月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 鳥類  

WINGS

 ヤエヤマセマルハコガメ Cuora flavomarginata evelynae は国の天然記念物に指定されているが、そんな天然記念物がキャンプ場にノコノコと現れる(カメだけに)のどかな島、西表。同じように国の天然記念物(こちらはさらに特別天然記念物)に指定されたこの生き物も見る機会の多い生き物だ。


カンムリワシ
カンムリワシ Spilornis cheela
 まるでトーテムポールのように電柱の最上部にとまっていたりする。最近知ったのだが台湾にはコイツをデカくして色を赤褐色に濃くしたような、オオカンムリワシS. c. hoya なる猛禽がいるらしい。ちなみに日本の個体群の亜種名はperplexus だそうだ。亜種関係にあるようだが別種扱いする意見もあるようで、アジア地域の数種が別種とされるのか、日本の個体群だけ分けられるのかはよくわからん。彼らの翼がクマタカSpizaetus nipalensis のように幅広くて短い森林に適応した形であるため、島嶼間を行き来しなかったからなのかなと推察してみたり。

 モヤモヤと妄想しながらゆっくり西表の外周を運転しているうちに、いつしかラジオからゆるい沖縄FMの音が耳に届き始める。取り留めのないトークが沖縄訛りでゆったりと展開されているのを聞きながら海沿いをチンタラ走っていると、ツグミ類のフォルムを見つけた。


イソヒヨドリ
イソヒヨドリ Monticola solitarius


 ヒヨドリの名を冠するもツグミの仲間で、姿勢や吻の細り方を見てみるとそれも納得できる。オスはオレンジや青が入って鮮やかな体色で、メスは写真のように岩礁みたいな見た目。イソヒヨと聞いたらオスの体色をイメージするが、「イソ○○」という和名は地味な体色の生き物が多いと感じるので、どちらかというとメスの方がイソヒヨドリという和名っぽい。私のレンズではいくぶん距離が足りないので、海辺の風景と共に。
 イソヒヨドリは本州にもいるわけだけど、私の中では学生時代に友人らと沖縄遠征で点々と海沿いのガードレールにとまっている姿を車窓から見たのが印象的で、この写真のようなシチュエーションは南西諸島に来たことを実感させてくれて、私の “ 南の島へ行きたい欲 ” を満たしてくれる。そうそう、これなんだよ、見たかったのは。



チュウダイズアカアオバト
ズアカアオバト Treron formosae


 キャンプ場のハンモックに揺られてのんびりと朝食に食べたサーターアンダギーを消化していると、どこからか下手くそなオカリナの音色が聞こえてくる。音源をたどれば、島んちゅでもなければトトロでもなく、一羽の緑色のハトだった。
 本州でよく見かけるキジバトStreptopelia orientalis は「デッデデーポッポー、デッデデーポッポー」みたいにリズミカルに鳴いているが、こいつらは「プゥ~パプ~、ペプ~」みたいに音程もリズムもクソもない。ハンモックからズッコケそうになるほど音痴なんだよ、見た目綺麗なハトなのに。
 人間にもこのズアカタイプっているよね。カラオケでマイク握ってる姿はカワイイのに、歌ヘロヘロみたいな女の子。そういう子はズアカチャンとでも呼んでやろう。
 先島諸島の個体群はチュウダイズアカアオバトT. f. medioximus らしいが、リュウキュウズアカバトT. f. permagnus との違いがイマイチわからないので、とりあえずは種でとめておいた。漢字にすると中大頭赤緑鳩らしいのだが、中ぐらいなんだか大きいんだか、赤なんだか青なんだか緑なんだか、もうわけのわからん名前になる。頭赤というのは、台湾にいる基亜種のタイワンズアカアオバトT. f. formosae の頭が赤いかららしい。


アカガシラサギ
アカガシラサギ Ardeola bacchus


 次も頭が赤くないのに赤頭鷺。初めはリュウキュウヨシゴイIxobrychus cinnamomeus かなとも思っていたが、ちょっと雰囲気が違うようだったのでジリジリと近づいてみる。不覚にも借りたレンタカーがecoモードを搭載しており、ブレーキをかけ一時停車するたびにアイドリングストップしやがって(燃費的には良いんだけど)、ブレーキペダルを離すと「ブルン」とエンジンがかかり直す。その「ブルン」で気配を悟られこのサギに飛ばれてしまったのだが、なんとその飛翔時に広げた翼がコサギEgretta garzetta のように純白だったことに気がついた。
 合成でリュウキュウヨシゴイのボディにコサギの翼をくっつけたかのような不自然さのあるサギだったが、おかげで種同定にこぎつけることができて、コイツがアカガシラサギの冬羽だということがわかった。夏羽だったらちゃんと赤頭だったわけだ。





 陽も暮れ始めた頃、夜のウミヘビ観察の下見で海岸を訪れた。しばらく散策すると沈み始めている太陽のほうに、サギのフォルムを見る。

クロサギ


 逆光で真っ黒になっていてイマイチわからない・・・ 太陽を背にしてソイツを観察するため、だだ広い海岸に点在する岩礁をツノメガニOcypode ceratophthalmus ようにさささっと駆け抜ける。ぐるっと回り込んで太陽のポジション取りをしたものの、いつまで経ってもそのサギだけは逆光のままだった。


クロサギ
クロサギ E. sacra


 そう、それもそのはず、クロサギだもの。回り込んだのに結局は黒だなんてサギじゃないか。まぁ鳥屋ならこういう海岸というシチュエーションでだいたいクロサギってのは予想できるんだろうけど、そこら辺の生態的特徴を知らない私のような鳥初心者は、クロサギを必死で白くしようとする。まぁ沖縄には白いクロサギも多いんだけど、そういうことじゃないんだ・・・


 逆光の

  白黒つける

   クロサギに

                 月光守宮




 その晩、下見を終えて「いざウミヘビ !! 」とライトを点けた瞬間に5秒と経たないうちに海浜性の小さいハエ共が無数に群がってきて全身を覆われる。ヘッドライトなんか点けてたら、穴という穴にバババババババと入って来やがるわけです。光さえ消せば何事も無かったように霧散して静寂に包まれるのだが、少し移動して再びライトを点けようものならまた5秒と経たないうちに寄ってたかってフルボッコにされる。
 潮も滞在期間中もっとも引いている時で観察しやすいタイミングだったのに、両爬屋ともあろうものがひざ下をちょっぴり浸しただけですごすごと退散したという失態ぶり。もうそれくらいヒドイんですよ、あの小虫どもが。ある程度海岸を離れて海の中へ入って行けば追って来なかったかもしれないが、その追われなくなる範囲に行く気力すら削がれるほどの猛攻だった。それ以来、滞在中は再チャレンジすることもなく西表島の地を去ったのだった。


 まぁ、そんな時もあるわいな。写真だけじゃ伝わらないけど、その1枚を撮るまでに様々な“不快”と闘っているのを知っていただきたい。私は敗れたわけだけども。帰宅から2週間以上も経っているのに虫刺されが治っていないというのも、欲を満たした代償なのだろう。
 自然写真というのは本当に大変だ。


1. 圧倒的生命力に溶けてゆく
2. セマルで合わせる “ 島時間 ”
3. WINGS
4. あめあめふれふれ
5. 待ち人 来たる
6. 川底の大鋏
7. ネズミのいなかったその島で
8. 第二の故郷はいつ帰っても暖かい



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