月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 草本類  

銀の龍の背に乗って

 部署が替わって土日休みになったということは、フィールドで人に出会う頻度が多くなるということ。とりわけ昨今の登山ブームで首都圏からアクセスの良い高尾山は、それはもう百鬼夜行と呼んでも遜色ないほどおぞましいものになる。進むペースも通るルートもほぼ人次第で、私のようにのんびり生き物探しながら登っている人間は邪魔者以外の何者でもないようで、気がつけば後ろに何人もの魑魅魍魎どもの列が出来上がる。道を譲るのも数が数なので気を遣うし、何か見つければやたらと声をかけられるしで、全くもって落ち着かないフィールドに困惑するばかりだった。
 人の往来が多いここ高尾山では文字通り“日の目を見ない”植物も、たくさんのスポットライトを当てられる事になる。

ギンリョウソウ
ギンリョウソウ Monotropastrum humile


 光合成をせず、モノトロポイド菌根の菌糸を介して共生関係にある樹木から養分を得る菌従属栄養植物、いわゆる腐生植物というやつら。葉緑体を持たないため透き通るような白さで地上に顔を出し、まるでキノコのように湿った薄暗い森に生えることから、ユウレイタケとも呼ばれるずいぶんと雰囲気のある植物。
 中国などでは水晶蘭とも呼ばれ、神秘的な捉え方をしている。幽霊のように不気味に感じている日本の感性とは違っていて、水晶蘭という名称はすごく素敵だ。

 腐生植物の中では認知度も高く、ハイカーのおばさん集団の5組に1組は、「あ、知ってる知ってる」と私に話しかけてくる。ごく稀にいるのが「名前何て言うんでしたっけ? ギンリュウソウ?」と、恐らく漢字から入ったであろう人に出くわす。でも個人的にはギンリュウソウのほうが響きは好き。竜安寺も“りゅうあんじ”のほうがしっくりくるように感じる。



ギンリョウソウ
ギンリョウソウ


 この株は岩のほんのわずかな隙間からけなげに咲いていた。それも下から生えているのではなく、奥から水平に茎を伸ばして顔を覗かせている。こちらは洞窟の中の水晶といった印象で、水晶蘭の名にふさわしい佇まいだった。

 見ている種類が同じだとしても、
  国が違えば名前も変わり、
   生まれ育った環境が違えば感じ方が異なり、
    時期や時間によってはまるで別の姿を見せる。

 私には私のギンリョウソウが、 あなたにはあなたのギンリョウソウが、 今もどこかで息づいている。


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