月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 草本類  

潜在的な妖しさ

オオマムシグサ
オオマムシグサ Arisaema takedae


 春の陽気に誘われて里山を歩けば、太陽はもうすっかり夏支度。遠くの方から「コロコロ・・・」とシュレーゲルアオガエルRhacophorus schlegelii の声が響き渡っているのに、日差しは今にも蝉時雨が降り注ぎそうな強いものだった。あまりの暑さに、たまらずシダの生い茂る日陰へ逃げ込むことにした。
 鬱蒼としたシダの森を抜けた先に、緩やかな流れの小川とポカポカした草原が広がっているのが見えた。その岸辺に見慣れた形の、しかし見慣れぬ大きさの、私の大好きな植物が草の合間から顔を出していた。見かけない色彩で初めはなんだか分からなかったが、長く垂れ下がった舷部や大きく膨らんだ付属体の先端、そして何より大きな仏炎苞から、これがオオマムシグサだということがわかった。漢字で書けば“大蝮草”というなんとも両爬屋が好きそうなネーミングで、その奇妙な造りにも魅了される。

 テンナンショウArisaema の仲間は比較的薄暗い森の中に咲いているグループなのだが、本種はしばしば日当たりの良い草原などで見られることも多い。名前こそおどろおどろしくていかにも湿った薄暗い森に咲いていそうなのだが、この個体は陽の光をたっぷり受けて小川の畔で悠然と咲いていた。だからいつもだったらテンナンショウは妖しい雰囲気で写真を撮りたいのだが、本種に関しては明るく朗らかな写真になってしまった。
 ただし、『のどかな日常に潜む悪意』というか、どこか潜在的な妖しさが隠れきれていない感じがなんとも良い。なんてったって、名前が“大蝮草”ですから。どこぞに毒牙を隠し持っているかもしれませんよ。この写真の明るさが、逆に彼らの持つ妖しさを引き出せたらなぁ、なんて思うわけです。



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