月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Sort by 05 2017

Category: 爬虫類  

支流の小径

● 亜細亜の熱帯雨林、ボルネオの旅 ●
プロローグ. 暗黒大陸への渡航
1. 旅の終わりは、旅の始まり
2. エアアジアの激情
3. それぞれの乾杯で繋がる世界
4. 伏線のポッポヘジュセヨ
5. 森の人の恩返し
6. ジープが停まる理由
7. Monster Monkey Morning 
8. まるまるこのもり
9. 虎とか豹とか虎とか
10. 熱帯猿紀行
11. ジュラシック・リバー・クルーズ
12. クルーズ拒まず、サルを追う
13. 真っ暗闇に漕ぎ出して
14. 真っ暗闇を抜け出して
15. おはようボルネオ
16. 花束を君に
17. 支流の小径
18. 尻尾の理由を聞かせておくれ
19. 未知へと続く道




 海外の河と言えば、ワニ︎ !!  ガイドのオヤジが昨日、 「 朝は潮の満ち引きの関係で水深が浅くなっているから、早朝は岸が露出してワニがバスキングしてるぞぉ 」 と言っていたので楽しみにしていたのだが、夜が明けた川縁を見てみても昨日とさして変わらない水量の河。ワニがいなかっただけならば生き物だから仕方ないとしても、岸辺が顔を出しておらずそもそもワニがバスキングできそうな状態じゃないってのはどういうことなんだ、オヤジよ。
 朝日をさんさんと浴びながら、口を開けてバスキングしているワニどもを想像しながら昨晩はベッドに入ったのに、これじゃあ話が違うじゃないか。


 とまぁ、そうは言っても仕方ないもんは仕方ないし、途中でボルネオゾウElephas maximus borneensis が出てくればケロリと忘れて浮かれている私だ。 『 バスキングのワニはアフリカに行った機会にでもナイルワニCrocodylus niloticus で見られれば良いだろう 』 だなんて希望的観測の妥協案で納得しようとしていたところで、水面に不自然な丸太の様なものが浮かんでいるのが目に入った。






イリエワニ
イリエワニ C. porosus


 「 Oooooh Crocodyle !! 」  それはまさにクロコダイル。岸辺でバスキングしている姿は見れずとも、川面に浮上して背中いっぱいに太陽光を浴びているようだった。
 陸場のない溜め池にいるカメも同じようにやっているのを見たことがあるが、きっとそれと同じことなんだろう。甲羅干しで乾燥させて寄生虫予防とまではいかないにしても、体温上昇やビタミンD3合成の目的で、水面に浮かびながらのバスキング。オヤジの話が本当ならば岸辺でのバスキングができていたはずだったので、それの代替案といったところだろうか。
 獰猛さなど感じさせることなく、ただのんびりと背中で太陽の温もりを味わっているようだった。

 昨晩ナイトクルーズに参加できなかった男前くんが、ボルネオゾウ発見の時と同じようにこの時はえらいはしゃぎようだったのを覚えている。まったく、ボートの左右を動き回るのは感心しないな。ゾウの河渡りだったら仮に転覆したとしてもずぶ濡れになるくらいで別段問題ないが、頼むからワニの時はやめてくれよ。
 せめて落ちるならアンタだけにしてくれ、美人の奥さんは私がもらってやるから。ホテイアオイEichhornia crassipes の花言葉から連想される昼ドラ的展開への伏線回収かとも思ったが、残念ながら未亡人とのボルネオライフとはいかなかった。
ということで、私のコビトカイマンPaleosuchus palpebrosus も出番なし。




クルーズ
支流へのクルーズ


 ボルネオゾウやイリエワニが現れる大河から、今度は頭上に木々がせり出す支流へとボートは進む。ボートのモーター音が進行速度とともに落ち着いてくると、少し緊張感がある。 ドドドドド ・・・ 、 ドドドドド ・・・ 。ゆっくりゆっくりと、枝葉のトンネルをくぐり抜ける。




マングローブヘビ
マングローブヘビ Boiga dendrophila


 迫り来る枝葉の中に、明らかに “ 危険 ” を具現化したような体色のヘビが混ざっていた。マングローブヘビだ。以前台湾で見たタイワンオオガシラB. kraepelini と同じBoiga 属のヘビで、その後牙から毒が流れる毒蛇である。タイワンオオガシラとは違って本種は一目で “ 危険な生き物 ” だと理解できる警告色の黄色と黒色のバンド模様。
 『 こいつはBoiga 属に属する後牙類の毒蛇だな 』 と考察をするまでもない、素人目にもわかる毒蛇感。



マングローブヘビ
マングローブヘビ


 マングローブなどの汽水域や河川など水辺の環境に生息するヘビで、両生類や爬虫類だけでなく、鳥類や小型哺乳類までも口に入れる広食性のヘビである。学生時代、追い出しコンパの際に同期の友人からもらった世界の両爬図鑑に載っていて、一目惚れした憧れのヘビがコイツだ。
 ついにそれがフィールドで出会うことになるとは、あの頃の私は想像もしていないだろう。

 今回見られなかったが、レティックことアミメニシキヘビPython reticulatus もこのような水辺にせり出す木々で休息しているのが見られるという。やはりこのような環境ではいろいろな餌を確保できるのだろう。



 アミメニシキヘビはその巨大な体躯で、マングローブスネークは後牙より流れる毒で、それぞれの武器を駆使しながら生活しづらそうなマングローブ環境を生きている。





 そんな楽しかったボートクルーズもこれにて終了。テングザルNasalis larvatus にツノサイチョウBuceros rhinoceros にボルネオゾウにイリエワニに、と様々な生き物を育むこのキナバタンガン河の懐の大きさには、ただただ圧倒される日々だった。
前にいた密林環境のダナンバレーとはまた一味違った生き物の息吹を感じさせられ、これもまた面白いボルネオの一面だなぁと実感する。


 旅程としては、この日の内にコタキナバルの街へ戻る必要がある。その翌日に帰国するためだ。なので朝のボートクルーズの後は1カ所寄り道しながら近場の空港まで行き、夜にはコタキナバルへと戻る行程だ。
 出発までの時間がいくらかあるので、近くのジャングルを散策する。



 ここではガイドというか道案内人くらいのポジションのオヤジが同行してくれた。宿の従業員なのかガイドといった風貌ではなく、ネルシャツを着てキャップをつっかけただけのただの現地人風。名をマースという。


マース



 マースは我々と同じくロクに英語を話せないオヤジで、お互い基本的には簡単な英単語を連呼してコミュニケーションをとる。これまでにあったミンやルディといった現地ガイドとは違った、近所のおっさん的なポジションで気を遣わないでラクだ。
 杖代わりに使っていた棒を、急に孫の手のようにしてシャツの中に入れて背中を掻いたり、ヘッコラヘッコラ歩いたり、とにかくゆるいおっさん。そんなマースと川沿いのジャングルを少し歩く。




トビトカゲ
トビトカゲの一種 Draco sp.


 途中で憧れのトカゲが、ちょこちょこと樹の幹を駆け上がる。トビトカゲだ。折りたたまれた長い肋骨を広げるとそこに皮膜が広がり、それで木々の合間を滑空するというドラゴン。
 それにオスには色鮮やかな咽喉垂があり、それでディスプレーするという。

 今回は幹を駆け上る姿だけで、実際に滑空する姿は見られなかった。また捕まえられたわけでもないので、その特徴的な皮膜は見られず仕舞いだったので、 “ なんともひょろいアガマを見た ” くらいのもんだったのが寂しいところ。
 よって種同定もできず。ダナンバレーでのトビヤモリPtychozoon sp. といい、このトビトカゲといい、滑空系の爬虫類が見られたのに捕まえられないという悔しい結果になったのが今回のボルネオの反省点だろう。



 まぁそんな事をウダウダ言っていても仕方ないので先を行こう。だってもうマースがヘッコラヘッコラと木々の向こうへと進んで行っているのだから。









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