月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 草本類  

舟を吊る

ツリフネソウ
ツリフネソウ Impatiens textorii


やっぱり風変わりな植物に惹かれるようで、
この日は陽の当たらない湿地でこんな奇妙な形の花に見惚れていた。
和名もツリフネソウという素敵なものをあてられており、
より一層この花を輝かせて記憶に刷り込ませる。
そもそもどういう感性の磨き方をしたら、こうもセンスの良い名前がつけられようものか。
的を射た名前だけでなく口語的に歯切れが良くて呼びやすいため、
ついつい覚えたての種名を口にしたくなってしまう。
熱心に写真を撮っている姿が気になるのか散歩をしている方に声をかけられることもあるのだが、
先ほど図鑑で得た知識を如何にして“然も以前から知っていました”的な雰囲気を織り交ぜながら、
「これはツリフネソウという植物でして~うんたらかんたら~」と語るのがちょっとした楽しみ。


特異な形態というのは機能的に有利で生態的に意味のあるものが多いわけで、
ツリフネソウの類いもうまいことできているのだ。
カメレオンの尾を思わせるくるりと巻いた距には昆虫たちの好きな蜜が蓄えられているのだが、
花の奥に管状に伸びているためハナアブなどの虫はその蜜を吸うことはできない。
これは働き者でいくつもの花へと渡るマルハナバチをターゲットとしていて、
彼らは長い口吻を持っていて花に潜り込んで蜜を吸うことができるのだ。
めしべおしべは花の入り口天井部についていて、
マルハナバチが潜り込むとちょうど彼らの背中に花粉が付く仕組みになっている。
この入り口の大きさももちろんマルハナバチの大きさに合わせて設計されていて、
花粉が取れづらい背中にしっかりと乗せられて次の花へと運ばれるというわけだ。



ただ世の中うまいことやっている連中ってのはいるもんで、
これほどよくできたマルハナバチのための構造を利用できる虫がいて、
ホウジャクの仲間はそのとても長い口吻を伸ばして、
ホバリングしたまま花粉も付けずに蜜を吸っていく。
ツリフネソウも花粉を運んでもらう代わりに蜜を振舞っているのに、
これじゃあ無銭飲食、食い逃げなわけだ。


虫と花の関係というのは非常に奥深く面白いものだと再認識させられる花だった。





 野の淵の

  吊舟草に

   釣られけり 

              月光守宮


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