月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 爬虫類  

落ち葉降り積もる師走の山で

ジムグリ
ジムグリ Euprepiophis conspicillatus


秋なのか冬なのか曖昧な時期、ふとした思いつきで山登りに出かけた。
「ヒミズUrotrichus talpoides でも落っこちてないかな。」
そんな軽い気持ちでとにかく何かしら生き物が見られたらなと思い、
気がつけば幾人かの登山者に紛れて斜めになるバスのシートに揺られていた。


紅葉は散り始めていたものの美しく、天候にも恵まれて登山には絶好のスタート。
湧水が滴るのを見つけたり、遠くの山並みを眺めたり、
大きめのザックにトレッキングシューズという装備でまさに登山日和だった。
そんな登山者に扮して意気揚々と山登りを楽しんでいた私だが、
今日はハイカーでもなければ山ボーイでもない。
生き物を探しに来たんじゃないか。
あまりの気持ち良さに我を忘れてただひたすらに山頂を目指すところだったが、
正気に戻って目をギラギラさせながら道を行く。


そう、登山は目的ではなく手段なのだ。
あくまでその道中に出会うことができる生き物が目的なのだ。
だから登山はメインではなく、最低限できなければならないこと。


しばらく登ると山の中腹あたり、登山道から外れた獣道にジムグリがいた。
木漏れ日が差し込みいくらか暖かい場所であったが、もう師走に入って5日目。
まさかヘビに出会えるとは思ってもみなかったので自分の目を疑った。
ただでさえ落ち葉や枯れ木、土の色と似たり寄ったりの体色をした本種なだけに、
完全に辺りの風景に同化していたのだが、
やはり経験か目が慣れているのか、想定外でも私の目にはしっかりそれが“ジムグリ”に映った。
興奮のあまり慌てて駆け寄る私の熱意とは裏腹に、
彼の体は想像以上に冷え切っていて鱗の滑らかさが際立っていたのを覚えている。
それでも動きは活発で抜群のポテンシャルを発揮し、私に何度もアタックしてきたほどだ。


ジムグリは高温に弱く真夏にはあまり見かけず、ある程度涼しい時期に出会うヘビだ。
かといって爬虫類でありヘビなわけで、こんな時期に出会えるのは珍しい。
この山では場所によって霜や氷柱が形成されていて冬の顔も持ち合わせていた。
そんな秋から冬への移り変わりの時に、元気に活動しているジムグリはたくましい。
私に対しても全く弱みを見せることもなく、一対一で果敢に対峙した。
『秋の山並みにジムグリ』となんとも素敵なシチュエーションだったので夢中で撮影していたが、
この個体は本当に活発で全く止まってくれないし、幾度となく牙を剥いてきた。


粘って撮影を続けていれば、落ち着いたそれっぽい写真が撮れたかもしれない。
ただ私が相手をしているのはオモチャでもなければ置物でもない。

「長時間私と戯れるのがこの時期の彼にとってどれだけの負担だろうか。」
「これからの冬を乗り切る体力を奪ってしまいかねないのでは。」

そのような命あるモノへの配慮があればおのずとシャッターは回数を減らし、
気がつけば去りゆくジムグリの背中と木漏れ日で鮮やかな落ち葉を眺めていた。
なんとも感慨深く日本人的な美意識というか、根底にある何かが刺激されたようだった。




2012年も残り僅かとなってきたが、最後に素敵なヘビに出会えた。
来年の巳年に期待が高まる1日となった。
やはりフィールドはまず出なきゃダメだな。
その生き物が出る出ないに関わらず、
とにかくフィールドに出ない限り出会うとこがないのだから。


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