月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

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至高のグルメ

~ 麗しの島、台湾の旅 ~
1. 小汚いバックパッカーとダーティー兄ちゃん
2. トカゲたちの異なる境界線
3. 極彩色 Richly colored
4. 翡翠の純心
5. 蝦蟇が来たりて、夜は更ける
6. 翡翠の邪心
7. 谷を渡って飾り付け
8. 木登り蜥蜴の陰と陽
9. 至高のグルメ
10. 色とりどりの花咲き誇る
11. 斑蛇の明と暗
12. 既視感のオアシス
13. 蓮池や 咲いては消える 亀の華
14. 鼻先蛙は蛇の気配
15. モノクロームの鎮魂歌
16. 最終夜の晩餐
17. 老人と湯


 2日目の内洞を目指す道中、ひたすら照りつける太陽光とそれを反射させるアスファルト道にやられていた我々の目の前に、小さなオアシスが出現した。


果物屋
移動式果物屋


 車で運んできた果物を小さな屋台で売っているオジサンがいた。遠巻きに我々の姿を認めると、中国語で 「 おぅ、にいちゃん達、うまい果物あるよ~ 」 的な事を言っていて、周りはただの山道なので他の出店があるわけでもなく、なかなかに存在感を放っていたのでとりあえず物色してみることにした。
 屋台の上にはブドウやらマンゴーやら、よくわからんヘンテコな果物までが取り揃えられ、それぞれがカゴに入って売られている。身ぶり手ぶりと中国語・英語で聞いてみると、このカゴ1つで200元だという。 「 お、これは安いじゃないか 」 「 特にマンゴーとか日本で買ったらなかなかのお値段だし 」 「 1カゴに4個だから50元/個じゃん 」 「 マンゴー食いたいねぇ 」 なんて会話を我々がしていると、商売人であるオジサンは 「 ~ ナンタラカンタラ ~ 、マンゴ、ハオツー 」 とこちらがマンゴーに興味を示しているのにいち早く気がつき、陽気に勧めてくる。私の小さな脳味噌に記憶されている数少ない中国語の単語 【 ハオツー ( おいしいの意 ) 】 が出たのでまぁ言いたいことも大体わかるし、このオジサンも陽気だったのでテンションを上げ現地の方とのコミュニケーションを図ってみることに。


「 やっぱりマンゴーが一番うまいっすよねぇ ? 」 ってのを聞くために、

【 言葉 】 「 マンゴー 、  No. 1 、  ハオツー ? 」
【 動作 】 ( 指差し )、( 人差し指を立てる )、( 親指を立てる )

 と、我ながら頭を抱えたくなるような語学力の無さに絶望しつつも、実は少ない単語と片手だけでできるジェスチャーというスマート極まりないコミュニケーションで突撃してみる。そのスマートさの甲斐あって、オジサンも渋い声で 「 ハオツー。 マンゴ No. 1 ハオツー 」 と親指を立てて返答してくれた。オジサンはマンゴーを「マンゴ」と伸ばさず発音しているのが妙に面白くて、それを聞きたいがために何度も 「 マンゴー、 No. 1 ハオツー !! 」 を連呼してしまった。その度に 「 マンゴ、マンゴ 」 と答えるオジサンに笑顔で200元を手渡し、再び内洞を目指す。


 知っての通り頭の弱い私は、 「 さっそくマンゴ食おうぜ !! 」 とマンゴーを目の前によだれを垂らしながら発言すると、 「 マンゴー食べたら手がベトベトになるから、トイレとかもある内洞に着いてから食べよう 」 と、まるで10歳と6歳の息子でもいるんじゃないだろうかと疑いたくなるような、冷静で的確な助言が子供を諭すようにFくんの口から出る。
 これでも私たち3人は同期だぜ ? これじゃあまるで子供と大人じゃないか。改めてこういう場面で冷静に判断できるFくんがいて良かったなと感心すると同時に、私の中で意地の悪い “ ある妙案 ” が思い浮かんだ。




マンゴー
台湾マンゴー


 1時間ほどしてようやく内洞到着。駐車場のデッキに直接腰を下ろし、渇ききった喉でごくりと一度ツバを飲み込んで、待ちに待ったマンゴータイムだ。
 爪で線を描くよう切り込みを縦に1本入れ、そこから薄い皮を順々に剥いていくと、あらわになった繊細な肌からはすでに芳醇な香りが立ち込めていた。その香りに待ちきれなくなり、まだ半分ほどしか皮を剥いていないにもかかわらず、おもむろにかぶりつくと予想を遥かに越える量の水分が口内を満たす。 「 う、うまい 」 これじゃあまるで食べ物というより飲み物じゃないか。
 柔らかな果肉はロクに歯を立てずとも、とろけるように喉の奥へと流れてゆき、濃厚な甘みの余韻だけを舌の上に残していく。その残り香が鼻を突き抜けるたびに、とろりとした甘みの記憶が呼び起こされるので、それ欲しさに2口、3口と食べ進んでしまう魅惑の果物だった。まさにオジサンの売り文句どおり、 “ マンゴー No 1. ハオツー !! ” だ。


 さて、先に書いたが、オジサンから購入したマンゴーは1カゴ4個入り。対して我々は私、TOGUくん、Fくん、の3人であるため、1つのマンゴーがボーナスとして浮いている。
 となればそのご褒美を巡ってジャンケン大会の開催だ。


 ジャン ・ ケン ・ ポン ・・・
 勢い良く飛び出した3つの手、チョキが2つにパーが1つ。まずはFくんが脱落。

 残る私とTOGUくんの一騎打ち。
 ジャン ・ ケン ・ ポン ・・・・・・ あいこでしょっ ・・・
 初めは互いがチョキを出してあいこになったが、次にチョキとパーで決着がついた。私の勝ち。私のモノだ !!
 あのおいしいマンゴーがもう一度味わえるという喜びもさることながら、実は別のいやらしい喜びもあった。

 ・・・ 計画通り ( DEATH NOTE 風 )

 もう既に私はこの勝負の必勝法を閃いており、それをただ実行しただけなのだが、こうも事がうまく運ぶとなるとニヤけが止まらなくなってしまう。ジャンケンとは一見公平そうな3択に思えるが、実はいろんな条件下でそのバランスは崩れてしまい、3択ではなくなってしまうのだ。

 今回で言えば条件は2つあり、
 ① 各自マンゴーを食べてからジャンケンをすること
 ② 「 最初はグー 」 をやらないこと
 この2つこそがミソで、これを満たしたために出す手が限定されるのだ。

 それは “ グーは出ない ” ということ。

 各自マンゴーを食べ終わって、 『 さぁ残りの1つをどうしようか 』 となるわけだが、ここではまだ自分が食べられる可能性があるから手を洗わずベトベトのままジャンケンに臨むことになる。すると意図せずとも生理的にベトベトの手で握り拳をつくるのには不快感が伴なわれるため、必然的にチョキかパーの2択になってしまう。だからあとはチョキを出しておけば負けはないので、ひたすらチョキを出していれば良い。
 また 「 最初はグー 」 で強制的にグーをつくってしまうと、そのままグーを出されてしまう可能性が出てきてしまうので、そこはイニシアチブを手にするためアホな小学生みたいに 「 じゃ~ん ・ け~ん ・ ぽいっ !! 」 と大げさに掛け声を叫ぶ。すると2個目のマンゴーを手にすることができるってわけ。

 この時ばかりは 「 ヒャッハー !! 」 と高笑いと共に種明かしをして、わざとらしく 「 マンゴー、ハオツー !! 」 と高らかに叫んでジャプジャプかぶりついた。おそらくだいぶ醜い妖怪の容姿にみえていただろう。初日に成田空港で私を地べたに寝させた借りを返してやりたかったので、まぁこれでおあいことしてやろう。
 やっぱり人と行動するとこういうやりとりがあって楽しい。別に安いのでもっと食べたかったらまた買えばいいわけだが、こうして公平性に乗っ取って勝利を掴んだときのご褒美が妙に嬉しいし、誰かと旅をしている醍醐味でもある。
 この必勝法はFくんの 「 ベトベトになるから後で食べよう 」 という親切な提案から思いついたもので、人の親切心の裏側でこんな姑息な事を考えている私の器の底がしれますな。わたくし月光守宮の “ 月 ” の部分 ( DEATH NOTE の主人公 ) が出てきてしまったと思うほど、あの時はいやらしい笑みを浮かべていたんだろう。

 いやしかし、マンゴーは本当にハオツーだった。




台湾バナナ
台湾バナナ


 引き続き台湾フルーツ。こちらはマンゴ No.1 ハオツーオジサンの売り物ではなく、コンビニで売っているポピュラーなもの。ただやはりそこは台湾バナナ、ねっとりとした濃い甘みと香り高い芳香。
 私はバナナの産地では台湾産が最も好きなのだ。スーパーなどで売られているのはフィリピン産やエクアドル産が主流ではあるが、昔は台湾産も普通に店頭に並んでいたように記憶している。今でこそ高い果物屋さんで売られている台湾産バナナだが、当時は他の産地よりは高価でも庶民的な価格で売られていたはずだった。どうもフィリピン産は青臭くて好きになれないんだよなぁ。

 風邪をひいた時に祖母からもらった栄養満点のバナナ。 「 チョコレートアイスと一緒に食べるとチョコバナナになる 」 などと言って食べたバナナ。台湾バナナを食べると、幼少の頃の記憶が甦る。それほどまでに私の舌は台湾バナナを覚えており、味覚で記憶を呼び起される体験をした。ここでもやはり、日本を感じさせてくれる台湾。






八百屋
珍妙野菜の八百屋


 内洞からの帰り道、想像以上の移動距離で飲み物が底を尽きていた計画性のない私とTOGUくんを救ってくれたオアシス的移動八百屋。日本と異なり自動販売機はそこまで普及していなかったので、駐車場にもトイレ付近にも飲み物が売っておらず、このまま烏来の温泉街まで帰るには水分を消費しすぎていた。そんな中歩いていて見つけたこの八百屋にはスポーツドリンクが売られており、思わず500 ml のペットボトルを2つ購入。
 さらに暑い国ならではなのか、プラスチックのコップに氷を入れたモノを 「 これで冷やして飲みな 」 とおばちゃんがくれたので、本気で生き返る思いだった。1本目は喉がカラッカラだったので速攻で飲み干す。

 屋台に珍妙なナスやらいんげんやらが売られているのを見ると、やはり外国に来たんだという実感がわく。 「 なんなんだよ、このナスは 」 と思って検索してみると、台湾ではこれがポピュラーっぽい。自分的常識、他人的非常識。





トロッコ列車
トロッコ列車


 ようやく烏来に戻ってきて、帰り道にトロッコ列車がガタゴト走る。烏来は結構観光地化されてるので、以前は木材の運搬に使っていた線路を観光用のトロッコ列車の運行に利用している。歩き疲れて足クタクタなのでよっぽど乗ろうかと思ったが、走行距離もしれているし、到着駅が駐車しているところから離れているので、結局並走してテクテク帰る。乗っているのは白人か中国人かっていう雰囲気だった。
 もうこの頃には長靴と長距離移動による長・長ダメージにより、半分足がお腐れになっていたという。



烏来温泉街
烏来温泉街


 そしてようやく帰ってきた烏来温泉街。朝とは打って変わってすごい人の量。箱根や伊豆のように、アクセスがいいので台北市内から日帰りとかで現地の人も遊びに来るのだろう、すごい賑わいだった。
 各店舗屋台を広げ、威勢の良い中国語が飛び交って、うまそうな香りがして。 「 今日はよく歩いたよな 」 と互いを褒め称え、とにかく振り絞ったエネルギーを回復するべく、台湾グルメを散策しにサンダルに履き替えてくり出した。



山猪肉
山猪肉


 八百屋や魚屋のオヤジのようなしゃがれた声で 「 らっしゃいらっしゃい 」 的なことを言っている屋台に目をやると、オヤジではなくおばさんが切り盛りしている肉の屋台があった。基本は猪の肉らしいが他にも鳥なんかの肉も売っていて、見るからにうまそうなお店である。
 腹が減っていた我々は、脂身のある肉肉しい部位をチョイスし、3人で仲良くシェアして食べることに。 ( なんか修学旅行っぽいな、おい )
 網の上でジュージュー焼いたら、一口大に切って紙袋に入れ、そこに秘伝の粉を振りかけて出来上がり。それを竹串で突きながら仲良く3人で食べるのだ 。 ( やばい、これじゃあ修学旅行 in 台湾じゃないか )
 塩こしょう + α の味が脂によく浸み込んでいて、非常においしかったことでテンションが上がってしまい、 「 あの店は正解だったね 」 で止めておけば良かったものを、店員のおばちゃんがあまりに商売人の粋な声色だったので敬意を表して “ しゃがれババア ” と命名してゲラゲラ笑いながら食べていた。 ( いや、中学生の修学旅行のレベルだなコレ ・・・ )


山猪香腸屋
山猪香腸屋


 烏来の名物といえば山猪香腸、いわゆる猪肉ソーセージ。温泉街では軒並みこの山猪香腸の店で溢れ、どの店のを選べば良いのか目移りしてしまう。こういうときは日本人的感覚で、 『 並んでいる店 = おいしい店 』 ということで、この 【 雅各 】 という店にする。台湾のTVでも取り上げられるほどの有名店らしく30分ほど並んだが、店員のあんちゃんたちのソーセージを焼く姿が職人すぎて見ていて飽きなかった。
 一度に20本ほどを網の上に乗せ、火加減をみて配置を軍手で入れ替えたり、 『 カッカッカッカッカッ 』 と素早い包丁さばきで一本一本に細かい切れ込みを入れたり、束ねて自立させ先端をじっくり焼いたりと、とにかく芸が細かいのだ。また店員さんを見ればわかる通り、絶対にうまい店の店員さんオーラが目を凝らさずとも見える。



山猪香腸
山猪香腸


 焼き上がったら特製のタレをつけて、待ちに待った香腸タイム。パリッとはじける皮を破ると中からじわじわと旨みの強い肉汁が溢れ、その強い味に負けない甘辛のタレと合わさると、とってもハオツー。
 ウインナー本体に切り込みが入っているので、ツルツルの表面でもしっかりとタレが絡んでいるし、とにかくこのタレがうまい。中華風焼き肉のタレといった感じで、シナモンや八角などの甘いスパイスが入っているようだ。帰国してから調べてみると、 “ 五香粉 ( ウーシャンフェン ) ” というスパイスは台湾でよく使われているようで、おそらくこれの味なんだろう。一般的にはシナモン ・ クローブ ・ 花椒 ・ ウイキョウ ・ 八角 ・ 陳皮などをブレンドしたものらしいが、地域や家庭などで味も異なるのでここの配合がうまいんだろう。
 気に入りすぎて私は帰国後にエスビーの五香粉を購入して、いろんな料理に振りかけているが、たちまち台湾風になるので重宝している。


 3本で100元なので、ちょうど人数分で助かった気もする。ソーセージのシェアは見た目的にも響き的にもよろしくないので一安心。
 あまりにうまいもんだから、別日にFくんは1人で3本食いに行ってしまうほどのうまさ。他の店の山猪香腸も食べているが、格段にこの 【 雅各 】 のはうまい。3人で大絶賛しまくりで、台湾で食べた中で一番おいしい食べ物だった。これは台湾に来る機会があれば外せないグルメである。



タピオカミルクティー
タピオカミルクティー


 食後はさっぱりとタピオカミルクティー。こちらも定番だが、タピオカの粒が大きくてなかなかに食べ応えがある。




 とりあえず勢いに任せて台湾グルメを堪能し、満腹の状態で温泉街を後にする。この日、温泉街で何度 「 ハオツー 」 と親指を立てたことか。ついついこのうまいという感動を伝えるために 「 ハオツー、ハオツー 」 と連呼してしまったが、みんな素敵な笑顔を返してくれるので気持ちよくグルメを堪能できた。
 この後は、しばし仮眠をとって夜の散策へ。エネルギー補給にしては十二分にとったのと、歩き疲れたというのもあってあっという間に夢の中へと落ちていった。このときばかりは 「 もう食べれないよぉ 」 なんて寝言を言ってもおかしくない満足感だった。

 生き物も良いがグルメも良い !! ということで今回はグルメ編でしたとさ。たまにはこういうゆるい記事も、旅の醍醐味ということで。



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