月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 爬虫類  

完全なる首長竜の日  A Perfect Day for Plesiosaur

ヤマカガシ
ヤマカガシ Rhabdophis tigrinus tigrinus

近頃はすっかり秋の装いになり、いつも仕事帰りに挨拶を交わしていたカベチョロも、
すっかり姿を見なくなってしまって寂しい限りである。
秋は「○○の秋」とかいって何かをやる原動力がどこかしらから湧き出す季節だが、
私はついに読書の秋が噴き出した。
今まで生き物の図鑑とかをテキトーなカラーボックスにぎゅうぎゅうに押し込んで、
サイズが大きいものは横にしたり、小さいのは上に重ねたりと無理な収納をしていたのだが、
ついに目も当てられなくなってきて、つい先日ようやく本棚を購入したのだ。
カラーボックスと異なり高さがあるので、たくさんの本をそれも縦に入れることができ、
見た目が大変素晴らしい、眺めているだけでなんだかウキウキしてくるし、
本末転倒だが本棚のために新たに本を買いたくなった。


そんな折、近所の本屋が10日間の“読書の秋フェア”により古本全品100円で、
「せっかくだから何か文庫でも買ってみようかな」となったわけだが、
私にとってこれはかなりの異変である。
今までだったらこの思考は嗜好的にないはずなのだが、
おそらく“読書の秋”の力が働いたのだと思う。
なぜなら本自体あまり読む方ではないのだが、
まさかフィクションの文章に手を出すとは。
読んでも冒険記とか新書などの事実に基づいているようなノンフィクションの本で、
「フィクションは非科学的だ」とか頑固オヤジ的に忌避していた。
(そのくせマンガとかアニメ、はたまた超能力モノのアメコミ映画が好きだったり笑)
とにかく文章でフィクションっていうのはどうにも入りづらかったのだが、
今回ふらっと購入した文庫本があまりに面白かったもので、
こういうのもアリなんだなと、新たな扉が開いた。





買ったのは、

“完全なる首長竜の日  乾緑郎著”


皆さん文庫ってどうやって選ぶんですかね?
好きな作家とかがいたり、サスペンスとかのジャンルで絞ったりとか?
もう私の場合は全然選び方もわからず、でも何か読みたい欲だけがあったわけで・・・
そしたらやっぱタイトルの雰囲気くらいでしか選べない。
ただ単に“首長竜”ってワードに惹かれただけっていう(笑)

1番古い記憶だと昔のアニメであった『遠い海から来たクー』が最初の私の首長竜。
あのアニメは本当に名作で、本気で首長竜を飼いたくなる。
もういつ拾ってきても良いように家にはマーガリンを常備していたほどに。
あのアニメの中では本当に息づかいが聞こえそうなほどイキイキとしていてリアルで、
首長竜が好きで好きで堪らず、それを最大限表現しているアニメーションだと思う。
本当素敵アニメ、なんかDVD欲しくなってきたなぁ。


だから私の中で“首長竜”というワードはグッと来るモノがあり、
直感で文庫を選ぶとなると、この本をチョイスしてしまう。
この宝くじ的な一か八かの買い方をして、当たりを引き当てたんだから運が良かった。




とはいっても、内容に関しては『遠い海から来たクー』の系列ではなく、
SF的ミステリーホラーみたいな感じだった。
この本は主人公の和淳美が自殺未遂で植物状態になった弟と“SCインターフェース”という、
仮想現実や夢の中に入り込むような意思疎通ができる医療機器を介して、
夢と現実を行き来しながら弟の自殺原因を探っていくというお話。
ちょっとした風景描写にオオジョロウグモを思わせるクモや、
ヤモリ類・アダンや大型のシダなど私の好きな南西諸島の雰囲気が登場する。
ここからはネタバレになってしまいそうなので、ダメな人はお引き取りを・・・











いやぁ、非常に引き込まれサクサク読み進めていた。
読んでいると今の状態が現実なのか、センシング(意思疎通)中なのか、はたまた夢や幻覚なのか、
といういくつもの次元の境界がハッキリわからなくなってしまう。
浩市(弟)が出てきた場合は現実ではないことは確かなのだが、
センシングだとしても非常に現実的な描写なので、出現するとドキッとする。
「あれ?これ現実じゃなかったのか?」といった具合に。
それでいて夢の中の登場人物たちはナチュラルに浩市を受け入れているので、
主人公と読者だけが置いてきぼりをくらう。
読めば読むほど頭が混乱してきて、現実との区別がつかないというのに、
最後の最後でそれがゴロッとひっくり返されるので、もうついていくのがやっと。
ただ、整理して読んでいくとひとつひとつが繋がり、
綺麗に表裏をひっくり返せるような感じ。
そして最後は自殺で終えるというハッピーではない結末が良かった。
そのモヤモヤと今現在の自分が果たして現実の自分かシュミレーションの中の自分なのか、
それがわからなくなる不安感をより一層掻き立てる。
誰もが一度は考えるようなことを、また改めて考えさせられて、
読み終わったらスッキリではなくモヤモヤする本。
だけどどこか心地好いというか興味深いというか・・・


自殺の理由が「これが現実かどうか試してみたくなった」ってのが、
私は印象的でいつまでも頭の中に残っている。


タイトルの英訳“A Perfect Day for Plesiosaur”は、
バナナフィッシュの原作“A Perfect Day for Bananafish”のオマージュだろう。
日本語訳の“バナナフィッシュにうってつけの日”とか、
他に作中に登場する“胡蝶の夢”は面白い考え方なので、
ぜひ機会があればゆっくり考えたいなぁ。




読んでいて思ったけど、
“パプリカ  今敏監督”
というアニメを連想した。
あれもこんな感じだったけど、アレを映像としたのはすごいな。
おそらくパプリカが好きな人はこの本も楽しく読めると思われる。


なかなか引き込まれたので、文庫も面白いなと。
これからコツコツ色んな本を読もうっと、読書の秋ですしね。


スポンサーサイト

Newer Entry朝はゆっくり散歩をしよう

Older Entry草上の俊足

 

Comments
Leave a comment








1234567891011121314151617181920212223242526272829303110 < >