月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 爬虫類  

木登り蜥蜴の陰と陽

~ 麗しの島、台湾の旅 ~
1. 小汚いバックパッカーとダーティー兄ちゃん
2. トカゲたちの異なる境界線
3. 極彩色 Richly colored
4. 翡翠の純心
5. 蝦蟇が来たりて、夜は更ける
6. 翡翠の邪心
7. 谷を渡って飾り付け
8. 木登り蜥蜴の陰と陽
9. 至高のグルメ
10. 色とりどりの花咲き誇る
11. 斑蛇の明と暗
12. 既視感のオアシス
13. 蓮池や 咲いては消える 亀の華
14. 鼻先蛙は蛇の気配
15. モノクロームの鎮魂歌
16. 最終夜の晩餐
17. 老人と湯


 内洞国家森林遊楽区の川沿いを歩き進めると、大半の観光客の目的地兼折り返し地点である滝が見えてくる。とりあえず烏来温泉街から歩いてきたことを考えると結構な距離なので、ここいらでマイナスイオンを浴びながら休息をとることにした。
 ここまでで予想以上に鳥の成果がないためか、TOGUくんはその間も滝の周辺でめぼしい鳥が出ないかと散策に勤しんでいて、 「 やはり鳥屋の歩く体力には関心するなぁ 」 と実感。私なんぞは腰を下ろしてしまったらこれがまた上げるのが重たいわけで、貴重なペットボトルの水分も残りが 1/3 になるほど飲んでようやく立ち上がる。ルートとしてはここで引き返すルートと、山を登るルートの2パターンがあるが、 「 さぁどうしようか ? 」 と作戦会議。結果、もうちょい進む山ルートに決まったが、体力を考えてFくんは留まる事にし、そして帰りの時間も考慮してこの場所にあと40分後に集合というのが条件になった。

 ということでTOGUくんと40分間のハイキングスタート。Fくんの待つ滝のポイントは三段の滝の下層瀑布で、中層瀑布・上層瀑布を拝むためにはこの山ルートを行かなくてはならないため、少ないとはいえまだまだ観光客が絶えないところである。それこそ高尾山のような感じで、身軽な服装の観光客たちが生き物を弄くる我々を、冷ややかな横目でやり過ごしていくあの感覚というのは、日本も台湾も同じなのだなと肌で感じる。そんな態度にはもう既に慣れっこな我々は、ワーキャーとキノボリトカゲの写真を撮る。




キグチキノボリトカゲ
キグチキノボリトカゲ Japalura polygonata xanthostoma


 典型的なキグチキノボリの図。日なたにもよくチョロチョロと出てきてこちらを気にしている性格明るめな感じ。オスの咽頭垂は写真の個体のようにオレンジ色が出てよく目立つ。

 また学名をみてわかるように、このキノボリトカゲは我が国に産するリュウキュウキノボリトカゲJapalura polygonata と同種である。
 リュウキュウキノボリトカゲはいくつかの亜種に分けられ、
オキナワキノボリトカゲJ. p. polygonata 【 奄美諸島・沖縄諸島 】
サキシマキノボリトカゲJ. p. ishigakiensis 【 与那国島を除く先島諸島 】
ヨナグニキノボリトカゲJ. p. donan 【 与那国島 】
キグチキノボリトカゲ【 台湾 】
 以上の4亜種に分けられる。

 なので馴染みのある姿をしていて、どこか懐かしささえ感じさせる風貌なのだ。動きもまんま日本のキノボリトカゲのそれなので、捕獲も容易い。



キグチキノボリトカゲ
キグチキノボリトカゲ 


 こちらは陽明山で見た幼体。陽明山もこのキノボリトカゲが多いが、台湾には5種ものキノボリトカゲが生息しているのでしっかりと同定しなくてはならない。




キグチキノボリトカゲ口内
キグチキノボリトカゲ


 本種は和名の通り、口内および舌が鮮やかなオレンジ色を呈しており、訪台初期はとにかくキノボリトカゲを捕まえては口を開けさせていた。体色には環境や興奮状態などで明暗差があり、明色時はオキナワキノボリトカゲに似た薄緑色になるが、暗色時では濃い緑と薄い緑が入り混じり複雑な模様が現れてカッコイイ。
 また1枚目の写真のようにオスの咽頭垂と腹面の黄色みもよく目立つキノボリトカゲである。

 案の定観光客の多いところでも、 “ キノボリトカゲの口内を覗き見なければ気が済まない病 ” が出てしまうので、とにかくお構いなしにお口を開けさせる。ただ 「 開けたい開けたい 」 と気持ちがはやるおかげで、知らず知らず自分も間抜け面して 『 ぽか~ん 』 と口が開いてしまっているときがあるので、台湾でキノボリトカゲを捕まえる方は注意されたし。




 キノボリ繋がりでいえば、3日目に市内の公園を散策していて別のキノボリトカゲを見つけた。


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スウィンホーキノボリトカゲ Japalura swinhonis


 キグチキノボリに比べて明らかに陰険な風貌。こいつに関しては “ キノボリトカゲの口内を覗き見なければ気が済まない病 ” の発作が出る間もなく、違うキノボリだと悟った。感覚的にはラピュタの 「 はっ !? さっきのロボットじゃない ??!! 」 みたいな、なんか違うじゃないかという雰囲気をかもし出ていたキノボリ。

 吻が短くて厚みのある頭部、そして全体的に灰褐色でダークな印象。明らかにこれまでたくさん見ていたキグチキノボリとは異なる顔つきに、Fくんと顔を見合わせて 「 キグチとは顔が全然違うね 」 とお互いが抱いた感想を持ち寄ったら見事に一致した。これは両爬屋の後輩たちも共通認識のようで、帰国後に2種のキノボリ写真を見せてみると、口裏を合わせたかのようにみんな 「 顔つきが違う 」 と答えてくれたので、なんだかみんな同じ感覚で生き物を見ているような気がして嬉しかった。
 識別点を認識して同定することももちろん大切なのだが、フィールドワークをする上ではこういった直感的な部分も必要だと常々思う。標本や写真などの静物を観察して、その生き物が 「 何であるか 」 と判断するのは時間も判断材料もたくさん用意できるが、実際にフィールドで出会った動物 ( ここでは静物の対義語 ) では限られた材料で判断しなくてはならない。そういう意味では瞬発的な直感力を磨くのも重要だと思うし、毒蛇もしくはそれに擬態したヘビを見つけた際には、案外大事な能力である。




ということで、今回は2種のキノボリトカゲを見つけることができた。日本では1つの島に複数種生息していることがないので、まじまじと同定せずに決め付けてしまっているふしがある。台湾で改めてじっくりとキノボリトカゲを見てみると、識別するのが難しい分類群なんだと思わされた。
 パッと見で識別ができるようもっと精進しなくてはならないなぁ。



キノボリトカゲの陰と陽
スウィンホーキノボリトカゲ ( 左 ) と キグチキノボリトカゲ ( 右 )


 両種の雰囲気があまりに対極に感じたので1つの画像に。まるで光と影、陰と陽。互いが互いを際立たせる、そんな存在。隣に並べると雰囲気の違いがよくわかる。


 陽気なキグチや着生ランを観察したりでタイムアップ。Fくんと合流し、果てしない復路を歩き始める。





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