月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 両生類  

蝦蟇が来たりて、夜は更ける

~ 麗しの島、台湾の旅 ~
1. 小汚いバックパッカーとダーティー兄ちゃん
2. トカゲたちの異なる境界線
3. 極彩色 Richly colored
4. 翡翠の純心
5. 蝦蟇が来たりて、夜は更ける
6. 翡翠の邪心
7. 谷を渡って飾り付け
8. 木登り蜥蜴の陰と陽
9. 至高のグルメ
10. 色とりどりの花咲き誇る
11. 斑蛇の明と暗
12. 既視感のオアシス
13. 蓮池や 咲いては消える 亀の華
14. 鼻先蛙は蛇の気配
15. モノクロームの鎮魂歌
16. 最終夜の晩餐
17. 老人と湯


 「 晩飯食っていざ行かん、漆黒の宇宙に浮かぶ星々を。 」 ぐらいのロマンスを胸に抱き、夜の台湾を歩く。

 普通旅先に着いてまずすることといえば宿のチェックインである。荷物置いたり寝床確保が優先されるのだが、我々はそれをせずに陽が暮れてもフィールドに出ている。

 それはなぜか?

 当ブログをちょくちょく覗きに来てくださる方ならば薄々気づいているかもしれないが、今回も行動優先にするため相変わらずの車中泊旅だからである。そりゃあチェックインもなければチェックアウトもない。制限されるのはレンタカーの利用時間とフライト時間だけだ。初の海外フィールディングなので、安全面・衛生面を考慮するならば、というか最初は無難に考えて宿をとるべきなのだが、両爬屋としては夜も外せないため、眠くなるまでギリギリ活動できる車中泊というチョイスをした。
 かなり冒険的な試みで無謀な計画ではあったが、欲望には勝てず車を宿にして突き進む。

 初日の夜は陽明山の中腹に車を停めて林道を歩く。感動の瞬間だ。夢にみた瞬間だ。海外でナイトハイクしているだなんて。夜風は湿気を含んでいて柔らかく、いかにも冒険心をくすぐるような雰囲気しか漂っていない。そして待ち受ける海外の両爬たち。





バンコロヒキガエル
バンコロヒキガエル Bufo bankorensis


 小さなヒキガエルがぴょんぴょん跳ねる。我々日本人が見慣れているヒキガエルと同じような姿のチビガマ。
ポピュラーなカエルのようで台湾各地で見られた。



バンコロヒキガエル
バンコロヒキガエル


 こちらは成体。彼らは台湾固有種で、色彩が淡白なニホンヒキガエルB. japonicus といった感じ。立ち振る舞いやしぐさはニホンヒキのそれと同様で、 “ むんずっ ” と胸を張っているのはやはり良い。
 系統的には日本にも亜種を持つアジアヒキガエルB. gargarizans に近縁なようなのだが、そうなってくるとミヤコヒキガエルB. g. yiyakonis の分布を考察するとなかなかに難解っぽくて面白い。



●現在のヒキガエルの分布
大陸 : アジアヒキ
台湾 : バンコロヒキ
八重山 : なし ( 移入種であるオオヒキガエルRhinella marina は除く )
宮古 : アジアヒキ
沖縄 : なし
奄美 : なし
トカラ : なし
屋久島 : ニホンヒキ
九州 : ニホンヒキ
朝鮮半島 : アジアヒキ



 こうやってみると、大陸・台湾・八重山・宮古のそれぞれが、もしくは同時期に陸橋で繋がっていた時にアジアヒキガエル ( もしくはその祖先種 ) が分布しており、島が分かれた後で分化したり絶滅したのかもしれない。 ( 下図のような動き )



●陸橋形成●        →       ●陸橋消滅●
大陸 : アジアヒキ             大陸 : アジアヒキ
台湾 : アジアヒキ             台湾 : バンコロヒキ
八重山 : アジアヒキ           八重山 : 絶滅
宮古 : アジアヒキ             宮古 : アジアヒキ ( ミヤコヒキ )



 ミヤコヒキガエルは有史以前の化石が宮古島から発見されていることから、移入種ではないと推論しての予測。台湾と宮古島では環境も競合種も異なるため分化速度に違いがみられて、大陸におけるアジアヒキガエルに対して、別種と別亜種という異なるレベルで分化したのかもしれない。陸橋形成・消滅の時代やヒキガエル内の分化レベルなんかも合わせていろいろ考察できたら面白いんだろうなぁ。
 まぁ知識のない私が勝手に妄想するとこんな感じ。


 とりあえずまぁバンコロヒキに対しての感想としては普通のヒキガエル。贔屓目に評価して親しみやすい蝦蟇と言ったところだろうか。





ヘリグロヒキガエル
ヘリグロヒキガエル B. melanostictus


 台湾に生息するヒキガエルはもう一種いて、それがこのヘリグロヒキである。バンコロヒキが平地 ~ 3,000 m までの広い垂直分布を持つのに対し、本種は平地 ~ 600 m ほどの低標高地域に生息している。
 陽明山では標高 500 m 前後のフィールドだったため両種が混生しており、ヘリグロヒキを見つけた数百 m 先で、バンコロヒキが見つかるような、ヒキガエル好きにはたまらないフィールドだった。

 特徴的な濃い顔立ちの男前ヒキガエル。眉にあたる部分と口にはヘリグロの名の通り黒いラインが入り、指先も黒く染まっている。
 先述のバンコロヒキは人当たりの良さそうな優しい顔立ちだが、本種に至っては娘さんを貰いに行ったら 「 君にお父さんと呼ばれる筋合いはないっ !!」 とちゃぶ台をひっくり返して一蹴されてしまいそうな剣幕だ。
 オオヒキガエルなどの厳つい中南米のヒキガエルがナンベイヒキガエル属Rhinella に分類された今、ヘリグロヒキはBufoの中でもかなり男前な部類に入るのではないだろうか。


ヘリグロヒキガエル
ヘリグロヒキガエル


 昼間陽明山で見た個体。小さいながらも顔はあまりにも男前で、やはり眼周辺の黒い隆起が彼らの顔が締まって見える所以であろう。
 こんなにカッコイイ顔しているくせにヒキガエルなもんだからおなかはぽっちゃりしていて、たぽたぽの膨らみを岩に乗せてカッコつけてる。このちょっとしたゆるさがたまらんね。ゆるキャラにしたらいいさ、こういうカエルは。本種は台湾でぜひとも見たいカエルであったので、この出会いは非常に嬉しかった。
 ただ両種とも成体オスに会えずじまいで、リリースコールの会会員としては非常に悔やまれる。もっといろんなオスを抱きたかったぁ~ !!



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