月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 爬虫類  

雲隠れの里

ヒガシニホントカゲ
ヒガシニホントカゲ Plestiodon finitimus


雲を抜けた天空の世界。
果てしなく続く山々の稜線には幾重もの表情があり、
そこに暮らす生き物たちも、どこか別の世界の住人のようである。


足も竦むような崩壊地の崖で恐る恐る下を覗きこんでみると、
足を踏み外したら遥か奈落の底まで転げ落ちそうな急斜面の岩塊地。
その荒涼とした岩肌で、悠々とくつろぐトカゲを目にした。


まるで別種のトカゲのようだ。
いつも見かける低地のトカゲは厳ついくせに用心深く、
あっという間にどこかへ消えてしまう素早いヤツらだが、
ここのヤツらは凛として落ち着いており、
たまに小石を転落させながらもジリジリと崖上から迫る私を横目に、
のんびりと時間をかけて日光浴に勤しんでいる。
彼らのだらけた四肢とベッタリと岩につけて広がった腹部を見れば、
どれだけ余裕をこいているのかが窺える。
ある程度の距離まで近づいてようやく動き出したと思えば、
重い腰を上げたようにのそのそと移動する。
それほどまでに恐れがなく、自信に満ちているように思えた。


稜線を歩いていると多くのトカゲと出くわした。
里山なんかだと山頂付近や尾根部ではあまり良い生き物に出くわさないイメージだが、
ここでは結構な数を目撃した。
そのどの個体も成体サイズだというのに体色は幼体時の黒色が残り、
鮮やかな青い尻尾は完全尾を維持している個体ばかりだったのだ。


おそらく地域差のようなモノだろうと思う。
標高は1000mを優に超える場所だったので天候も変わりやすく、
昼ぐらいになるとすぐにガスってきて、明るいものの太陽光はすぐに遮られる。
そうした環境下で効率的に体温を上げるために黒い体色が褪せずに残っているのかもしれない。
充電にも結構時間がかかるようで、昼過ぎでも動きの遅い個体が目立った。
低地だったらまばたきの暇すらなく消えてしまうというのに。
そんなのんびりとした性格に反して完全尾が多いということは、
いかにこの環境が彼らにとって過ごしやすいところかがよくわかる。
まさに“雲の上の楽園”といったところだろう。





【丹沢稜線山行】

1. 神奈川のテッペン獲りに行く
2. 鬼の岨
3. 雲隠れの里
4. 風吹き抜ける笹原から
5. 太陽と共に眠り、太陽と共に目覚める
6. 朝の蛍
7. 隈取りの翼
8. 短剣を纏う荒地の薊
9. 狐は夕暮れ時に


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