月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 鳥類  

極彩色 Richly colored

~ 麗しの島、台湾の旅 ~
1. 小汚いバックパッカーとダーティー兄ちゃん
2. トカゲたちの異なる境界線
3. 極彩色 Richly colored
4. 翡翠の純心
5. 蝦蟇が来たりて、夜は更ける
6. 翡翠の邪心
7. 谷を渡って飾り付け
8. 木登り蜥蜴の陰と陽
9. 至高のグルメ
10. 色とりどりの花咲き誇る
11. 斑蛇の明と暗
12. 既視感のオアシス
13. 蓮池や 咲いては消える 亀の華
14. 鼻先蛙は蛇の気配
15. モノクロームの鎮魂歌
16. 最終夜の晩餐
17. 老人と湯


 トカゲたちは当たり前のようにくつろぎ、目の前のクモを追いかけている。彼らにしてみたら日常だが、私からしたら夢のような光景だ。早々に台湾の爬虫類を見られて幸先良いスタートとなったので、俄然両爬や蟲を探す眼に力が入る。
 そうなってくると両爬や蟲がメインターゲットの私とFくんは自然と歩みも遅くなってくるので、ガンガン歩いて遭遇率を上げるタイプの鳥屋であるTOGUくんとしてはもどかしかったようで、 「 何時に車に戻ってくれば良い? 」 と、確認して、初めて来た海外の見知らぬフィールドだというのに1人で突き進んで行ってしまった。
 まぁ我々のサークル時代でもよくあった事だ。一緒に旅をするといっても各々ジャンルの異なる生き物屋であり、目的やアプローチの方法も違うので、気が付いたらみんな好き勝手にバラけるのだ。最終的にはちゃんと集合場所に戻ってくれば良いわけで、いわば相乗り状態みたいなもん。
 そして必ずしもそいつが狙ってる獲物と遭遇できるわけではなく、案外見たいと思っていたものを別の誰かが発見してくることもしばしば。




 そんなわけで早々にTOGUくんはフェードアウトしてしまい、Fくんと散策する。向こうの夏は湿気もあって気温も高く、ちょっと坂道を登るだけで全身から “ 大粒の汗 ” が噴き出すようにこぼれ落ちる。瞬く間にTシャツの重量は増加し、ビッショビショのパンツでおまたが擦れ始める。
 「 こりゃあ台湾の夏もこたえるなぁ 」 とまつ毛に乗った大粒の汗を拭うと、憧れの兜が地面に転がっているのを発見した。



アカヘリオオアオコメツキ
アカヘリオオアオコメツキ Campsosternus yasuakii 死体 ( 胸部のみ )


 訪台前に 「 アレ見たい、コレ見たい 」 とFくんと話していた中で登場した素敵昆虫。与那国島にいるノブオオオアオコメツキC. nobuoihira のようにメタリックブルーの体躯でありながら、胸部に赤い帯状紋が入るスタイリッシュなコメツキで、ぜひとも野生下でその色合いを見たいと話していた。
 さらにコメツキ関連でいろいろ調べていたらヨツモンオオアオコメツキC. matsumurae という種が日本にいるらしい。ノブオが青系の金属光沢なのに対し、ヨツモンは赤系の金属光沢で渋い。しかも生息地が石垣島と西表島。ノブオはそれなりに名前を聞く虫だったが、ヨツボシは知らなかったなぁ。八重山はやっぱりすごいとこだわ、知らずに西表島行っていたのがもったいない。

 また前回のトカゲ類と同様に、高標高地にはこのアカヘリオオアオコメツキに近縁なC. watanabei という種がいるようで、生き物で台湾という土地の起伏の激しさを思い知らされる。そいつは胸部の赤いラインが後ろ側で細くならずにベタっと色が付いているらしく、これまた素敵で夢のあるような虫だ。
ちなみに台湾ではアカヘリオオアオコメツキは 【 保育種 】 に指定されているため採集はできない。ただそれがどちらの種を指しているのかは曖昧なようだ ・・・






 しばらく散策してそろそろ車に戻ろうかという時間帯。Fくんの呼ぶ声が聞こえたのでそちらに行ってみると、カメラを上方へ構え 「 ゴシキドリがいる 」 と小声で教えてくれた。
 竹林と広葉樹林の境目にちょっとしたオープンスペースがあり、そこにポツリと 3, 4 m くらいの枯れ木が立っている。Fくんの指先を辿って枯れ木の頂付近に目をやると、極彩色の鳥が目に飛び込んできた。



タイワンゴシキドリ
タイワンゴシキドリ Megalaima nuchalis


 コイツも見たかった生き物の1つ。事前に勉強会という名の 『 図鑑を広げて好き勝手しゃべる会 』 で、鳥に関心の薄い我ら2人が覚えた数少ない鳥。 『 セキセイインコみたいなすごい色をした鳥 』 という雑な覚え方だったが、実物を見るともっと色が多くて息を呑む。ゴシキドリとは 『 五色鳥 』 からであり、緑・青・赤・黄・黒のカラフルな羽根を持った美しい鳥で、本種を求めて訪台する鳥屋も少なくない。

 以前東南アジアに広く分布するゴシキドリにはM. oorti という学名が与えられており、台湾の個体群はその中のnuchalis という亜種の扱いであった。それが分割され現在のタイワンゴシキドリという独立種になったようだ。
 ややこしいのが本種が属するMegalaima 属はオオゴシキドリ科 Megalaimidae のメンバーで、別の科にゴシキドリ科 Capitonidae というのがいるようである。Wikipedia なんかをみるとその2科はオオハシ下目 Ramphastides のグループで、その中にあの特徴的な形態のオオハシ科 Ramphastidae も含まれるようである。なんとも、すげー分類だな。
 しかもオオハシの形態が特徴的なので 【 ゴシキドリ類 ・ オオハシ類 】 という分け方をする場合は、ゴシキドリ類は側系統になってしまうみたい。身近なとこで言えば爬虫類と鳥類の関係みたいなもんで、爬虫類は単系統にはならなくて鳥類を含めてようやく単系統になり得るみたいなこと。何気に複雑ですな鳥類の分類。

 そしてそして 「 分類なんてどうでもいいよ 」 って人からしたらまだ続くのかと思われるが、今度の話は生態にも繋がることで、実はタイワンゴシキドリを含むオオゴシキドリ科はキツツキ目 Piciformes のグループなのだ。これこそFくんがこのタイワンゴシキドリ発見に至った要因であり、本家キツツキ類よろしくコツコツコツとドラミングが聞こえてきたから見つけられたと言う。
 写真でもわかるように、我々が見つけた時もまさに枯れ木に穴を空けているところであった。世の中にこんな美しいウッドペッカーがいたとは。
 また鳴き声も特徴的で、まだ姿を見ていないときは遠くでアオガエルRhacophorus が鳴いているのかと思っていた。モリアオガエルRh. arboreus のように木の高いところで 「 コロロ ・・・ コロロ ・・・ 」 と鳴いているような音なのだが、実はそれがタイワンゴシキドリだとわかったのはようやく姿を確認してからだ。それまで私はずっとヒスイアオガエルRh. prasinatus がいるんじゃないかとドキドキしながら進んでいた。聞き慣れればそこかしこから鳴いているのがうかがえた。


 こんな素晴らしい鳥を初日から見られ、しかも望遠レンズでもないのに写真が撮れるだなんてなかなか幸先が良い。本来ならば門外漢の2人よりも見るべき人はいたのだが、彼に対する罪悪感よりも、 「 見てやったぜイエーイ 」 的な品の無い自慢の方が気持ちとしては大きかった。これもサークル時代バラバラで行動する人あるあるの1つでもある。



 陽もだんだんと暮れ始め、日本と同じように 「 カナカナカナカナ ・・・ 」 とヒグラシの仲間が鳴き始めた。あぁなんということか、まるで日本の夏休みと同じ情景がここにあるではないか。気がつけば年齢もずいぶん重ね、わずかな休みにすがりつく夏だが、あの頃の虫網を担いで家路に就くあの情景が異国の台湾で呼び起こされるとは。なんと居心地の好い国なのだ台湾は。
 そんな BGM を聞きながら車に戻ってTOGUくんと合流。さっそくゴシキドリを自慢したが、どうやら彼もちゃんと見ていたようだった。なんだか意地の悪い自慢心が恥ずかしい。
 んでもって彼は私の見ていないアシナガアカガエルRana longicrus を見ているという逆襲。人を呪わば穴二つってやつね、チクショー。

 そんなこんなで台湾初日の陽が暮れていく。



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