月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 爬虫類  

あんときのアイツ

ホンハブ
ホンハブ Protobothrops flavoviridis


 この前は大学の学祭に行ってきて現役生の情熱を分けてもらったり、久々に会う仲間たちと昔の旅の思い出を懐かしんだりして楽しんだ。以前の写真を見返して「これはあの時のアイツだ」と、ある個体の記憶を共有するのが誰かと一緒に旅をする醍醐味で、最近はめっきり1人フィールディングなのでそのテの話はとても嬉しい。話していて思ったけど、種レベルに留まらず個体レベルで生き物の話ができるのってすごい幸せ。
 学生最後の夏に後輩たちと行った沖縄本島でのホンハブは記憶にきっちり浸みこんで落とせない。今でも色褪せない強烈な存在感を放つホンハブ、それが写真の個体。ヘビを知っている人ならばわかる話だが、巨大な個体というのは総じて頭部がデカいし厚い。アオダイショウ Elaphe climacophora にしてもヤマカガシ Rhabdophis tigrinus tigrinus にしても顎がパンパンになっていて、会った瞬間に「うわっ、絶っ対に噛まれたくないっ!」と小さい“つ”が3つも入ってしまうような衝撃が全身を走って、生き物の本能なのか脳ミソ全部が恐怖信号を受信する。脳内メーカーやってたら全部『怖』だったと思う。それもあのホンハブなのだから恐怖に慄く他ない。そんな数を見たわけではないが、私史上最大の個体でなかなかこのサイズには出会えないように思える。第一印象は【ティラノサウルス Tyrannosaurus rex 】だった。この分厚い頭はT. rex の頭蓋骨を彷彿させ、母親の存在感もあってとにかくデカかった。ヘビは巨頭化しても眼球は小さいままなので、それがよりT. rex っぽさを演出していたのかもしれない。
 旅に出たメンバーでホンハブの話をすると必ずと言っていいほどこの個体の思い出話になる。もうホンハブといったらこの個体なのだ。この時はナイトドライブをしていて、林道を横切るコイツを見つけた。ヤモリ棒(ヤモリを叩き落とす釣り竿)で応戦しようものの巨体に棒がしなって思った通りに扱えず、そもそもその存在自体が恐怖そのものでこちらの体が委縮してしまってまさに“蛇に睨まれた蛙”状態だった。このとんでもない恐怖にさらされながらも、それとは相反する『もっと近くで見たい』『ギリギリローアングルで写真を撮りたい』という欲望も微かに芽吹き出し、それが心の中で拮抗しているのが毒蛇と対峙する醍醐味だと感じる。
 国内でいうとホンハブというのは毒蛇の頂点なのだ。ニホンマムシGluydius blomhoffii でもサキシマハブP. elegans でも到底叶わない揺るがぬ地位に鎮座している。攻撃射程、活動領域、好戦的な性格、どれをとってもNo.1の素晴らしいヘビなのだ。その中でも群を抜いて大きいサイズの個体だったのだから、いつまでも我々の記憶に絡み付いていることだろう。


またこんな個体とハラハラしてみたい。

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