月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 両生類  

分類学者のタクト

リュウキュウアカガエル
リュウキュウアカガエル Rana ulma


そういえばリュウキュウアカガエルにようやく新しい学名がついたみたいですね。
以前まではR. okinavana Boettger, 1895 いう学名が当てられていたが、
タイプ標本を精査した結果、実はそのカエルはヤエヤマハラブチガエルだったという。
ハラブチのこれまでの学名はR. psaltes Kuramoto, 1985 だったのでそれがシノニムになり、
R. okinavana という学名はヤエヤマハラブチガエルのものに。
あーあ、psaltes って種小名はなかなか素敵だったのになぁ・・・
タイプ標本の液浸を見てみると上唇部が白く似ているので、
タイプロカリティが“中琉球の沖縄島”となっていたら間違えるのも頷ける。
ただ体型や隆起、指先なんかを見ていくと確かにR. okinavana はハラブチだわ。
そういう経緯でこれまでリュウキュウアカガエルには学名が無い状態が続いていたのだが、
それがついこの間 ulma という種小名が与えられた。


両爬学会の標準和名リストにも載っていたのだがしばらく見ていなかったので気がつかなかった。
んでもって気がついた理由というのが別の事を調べていた時の副産物という。
それは今年3月頭のトウキョウサンショウウオシンポジウムの講演でのこと。
シンポジウムでは韓国の保全団体を招き、日韓の両生類に関するシンポジウムが行われていた。
その中で「今の日本の両生類はこんなんがいますよー」ってな話があって、
「韓国の人のためだろう、そんなん知ってる知ってる~。」
と、リストを見ながら聞いていたがなんとビックリ、知らないカエルが入ってた。


アマミアカガエル Rana kobai

あくまで軽く日本の両生類を紹介するスライドだったのでさっさと次に進むが、
なんじゃありゃ、と一人置いてきぼりだった。
帰ってから調べてみたら、どうやら先程話していたリュウアカとハラブチの問題で、
新しい学名を設ける際、どうやら奄美諸島の個体群は新種アマミアカガエルと分けられたそうな。
ちゃんと論文出てたし(Matsui 2011)、両爬学会のリストにもバッチリ載ってる。
最初はアマミイシカワガエルOdorrana splendida の見間違えかと思ったけど学名違うし。
やはり情報は自分で積極的に収集しなければいかんですな、どんどん置いていかれてしまう。
ましてや世間的にマイナーな分野ならばより一層。


んで論文読む限り、遺伝的にも形態的にも奄美(kobai )と沖縄(ulma )に分かれるみたい。
調べたのは奄美グループが奄美大島、加計呂麻島、徳之島で、
沖縄グループが沖縄本島、久米島。
見分け方としては背側線とか腹面の暗色班、後肢の水かきなんかを見ると分かる。
ulma は背側線が細く、腹面の暗色班が明瞭で、
後肢の水かきがの第四指外縁では2つ目のコブより下から出ているのに対して、
kobai ではの第四指外縁の2つ目から出ていることで見分けられる。
つまりはulmaのほうが水かきの発達が悪いということ。
(英語能力が低く、間違えてるかもなので記載論文の図を見ることを推奨。)



ulma という種小名はサンゴの島を意味する沖縄島の方言名『うるま』より。
なんとも素敵な名前ですな、こういうセンス好き。
やはりokinawa的な種小名にするとヤエヤマハラブチのokinavana と混乱するからね。
これでいっそのこと和名もウルマアカガエルとかにしたらカッコイイのに。
リュウキュウだと奄美も含んじゃうし。
漢字にしたら『宇流麻赤蛙』ですよ、カッコ良くない??
kobai のほうは奄美諸島の爬虫両生類研究で有名な前熊本大学の木場一夫先生への献名。


それにしても奄美-沖縄間は爬虫両生類にとってそれなりのギャップがあるんじゃないかな。
爬虫類だとヤモリ、ベニヘビ、トカゲとか。
両生類だとバビナ、イシカワ、ハナサキ、シリケン、アオガエルとか。
そうやって両群島を爬虫両生類相で比較してみると結構おもしろい。
個人的にはヒメハブOvophis okinavensis も怪しいと思うところ。





とだらだら書いてきたけども、アマミアカガエルに関しては奄美行ったときに見てないんだよね。
当時は奄美も沖縄も一括りにされていたから、存在を知らなかったわけだけど。
でも「あの時ちゃんと見ておけば良かった」と思ってしまう自分に嫌悪感。
リュウアカ自体は以前に沖縄島で見ていたということもあって、
奄美ではそこまでの情熱はなかった。
でもひとたび分類が変われば見たくなるというのはおかしな話だ。
カエル自体は何も変わらず『奄美にいるアカガエル』なのに・・・
我々人間が種概念に沿って引いたボーダーラインによって興味が変わるとは。
結局のところ自分が分類学者によって一喜一憂させられるのかと思うとやるせない。
こういう趣味はもっと生き物の本質的というか、それ自体の魅力に惹かれていきたいのに。




あぁ、なんと浅はかな未練なんだ。

アカガエルの分類を見直して面白いなと思いつつも、
自分の情けなさを痛感する今日この頃。
なんか最初の勢いはどこ吹く風、終わりが暗いぜ(笑)



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