月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 爬虫類  

トカゲたちの異なる境界線

~ 麗しの島、台湾の旅 ~
1. 小汚いバックパッカーとダーティー兄ちゃん
2. トカゲたちの異なる境界線
3. 極彩色 Richly colored
4. 翡翠の純心
5. 蝦蟇が来たりて、夜は更ける
6. 翡翠の邪心
7. 谷を渡って飾り付け
8. 木登り蜥蜴の陰と陽
9. 至高のグルメ
10. 色とりどりの花咲き誇る
11. 斑蛇の明と暗
12. 既視感のオアシス
13. 蓮池や 咲いては消える 亀の華
14. 鼻先蛙は蛇の気配
15. モノクロームの鎮魂歌
16. 最終夜の晩餐
17. 老人と湯


 強引に進路変更してくる車や傍をスイスイと抜けていく2人乗りの原付きバイク、対向車が左側を通る慣れない道路。とにかく落ち着くため、そしてカーナビをセットするために、レンタカー屋を出てすぐのファミマに入る。台湾では 『 全家 』 という表記らしい。向こうのコンビニも日本とほとんど同じで、おにぎりがあったり化粧品があったり、iTunes カードがあったり、パッと見た限りでは日本も台湾も変わらない様相。
 明らかな違いと言えば、八角の香りが店内に充満しているくらいか。香りの根源は 『 茶葉蛋 ( チャーイエダン ) 』 という煮卵で、お茶や漢方なんかを配合したドス黒い液体で殻のまま煮込む怪しげな料理で、どこのコンビニでも売っているほどポピュラーな食べ物らしい。見た目がなかなかにエキゾチックな怪しさを含んでいたので手を出さずにいたのだが、どこのコンビニにも売っているほど台湾に根ざしたソウルフードのようなので、ついに3日目に口にしてみた。漢方の苦みやクドさもなくあっさりとしていて、あれだけ店内が八角臭で充満していたのに卵本体にはほんのりと八角の香りが付いている程度だった。また黄身の味は濃厚で、まさにポップにある 「 元気満分 」 の文字通り、パワフルにたぎってくるような食べ物でなかなかに気に入った。見た目はそれなりに抵抗のあるものですが、台湾に行かれたら是非チャレンジしてもらいたい庶民料理かなと。

 そんなファミマで昼飯を買い込む、初の台湾のお会計。あっちもコンビニでは学生みたいな人がアルバイトしているようで、初店員さんは 『 劉 ( りゅう ) ちゃん 』 という三つ編みおさげの女子高生(?)で可愛らしい女の子だった。
 レジでやりとりするとこちらがロクに中国語をしゃべれないのを察して、必死にボディランゲージで業務を全うしようとしている一生懸命な姿が尋常じゃなく可愛い !! 日本じゃ目も虚ろで 「 しゃしゃせぇ~ ( いらっしゃいませの意 ) 」 とやる気のないバイトばかりだが、台湾は素晴らしい国ではないか。
 最初に並んでいたFくんはおつりをもらった際に 「 謝謝 ( ありがとうございましたの意 ) 」 と、とびっきりのスマイルをもらっていて、小銭を財布にしまいながら店を出ていく彼の横顔は、今までに見たことのないほどダラしなくニヤけていた。これまでの8年間くらいの付き合いの中で、一度として彼がそういう女性関係で鼻の下を伸ばしたりデレデレしたりするところを見たことがなかったので、彼の新たな一面が見られて衝撃的な嬉しさだ。見た目も日本人とほとんど変わらないし、それほど良い国なんだ、台湾は。あっぱれ台湾。
 次に並んでいた TOGU くんの後ろで既にニヤけてしまっていた私だが、あろうことかオバサンがヘルプにきてこちらへどうぞとか言ってやがる !! そんなぁ、オレの劉ちゃんタイムがぁ・・・ 悲しげにオバチャンにお会計を渡していると、なんと横から劉ちゃんが袋詰めして最後に手渡してくれた。ありがたや。んでもって 「 謝謝、バイバイ 」 と手まで振ってくれたので涙が出そうになったぜ、コノヤロー。そこから車内は劉ちゃんの良さで盛り上がる一同。劉ちゃんありがとう !!



 初日は昼間からのスタートであまり活動時間も少ないので、台北近くの陽明山を目指すことにした。初の左ハンドル & 東南アジア特有の優しくない交通事情で運転は相当ハード。日本の感覚が染みついているので、運転席の位置取りが自然と右ハンドルでの位置になってしまいだいぶ右にはみ出しながら運転してしまった。ましてや見慣れない地名のナビ見たり標識みたりしながらだから、ふと目を離すと右へ右へ。
 何度、助手席の TOGU くんから 「 寄りすぎ、寄りすぎぃぃぃ !! 」 という悲鳴に近いような嘆きを浴びせられたことか。彼からしたら右のわき腹をえぐられるような恐怖だったのだろう、ホンマすんません。
 コツとしては左側にある中央線と運転席との間隔を意識すれば、うまいこと運転できるのだが、私はどうにもうまくいかなかった。それでも事故を起こさずに済んだのは幸いだったんだろう。

 尋常じゃないほど神経をすり減らしてなんとか陽明山着。初の海外フィールディング開始だ !!







インドトカゲ
インドトカゲ Sphenomorphus indicus


 台湾初ハペはインドトカゲ。台湾なのにインドって和名でちょっとややこしいけども笑 行く前にはサキシマスベトカゲScincella boettgeri やヘリグロヒメトカゲAteuchosaurus pellopleurus などの日陰者のリタースキンク的なイメージだったが、日向にも出てくるしずいぶんと活動的で、今回の台湾では最も目にするトカゲだった。
 大きさで言えば前述の日本にいる2種よりも大きく、日本のスジトカゲPlestiodon ( キシノウエトカゲPl. kishinouyei を除く ) くらいのサイズなので、カサカサ音もよく聞こえる。本種は台湾から中国南部、インドシナ半島、チベットまで生息している広域分布種で、 『 沖縄の ○○ 島で過去に記録があった 』 というような記述をどこかの文献で読んだ気がしたのだが失念してしまった。なんだっけな。たしかシーボルトやスタイネガーらの絡みだったような気がするんだが思い出せない。まぁ見つけたら追記するかも。
 日本での記録といってもスベトカゲやヒメトカゲの類いの誤認である可能性もあるわけだが、八重山くらいならいてもおかしくなさそうだし。



インドトカゲ
インドトカゲ


 幼体も非常に多い。見た目によらず立体活動も得意で、壁面だったりこのように樹の幹をチョロチョロと登ったりもするので陽明山のいたるところでみられた。成体に比べてプロポーションはバランスが良く目がクリっとしていて可愛らしい。大きくなると小顔で胴長短足になっていくので、そっちのほうが私としては愛着の湧きそうなプロポーションである。
 帰ってから図鑑や文献で調べてみると、どうやらコイツは卵胎生の種らしく、分布域の広さもあってそれなりに知名度のあるトカゲらしい。だから多く見られた幼体はもしかしたら生後間もない個体だったのかもしれないし、それゆえ時期的な関係で多く見られたというのもあるかもしれない。
 卵胎生のトカゲと言われて思い浮かべるのは、我々日本人だったらコモチカナヘビZootoca vivipara だと思うし私もそう思っていたので、卵胎生というのは寒冷地への適応だと思っていたが、亜熱帯から熱帯にかけて生息している本種がこの繁殖形態をとっているのには驚いた。
疋田努著 『 爬虫類の進化 』 でも寒冷地への適応以外に、子の保護という点にも触れられているように、必ずしも寒い地域だけのものではないようだ。


 今回見られなかったが、台湾にはもう一種このミナミトカゲ属Sphenomoruphus のトカゲがいる。前回の記事でも触れたように、台湾の爬虫両棲類相は垂直分布でも違いが見られ、インドトカゲが 1,500 m 以下の低標高地に生息しているのに対して、もう一種のSp. taiwanensis (和名不明 中国名:台湾蜥蜴 英名:Taiwan Alpine Skink)は標高 1,800 ~ 3,200 m もの高標高地に生息している台湾固有種で、どうやらこの近縁な2種は標高で棲み分けをしているようだ。
 生息環境としては山地の礫がゴロゴロしているところにいるようで、環境としては結構過酷にみえるのだが、こちらの産卵形態は卵生のようだ。 【 2種とその近縁種の系統地理 】 や 【 卵胎生の獲得時期 】 なんかを想像しながら考察したら面白そうなのだが、それに必要な知識が乏しいのが残念でならない。琉球列島ハペの系統地理を考える上では複合的に考えないといけないので、ちょっとずつ調べていけたら良いなぁ程度だな。




アオスジトカゲ
アオスジトカゲ Plestiodon elegans


 今回の旅ではインドトカゲが優先種であったように思う。次によく見られたのが本種。比較的山地よりのフィールドが多かったため、チュウゴクトカゲPl. chinensis formosensis は見られず、プレスティオドンは本種のみ。
 尖閣諸島にも分布していることから本種は日本の爬虫類としてカウントされているが、実際日本で出会うにはほぼ不可能に近い。そういう意味では海外というレッテルはつくものの、国産プレスティオドンはあとクチノシマトカゲ Pl. kuchinoshimensis とニホントカゲPl. japonicus だけまだ見られていないことになる。


 台湾では先程の 【 インドトカゲ - Sp. taiwanensis 】 の関係と同様に、 【 アオスジトカゲ - チュウゴクトカゲ 】 の間にも垂直分布にて棲み分けが成されている。ただし今回我々が見られた “ 低標高側 ” のインドトカゲと “ 高標高側 ” のアオスジトカゲという組み合わせからわかるように、それぞれの種群での垂直分布の境界線は異なっているのだ。
 Plestiodon の2種は日本と同じパターンでの分布様式で、大型で強い種が日当たりの良い平地を占拠し、小型で弱い種があまりバスキングのできない山地に追いやられるという図式のようにみられる。日本でいえば 【 バーバートカゲPl. barbouri とオキナワトカゲPl. marginatus・オオシマトカゲPl. oshimensis 】 や 【 イシガキトカゲPl. stimpsonii とキシノウエトカゲ 】 のような関係性。
 山地に追いやられた方は尾の青みが強く、今回みたアオスジトカゲにおいてもそれは例外でなく、むしろ後肢まで青くなってしまうほどのやりすぎ感。なので標高が高ければアオスジトカゲだというよりも、平地をチュウゴクトカゲに乗っ取られている感じ。

 対してSphenomorphus の2種は標高による生息環境の違いで境界線が変わるのではないだろうか。森林などのリター層のある環境にインドトカゲが、崖地や礫地などの乾燥した環境にSp. taiwanensis がそれぞれ別に暮らしているように思える。
 台湾という同じ土地で、同じく垂直分布で棲み分けをするトカゲ2種群の分布境界線が、実は異なる要因によってその境界線が一致していないというのが面白い。そう考えると台湾はいろいろと考察できる島なんだなと、期待が膨らむ。



 やっぱりトカゲは面白い。





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Comments
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Sphenomorphus 系のスキンクは黒目でかわゆいですよね。オーストラリアにも近縁な連中が結構いて、集めていました。

幼体の写真は素晴らしいですね。
左側のボケは狙ったのでしょうか?
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>> Nyandfulさん

かなり可愛らしいですねコイツら。
活発でよく動くし、こそこそ隠れるような隠遁性もないですし、飼育するのに向いてるんだろうなーとか現地で話してました。

幼体写真のボケは狙ってましたー。
といっても中望遠のマクロなんでだいたいボケてしまいますが笑
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