月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 両生類  

あめあめふれふれ

 今回の西表島はずいぶんと乾燥していた。森の中はあまり潤っておらず、以前から足繁く通っている林道は長靴を履いていかないと途中の川を横断できないほどの道だったのだが、今回はいたるところで分断されカラカラに干上がっていた。長靴はただただ暑くて歩きにくい履物にすぎなかった。今年は大きな台風が数回来ただけで、あとはあまりまとまった雨が降らなかったようで、滞在中に「節水しないと断水しちゃうさー」的な島内放送が何日にも渡り響き渡っていた。旅の途中に出会った虫屋の方もやはりこの乾燥に頭を抱えられていて、あらゆる生き物、そしてあらゆる生き物屋に影響を与えているようだった。
 おかげでカエルとの遭遇率は低く、雨に行動を左右される生き物と、それを獲物とするヘビとの出会いともなると困難を極める。かくいう私もそういったヘビには恵まれず、今回特に見たかったサキシマアオヘビCyclophiops herminae には出会えずじまい。滞在期間後半の2日間は朝夕でスコール的に雨が降り、待ちに待った潤いによってようやくカエルたちが顔を覗かせた。



オオハナサキガエル
オオハナサキガエル Odorrana supranarina


 遠目で見てもわかるその体躯。ここ西表島で1番大きなカエルで、日本に生息するハナサキガエルの仲間では最大である。
 現在同属にイシカワガエル2種(O. ishikawae およびO. splendida )が含まれているが彼らは類縁は遠く、アカガエル科最大のRana 属を細分化する際にハナサキガエル類と共にお引っ越し。実はイシカワガエル類はイマイチ分類しがたいグループのようで、未だ謎に包まれている。細分化するのは分類が進んでいるので良いことだとは思うが、大きくなり過ぎた分類群の場合、網羅的に分類しなければ残された分類群の類縁がめちゃくちゃでよくわからなくなる。といってもそれは理想論なわけで、現実的には少しずつ少しずつ分けていく他ないのだろう。


オオハナサキガエル
オオハナサキガエル


 ハナサキとは吻が長いことからつけられた名前で、この流線形の体は新幹線で言えばひかりの700系みたいな顔立ちで、ひとたび危険を察知すると “ ばびょーん ” と凄まじい推進力で姿をくらます。観察時は遠くからそろりそろりと悟られないように近づく。彼らに跳びそうな素振りなどなく、距離感を見誤り警戒区域に足を踏み入れると、途端に “ ばびょーん ” だ。









ヤエヤマアオガエル
ヤエヤマアオガエル Rhacophorus owstoni


 西表島のカエルといったらやはりヤエアオ。見た目も鳴き声も可愛らしいったらありゃしない。
図鑑Tシャツでもイラストにされていて、もちろん私も持っている。ただ6年も着ているためヨレヨレのボロボロになってしまったけど。



ヤエヤマアオガエル
ヤエヤマアオガエル


 実はこのアオガエル、沖縄や奄美にいるオキナワアオガエルRh. viridis よりも台湾にいるモルトレヒアオガエルRh. moltrechti に近縁で、実際画像検索してみると腹の色や後肢の模様、顔の丸みなどよく似ているのがわかる。
 先に紹介したハナサキガエル類にもスウィンホーガエルO. swinhoana という近縁種が台湾にいる。他にも台湾には何種もの近縁種・共通種が生息していて、その類似をみるのは面白い。それでいて大陸要素の生き物も入り乱れているので、彼らの生息環境は複雑で、我々に馴染みのある生き物がその中でどのようなニッチを獲得して暮らしているのかが気になるところ。やっぱり八重山へ行くと比例して台湾に憧れを抱いてしまう。




 ヤエヤマハラブチガエルRa. okinavana やアイフィンガーガエルKurixalus eiffingeri は鳴き声はすれど姿は見られず。見られると高を括っていた分、痛い目を見る羽目となった。むしろ途中雨が降ってくれなかったら、今回の旅では両生類の成果は壊滅的だったと想像するとゾッとする。なんとか素敵なカエルたちに出会えて良かったと、ありがたみを噛みしめて今夜は眠るとしよう。


1. 圧倒的生命力に溶けてゆく
2. セマルで合わせる “ 島時間 ”
3. WINGS
4. あめあめふれふれ
5. 待ち人 来たる
6. 川底の大鋏
7. ネズミのいなかったその島で
8. 第二の故郷はいつ帰っても暖かい


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