月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Sort by 08 2017

Category: 鳥類  

青い鳥は、松の梢でさえずりを


 初夏の四国。この地域に産するサンショウウオを探し求め、レンタカーで山道をひた走る。標高が上がるにつれて、運転席のパワーウインドウを流れる木々が徐々に種類を変えていき、道路が未舗装になった頃には周りの植生もだいぶ風変わりしていた。
 目的の沢付近に車を停め、長靴を履いたり行動食を詰めたりしながら準備をしていると、近くの木々から美しい鳥のさえずりが聞こえた。探してみても木々の重なりが多く、その時は沢に行きたい気持ちが勝って早々に諦めてしまった。

 沢に入ればシコクハコネサンショウウオOnychodactylus kinneburi やタゴガエルRana tagoi tagoi が見られて楽しかったが、当初のルートを外れてしまったおかげで未舗装の道路を1時間近く歩く羽目になってしまった。ヘロヘロになりながらなんとか車のあるところまで戻ってくると、徒労のせいかまるで幻聴のように、朝出発する時に聞いたあの美しいさえずりが耳に入ってきた。







オオルリ
オオルリ Cyanoptila cyanomelana


 だけど声の主は本物だった。確かにそこで美しいさえずりを、私がここに戻ってきた時も朝と同じように響かせてくれていた。それは日本三鳴鳥の一角、オオルリ。松の梢でさえずる姿は、夏山に来たなぁと思わせてくれる素晴らしい情景であった。



 とまっている松は球果の残り方からしてモミ属の一種Abies sp. だろう。ウラジロモミA. homolepis かシラビソA. veitchii なんだろうけど、素人目にわからないので属で留めておこう。
 四国の山地にはシコクシラベA. veitchii var. reflexa というシラビソの変種も存在していて、調べているうちに今更ながら見たいなぁと思ったり。シコクシラベの垂直分布は1,700m 以上の限られた地域のようなので、今回訪れた1,200m 付近ではちょっと難しいかもしれないな。というより四国で1,700m ともなるとだいぶ場所が限られてしまうし、それなりに登るのは苦労しそうだなぁ。
 でもなんだかよく見ると裸子植物も面白いじゃないか。


 ただただ歩くだけの徒労に終わってしまった帰り道も、美しいさえずりと松の梢で鳴いている姿のオオルリに出会えれば、それまでの疲れも吹っ飛んじまう。まるで道に迷っていた私を待っていたように、その綺麗な音色は優しく柔らかく、 「 おかえり 」 とさえ聞こえるようだった。



 日差しはまだまだ暑いけれど、近頃の夜風はだんだん秋の装いになってきた。わがままな話だけど、暑すぎる時は夏バテ気味でフィールドも億劫になって探しに行かない夏の生き物たちも、過ぎ去って見られなくなってから、アレがみたいコレがみたいなんて結局思っちゃうんだよな。夏の時期に冬に憧れて、実際に冬になったら夏に憧れて。
 幸せの青い鳥は、すぐ近くにいるというのに。



 さてまだまだ夏の生き物を探しに行こうではないか。



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