタブチサンショウウオ


 1個体目は沢にある大きめの石をめくると下にも石があり、その水中ではない隙間で休んでいるところを見つけた。残りの2個体は同じ石の下にいたのを見つけて、わずかに水が浸み出る沢の脇にある石が彼らの隠れ家だった。
 どちらの発見も水中ではなく石下の空隙で、円錐状の尾の形状からみてもあまり泳ぎは得意そうではないことが窺い知れる。反対に、残りのターゲットであったイシヅチサンショウウオやシコクハコネサンショウウオは水量の多い沢にいるイメージで、やはり好む環境が微妙に異なるのだろう。それゆえに各サンショウウオに対して適切に環境選びをする必要があるので、あの深い山々が連なる四国でのサンショウウオ探しというのは、ちょろっと数日遠征するだけではそううまくはいかないようだ。まぁまた四国に行くキッカケになったのだから、懲りずにまたチャレンジしよう。




コガタブチサンショウウオ
コガタブチサンショウウオ


 それにしてもここの個体群は斑紋が美しい。まるで金粉を散らした伝統工芸品かのような模様。この金ピカが最も輝く瞬間は、自分の手によってこのサンショウウオを掘り当てたその瞬間こそである。
 沢でのサンショウウオとの出会いは歓喜だ。そして図鑑では見ていたが実物を自分で発見した時の喜びと言うのは筆舌にし難いほどの感動があり、相変わらずだが1人沢にて雄たけびを発してしまった。

 シコクハコネサンショウウオの種小名 kinneburi は鉱物の採掘場所の近くで見つかることから 『 金を舐る ( ねぶる ) 』 という意味で 【 キンネブリ 】 という地方名からつけられたものである。道中私もキンネブリを探していたが、ついに叶うことはなかった。しかしこのコガタブチサンショウウオもまた、金に関連するような色彩の斑紋を持っているので、こいつも鉱物を舐るのではないかと思っていて、ひそかにキンネブリと呼んでやりたい気分だった。



 素敵な出会いがあったが、まだまだ四国のサンショウウオは見られていないままである。また訪れる口実もできたわけだし、機会を見てリベンジしたいところだ。
 はぁ、それにしても四国の山は深すぎる・・・

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