月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 蟲類  

狩人は陶芸家

トックリバチの巣
トックリバチの一種 Eumenes sp. の巣


自然の造形美は無駄がなく機能的で、時に我々の芸術品を超えるデザインが集約されている。
例えばミツバチの巣に用いられている正六角形の組み合わせというカタチは、
建築分野では“ハニカム構造”として強度の面で役立っている。
いわゆる自然の建築家といったところだろうか。

同じくハチの仲間で自然の芸術家がいる。
その芸術家の作品が写真にある徳利状の巣である。
作者は狩蜂であるトックリバチの仲間で、これは彼らが泥と唾液で作った巣である。
この巣はミツバチのカプセルホテル的な何匹も幼虫が入る巣とは異なり、
1つの巣に1匹の幼虫が入るリッチなワンルームなのだ。


親は巣が完成した後、天井に卵を産みつけ巣の中に餌を運搬する。
トックリバチの仲間はシャクガなどのイモムシを狩り、大量に巣の中に詰め込むのだが、
狩りといっても獲物を殺して貯蔵するわけではない。
餌が死んでしまえば幼虫が孵る頃には腐ってしまい餌として使えないし、
ただ捕まえるだけでは獲物に巣から逃げられてしまう。
実はここが狩蜂の巧妙な戦術で、
ヤツらは狩りの際に獲物の胸部にある神経節を狙って麻酔針を刺す。
そうすることで獲物の運動機能だけを奪い、腐ることなく生きたまま巣に貯蔵される。
卵から孵ったトックリバチの幼虫は逃げることもできないイモムシを生きながらに貪り成長するのだ。
そして親が巧妙なら子も巧妙で、まず食べるのは獲物の生存に影響のないところから食べ始め、
ギリギリ生きられるようにしながら徐々に食っていく。
ある程度大きくなった幼虫は一気にイモムシを平らげ、常に新鮮な食糧にありつけるというわけだ。
それから変態して成虫になった後、巣を破って外の世界へと飛び立つ。
なんともズル賢くよくできたシステムだと感心してしまう。
悪いヤツやな~、でも素敵な戦略ですなぁ。


狩蜂というのは実に様々なタイプが存在していて、
地面に巣を作って石で閉鎖したり、竹筒に泥で仕切りを作って巣にしたり、
バッタを狩ったり、クモを狩ったり、狩蜂に寄生したり。
とにかく巧妙な生態で知れば知るほど面白く興味深い世界がある。
冬に【狩蜂生態図鑑】という本を手に入れてからというもの、
私のハートはヤツらに狩られてしまったようで、もう虜・・・
おかげでアカガエルの産卵を見に行ったら思わぬところでこのトックリバチの巣を発見できた。
もっと暖かくならないかなぁ、早く狩蜂探しに出かけたい。



彼らの巣は造形美だけでなく、そこに暮らす生き様さえも美しく完成されたモノなのだ。



 徳利で

  酔って寝ている

   芋虫よ

    服は脱がされ

     その身を捧げ

               月光守宮


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