月明かりにヤモリ

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Category: 両生類  

私の中での千石先生

アイフィンガーガエル
アイフィンガーガエル Kurixalus eiffingeri



憧れだった千石正一先生の突然の訃報を聞いたら、
自分の爬虫両生類の世界観から何かがスッポリ抜け落ちたような感覚になった。
私が千石先生を初めて知ったのはおなじみ「どうぶつ奇想天外」。
当時は家族みんなでテレビにかじりつくように観ていて、
千石先生や海野さん、さかなくんなどがフィールドで生き物に接し、
興奮冷めやらぬ口調でその生き物のお話をされている姿が印象的だった。
特に千石先生が我が家では大人気で、「生き物のことならこの人!!」というイメージがあり、
私が爬虫類や両生類に惹かれるようになった原点となった。


子供の頃の私にとって大人というモノはスーツを着て満員電車に乗り、
クタクタになるまで残業してまた朝が来て・・・の繰り返しだと思っていたし、
自分も将来はそんな歯車の一部になってしまうもんだと感じていた。
でも目の前のテレビにはそれまでの大人とは違った大人が映っていて、
本当に嬉しそうに生き物を見て、探して、話して、まるで別世界の人みたいだった。
そんな人に憧れないわけもなく、兄弟で近所のニホントカゲPlestiodon japonicus を追い回したり、
「アマゾンとか行ってみてーなー」と寝床で語り合ったりと、
あの頃の私たちにとって本当になりたい大人の姿だった。


そういう感覚が自分にあったから大学時代は生き物に関わるサークルに所属していたし、
爬虫両生類の班で活動して今でもやつらを求めてフィールドに赴いている。
サークルで後輩ができれば、こんなに知っているんだと自慢したい気持ちで、
恥ずかしい話だがまるで自分が千石先生になったような感覚で話をしたりしていた。
昔テレビで観ていた千石先生と自分を重ねるようにして。
まぁそんなもん失礼以外の何でもなくて、ずいぶんと安いお話ですわ。
それでも憧れがあったからこそ、そうだとわかっていてもそんな事を繰り返していた。



講演会や学会でのお話には度々ダジャレが飛び出してくるのも面白く、
自分も結構ダジャレを言うタチなので(質は別として)、より引き込まれていた。
「テユー科Teiidae ってゆーか」とか、キャラに合わないようなダジャレまであったり。
それが素晴らしい潤滑油になっていて、トークは自然と人の心を掴んでいた。



ダジャレのセンスはもちろんのこと、和名のセンスはズバ抜けて好き。
海外の英名しか付いていないハペに、2つと無いような個性的かつ印象的な名前を付けられていた。
ニシクイガメ Malayemys なんて英名を訳したようで変化球という和名は素敵。



また千石先生は爬虫両棲類学会で和名に対する考え方を述べられている(千石 2000, 2002)。
中身は主に疋田先生との考え方の相違による議論がメインなのだが、
個人的な感想として私の考えは千石先生寄りだというのを感じた。
あくまで二択の場合の選択であって、私の和名に対する考えはどちらの意見も混合している。
それでも千石先生寄りとなるのは、『種名と基亜種名を別にする』というのが大きいからである。

例えば現在標準和名として使用される「ヒャン」という言葉。
これには種としてのヒャン Sinomicrurus japonicus と、
亜種としてのヒャン Sinomicrurus japonicus japonicus の2つの意味が存在する。
これではイマイチ分類体系がわかりづらく、ほとんどの場合は亜種としてとられてしまう。
疋田先生や鳥類界の人の大半は「種ヒャン」といったように修飾語で表わす方法を採用しているが、
私はどうもこのやり方が感覚的に苦手なのである。
なぜなら「種○○」といった言葉は名称というよりも説明された文のようで、
和名にしてはお堅すぎて歯切れが悪く、1語で表わせていないのである。
なので少々混乱を招くかもしれないがこのヘビの種名と亜種名を、

種「リュウキュウベニヘビ」 Sinomicrurus japonicus
亜種「ヒャン」 Sinomicrurus japonicus japonicus
(別亜種に「ハイ」と「クメジマハイ」)

としたほうがタクソンを区別できて理解しやすいように思える。
今でこそ標準和名にリュウキュウベニヘビは用いられないが、
個人的にはこのような和名を使っていきたいなと思う。




そんな憧れである千石先生。
一緒に油壺マリンパークのバックヤード見学を同行させていただいたのが、つい昨日のように思える。
アクアライフやフィッシュマガジンなどに掲載される旅行記を読んでは、
先生のワードセンスや様々な体験に感銘を受けていた。
信じがたいがいつかは訪れる事。
先生の功績は後世に残るはず。


今までどうもありがとうございました。
ご冥福をお祈りいたします。




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