月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 哺乳類  

彼はシシ神様になって

 奈良の渓流を朝歩く。滝のマイナスイオンたっぷりのシャワーと、カラ類の可愛らしい鳴き声のシャワーで、寝不足気味の疲れを癒していた。
 すると遠くのほうでカラスみたいなカケスみたいな、お世辞にも綺麗とは言い難い鳴き声が響いていた。

「ん? 何の鳴き声だろう?」

 けれどそこまで気にも留めず、湿気の多い谷底で潤った植物たちを撮っていた。すると5分後、今度は近い距離でそれも少し高い位置からその鳴き声が岩肌に反響しながら降ってきた。目線を音源の方へ向けると、そこにいたのはカラスでもカケスでも、そもそも鳥類ですらなかった。







ニホンカモシカ
ニホンカモシカ Capricornis crispus


 カモシカだ。思わず息を呑むほど神々しく私の目に映っていた。それはきっと朝も早かったために、太陽光が上からではなく横から差し込んでいて、木々が落とす影が長いので高コントラストに映ったからだろう。また大自然の中でお互いしか目に入っていないかのように、見つめ合っていたのでなんだか心を見透かされていそうな気分になった。
 彼の眼は力強く、「もののけ姫」でアシタカが初めてシシ神のシルエットを木々の合間から見たような、そんな雰囲気を感じた。あのシーンの描き方が私はすごく好きで、本当に山や森の奥でシカなんかの哺乳類を見つけたときは、手前の木から徐々に徐々に奥の木にピントが合っていき、最終的に対象物を見つける。
 それはまさにあのシーンと同じように目に映るので、そういった物の見方を宮崎駿監督はアニメーションとして表現できているのだから、改めて日本アニメの技術力はすごいなぁと圧倒される。
 高い位置から見下ろされていたのと、シシ神とイメージが重なったのとで、より神々しいと思ったんだろう。ただ最初に聞いたカケスみたいな鳴き声の主はこのカモシカだったようで、しばらく私を観察すると特に取るに足らない相手だとわかったようで、見た目によらず変な鳴き声を発して山の上へと軽々姿を消して行った。


 実は大学時代に紀伊半島を訪れた時もカモシカに会っていた。もしかしたらあの時の個体だったのだろうか。警戒音みたいな声だったのに近くまで見に来たわけだし、互いに見つめ合っているときに何かシンパシーみたいなものを感じたような気がした。
 まぁそんなもん、雰囲気に呑まれて勝手に妄想しているだけなんだろうけど、それを否定する要素も見当たらないわけだし、もしかしたら本当にあの時の彼だったのかもしれない。

 うん、きっとそうだ。

 私はそう思うようにした。そしたらなんだか、グッと思い出深い再会のような気がして、この写真をみると心が温まる。





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