月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

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Category: 鳥類  

花束を君に

 ● 亜細亜の熱帯雨林、ボルネオの旅 ●
プロローグ. 暗黒大陸への渡航
1. 旅の終わりは、旅の始まり
2. エアアジアの激情
3. それぞれの乾杯で繋がる世界
4. 伏線のポッポヘジュセヨ
5. 森の人の恩返し
6. ジープが停まる理由
7. Monster Monkey Morning 
8. まるまるこのもり
9. 虎とか豹とか虎とか
10. 熱帯猿紀行
11. ジュラシック・リバー・クルーズ
12. クルーズ拒まず、サルを追う
13. 真っ暗闇に漕ぎ出して
14. 真っ暗闇を抜け出して
15. おはようボルネオ
16. 花束を君に





ウオクイワシ
ウオクイワシ Ichthyophaga ichthyaetus


 一羽のワシがボートに沿って飛んでいく。豊富な資源をたたえるキナバタンガン河の上を悠々と。本種はもっぱら魚類を主食とする大型の猛禽類で、日本でいえばミサゴPandion haliaetus のようなポジション。日本で魚食性大型猛禽類といえば、北海道や東北にオオワシHaliaeetus pelagicus 、オジロワシHaliae. albicilla がいるものの、本州の大部分ではミサゴ一強で、ほぼ競合相手がいないように思えるが、ボルネオではウオクイワシの他に同属のコウオクイワシI. humilis や前述したミサゴ、シロハラウミワシHaliae. leucogaster など複数種が生息しており、ライバルも多い。
 その上に夜は夜でマレーウオミミズクBubo ketupu だ。ボルネオの魚たちはいつなんどきも、空からの敵襲に怯えて過ごさなくてはならない。



シロガシラトビ
シロガシラトビ Haliastur indus


 別の空では、2羽のトビが二重の円を描きながら旋回している。日本でも稀に記録のあるシロガシラトビだ。翼を持つ生き物は海を越えることができるわけで、分布域の線引きは難しい。
 ここキナバタンガン河では、最も目にした猛禽類であった。



 川面に視線を戻すとボートが進むその先に、水上一面を覆う緑、緑、緑。それらは元々、この土地にはなかった者たちの絨毯爆撃。


オオサンショウモ
オオサンショウモ Salvinia molesta


 熱帯アメリカ原産のシダ植物。流れの少ない場所で猛烈に繁殖している。こいつはまだ序の口。



ホテイアオイ
ホテイアオイ Eichhornia crassipes


 繁茂するのは南米の浮き草。熱帯魚屋でもよく目にするホテイアオイだ。ただこれまで意識していなかったのだが、花は鮮やかな薄紫色で真上の花弁には黄色のスポットが入る綺麗な花だった。
 ホテイアオイは爆発的に繁茂し、河の流れをとめてしまうほど環境への影響も大きい。

 緑の絨毯で猛威を振るうホテイアオイも、花が美しいのでオヤジがボートを寄せて一つとってくれた。それをオヤジが例の男前くんにくれてやったわけだが、こいつがまた紳士なヤローで、さっそくホテイアオイの花束を奥さんにくれてやった。



花束
花束


 チクショー、悔しいが絵になるな。花束が一番美しいのは、束にした新鮮な時でもなく、女性が抱えている時でもなく、煌びやかな花瓶に飾られている時でもない。それは男性から女性に贈られるその瞬間こそが一番美しく輝くと思うわけで、異国のボートの上で美男が美女にホテイアオイの花を手渡す雰囲気の良きことよ。
 思わず写真を撮らせてもらっちゃった。そんな羨望の眼差しを送っていたアジア人の私に対し、 『 ほら、こういうのが撮りたいんだろぅ ? アジアンくん。 』 と言わんばかりに、花を顔の横まで持ち上げて私のカメラに向かってドヤ顔の微笑みをくれた。
  『 ぐぬぬ、この私を女っ気のないウブなアジア人だと侮っていやがるな ・・・ 』 と思いつつ、体は素直なもんで、気がつけば私の右人差し指はシャッターを目一杯押していた。

 その時の写真は顔がモロに写ってるので載せないが、なんだか電機屋に置いてあるカメラのカタログに出てくるような雰囲気のある写真が撮れて大満足。半逆光で金髪は透けるように輝き、弾ける笑顔とホテイアオイの鮮やかな薄紫色。PENTAXでもこんな写真撮れるのかと思うほど。



 ちなみにホテイアオイの花言葉は 【 揺れる心 】 【 恋の悲しみ 】 のようで、恋人には贈らない方が良い花らしいですよ、奥さん。そんなホテイアオイを旦那からもらった美女が微笑みかけてくるなんて、なんだか昼ドラの不倫が始まる瞬間みたいっすな。
 ただ残念ながら、私のクロコダイルはコビトカイマンPaleosuchus palpebrosus 級なので、奥さんを前にして大暴れすることはなかったわけだが ( 笑 )



ダイサギ
ダイサギ Ardea alba


 そんな緑と紫で彩られたホテイアオイ群落に、飾り羽をあしらったダイサギが佇んでいた。日本でも見ることのできるダイサギだが、こんなシチュエーションで出会う事がなかったので、とても新鮮な気持ちだった。

 よくライフリストばかりを気にされている鳥屋さんは、その種を今までに見たことが “ あるかないか ” で大きく価値観が左右されてしまうように感じられるが、見たことある種でも出会う環境や個体、季節などの違いにより全く違う装いを見せる場合も多いので、一見さん以外も楽しめるはずである。まして夏だけとか冬だけに日本に渡ってくる鳥なんて、それ以外をどう過ごしているか知りたいと思うもんじゃないのかなぁ。
 もちろん見たことがない生き物を見たいという気持ちはわかるんだけどね。珍鳥との一瞬の出会いで、その鳥を知った気になってさぁ次へ行こう、ってのはナンセンスじゃないかなぁと。わかる “ 広さ ” も大切だとは思うが、その一方で “ 深さ ” も面白みの1つだとも思うところ。



ブッポウソウ
ブッポウソウ Eurystomus orientalis


 こちらも日本で見られる鳥で、我が国には夏鳥として飛来する。 『 日本の鳥とされるものは、まず日本で見なくては 』 という国産第一主義みたいな人がたまにいるけど、やっぱりそれって良くも悪くもリストを意識しすぎている気がする。さっきの深みの話だけど、日本に来たその瞬間だけでその鳥を知れるわけじゃないし、その鳥のポピュラーな姿を見られれば良いんじゃないかなぁ。

 ちなみに私は別に鳥屋さんが嫌いなわけじゃないですよ、一応。やはりやってる人口が多いだけに、 『 なんかこの人は自分とは感覚が違うなぁ 』 って人の割合が多いだけ。もちろん逆もあるわけで、鳥屋の大半からは 『 サンショウウオの産卵時期に石めくりしてるなんてけしからん 』 とも思われているかもしれないわけだしね。なので綺麗事を言えば、お互いの妥協点が見つかれば良いなと思うわけで。

 おっと、だいぶ話が逸れてしまった。ボルネオに戻そう。



コウハシショウビン
コウハシショウビン Pelargopsis capensis


 昨晩見た時の印象とはガラリと異なり、ハツラツと大河を飛びまわって獲物となる小魚を求めていた。太陽の下ではやはり翼の水色が鮮やかで、特徴的な大きい真紅の嘴との対比が美しい。
 コウハシショウビンはサイズこそボルネオ最大のキングフィッシャーではあるが、動きはカワセミ類のそれと同じように直線的にキビキビと飛んでいく。ただあの真紅の嘴がいやでも目につくので、遠目には赤い矢が一直線に放たれているようなカッコ良さがあった。




 ボルネオの鳥記事を書いているとふと気がつく事があった。それはボルネオ渡航前に書いたこちらの鳥記事での 【 ボルネオで見てみたい鳥たち 】 の記述。なんとそのほぼすべてが見られていた。 ( ショウビン類を特定してミツユビカワセミCeyx erithacus と書いてしまっていたが、コウハシショウビンやルリカワセミAlcedo meninting がニアピン賞だろう。 )



ボルネオの鳥
上から、
コウハシショウビン
ウォーレスクマタカ Spizaetus nanus
ツノサイチョウ Buceros rhinoceros
ボルネオクモカリドリ Arachnothera affinis
マレーウオミミズク
アジアヘビウ Anhinga melanogaster


 そういう意味では鳥の成果は良かったのだろう。渡航前にパッと思いついた 【 見たい鳥 】 たちではあるが、それがここまで見られるとは正直思っていなかった。そしてあんなにサイチョウ類がたくさん見られるとは。完全にやつらに心を掴まれてしまった。


 素人の私でさえこれだけみられるのだから、ボートクルーズというのは確かに水辺の鳥見には最適なのかもしれない。効率も良いし見つけやすい環境でもあるし。
 とまぁ鳥についてつらつら書いてもアレなので、次回は爬虫類記事でキナバタン河のボートクルーズを締めくくろうと思う。




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真っ暗闇に漕ぎ出して

 ● 亜細亜の熱帯雨林、ボルネオの旅 ●
プロローグ. 暗黒大陸への渡航
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8. まるまるこのもり
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14. 真っ暗闇を抜け出して
15. おはようボルネオ
16. 花束を君に




 ボートに揺られた感覚が陸に上がってもまだぼんやりと残っている。陸酔いの余韻を残したままに、食堂へと向かう。サイチョウにサルにと、興奮続きのクルーズでペコペコになっているおなかをブュッフェの品々で落ち着かせる。



夕食
夕食風景


 相変わらず欧米人だらけ。今回の旅では泊まったどの宿も食事はブュッフェスタイルだったので、毎食毎食満腹になるまで食べることができ、空腹に悩まされる事はなかった。なんだかんだで海外のフィールドは神経を使うため、とにかく腹が減る。
 そういう意味でたらふく食べられる環境というのは、フィールドワークをする上ではとても重要なファクターである。腹が減っては戦ができない。この夕食でも、もうそりゃあパンパンになるまで食べたさ。だって夜のお楽しみがあるんだもの。


 程よい疲れと満腹感に、ふかふかのベッド。部屋に戻って食後の休息を取るとき、いっそのことベッドでこのまま寝ちまおうかと睡魔の誘惑が凄かったが、なんとか振り払ってフィールディングの準備をする。
 薄暗い桟橋を慎重に歩いて辿り着いたのは船着き場。そう、夜もボートで河を散策するナイトクルーズである。これまた未体験ゾーン !! 抑えようと思っても胸の高鳴りは止まらないフィールディングだ。

 しかもこの晩に集まったのは船長とルンチョロサンと私の3人だけ。昼間は欧米カップル2組に我々、ガイド、船長の8人体制だったことを考えると、今回は完全なるプライベートボートという贅沢な乗り合わせ。こいつは自由にフィールディングができそうだ。


 さっそくボートに乗り込み、明かりのない真っ暗な水面へと漕ぎ出す。昼間と違って慎重に進む必要があり、またライトで照らしながらの散策となるためボートの進行スピードが極めてゆっくりになる。よってボートのモーター音は非常に静かで、かつ昼間に猿やら鳥やら虫やらで騒がしかったジャングルはしんと静まり返っている。
 加えておしゃべりな中川家の礼二似ガイドもおらず、あまり英語が得意ではない寡黙な船長が、ボートを巧みに操りながら生き物を探す職人っぷり。自然とこちらも息を殺すようにライトの照らされている先を見つめ、聞こえているのはわずかなモーター音と、岸から跳ね返ってくるボートの波のちゃぷんちゃぷんという音だけ。なんとも緊張感がある。


 しばらくするとライトが一点に留まり、そちらに向かってゆっくりボートで向かう。さすがは経験値の違うベテラン船長、次々に闇夜の中から生き物を発見していくではないか。




ルリカワセミ
ルリカワセミ Alcedo meninting


 眠る宝石。最初船長が何を発見したのか理解できなかったが、ゆっくりとボートを近づけるとそいつの正体がつかめた。どうやら日本にいるカワセミA. atthis の、色を濃くしコントラストをはっきりとさせたような鳥だという事がわかった。
 あいにく頭部は隠れたままお休みだったので、お顔を拝見することができなかったが、日本では “ 清流の宝石 ” とまで評価され愛好家たちが盛んに写真に収めれているカワセミの上位互換のような存在。大きさも同じくらい。なのできっとカワセミ好きにはたまらない鳥だろう。




コウハシショウビン
コウハシショウビン Pelargopsis capensis


 続いて同じくカワセミ科のコウハシショウビン。ただし前述のカワセミやルリカワセミがカワセミ亜科Alcedininae なのに対して、本種はアカショウビンHalcyon coromanda などと同じショウビン亜科Halcyoninae に含まれサイズも同様に大きい。またリュウキュウアカショウビンH. c. bangsi が樹上のタカサゴシロアリNasutitermes takasagoensis の巣を利用するように、コウハシショウビンも樹上のシロアリの巣を利用することもあるようなので、そういう意味でも似ているところがある。
 本種はボルネオ島で最大のキングフィッシャーで、その大きさは良く目立つ。今回も船長が先に見つけたのだが、本種ならば瞬時にどこにいるかがわかった。赤い嘴に水色の翼は南国風で、こういった様々なカワセミ類が見られるのも日本ではなかなかない感覚。寝ていたところを起こしてしまったようで申し訳ない。





マレーウオミミズク
マレーウオミミズク Bubo ketupu


 こちらは夜行性なので活動中。岸近くの枯れ木にとまり、水面を睨みつけていた。本種についても、渡航前の記事で書いていた見てみたい鳥の一角だった。和名のとおり魚を狩るミミズクなので、泳ぐ魚を捕えるための鋭く長い鉤爪が特徴的。
 それにしてもこの手のフクロウ類は名ハンターだと思う。よくフクロウ類で言われるのが聴力の凄さだ。耳の穴が上下左右対称ではなくズレているので位置関係を把握しやすいだとか、カラフトフクロウStrix nebulosa では顔面がパラボラアンテナのようになっていて集音機能に優れ、雪の下を動くハタネズミ類を雪上から狩るという凄技を身につけていたりもする。
 では、このウオミミズクの仲間はどのようにして水中の魚を暗闇から見つけ出すのだろうか。観察する限りではジッと水面を睨んでいたので視力に頼っているように見えたが、もしかしたら聴力にも頼っていて、水面付近で跳ねたりチャプチャプしている魚を狙っているのかもしれない。足の毛がなかったり、魚には聞こえないのでバサバサなる羽音だったり、他のフクロウ類とちょっと違う特徴のウオミミズク。狩りについても他のフクロウ類とは違うアプローチをしているのかもしれない。



マレーウオミミズク
マレーウオミミズク


 以前はシマフクロウBubo blakistoni と同じくシマフクロウ属Ketupa とされていたので、現地では 「 Ketupaだ、Ketupa 。 」 と喜んでいたが、調べてみるとシロフクロウ属Nyctea などと共にワシミミズク属Bubo に統合されるという分子系統解析があるようだ。それについては 【 鴎舞時 / Ohmy Time 】 というブログの 【 ワシミミズク複合体 】 という記事に詳しい。
 こちらのブログではさらに、 「 日本産鳥類目録第7版ではシマフクロウはKetupa のままだが、シロフクロウをBubo にしていることに整合性がない 」 と指摘されている。なるほど確かにそうだ。せめてどちらもBubo にするか、Ketupa ・ Nyctea どちらも残しておくか、というのが自然だろう。


 それにしてもこちらのブログは非常に勉強になる。いくつか両爬の記事も書かれているのも魅力だ。内容が濃いのでゆっくり時間をかけて過去記事を読もう。
 ということで今回はseichoudokuさんにならってマレーウオミミズクおよびシマフクロウはKetupa ではなくBubo をあてることにする。記載時にシマフクロウはBubo blakistoni とされていたから、学名の変遷としては元に戻った形かな。


 結局狩りの瞬間は拝めなかったが、なんとも素敵な鳥を見させてもらった。記事を書くにあたってフクロウの事を調べてたら、だんだん見たくなってくるミーハー気質の私。ロシアでカラフトフクロウとか見たいし、ついでに日本とは亜種の違うマンシュウシマフクロウB. b. doerriesi なんかも面白いかも。まぁ海外はハードなので北海道にコモチカナヘビZootoca vivipara を見に行くついでにシマフクロウとかオオワシHaliaeetus pelagicus とか探せたら楽しいかもしれない。




 夜のリバークルーズは昼間とは違った趣がある。興奮気味にはしゃいでいると、船長のオヤジもニヤリと親指を立てる。嬉しさが伝わったようだったので、 「 Good eye !! 」 と褒めて親指を立て返す。

 この時はただただ楽しいクルージングであった。まさかこの後のクルーズであんな恐ろしい目に遭うとは、親指を立てていた私には思いもよらなかった。
 そしてボートはゆっくりと暗闇を進む。




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ジュラシック・リバー・クルーズ

 ● 亜細亜の熱帯雨林、ボルネオの旅 ●
プロローグ. 暗黒大陸への渡航
1. 旅の終わりは、旅の始まり
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13. 真っ暗闇に漕ぎ出して
14. 真っ暗闇を抜け出して
15. おはようボルネオ
16. 花束を君に







 ------------------------------------ 走る、走る、走る。どこまで密林を駆け抜けようとも、頭上に張り巡らされた枝を巧みに渡って追いかけてくる影からは逃げられない。 「 うわっ ?! 」 うっかり板根に足をとられて転んでしまった。急に静まり返る森の天井から、ひらりひらりと葉っぱが一枚落ちて来た。私の肩にそれが触れるか触れないかというタイミングで、 『 ずしんっ !! 』 と私の背後に大きな揺れを感じた。 ------------------------------------


 ハッと目を覚ませばそこは車の中。どうやらすっかり眠ってしまったみたいで、ちょうどダートコースを抜けて舗装路に入る最後の段差で 『 ずしんっ !! 』 と揺れたらしい。危うくモンスターモンキーに握り潰されるところだった。

 車はダナンバレーを抜け、ラハダトの街までやってきた。ジャングルを抜けると、ボルネオという土地は普通のアジアの街並みといった雰囲気である。泊まっていた宿のオフィスがラハダトにあり、ここで次の宿の迎えを待つ。
 ドライバーに別れを告げオフィスを訪ねると、受付の女性に案内されて、 「 ランチでも召しあがったら ? 」 とコーヒーまで出してくれた。ここからまた移動だし、少し朝食と昼食の間が短い気もしたが、せっかくなので作ってもらっていた弁当を食べることに。


弁当
弁当


 チキンとチーズのサンドイッチにパウンドケーキ、デザートの柑橘類。手作り感満載でなんだかほっこりする弁当だった。モソモソとサンドイッチを食べながらオフィスを見渡すと、私たちの他に先客が2人。そいつらは見るからに観光客ではなく、マレー語で受付の女性と親しげに話しているところを見ると、どうやら現地の人らしい。
 「 まさか、こいつらが次のドライバーじゃないだろうなぁ 」 と思いつつも、1人はガッシリ体型の兄ちゃん、もう一方はほぼスキンヘッドのおじさん、というちょっぴり強面な方々だったので、 「 まぁ違うだろうね 」 とルンチョロサンと話していた。

 コーヒーも飲み終わり、カップを下げてもらおうと受付の女性に 「 Thank you 」 と声をかけると、それが何かの合図だったかのように “ 待ってました ” と先程の二人が立ち上がり、我々に向かって 「 Let's go 」 と声をかけてくるではありませんか。 「 こいつらかよ !! 」 思わず心の中でツッコんでしまった。それなら最初に挨拶くらいしてくれよ~、めちゃくちゃのんびりランチタイムを満喫しちまったじゃないか。
 ビクビクしながら乗車したが、もちろん何てことはない。見た目に反して良い方々でしたよ。自己紹介すると、ガッチリしている方はイアン、ほぼスキンヘッドの方がピーターという名前だとわかった。ピーターが運転で助手席にイアン、そして私たち2人が後部座席に入り込み、次の宿へと向かう。


 そこから2時間ほど車に揺られていたが、とにかく車窓の風景に変わり映えがない。少し眠って目を覚ませど、毎回アブラヤシのプランテーションがすぐ目前まで迫っているのだ。おそらく自然保護区になっていない箇所のその多くが、アブラヤシのプランテーションに置き換わっていると考えても良いくらい随所にみられた。
 それほどまでに産業として大きなものであり、また我が国を含む多くの輸入国が、パーム油を利用しているのだと実感させられる。ある程度広い原生林が必要な生き物にとっては、ここでは自然保護区で生きる他ないのかもしれない。そうすると生き物探しのフィールドは必然的に区域内ということになり、なかなか好き勝手できないんだろうなぁと、少しやりにくさを感じるのであった。
ただ運転は強面の割に滑らかだったため、あっという間に次の宿へと到着した。




宿
宿


 宿に着いたら強面2人とはお別れ。彼らはドライバー業務がメインのようだ。
 部屋に案内されると、前日までの宿より安いとこなのに豪華テレビ付き。 ( まぁ現地語テレビなので、何を言っているかさっぱりだが ) そんな良い宿と想定していなかったので、とても快適に過ごせる部屋でした。
 まぁ部屋なんてのは寝られれば良いわけで、とにかく新しいフィールドへ GO。




キナバタンガン河
キナバタンガン河


 やって来たのはキナバタンガン河の畔。これまでいた密林環境のジャングルとは異なり、こちらは大河環境のジャングルになるので、そこに棲まう生き物の構成も当然異なる。両爬屋としてはカメやオオトカゲ、そしてワニが狙い目。
 その他、この大河を巧みに利用している生き物たちがたくさんいるこの場所では、ボートに乗ってそれらの生き物を探しにいく “ リバークルーズ ” ができるのだ。宿は川沿いに建っており、宿主催でクルーズを行なっているので観光客も多く、ここでも欧米人がよく目につく。お手軽なアクティビティなため、この流域にはいくつか観光宿が点在し、各宿からボートを出してクルーズを行なっているというわけだ。
 ナイトサファリに続き、これまた初体験の乗り物フィールディング。ジャングルクルーズなんてやったことあるのは夢の国くらいなもんで、よく水面から出てくるカバに心を躍らせたものだ。今度はそれが現実の世界でできるだなんて、それこそ夢のようだ。

 ということでさっそくボートに乗船し、がぶのみミルクコーヒー色の大河を遡る。




キタカササギサイチョウ
キタカササギサイチョウ Anthracoceros albirostris


 最初に現れたのはキタカササギサイチョウのオス。密林とは違い見通しのきく河辺では、彼らのような大型鳥類が比較的見つけやすい。加えてこの時は、 「 ケンケンケンケンケンケンケン 」 と大きな鳴き声をあげていたのですぐに発見できた。

 サイチョウ類は私が見たかった鳥であり、彼らの英名 【 hornbill 】 はすでに覚えていたので、見つけた時は 「 おっ !? ホーンビルッ ! ホーンビルッ ! 」 と反射的に叫んでいた。本種は出国前の記事にチラリと写真で登場した、唐蘭船渡鳥獣之図にも図版で載っていて、まさかその鳥が目の前で空に向かって鳴いているとは。
 特徴はなんといっても嘴の上に付いている角 ( カスク ) で、和名も 『 犀 ( のような角を持つ ) 鳥 』 でサイチョウであるように、とにかくその頭部がカッコ良すぎてたまらない。種によってそのカスクの形態は様々で、性的二型を示す場合も少なくない。
 本種もそれに該当し、メスのカスクはそこまで大きく発達せず、少し盛り上がる程度である。


 古い文献だとボルネオの個体群はカササギサイチョウAn. coronatus とされているが、現在はカササギサイチョウとキタカササギサイチョウに分割され、ボルネオを含む東南アジアの多くにはキタカササギサイチョウが分布している。
カササギサイチョウの方はインドとスリランカに分布し、カスクの形態も色彩も異なっていて、安い言い方をすればキタカササギの進化系みたい。カスクはより鋭く前方に突出し、色も黒く染まっている。

 キタカササギサイチョウの大きさは日本のトビMilvus migrans くらいだが、頭部が大きい分その迫力はものすごく、恐竜感が尋常じゃない。きっと爬虫類とか恐竜に惹かれる人が好きな鳥。翼竜っていうより恐竜だな、私の印象では。


ズグロサイチョウ
ズグロサイチョウ Aceros corrugatus


 次に現れた恐竜はズグロサイチョウ。こちらは先程のキタカササギサイチョウのような立派な角ではないが、派手な赤いコブ状の角がある。こいつらに近縁なサイチョウ類は、カスク、嘴、喉、眼の周りなどが様々な色に彩られ、かなり派手な見た目をしている。
 現在のRhyticeros 属も以前は同じくAceros 属に含まれていたように、ドギツイ色彩のサイチョウが多い。

 このズグロサイチョウが属するナナミゾサイチョウ属Aceros の学名は “ 角の無い ” という意味であり、事実模式種であるナナミゾサイチョウAc. nipalensis にはカスクがみられないことからその属名がつけられたらしいのだが、とにかくこのサイチョウという生き物はその目立つカスクから、 “ 角 ” を意味する 【 - ceros 】 という属名が多い。
 ちなみに前述のカササギサイチョウ属は “ 炭のような黒い角 ” という意味。


 ズグロサイチョウはかなり遠くの木にとまっていたのだが、その目立つ見た目は離れたボートの上からでもよく見える。ただ、ボートで近づく前に早々に飛ばれてしまったため、トリミングした荒い画像しかないのが残念。
 それでもこんな恐竜を見られたのだ、最高じゃないか。



 続々と現れる恐竜たちに心臓の鼓動がバクンバクン鳴り響く。そんな興奮状態の中、ダナンバレーの見晴台で聞いたあの鳴き声がすぐ近くで聞こえ、そしてそちらに目を向けるとあの赤い角のあいつがバサバサと豪快な羽音をたてて飛んでいる姿が飛び込んできた。



ツノサイチョウ
ツノサイチョウ Buceros rhinoceros


 ライノセラス !! ついに憧れのサイチョウのお出ましだ。私が最も見たかったサイチョウ、 “ ライノセラス ” ことツノサイチョウ。漆黒の翼に反り返る深紅のカスク、その姿は象徴的で畏敬の念すら抱かせるほど。
 そいつの飛翔を真横から捉えられただけでも感動ものだが、運良く河を越えて森に入るわけではなく、河辺の木々にとまったようなので飛んでいった方向へとボートを走らせる。



ツノサイチョウ タニワタリ
ツノサイチョウとタニワタリ Asplenium sp.


 乗船している人たちとの会話は基本的に英語になるのだが、私とルンチョロサンの間で交わす言語は日本語で構わない。それなのに興奮のあまり 「 どこにとまった ? 」 とルンチョロサンに聞いておきながら、見つけた瞬間、これまでの欧米人たちとの会話のクセでつい 「 I see , I see 」 と口をついて出てきてしまう。

 それくらい動転していたのだ。
 それくらい興奮していたのだ。
 もう誰に何語でこの感動を伝えたら良いのやら。

 見つけたその枝先を見ると前述の2種よりも一回りも巨大な、トビをも越す大きさのツノサイチョウが、これまた巨大なタニワタリの真横に佇んでいる。まるでジュラシックパークの世界に迷い込んでしまったのではないだろうか。でかい怪鳥に、でかい着生シダ。おおよそ現代とは思えないほどの光景が目の前に広がっている。
 そして2,3 度大きな 「 グワッグワッ 」 という咆哮を轟かせると彼方の森へと帰ってしまった。

 しかしどうやらつがいで行動していたようで、鳴き声の相手であるメスのツノサイチョウがすぐ近くまでボートが寄れる距離に潜んでいた。



ツノサイチョウ
ツノサイチョウ


 これは近い。まじまじと至近距離で見ると、こんなにもデカイ生き物なのかと実感させられる。メスは虹彩が白く、絵で描くと点状の目になる愛くるしい顔をしている。一方でオスの虹彩は暗い赤色で、結構冷酷な顔つきをしていて怖い。

 彼らの繁殖方法はユニークで、メスが産卵・育雛のために大木の洞に入ると、餌をもらい受けるわずかな隙間を残して、その出入り口を泥などで塞いでしまう。オスはただ1羽で必死に食糧を調達し、そのわずかな隙間からメスへ、そして雛へと餌を運ぶ。メスはたった1羽の雛を長期間に渡って巣篭もりして育て、雛がある程度大きくなるとメスは泥壁を壊し外に出る。その雛は巣立ちまでの間、再び泥壁を作り、羽ばたくその日まで巣篭もりをして両親からの餌をもらうという一風変わった繁殖方法をとる。
 なんと世話焼きな鳥なのだろう。まるでロストワールドに出てくるティラノサウルスTyrannosaurus を彷彿させるじゃないか。

 しばらく写真を撮らせてもらったが、すぐにオスを追って行ってしまった。飛び立ち方も面白く、いきなりバサバサと羽ばたいていくのではなく、一度ぴょんと枝から飛び降りてその勢いに乗って羽ばたいていく。その一連の動作には余裕があり、悠然とした風格が垣間見える。



 興奮続きのリバークルーズ。もう私にとってはサイチョウ類は恐竜である。なんてジュラシックな鳥なんだ、あいつら。
 サイチョウの中でもダントツにカッコ良いのはアフリカに棲むギンガオサイチョウBycanistes brevis という重量級の種。その姿はどう見ても恐竜の風格を持っており、私が一目惚れしたサイチョウである。
 初めてその存在を知ったのは同じPENTAX 党である福井智一さんのブログを閲覧していた時で、 「 こんな鳥が世界にはいるのか 」 と度肝を抜かされたのが記憶に新しい。
 重厚な見た目のカスクに、頬に混じる白い羽が銀顔を演出し、さらに毛羽立っているので荒々しい横顔をしている。わかる人だけに伝われば良いが、 【 パンツァードラグーン アゼル 】 というセガサターンのゲームで、主人公のドラゴンを “ 防御型 ” に変形させたような重厚な見た目が最高にカッコ良いのである。
 本種が属するナキサイチョウ属Bycanistes にはそんな見た目のサイチョウが多く、トランペッターの愛称で親しまれているナキサイチョウBy. bucinator は少し小柄だが、名前の通りトランペットのような大きな声で鳴く。学名は属名も種小名も “ ラッパ吹き ” である。

 ギンガオサイチョウの種小名は “ 短い ” という意味でよくわからないのだが、実はこれ亜種小名が元である。初めは “ 冠羽のある ” という意味で、By. cristatus という学名がつけられていた。その後、アフリカの南北で亜種が分けられるということで、冠羽の短い南部の亜種にはBy. cristatus brevis という亜種名があてられたが、後にBy. cristatus はシノニムとされてしまったので、亜種小名に使われていたbrevis が種小名として扱われているようだ。 ( まだまだ調べが足りないが、cristatus は何のシノニムにされたのだろうか ・・・ )

 もうギンガオサイチョウを含むナキサイチョウ属Bycanistes 見たさにアフリカ行きたい。ギンガオは鳥の中でというよりも全ての生き物の中で、5本の指に入るかもしれないくらい出会いたい生き物だ。


 サイチョウという分類群も私の中でかなり急上昇している。神秘的な白髪を持ったシロクロサイチョウBerenicornis comatus に早朝の密林で対峙したいし、小さなムジサイチョウAnorrhinus galeritus たちに囲まれてみたい。サイチョウについて調べているだけでも、楽しくってしょうがないし、珍しく鳥類の勉強をするのも良いかもしれない。

 ある程度情報を集めて、サイチョウという生き物についての知見が自分に蓄積されていくと、去年のBIRDER 誌に載っていた 【 キタカササギサイチョウ Anthracoceros albirostris 】 というキャンプションがついた写真の鳥が、 “ オオサイチョウBu. bicornis の間違え ” であることくらいは両爬屋の私でもわかるようになった。まぁ同定ミスなのか編集ミスなのかわからないが、あれほどまでにカッコ良いオオサイチョウが間違えられるとは不憫でならない。
 とにかく今は猛烈にサイチョウがアツい。両爬よりもサイチョウで頭がいっぱいになってしまうほど ・・・



   キタカササギサイチョウ
キタカササギサイチョウ



 そしてボートは河を遡り、ジャングルの奥へと進んでいく。次第に左右にあった両岸がすぐ横まで迫ってくるほどの狭い水路へと。





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 というわけで2017 年もスタートです。皆様、明けましておめでとうございます。今年もまだまだボルネオ記事が続きますが、どうぞよろしくお願い致します。

 そして今年の干支は酉年ですね。読み進めている内にお気づきだったと思いますが、新年一発目のこの記事は鳥でございます。ボルネオではサルに鳥にと、素晴らしい生き物たちとの出会いの連続でした。年末が近づいた時に閃いたのですが、ブログのネタ的にも 【 サル 】 記事と 【 サイチョウ 】 記事がちょうど連続するようだったので、干支にちなんで年末と年始のタイミングでこれらの記事を書かせていただきました。
 我ながらこれ以上ない絶妙な掲載だったなと褒めてやりたい ( 笑 )

 さぁ、これから2017 年、羽ばたきの年にしていきましょう。この勢いで今年本当にギンガオサイチョウ狙いでアフリカ行っちゃおうかしら。






Category: 鳥類  

千里眼には及ばないが



 久々に鳥類の記事。


 これまで息を潜め近づいて近づいて、マクロレンズでなんとか撮っていた鳥たち。


キジバト
キジバト Streptopelia orientalis


カヤクグリ
カヤクグリ Prunella rubida


ミソサザイ
ミソサザイ Troglodytes troglodytes





 ただやはり焦点距離に限界を感じていて、カメを狙うにしても、せっかくチズガメ類やクーター類なんかの面白い外来亀が甲羅干ししていても、指を咥えて帰るだけの悔しい思いをしていた。
 しかしこの夏、ついに望遠を買う決意をしたのだ。理由は後ほど。



 というわけで、目下望遠レンズの練習中でして、近所の河原をチャリンコで巡っている。河原での鳥見の場合、偶然遭遇するというよりも、足で稼いでどれだけ広範囲を探すかが肝だと思うので、発見率を効率良く上げるためにはチャリンコバーダーになるのが良い。徒歩よりも行動圏が広がる上に、目線も高くなるので、背の高い葦原の奥も見渡せる。バイクよりも小回りが利くので河川敷にも入れるし、ふらっと適当な所にも停めておける。
 そんなわけでチャリンコバーダーと化して望遠レンズを振るう日々。




キジ メス
キジ Phasianus versicolor のメス


 去年の夏、ライチョウLagopus muta 狙いで南アルプスに登ったのだが、鳴き声しか聞けず惨敗して下山した苦い思い出があるので、この手の鳥は心踊る。 TOGU くんとコウモリ探しをした帰りにもヤマドリSyrmaticus soemmerringii を一瞬だが目撃し、そこからの下山はずっとヤマドリが気になって仕方がなかった。



キジ ひな
キジ


 なかなか逃げないと思ったら子連れだったようで、どこからともなく雛が1羽湧いて出た。よちよちと不慣れな歩き方の可愛いらしい雛。このくらいならアオダイショウElaphe climacophora にぺろりとやられてしまいそうだ。



キジ オス
キジのオス


 オスは2枚ほど離れた田んぼにいたが、すぐに逃げてしまうのでなかなか寄らせてもらえず。ただあの鮮烈な赤は、青々とした田んぼによく映える。



アオサギ
アオサギ Ardea cinerea


 何よりサギ類が大きく撮れるのが良い。案外警戒心の強い個体が多いのでこれまで近づきづらかったが、優雅に撮れる。結構サギは警戒してしまうので、緊張して今にもバサリと飛びますよって表情になってしまいがち。




ゴイサギ
ゴイサギ Nycticorax nycticorax


 サギの獲物を狙う視線はやはりカッコイイ。爬虫類に通じるものがあるなぁ。ゴイサギなんて昼間ぼーっとしているイメージが多いだけに、こういう表情好き。
 これならばペンギンなどと言われまい。





 というわけで、私が望遠レンズを買うに至った理由だが、なんと今月ボルネオ島に行くことが決まったからに他ならない。いわゆる夏休みというやつを使って旅行するわけだ。
 狙うはテングザルNasalis larvatus やボルネオオランウータンPongo pygmaeus なわけで、リバークルーズで見られればなぁと思っていて、ついに前々から欲しいと思っていた望遠レンズの背中を押した。また他の生物群も今までテレビでしか見たことの無いような奇々怪々なやつらがいて、熱帯雨林という環境を歩き回るだなんてまるで夢のよう。なので望遠レンズでそれこそ鳥類なんかも面白いのでいろいろ見たいと思っている。



● アジアヘビウ Anhinga melanogaster
 ウの仲間は昔から好きで、その中でもこの奇怪なヘビウというやつらは段違いにカッコイイ。何より泳いでいる姿は、ウの仲間なのでその長い首だけが水面から出てくるのだ。


● サイチョウ Buceros rhinoceros
 見た目のインパクトでいえばサイチョウ類だろう。いかにも日本にいない鳥といった奇抜すぎる見た目。
 古本屋で見つけた 【 動物地理学 - 脊椎動物、とくに鳥類を中心として - 黒田長久著 】 で書かれているように、旧大陸と新大陸とで比較すると、同じようなニッチに同じような形態の鳥類がそれぞれいるのだ。それが見開きになって左に旧大陸の鳥、右に新大陸の鳥が対になるように載っていて、その図がすごい素敵で気に入っている。その中で登場するのがサイチョウ類で、対になる新大陸側がオオハシ類で 『 森林性で巨嘴、雑食 』 という共通項を持っている。
 他にもダチョウ ( 旧 ) に対してレア ( 新 ) だったり、タイヨウチョウ ( 旧 ) に対してハチドリ ( 新 ) だったり、あのシンメトリーの図はヘッケルにも通じるカッコ良さがある。


● マレーウオミミズク Ketupa ketupu
 北海道にいるシマフクロウK. blakistoni と同属のフクロウがいたりするのも面白い。


● ミツユビカワセミ Ceyx erithacus
 綺麗なショウビン系の鳥も種数が多い。


● ウォーレスクマタカ Spizaetus nanus
 ちょんまげ見たいな冠羽がある素敵猛禽もいる。


● クモカリドリ Arachnothera sp.
 スパイダーハンターというカッチョイイ英名もある素敵和名の鳥。小さな蟲も食うらしいが、やはりその細い嘴で花の蜜にも来るらしい。とにかく私は和名が好き。




 てなわけで望遠レンズを導入し、その予行練習も兼ねてチャリンコバーダーをやる日々でございます。あと1つ記事を出発前に書いたらもうボルネオへ。
 最高の夏がもうすぐやってくる。



Category: 鳥類  

既視感のオアシス

~ 麗しの島、台湾の旅 ~
1. 小汚いバックパッカーとダーティー兄ちゃん
2. トカゲたちの異なる境界線
3. 極彩色 Richly colored
4. 翡翠の純心
5. 蝦蟇が来たりて、夜は更ける
6. 翡翠の邪心
7. 谷を渡って飾り付け
8. 木登り蜥蜴の陰と陽
9. 至高のグルメ
10. 色とりどりの花咲き誇る
11. 斑蛇の明と暗
12. 既視感のオアシス
13. 蓮池や 咲いては消える 亀の華
14. 鼻先蛙は蛇の気配
15. モノクロームの鎮魂歌
16. 最終夜の晩餐
17. 老人と湯


 3日目の朝も晴天に恵まれたのは、我々の日頃の行いが良いという表れだろうか。旅の前後日では台風が発生し、幾度となくその通り道には台湾があった。
 それでも運良く回避できたのはありがたい限りで、特に3日目の午前中はTOGUくんたっての希望である探鳥地に向かう予定だったので、この晴天は非常に重要なものであった。


  「 都会のオアシス 」 ----- まさにその言葉がぴったりの楽園、それが “ 台北植物園 ” 。高層ビルが立ち並ぶ台北市内にポツリと穴を空けたように存在する緑地公園のようなところで、約8ヘクタールほどの広さに様々な植物が植えられ、それにつられるようにして台湾の野鳥がやってくるオアシスのような場所である。台湾を訪れる日本人バーダーのほとんどがここで鳥見をすると言っても過言ではないほど有名な探鳥地らしく、ブログでもよくここについてのレビューを散見するし台北市内からの交通の便が良いことから、たしかにそれは頷ける。
 植物園というよりかは自然公園という趣があり、早朝から地元の方も多く訪れていて、新聞を読みふける人、ラジオに耳を傾ける人、太極拳に勤しむ人、朝飯をかき込む人、みんなそれぞれの朝を堪能していた。中でも驚いたのが、御年配の方々8人くらいで 『 青い山脈 』 を歌っていたこと。 「 んっ !? どこかで聞いたことのあるメロディだなぁ 」 と耳を傾けてみると、確かにそれは中国語ではあるけど青い山脈であった。かつて日本だった地である台湾。そんな時代に根付いたものかとその時は思ったが、それならば日本語の歌詞でも良さそうなもの。
 帰って調べてみると、青い山脈は日本の統治が終わってから4年も後に世に出た曲なので、これは新たに台湾に入ってきた日本の歌ということのようだ。台湾の歌手もカバーしており中国名で 『 青色的山脈 』 というらしい。中国語で聴いてもやはり良い歌だ、またもや台湾で日本を感じさせられた。



台北植物園
台北植物園と台湾的鳥見風景


 これまた日本かと思わせる光景。蓮池にゴイサギNycticorax nycticorax やバンGallinula chloropus 、コサギEgretta garzetta なんかがいて、それを Canon やら Nikon の望遠レンズでバーダーが撮影していて。なんら日本とは変わらぬ光景に既視感を覚える。




ハス
ハス Nelumbo nucifera


 台湾のハスが蓮池に咲き乱れる。都会にある憩いの場のようで、蓮池を眺めに散歩しに来る方も多いことから、日本でいう上野の不忍池のような印象を受ける。あちらも都会の真ん中に突如として現れ、蓮池を囲って人々が散歩しているので、情景として重なる部分がとにかく多い。それであの台湾バーダーたちを見たら、もうここが台北植物園なのか不忍池なのか判断がつかなくなりそうだ。




ヒメメジロ
メジロ Zosterops japonicus


 台湾のメジロは日本の基亜種メジロZ. j. japonicus やリュウキュウメジロZ. j. loochooensis と異なりヒメメジロZ. j. simplex という別亜種らしいのだが、素人には何のこっちゃかわからない。基亜種と比べれば、胸部の赤みがなく灰白色していることで違いは見出せるが、リュウキュウメジロとの識別は難しい。なにより基亜種とヒメメジロの中間がリュウキュウメジロなので、目の前の個体がヒメメジロ寄りのリュウキュウメジロなのか、リュウキュウメジロ寄りのヒメメジロなのかはよくわからない。
 地域的にはヒメメジロなんだろうが、この手の鳥は愛玩動物として飼育されていて、特に日本なんかでは中国の個体を輸入したり放ったりなどという噂があるので、地域で亜種を判別するのは危なげである。
 密猟などを防止するため、メジロの亜種を識別できるよう 【 メジロZosterops japonicus 識別マニュアル 】 というのを環境省のホームページ上で閲覧することができる。今回同定するにあたりこの資料を見てみたのだが、やはり亜種までの同定は捕まえないと厳しい。リュウキュウメジロとヒメメジロは跗蹠の長さを見なければならないようで、今回はわからんとです。

 ちなみに上記の識別マニュアルで正誤表に載っていない誤りを発見してしまったので、仕事が落ち着いたら環境省様に連絡してみようかな。せっかく素晴らしいマニュアルを公開しているのだし、少しでも正確な情報が流用できれば。




ズグロミゾゴイ
ズグロミゾゴイ Gorsachius melanolophus


 公園を我が物顔で蹂躙する恐竜、ズグロミゾゴイ。やはりカッコ良くて大好きな鳥だから、公園内で近い距離で見られるのは嬉しい。
 ここ台北植物園では野生下のズグロミゾゴイが見やすいため、多くの日本人バーダーが訪れており、西表島などで出会う前に台湾で目にする人も少なくないのではないだろうか。近くでミミズを掘ってる本種を見られるのも面白いが、やはり西表島などの原生林の中、下には小川が流れるせり出した枝にとまっている本種に出くわし、気づかれた時の緊張感と高揚感で味わう飛び立つまでの僅かな出会いもそれはそれで素晴らしい。




ズグロミゾゴイ
ズグロミゾゴイ 幼鳥


 幼鳥もいた。公園内にこんな鳥がヒョコヒョコと歩いているなんて、台北市民が羨ましい。これなら朝の散歩も楽しいんだろうなぁ。
 パーク内にこんな生き物がいるとは、まさにジュラシックワールドではないか。こいつらはジュラシック成分が多めなので、大好きすぎる。写真の奥に緑の配管が写っていても、それはそれで雰囲気が出ていて好き。西表島でみた個体も怪我をして飛べなかったが、それでも瞳には力強さがあってたくましかった。






 都会の真ん中でカラフルな鳥に出会えるとは思いもよらなかった。なんとここでもタイワンゴシキドリMegalaima nuchalis に出会えたのだ。他にもシキチョウCopsychus saularis ・タイワンオナガDendrocitta formosae など、様々な鳥たちが癒やしを求めに都会のオアシスへと導かれていた。
 本当に信じられないような都会のオアシスだった。




カノコバト
カノコバト Streptopelia chinensis


 ハトみたくポテポテ歩いて公園を散策した。晴天で気持ちよく、公園とハトというのはとってもピースフル。ガツガツ生き物を探しまくってた私にとっては、ちょっとした休息のような、居心地の良いオアシスであった。
 こんな日があっても良いね。







Category: 鳥類  

極彩色 Richly colored

~ 麗しの島、台湾の旅 ~
1. 小汚いバックパッカーとダーティー兄ちゃん
2. トカゲたちの異なる境界線
3. 極彩色 Richly colored
4. 翡翠の純心
5. 蝦蟇が来たりて、夜は更ける
6. 翡翠の邪心
7. 谷を渡って飾り付け
8. 木登り蜥蜴の陰と陽
9. 至高のグルメ
10. 色とりどりの花咲き誇る
11. 斑蛇の明と暗
12. 既視感のオアシス
13. 蓮池や 咲いては消える 亀の華
14. 鼻先蛙は蛇の気配
15. モノクロームの鎮魂歌
16. 最終夜の晩餐
17. 老人と湯


 トカゲたちは当たり前のようにくつろぎ、目の前のクモを追いかけている。彼らにしてみたら日常だが、私からしたら夢のような光景だ。早々に台湾の爬虫類を見られて幸先良いスタートとなったので、俄然両爬や蟲を探す眼に力が入る。
 そうなってくると両爬や蟲がメインターゲットの私とFくんは自然と歩みも遅くなってくるので、ガンガン歩いて遭遇率を上げるタイプの鳥屋であるTOGUくんとしてはもどかしかったようで、 「 何時に車に戻ってくれば良い? 」 と、確認して、初めて来た海外の見知らぬフィールドだというのに1人で突き進んで行ってしまった。
 まぁ我々のサークル時代でもよくあった事だ。一緒に旅をするといっても各々ジャンルの異なる生き物屋であり、目的やアプローチの方法も違うので、気が付いたらみんな好き勝手にバラけるのだ。最終的にはちゃんと集合場所に戻ってくれば良いわけで、いわば相乗り状態みたいなもん。
 そして必ずしもそいつが狙ってる獲物と遭遇できるわけではなく、案外見たいと思っていたものを別の誰かが発見してくることもしばしば。




 そんなわけで早々にTOGUくんはフェードアウトしてしまい、Fくんと散策する。向こうの夏は湿気もあって気温も高く、ちょっと坂道を登るだけで全身から “ 大粒の汗 ” が噴き出すようにこぼれ落ちる。瞬く間にTシャツの重量は増加し、ビッショビショのパンツでおまたが擦れ始める。
 「 こりゃあ台湾の夏もこたえるなぁ 」 とまつ毛に乗った大粒の汗を拭うと、憧れの兜が地面に転がっているのを発見した。



アカヘリオオアオコメツキ
アカヘリオオアオコメツキ Campsosternus yasuakii 死体 ( 胸部のみ )


 訪台前に 「 アレ見たい、コレ見たい 」 とFくんと話していた中で登場した素敵昆虫。与那国島にいるノブオオオアオコメツキC. nobuoihira のようにメタリックブルーの体躯でありながら、胸部に赤い帯状紋が入るスタイリッシュなコメツキで、ぜひとも野生下でその色合いを見たいと話していた。
 さらにコメツキ関連でいろいろ調べていたらヨツモンオオアオコメツキC. matsumurae という種が日本にいるらしい。ノブオが青系の金属光沢なのに対し、ヨツモンは赤系の金属光沢で渋い。しかも生息地が石垣島と西表島。ノブオはそれなりに名前を聞く虫だったが、ヨツボシは知らなかったなぁ。八重山はやっぱりすごいとこだわ、知らずに西表島行っていたのがもったいない。

 また前回のトカゲ類と同様に、高標高地にはこのアカヘリオオアオコメツキに近縁なC. watanabei という種がいるようで、生き物で台湾という土地の起伏の激しさを思い知らされる。そいつは胸部の赤いラインが後ろ側で細くならずにベタっと色が付いているらしく、これまた素敵で夢のあるような虫だ。
ちなみに台湾ではアカヘリオオアオコメツキは 【 保育種 】 に指定されているため採集はできない。ただそれがどちらの種を指しているのかは曖昧なようだ ・・・






 しばらく散策してそろそろ車に戻ろうかという時間帯。Fくんの呼ぶ声が聞こえたのでそちらに行ってみると、カメラを上方へ構え 「 ゴシキドリがいる 」 と小声で教えてくれた。
 竹林と広葉樹林の境目にちょっとしたオープンスペースがあり、そこにポツリと 3, 4 m くらいの枯れ木が立っている。Fくんの指先を辿って枯れ木の頂付近に目をやると、極彩色の鳥が目に飛び込んできた。



タイワンゴシキドリ
タイワンゴシキドリ Megalaima nuchalis


 コイツも見たかった生き物の1つ。事前に勉強会という名の 『 図鑑を広げて好き勝手しゃべる会 』 で、鳥に関心の薄い我ら2人が覚えた数少ない鳥。 『 セキセイインコみたいなすごい色をした鳥 』 という雑な覚え方だったが、実物を見るともっと色が多くて息を呑む。ゴシキドリとは 『 五色鳥 』 からであり、緑・青・赤・黄・黒のカラフルな羽根を持った美しい鳥で、本種を求めて訪台する鳥屋も少なくない。

 以前東南アジアに広く分布するゴシキドリにはM. oorti という学名が与えられており、台湾の個体群はその中のnuchalis という亜種の扱いであった。それが分割され現在のタイワンゴシキドリという独立種になったようだ。
 ややこしいのが本種が属するMegalaima 属はオオゴシキドリ科 Megalaimidae のメンバーで、別の科にゴシキドリ科 Capitonidae というのがいるようである。Wikipedia なんかをみるとその2科はオオハシ下目 Ramphastides のグループで、その中にあの特徴的な形態のオオハシ科 Ramphastidae も含まれるようである。なんとも、すげー分類だな。
 しかもオオハシの形態が特徴的なので 【 ゴシキドリ類 ・ オオハシ類 】 という分け方をする場合は、ゴシキドリ類は側系統になってしまうみたい。身近なとこで言えば爬虫類と鳥類の関係みたいなもんで、爬虫類は単系統にはならなくて鳥類を含めてようやく単系統になり得るみたいなこと。何気に複雑ですな鳥類の分類。

 そしてそして 「 分類なんてどうでもいいよ 」 って人からしたらまだ続くのかと思われるが、今度の話は生態にも繋がることで、実はタイワンゴシキドリを含むオオゴシキドリ科はキツツキ目 Piciformes のグループなのだ。これこそFくんがこのタイワンゴシキドリ発見に至った要因であり、本家キツツキ類よろしくコツコツコツとドラミングが聞こえてきたから見つけられたと言う。
 写真でもわかるように、我々が見つけた時もまさに枯れ木に穴を空けているところであった。世の中にこんな美しいウッドペッカーがいたとは。
 また鳴き声も特徴的で、まだ姿を見ていないときは遠くでアオガエルRhacophorus が鳴いているのかと思っていた。モリアオガエルRh. arboreus のように木の高いところで 「 コロロ ・・・ コロロ ・・・ 」 と鳴いているような音なのだが、実はそれがタイワンゴシキドリだとわかったのはようやく姿を確認してからだ。それまで私はずっとヒスイアオガエルRh. prasinatus がいるんじゃないかとドキドキしながら進んでいた。聞き慣れればそこかしこから鳴いているのがうかがえた。


 こんな素晴らしい鳥を初日から見られ、しかも望遠レンズでもないのに写真が撮れるだなんてなかなか幸先が良い。本来ならば門外漢の2人よりも見るべき人はいたのだが、彼に対する罪悪感よりも、 「 見てやったぜイエーイ 」 的な品の無い自慢の方が気持ちとしては大きかった。これもサークル時代バラバラで行動する人あるあるの1つでもある。



 陽もだんだんと暮れ始め、日本と同じように 「 カナカナカナカナ ・・・ 」 とヒグラシの仲間が鳴き始めた。あぁなんということか、まるで日本の夏休みと同じ情景がここにあるではないか。気がつけば年齢もずいぶん重ね、わずかな休みにすがりつく夏だが、あの頃の虫網を担いで家路に就くあの情景が異国の台湾で呼び起こされるとは。なんと居心地の好い国なのだ台湾は。
 そんな BGM を聞きながら車に戻ってTOGUくんと合流。さっそくゴシキドリを自慢したが、どうやら彼もちゃんと見ていたようだった。なんだか意地の悪い自慢心が恥ずかしい。
 んでもって彼は私の見ていないアシナガアカガエルRana longicrus を見ているという逆襲。人を呪わば穴二つってやつね、チクショー。

 そんなこんなで台湾初日の陽が暮れていく。




Category: 鳥類  

口笛の上手い人は、キスも上手いらしい

リュウキュウコノハズク
リュウキュウコノハズク Otus elegans


 夜の翼つながりでフクロウを。なんだか春めいていたのに急に冷え込みましたね、今日は。そんな夜はあの暖かい西表島の土地を思い出してコーヒーでも飲むことにしよう。

 夜も夜とて見たい生き物がたくさんいるわけで、西表島では寝ている時間など無いに等しい。とは言っても人間寝ないで活動するにも限界があるし、最高のパフォーマンスを得るためには休息はもちろん必要である。
 その夜はイマイチ成果が挙がらないまま0時を遥か数時間前に過ぎていて、「今日はダメっぽいからひとまず寝るかぁ」とトボトボとキャンプ場に帰ってきた。自分のベースへと重たい足を引きずっていると 「 コホォッ 」 と頭上から呼び止められた。そうリュウキュウコノハズクだ。本州ではなかなかフクロウ類に出会う機会はないのだが、南西諸島では遭遇率が高く、西表島では宿泊するキャンプ場にもよく訪れる愉快なお客なのだ。 「 コホォッ、コホォッ 」 と何度か鳴いているのを聞いていると、不完全燃焼に終わった私を 「 おかえり 」 と慰めてくれているようにも思える・・・、というか、そうしないとやりきれなかった。
 そんな妄想をしていると少し離れた樹上から 「 ニィエッ 」 とネコのような声が響いた。どうやらメスのリュウキュウコノハズクのようだ。きっとオスの 「 コホォッ 」 という呼びかけで近くまで来たのだろう。
 いつもだったらBGM程度にしか思っていなかったリュウコノたちの鳴き声だが、ヘビが不発に終わった夜だったため彼らと遊ぶことを思いついた。学生時代にサークルの合宿で西表島を訪れた際、鳥屋の先輩が口笛で 「 コホォッ 」 というオスの鳴き真似をして、興味を持ったリュウコノが近づいてきたのを思い出したのだ。

 できるだけ唇の隙間を音が鳴る範囲で大きく広げ、なるべく低い音を出すようにして吹く。私の音楽の成績はあまりよろしくないので、どう表現すれば良いか難しいところなのだが、母音で言えば「お」の発音(わからない人は口笛で『あいうえお』と鳴らしてみよう ! )で口笛を吹いてみると案外似た音が出るのだ。動画サイトによくリュウコノの声はアップされているので、聞きながら練習してみてください。結構それっぽい音が出せると思います。

 鳥屋の先輩ほど再現性のある音ではないものの、あながち似てないとも言い切れない音が出たので、狙い通りリュウコノが興味を示して近づいてきた。それも 「 ニィエッ 」 と鳴くメスの方。
 つまり先程いたオスよりも魅力的な声だと思ったのか、わずか2,3mの距離まで。それが上の写真。なんだか “ モテた ” という実感が非常に嬉しかったが、あぶれオスの悲しみを知らない私ではない。まして良いところまでメスを呼び寄せたのに、地上にいる小太りなフクロウにメスを奪われたなんて切なすぎるではないか。そんなオスに配慮して数枚の写真を撮らせてもらって、彼女におやすみを言った。

 なんだか寝る前にほっこりさせてもらった。ただ他のキャンプ場のお客が出歩いていたら、小汚い小太りの男が夜な夜な唇を突き出して木に迫っている奇妙な光景を目撃されただろう。そんな妖怪じみたヤツが同じキャンプ場で見つかったら、恐ろしくて寝られないだろうに。深夜で誰もいなくてよかったなぁと、寝袋に潜り込みながら思った数秒後にはもう夢の中。西表島はキャンプ場ですら楽しい生き物との出会いの場だ。



 あぁ、やっぱり南西諸島は良いなぁ。こう寒いと無性に行きたくなるね、西表島。
 本州でも口笛吹いてたら女の子とか寄って来ないかなぁ。








Category: 鳥類  

代替品には成り得ないけど

 騒がしい・・・。のんびりスイセンNarcissus tazetta を眺めて、『スイセンを摘みに行ってきますわ』ってのは『水洗トイレで用を足してくるぜ』っていう意味に翻訳されるな、とかくだらないことを考えていたら、本当に催してくるバカな思考回路に飽き飽きしていた頃。
 少し奥にトンネルがあって、その大きな口からギャーギャーと声が出ている。拡声器みたいなもんで、おそらく私のいる反対側で騒いでいる輩がいるんだろう。便所は諦めてとにかくトンネルを突き進んでみた。
 入り口からトンネルの真ん中あたりまでは音が増幅されていて、とんでもないバケモンが喚いているのかと思うほどだったが、出口に近づくにつれて音は拡張されないので声は小さくなっていき、なんとも現実味のある小汚い、そしてか細い声の集合だということがわかった。トンネルを抜けると澄んだ空気のせいもあってか、スッと空に上がって消えてしまいそうな声だったが、大量に音源があるために非常に騒がしかった。




コサギ
コサギ Egretta garzetta



 コサギどもが水路で魚を追っていた。特に頭の悪い、そして気性の荒い個体がバシャバシャと追い立てては、獲物が逃げていく先にいる別個体に「オメー、獲るんじゃねぇ」と喚き、羽根を逆立てていた。それで怯んで逃げて行くやつもいれば、ケンカを買って出て双方が喚き散らしたりもする。また冠羽を生やしたクールなやつは、水面から少し突き出た石の上に佇み、バカ騒ぎしている連中から逃れようとフラフラと彷徨う魚を、しなやかな首を槍のように水中へ突き刺し華麗に獲物を捕えている。
 まるでどこかの学校の教室を見ているかのようだった。それほどまでに人間味溢れる個性をそれぞれ持って、魚を狙って喚いていた。

 ただしばらくしても、騒いでバシャバシャ動き回るバカな個体は獲物にありつけていないのが不憫でならない。でももしかしたら彼らは知能が高く、『ジュラシックパークのラプトルのように、そいつが実は囮で他の個体と集団で狩りをしているのかも』とか妄想していると面白い。まぁ仲間は獲物を丸飲みしちゃうから、囮役を交代してくれないといつまでもそいつは腹を空かしたままなんだけど。




ダイサギとコサギ
ダイサギ E. alba と コサギ 


 んでティラノサウルスことダイサギが舞い降りてくると、そそくさと散っていく。もちろん威勢の良い例のコサギは果敢にもダイサギにもケンカを売るがあっさり退散するという、最後まで三下役を貫いた。貫くなら魚にしろよと思う反面、それがキミの良さだと讃えたい。
 ダイサギは動きもどっしりしているし、ひょこひょこ歩き回るコサギどもとは一線を画していた。一撃も重く鋭いが、この個体はイマイチ成功率は高くないようだった。
 小さなジュラシックパークと、小さな教室が混在している光景は、眺めていて飽きない楽しい時間だった。



アオサギ
アオサギ Ardea cinerea


 散々楽しんだ帰り道、コサギどもが騒いでいた少し下流にアオサギを見つけた。日も暮れ始めた禍時( まがとき )にこそ、アオサギは本当の色になる。アオサギは灰色の鳥だが、この時間だけは名を呈する蒼色になるというわけだ。
 川辺まで近寄り同じ高さくらいから写真を撮っていると、冷たくも鋭い視線でゆっくりとこちらを睨んできた。またもやジュラシックパークを彷彿させる。Ⅲでのプテラノドンが川で振り返る私の大好きなシーンとリンクした。
 また色といい動きといい、ハシビロコウBalaeniceps rex にも似ていた。いつか現地でプロトプテルスProtopterus を狩る姿を見たい、というかプロトプテルスも見たい。




 この日はとにかくサギが楽しい1日だった。サギには惹かれることの多い私だが、この前ふと思った。サギは大型爬虫類に対する欲求の “ 代替品 ” なのではないかと。
 思えばワニやオオトカゲといった大型の爬虫類は、日本の野生下で出会うことはまずあり得ない。ただそういった生き物を自分の足で見つけたいという欲求も相反して存在するわけで、その欲求をサギ類で満たしているのではないのだろうか。そう考えるとどうしてこんなにもサギに惹かれるのか、確かに頷ける。
 そんな話をこの前両爬の後輩にしたら、「何を言っているんですか、そんなの満たせてないですよ。海外に行ってワニ見ましょう。」とあっさり正論で返された。あぁ、君は両爬屋の鏡ですよ。それに比べてなんて私は小さいとこに収まろうとしていたんだ。サギ見てワニ欲は消化できるもんではないですな。あぁ、恥ずかしい。

 だからきっと私は純粋にサギが好きだったみたい。なんだかもはや両爬屋とは思えない終わり方だけど、久々にサンカノゴイBotaurus stellaris が見たい !!



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梅とエナガとスコッチウイスキー

エナガ
エナガ Aegithalos caudatus


 里山の梅の木が色づいてくる。赤色、桃色、白色、そしてそれぞれの中間の色。その淡い色たちが、朝の柔らかい光を浴びて喜んでいるように咲き誇っていた。

 思わず花見ができそうだったので、春の里山をのんびり歩きながら時折スキットルのスコッチで口を湿らせる。あぁ、なんと気分の良い早春なんだ。
 杉林の手前にある白い梅の木にて、可愛らしい先客が花見をしていた。ふっくらとしたまるでぬいぐるみや羊毛フェルトのようなエナガがそこにいて、梅の花に見惚れているのか近づいてもなかなか逃げ出さない。これ幸いとすぐ足下から撮らせてもらった。どこかの写真集やブログなんかで見たことのあるような構図の写真だけども、なんとも春を感じられて心地好い。




 スコッチで

  少(すこ)っち早い

   花見かな

             月光守宮


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そして今日もきっとあの枯れ木で鳴いている

リュウキュウアオバズク
リュウキュウアオバズク Ninox scutulata totogo 


ホッ、ホー・・・ホッ、ホー・・・


 ヘッドライトと懐中電灯の明かりを頼りに、西表のぬかるむ湿地をゆく。すると近いところから、それも上のほうからフクロウの鳴き声が聞こえてくる。一面だだっ広い湿地だと思っていたが、どうやら1本の枯れ木がポツリとあったようで、どうもそこにフクロウがいるらしい。
 西表島でよく耳にするのが、リュウキュウコノハズクOtus elegans の 「 ホホッ・・・ ホホッ・・・ 」 と少し早口な声なのだが、それとは違ってひとつひとつの音が長く、声質も少し異なっていた。懐中電灯を向けてみると、リュウキュウコノハズクより一回り大きなリュウキュウアオバズクが私に見つかったにも関わらず、全く意に介さない様子で鳴いている。
 
 遮るモノのない広い湿地で、その音は邪魔されることなくゆっくり闇に溶けてゆく。音の塊が消えかかりそうなところで、また新たな音が枯れ木を中心に広がってゆく。きっとこの木は彼のお気に入りのポイントなのだろう。遮るものがなく湿地を一望できるこの枯れ木が、絶好の狩りの場となっているに違いない。まさにベストプレイス。


 アオバズクという和名は青葉の茂る初夏に南から渡ってくることからつけられた名前で、亜種アオバズクN. s. japonica の特性を指す。アオバズクを画像検索するとだいたいが昼間、緑に囲まれた姿が写真に収められていて、いかにも “ アオバズク ” といった写真だ。
 そういう観点からすると私の写真は青葉なんて見当たらない、らしくない写真になっているのかもしれない。しかし亜種リュウキュウアオバズクは留鳥として西表島で暮らしているので、青葉があろうがなかろうがいつもこの島にいる。だから私の中では対比の意味でもリュウキュウアオバズクには枯れ木の方が似合っていると思う。





 そして今日もきっとあの枯れ木で鳴いている。青々とした木々だけが大切な自然じゃない。枯れ木にだってちゃんと役割だってあるし、美しい景観もつくり得る。花咲か爺さんは昔話だけで良いよ。

 そして今日もきっとあの枯れ木で鳴いている。


Category: 鳥類  

WINGS

 ヤエヤマセマルハコガメ Cuora flavomarginata evelynae は国の天然記念物に指定されているが、そんな天然記念物がキャンプ場にノコノコと現れる(カメだけに)のどかな島、西表。同じように国の天然記念物(こちらはさらに特別天然記念物)に指定されたこの生き物も見る機会の多い生き物だ。


カンムリワシ
カンムリワシ Spilornis cheela
 まるでトーテムポールのように電柱の最上部にとまっていたりする。最近知ったのだが台湾にはコイツをデカくして色を赤褐色に濃くしたような、オオカンムリワシS. c. hoya なる猛禽がいるらしい。ちなみに日本の個体群の亜種名はperplexus だそうだ。亜種関係にあるようだが別種扱いする意見もあるようで、アジア地域の数種が別種とされるのか、日本の個体群だけ分けられるのかはよくわからん。彼らの翼がクマタカSpizaetus nipalensis のように幅広くて短い森林に適応した形であるため、島嶼間を行き来しなかったからなのかなと推察してみたり。

 モヤモヤと妄想しながらゆっくり西表の外周を運転しているうちに、いつしかラジオからゆるい沖縄FMの音が耳に届き始める。取り留めのないトークが沖縄訛りでゆったりと展開されているのを聞きながら海沿いをチンタラ走っていると、ツグミ類のフォルムを見つけた。


イソヒヨドリ
イソヒヨドリ Monticola solitarius


 ヒヨドリの名を冠するもツグミの仲間で、姿勢や吻の細り方を見てみるとそれも納得できる。オスはオレンジや青が入って鮮やかな体色で、メスは写真のように岩礁みたいな見た目。イソヒヨと聞いたらオスの体色をイメージするが、「イソ○○」という和名は地味な体色の生き物が多いと感じるので、どちらかというとメスの方がイソヒヨドリという和名っぽい。私のレンズではいくぶん距離が足りないので、海辺の風景と共に。
 イソヒヨドリは本州にもいるわけだけど、私の中では学生時代に友人らと沖縄遠征で点々と海沿いのガードレールにとまっている姿を車窓から見たのが印象的で、この写真のようなシチュエーションは南西諸島に来たことを実感させてくれて、私の “ 南の島へ行きたい欲 ” を満たしてくれる。そうそう、これなんだよ、見たかったのは。



チュウダイズアカアオバト
ズアカアオバト Treron formosae


 キャンプ場のハンモックに揺られてのんびりと朝食に食べたサーターアンダギーを消化していると、どこからか下手くそなオカリナの音色が聞こえてくる。音源をたどれば、島んちゅでもなければトトロでもなく、一羽の緑色のハトだった。
 本州でよく見かけるキジバトStreptopelia orientalis は「デッデデーポッポー、デッデデーポッポー」みたいにリズミカルに鳴いているが、こいつらは「プゥ~パプ~、ペプ~」みたいに音程もリズムもクソもない。ハンモックからズッコケそうになるほど音痴なんだよ、見た目綺麗なハトなのに。
 人間にもこのズアカタイプっているよね。カラオケでマイク握ってる姿はカワイイのに、歌ヘロヘロみたいな女の子。そういう子はズアカチャンとでも呼んでやろう。
 先島諸島の個体群はチュウダイズアカアオバトT. f. medioximus らしいが、リュウキュウズアカバトT. f. permagnus との違いがイマイチわからないので、とりあえずは種でとめておいた。漢字にすると中大頭赤緑鳩らしいのだが、中ぐらいなんだか大きいんだか、赤なんだか青なんだか緑なんだか、もうわけのわからん名前になる。頭赤というのは、台湾にいる基亜種のタイワンズアカアオバトT. f. formosae の頭が赤いかららしい。


アカガシラサギ
アカガシラサギ Ardeola bacchus


 次も頭が赤くないのに赤頭鷺。初めはリュウキュウヨシゴイIxobrychus cinnamomeus かなとも思っていたが、ちょっと雰囲気が違うようだったのでジリジリと近づいてみる。不覚にも借りたレンタカーがecoモードを搭載しており、ブレーキをかけ一時停車するたびにアイドリングストップしやがって(燃費的には良いんだけど)、ブレーキペダルを離すと「ブルン」とエンジンがかかり直す。その「ブルン」で気配を悟られこのサギに飛ばれてしまったのだが、なんとその飛翔時に広げた翼がコサギEgretta garzetta のように純白だったことに気がついた。
 合成でリュウキュウヨシゴイのボディにコサギの翼をくっつけたかのような不自然さのあるサギだったが、おかげで種同定にこぎつけることができて、コイツがアカガシラサギの冬羽だということがわかった。夏羽だったらちゃんと赤頭だったわけだ。





 陽も暮れ始めた頃、夜のウミヘビ観察の下見で海岸を訪れた。しばらく散策すると沈み始めている太陽のほうに、サギのフォルムを見る。

クロサギ


 逆光で真っ黒になっていてイマイチわからない・・・ 太陽を背にしてソイツを観察するため、だだ広い海岸に点在する岩礁をツノメガニOcypode ceratophthalmus ようにさささっと駆け抜ける。ぐるっと回り込んで太陽のポジション取りをしたものの、いつまで経ってもそのサギだけは逆光のままだった。


クロサギ
クロサギ E. sacra


 そう、それもそのはず、クロサギだもの。回り込んだのに結局は黒だなんてサギじゃないか。まぁ鳥屋ならこういう海岸というシチュエーションでだいたいクロサギってのは予想できるんだろうけど、そこら辺の生態的特徴を知らない私のような鳥初心者は、クロサギを必死で白くしようとする。まぁ沖縄には白いクロサギも多いんだけど、そういうことじゃないんだ・・・


 逆光の

  白黒つける

   クロサギに

                 月光守宮




 その晩、下見を終えて「いざウミヘビ !! 」とライトを点けた瞬間に5秒と経たないうちに海浜性の小さいハエ共が無数に群がってきて全身を覆われる。ヘッドライトなんか点けてたら、穴という穴にバババババババと入って来やがるわけです。光さえ消せば何事も無かったように霧散して静寂に包まれるのだが、少し移動して再びライトを点けようものならまた5秒と経たないうちに寄ってたかってフルボッコにされる。
 潮も滞在期間中もっとも引いている時で観察しやすいタイミングだったのに、両爬屋ともあろうものがひざ下をちょっぴり浸しただけですごすごと退散したという失態ぶり。もうそれくらいヒドイんですよ、あの小虫どもが。ある程度海岸を離れて海の中へ入って行けば追って来なかったかもしれないが、その追われなくなる範囲に行く気力すら削がれるほどの猛攻だった。それ以来、滞在中は再チャレンジすることもなく西表島の地を去ったのだった。


 まぁ、そんな時もあるわいな。写真だけじゃ伝わらないけど、その1枚を撮るまでに様々な“不快”と闘っているのを知っていただきたい。私は敗れたわけだけども。帰宅から2週間以上も経っているのに虫刺されが治っていないというのも、欲を満たした代償なのだろう。
 自然写真というのは本当に大変だ。


1. 圧倒的生命力に溶けてゆく
2. セマルで合わせる “ 島時間 ”
3. WINGS
4. あめあめふれふれ
5. 待ち人 来たる
6. 川底の大鋏
7. ネズミのいなかったその島で
8. 第二の故郷はいつ帰っても暖かい




Category: 鳥類  

藪ダイバー

モズ
モズ Lanius bucephalus


 アカガエルの産卵には時期が早かったようで、真冬の田んぼにはまだ氷が張っていてそれどころではなかった。まして行ったのは2週間ほど前だが、ここんとこの豪雪のおかげでしばらく延期だろう。産卵が終わってブヨブヨの卵だけが残された田んぼを眺めるよりも、笑うように鳴く声を聞いたりメスをめぐってメイティングボールを作ったりと、やはり成体を観察したいので出遅れないよう早い時期から出掛けるため、ボウズに終わることが多い。この時期のボウズというのはなかなか厳しい。やはり他の生き物の出があまり良くないから。それでもこの寒い中活動している生き物もいて、むしろこの時期だからこそ、という生活史を持つ生き物もいるわけだ。

 この時期は木々が葉を落としているため、モズの早贄が良く目立つ。もう少ししたらアカガエルが産卵に来るわけだが、彼らは天敵が少ないこの寒い時期をあえて選んでいる。鳴いていれば嫌でも目立ち、メイティングボールなんて言わばビッグハンバーグだ。モズはアカガエルたちにとっては数少ない天敵の1つで、これからはアカガエルの串刺しが散見する時期でもある。
 この日も私と目的が同じだったのか、真冬の田んぼをモズが様子見に来ていた。狙いが一緒ならば結果も同じなわけで、何も跳ねていない田んぼをただただ呆然と眺めるだけである。せっかくなので失敗者同士、遊ぶことにした。
 縄張りを持つモズは藪に潜っては高枝にとまりを繰り返していて、絶妙に位置を変えながら一定の距離を保っていて、藪に潜るたびに「次はどの枝に出てくるんだろう」とワクワクしながら彼の姿を待った。頻繁に枝に出てきては高鳴きをして縄張りを誇示する勇ましいオスは、黒い過眼線が特徴的だ。



 モズといえばオスの過眼線が目立つ鳥だが、この過眼線というのはハクセキレイMotacilla alba lugens やホオジロEmberiza cioides など、比較的多くの鳥類にみられる特徴である。モズの過眼線をぼんやりと眺めていたらある疑問が浮かび上がった。

 「そういえば過眼線の色って黒ばかりな気がする。何か意味があるのだろうか??」

 帰宅後、図鑑を見てみるとやはり過眼線の多くは黒だった。(ビロードキンクロMelanttia fusca など例外はいたが。)偶然古本屋で見つけた「Birds of kenya & Northern Tanzania」というアフリカの鳥類図鑑をめくってみても過眼線は黒ばかりで、ハチクイの仲間なんてほぼ全種において黒い過眼線が入っていた。またアジサシ類などで多くみられるように頭が黒く、それがちょうど過眼線の位置で途切れているパターンや、“キマユ○○”という和名が多いように過眼線はないが目の上下に眉斑や頬線として地色よりも明るい白色や黄色が入るパターンなどが非常に多くの鳥に模様として入っていた。つまり眼とその上下でコントラストをつけているのだ。このパターンが多くの鳥類でみられるということはどうにも生態的に意味があるように思える。
 そう思ってネットで調べてもロクに情報は得られなかったので、勝手に仮説を立てて考察してみる。まぁ誰もが思うだろうが、眼付近の模様なので視覚に影響しているだろう。おそらく黒ということで陽の光を吸収させて眩しくなるのを防いでいるように思える。メジャーリーガーやアメフト選手が目の下に隈のような黒い模様を入れる“アイブラック”と同じような効果で、眼周辺の羽毛の照り返しを防いでいるんではないだろうか。
 面白いことにヘビでも昼行性のアオダイショウElaphe climacophora やシマヘビEl. quadrivirgata 、スジオナメラEl. taeniura なんかには眼の後ろに黒いラインを持っている。夜行性種もいるヘビの中で昼行性種にこのような特徴があるというのは、やはり陽の光が関与しているように思えて仕方がない。同じように鳥類ではフクロウ類などの夜行性種にこの過眼線というものがみられないため、余計にこの仮説を強く印象付ける。

 ただ不可解なのが、話の発端であるモズが雌雄で過眼線の濃さに差異があるということ。写真のようにオスにはくっきりと黒い過眼線があるが、メスには茶色の過眼線というか、もうほぼ無いようなもん。日光に対する模様だと仮説を立てるならば、雌雄両方に備わっていてほしいんだけどね。そんな都合良く私の仮説に自然が合わせてくれるわけではないので悩ましい。苦し紛れに言い訳をするならば、過眼線を黒くする遺伝子が性染色体に乗っていて、ZZにならないと黒い過眼線が発現しないとかかな。まぁ私じゃ立証できないから結論はわからないからそういうのは研究者に任せるとして、考えている分には楽しい内容だなぁ。



 誰か鳥に詳しい人、教えてくださいな~。

 モズって意外とデカイんだねぇ、そういえば。






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隈取りの翼

ホオジロ
ホオジロ Emberiza cioides


朝だ!
鳥見だ!
ホオジロだ!!


6時半には山小屋を出て稜線を歩き始める。
猛暑でも朝は清々しくて、小鳥のさえずりも心地好い。
声の鳴る方へ向かうと、そこには餌を咥えたホオジロがいた。
このオスは口に虫が入っているにもかかわらず、
遠くまで響くように鳴いていて、全く警戒心がみえなかった。



まるで歌舞伎ではないか。
しっかりと隈取りメイクをして、堂々と舞台に立ちたる姿は圧巻。




【丹沢稜線山行】

1. 神奈川のテッペン獲りに行く
2. 鬼の岨
3. 雲隠れの里
4. 風吹き抜ける笹原から
5. 太陽と共に眠り、太陽と共に目覚める
6. 朝の蛍
7. 隈取りの翼
8. 短剣を纏う荒地の薊
9. 狐は夕暮れ時に




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Stejneger の緋色

オオクイナ
オオクイナ Rallina eurizonoides


クイナ類を見上げることはあまりなかった。
湿地をササっとクイナ Rallus aquaticus が出たり入ったり、
田んぼの合間をキョロキョロとシロハラクイナ Amaurornis phoenicurus が通り過ぎ、
民家の路地でバッタリとヤンバルクイナ Gallirallus okinawae に出くわしたり。
とにかく足下をチョロチョロと走り回るイメージだったのだ。

それが去年の宮古島旅行で新たな一面を見た。
サキシマバイカダ Lycodon ruhstrati multifasciatus でもいないかと、
夜な夜な樹上をライトで照らしていたら、緋色の瞳を持った縞々の鳥が佇んでいた。
どうやらオオクイナの若鳥のようで、成鳥のあの燃えるような羽はまだ持ち得ていない。
「おぉー、すげーすげー」とアホみたいにしゃべりながら写真撮っていたら、
当然ながらすぐに飛び去ってしまったので写真は少ない。
まぁ、仕方ない、両爬屋2人に蟲屋1人での旅だったから。
でも悔しがりもしなければ、咎めたりもしなかった。
もしも鳥屋さんとフィールドに出ていたらと考えるとゾッとする(笑)



ブログに載せるために学名を調べていたら、本種の記載はスタイネガー先生ではないか。
Stejneger氏は日本の両生爬虫類研究に多大なる影響を与えた方で、
『日本とその周辺地域の両生爬虫類 (1907, Stejneger)』は名著で、
刊行100周年を記念して両爬学会で特集が組まれたほどだ。
彼が記載した邦産種は少なくなく、

クロサンショウウオ Hynobius nigrescens Stejneger, 1907
ツシマアカガエル Rana tsushimensis Stejneger, 1907
オキナワイシカワガエル Odorrana ishikawae (Stejneger, 1901)
ハナサキガエル O. narina (Stejneger, 1901)
ナミエガエル Limnonectes namiyei (Stejneger, 1901)
ヤエヤマアオガエル Rhacophorus owstoni (Stejneger, 1907)
ヒメアマガエル Microhyla okinavensis Stejneger, 1901
キシノウエトカゲ Plestiodon kishinouyei (Stejneger, 1901)
サキシマカナヘビ Takydromus dorsalis Stejneger, 1904
ミヤコヒメヘビ Calamaria pfefferi Stejneger, 1901
サキシママダラ Dinodon rufozonatum walli Stejneger, 1907
イイジマウミヘビ Emydocephalus ijimae Stejneger, 1898

の11種1亜種がStejneger氏の記載によるものである。


氏はどうやら1888年まで日本の鳥類の調査をしていたようで、
その翌年から両爬分野の研究を始めたとのこと。
初めは水禽類の研究に従事していたようで、オオクイナもその範疇ということだろうか。
Stejneger氏のおかげで鳥類にも親近感が湧いてきたぜ。
まぁ鳥類が爬虫類から進化していったわけだし、鳥類も爬虫類みたいなもんか。
私はどっちかっていうと分岐分類学より進化分類学的な考え方なんだけどね・・・




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森の王者

クマタカ
クマタカ Spizaetus nipalensis


ジムグリ Euprepiophis conspicillatus を見つけ足どりも軽くなり益々やる気を出した私は、
まだ山道の中腹程度なのにすでに正午近いという状況だったが、
せっかくなのでやはり山頂を目指すことに決めた。
そもそも山頂に行けば何かが見られるというわけではなく、
『ここまで来たら到達したい』といういつの間にか芽生えた登山者の志や、
同じルートを引き返すよりも山頂から違うルートで下るほうが新鮮味があって面白い、
という欲求から来るもので、気がついたら鼻唄まじりに登っていた。


『あと〇〇kmで頂上』
こんな看板何度見たことだろう。
見かける度にあまり数字が減っていないことに愕然としたが、
実際の距離は合っているんだろう、体感とのズレでどうも懐疑的になる。
霜や氷柱も多くなり気温が明らかに低くなってきたが、
それは標高が上がった証、斜面がキツくなろうとも目前の山頂に期待して自分を奮い立たせる。
山頂付近というのは今まで歩いてきた山道とは違って空を遮る木々が圧倒的に少ない。
それもそのはず、自分が上に登っているので覆いかぶさる陰は自然とちょびっとに。
それでもって落葉した木々は丸裸なもんで視界が良好良好。


ふとそれらの木々に目をやると、見慣れぬ大きな大きな猛禽がこちらに背を向けてとまっていた。
トビ Milvus migrans よりも一回り程大きい体で枯れ枝の中ではよく目立ち、
黒い顔に頭の白髪、そして白黒のバンド模様がある尾。
その姿はまさしく森の王者、クマタカではないか。
日本最大の鷹で行動圏は5km四方にまでおよぶとさえされている。
その存在感は凄まじく後ろ姿を一目見ただけでこちらが狩られる側だと思わせるモノがあった。
しかしその悠然とした姿をもっと近くで見たいと、ササ藪をガサガサ進んでようやく撮れた。
これはコンデジのR7で撮ったもので35mm判換算の焦点距離で200mm が望遠端だったが、
それでこの大きさに写るのだから、望遠レンズだったりデジスコだったりを持っていたならば、
もしくは装備のある鳥屋の方と行っていたら、もっと鮮明に写真が撮れただろう。


アドレナリンが出まくってさっきまで震えて登山していたのにあっという間にポッカポカ。
さらに欲が出て再びササ藪に潜り込んだが、頭をズボっと草上に出した時にはすでに姿がなかった。
せめて飛翔時の翼が見たかったと後悔した。
あの特徴的な翼のプロポーションはお気に入りで、
他人のブログで勝手にVulpes zerdaくんと鳥当てクイズをして、
鳥素人の私が見事クマタカだとわかったくらい素敵なのだ。
本種の翼は幅広く相対的に短いフォルムが特徴で、
森林内を飛ぶには小回りが利いて非常に動きやすいという利点がある。
これは小型コウモリ類でいうなればキクガシラコウモリRhinolophus や、
テングコウモリMurina の仲間と同じ戦略(広短型)である。
逆にミサゴ Pandion haliaetus なんかは狭長型のコウモリである、
ヤマコウモリNyctalus やユビナガコウモリMiniopterus の仲間と同じ戦略に思える。
翼とはロマンですな、それを見逃したのはイタかった・・・




それにしたってクマタカはカッコイイな。
今まで猛禽類ではチョウゲンボウFalco tinnunculus が1番好きだったけど、
一気にクマタカがトップに躍り出た。
こんな鳥見たから山頂までの道は軽々登ることができた。
まるで背中に翼が生えたよう。
もちろん広短型の。





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サギの眼光、ヤモリの視線

ズグロミゾゴイ
ズグロミゾゴイ Gorsachius melanolophus


最近はサギ類がやけに魅力的過ぎて、望遠レンズとかも欲しくなってたりする。
カメ撮るのにも使えるし、『海外だったらワニにも使えるな』とか思い始めると欲は際限なく、
一眼レフを買っていたらレンズ沼にハマっていただろうに。
500mmはさすがにデカイから300mmくらいで手頃なやつ欲しいな。
ま、今はコンデジでがんばろう。
観察は手軽な単眼鏡が私のメイン。




アオサギArdea cinerea やコサギEgretta garzetta とかの首の長い連中も良いが、
やっぱりミゾゴイG. goisagi やヨシゴイIxobrychus sinensis とか首の短いサギが好き。
このズグロミゾゴイの幼鳥もかなりのツボで、こういう生き物に出会えたことに素直に感動できる。
何が良いかってやはりその鋭い視線だろう。
サギ類の獲物を狙う瞬間の一点を見つめる眼光が、なんとも爬虫類的なのだ。
それまでアホそうにフラフラしていたのが視界の隅に獲物が入ると、
スッとそちらに頭を固定しジッと見つめる。
獲物がちょっとでも動いて隙を見せようものなら、すかさずその鋭い嘴が飛んでくる。
灯に集まるヤモリ類も待ち伏せをしていて、いざ虫が到来するとそのようにキリっとなるのだ。
ヤモリ好きというのはサギ好きに通ずるモノがあると思う。
それにズグロミゾゴイは冠羽が逆立って感情の起伏みたいなものが見られて素敵。





最近は夏だしササゴイButorides striatus を探しに河川に出向いたりしてるんだけど、
なかなかゴイサギNycticorax nycticorax みたく簡単には見つからないなぁ。
あの飾り羽がカッコイイし採餌法も面白いから好きなんだけどなかなかお目にかかれない。
とりあえず最近の目標はササゴイを見つけること!!
鳥見はチャリンコで河川敷を走るのが楽しいな。



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武者震い

ダイサギ
ダイサギ Egretta alba


「そろそろラナの産卵じゃないかな、暖かい風で関東南部は17℃とかになったみたいだし。」
とか、ヒダサンショウウオ Hynobius kimuraeの一件で完全に天狗になり、
「こりゃキタな」と思って自信満々に田んぼを巡った日の帰り道。


見事に天狗の鼻をへし折られトボトボとバス停へと向かったが、
励まそうと自分に買ったポテチ購入のわずかなタイムロスによってバスが既に出発してしまった。
しかも次発は45分後・・・
もう自分の怠慢とどうしょうもないおデブキャラに嫌気がさす。
なんだよ、ポテチでバス乗り遅れるって。




こりゃ天罰だと自分を戒めるために、バスが来るまで行ける停留所を目指すことにした。
幸いバスのルートが川沿いであったため、ちょうどいいやと鳥見をしながら歩みを進めることに。
すると大好きなカワウ Phalacrocorax carboが2羽お出迎え。
相変わらずカッコいいぜ。
でもすぐにこっちに気づいて一気に川下へ羽ばたいて行ってしまった。


次に姿を現したのは写真にもあるダイサギ。
見るとなんだか足をブルブル震わせている。
すらっとした美脚をおしげもなくオシャレのために露出させている女子高生たちでさえ、
最近の寒さで「さみーさみー」と嘆いているというのに、
ダイサギにはミニスカやハイソックスも無けりゃオシャレを無視してジャージを履くことすらできない。
そりゃあダイサギだって足の1本や2本、震えるわな。
と思って見ていたけど震えているのはいつも片足。
ムムム、と思って観察を続けていると、足が何度か震えた後にバシュッっと水中に嘴が突き刺さる。
時にはその嘴にお魚が挟まっていることもあったので、
私はようやくその『足の震え』の真意に気がつくことができた。


つまりはやつら『ガサガサ』の要領で餌を採っているようだ。
まず足先で水中の石や草などを激しく揺さぶり、
それに驚き茂みから飛び出してきた魚を、刀のような鋭い嘴で上から襲いかかるという寸法だ。
武者震いってやつだね、サムライってやつだね。


やっぱり素敵だなぁサギ類。
鳥だとウとかサギとかが好みだけど、より一層引き込まれることになった。
サギが狩りをするときの首のバネがドキドキ感を増す。
ボーガンのように弦を引き、狙いを定めて発射される矢の如く獲物を捕える姿は圧巻。


んまぁそんなこんなで鳥見を楽しんでいたら、停留所は2つ先までしか進めなかったという。
つまり戒めにもならず、ただ楽しんでおしまい。
なんだかんだで気楽にフィールドを満喫できて良かったなぁ。





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ハシブトあれこれ

ハシブトガラス
ハシブトガラス Corvus macrorhynchos japonensis


北はサハリンやロシア沿海州から、南はフィリピンやインドネシアまでと、
寒帯・温帯・熱帯という幅広い地域・環境に生息している本種。
現在9亜種に分けられており、日本にはサイズが最大と最小の両方の亜種が分布しているようで、
なかなかハシブト的には面白い国のようだこの日本という土地は。

実は鳥の亜種名で時々引っかかることがある。
それは基亜種ではなく本州に生息する亜種が種と同じ和名をつけられるということ。
つまりマレーシアなどに生息する基亜種のC. m. macrorhynchos が亜種ハシブトガラスではなく、
本州に生息するC. m. japonensis が亜種ハシブトガラスの名を冠する。
なんだかこれがどうしようもなくモヤモヤして仕方がない。
そしたら基亜種はどんな和名になるのやら。
基亜種っぽさが大事な気がするけどなぁ・・・


とまぁ、そんなどうでも良い愚痴はジーンズのよくわからん小さいポケットに入れておいて、
ハシブトガラスについて興味深い話を見つけた。
先程言ったように本種にはいくつかの亜種があるのだが、
西表島や石垣島などの八重山諸島にはオサハシブトガラスC. m. osai が生息している。
実はこのオサハシブトガラス、生息する島によって採食行動に違いがみられ、
それが嘴に形態変化をもたらしているという話。



西表島や石垣島などの森林面積が広い島では、島内の畑など開けた場所ではあまり採食しない。
それに対し波照間島や黒島などでは開拓がずいぶん行われ、
島のほとんどがキビ畑や牧草地が占めているためこれらの島では、
畑の土に嘴を突き刺したり、畑の茎から餌をつまみ獲ったりして採食している。
また牛糞をひっくり返してそこに集まる糞虫を狙ったりもしているようだ。
調べてみると波照間島などのオサハシブトは西表島などのオサハシブトに比べ、
頭骨全体における嘴の占める割合が有意に大きいことがわかった。
嘴を土に突き刺したり、テコの原理で糞をひっくり返したりするそれらの行動は、
長い嘴のほうが有利だと考えられているため、そのような形態になってきているということ。
つまり開けた土地で採食するため、これらの島のオサハシブトでは嘴が長くなっているのだ。


種としてのハシブトガラスは元々森林性で、あまり開けた農耕地などは利用しておらず、
そのような場所ではハシボソガラスC. corone が占有していることが多い。
mt-DNAで調べた結果からオサハシブトに最も近縁であるのは台湾に生息する
タイワンハシブトガラスC. m. colonorum でこの亜種も森林性である。
このことから波照間島なども以前は西表島のように森林に覆われていて、
オサハシブトもそういった環境に棲む、元々森林性のカラスであったと考えられる。
それが人々の開墾により島内環境が変わりキビ畑や牧草地が増え、
また八重山諸島には元来ハシボソガラスが生息していなかったことから、
そのような開けた環境にオサハシブトが進出できたと考えられる。
そして900年という短い期間に彼らは嘴の形態を進化させてきているのである。


一般的に知能の高い動物ほど形態の進化や種分化の速度が速いという傾向があるようで、
このような進化は彼らの賢さの賜物なのであろう。
よくズル賢いイメージを持たれる彼ら。
彼らは彼らなりに知恵を絞って生き抜いているのである。
そんな彼らをどうしてそんな醜悪な目で見ようものか。
あぁ、彼らの知恵に私もあやかりたい。
もっと賢く世の中を生きていければなぁ。








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霞みゆく白鷺

コサギ
コサギ Egretta garzetta


夜勤明けの早朝が清々しいのは仕事の達成感からだけではなく、
帰り道に自転車をこぎながら田んぼで鳥見もできるからであろう。
朝の鳥見は気持ちの良いものだが、普段は鳥見をあまりしないので新鮮な気持ち。
そもそも鳥を狙ったフィールドには重い腰が上がらず、
遠征に行っても夜中のフィールディングが楽しいので朝は眠い眠い。


それが社会人になって朝帰りの途中の鳥見が数少ない生き物成分。
鳥も朝の方がいきいきしているので見ていて楽しい。






 朝霞み

  濡れた稲穂に

   映りゆく

    白鷺眺めて

     陽はまた昇る






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コップンカップなハッカチョウ

インドハッカ
インドハッカ Acridotheres tristis



タイの市街地ではハッカチョウの仲間がよく見られる。
卒業旅行であるこの旅では本種以外にも、
ハッカチョウA. cristatellus やオオハッカA. grandis などの鳥が、
「ギャースカ、ギャースカ」鳴いているのを目撃した。
日本でいうところのムクドリSturnus cineraceus みたいなニッチを占めており、
タイ中央部では何種かが混在していた。


日本ではムクドリ1種がのんびりと「ギャーギャー」やって、
せいぜいヒヨドリHypsipetes amaurotis くらいがライバルになっているのかもしれないが、
タイでは近縁種がゴチャ混ぜで生息していて、
彼らは争うことなく(そう見えただけかもしれないが)暮らしていた。


もっとじっくり観察していれば各々の種が棲み分けしていて、
そういう部分が見られたかもしれないが。
イメージ的にはオオハッカが他のハッカどもを蹴散らして、
横暴に観光客の落し物なんかを漁っている図を想像しているんだけども、
実際はあっちにオオ、こっちにインドみたいな感じ。

日本と異なりだだっ広い国土であったり、
熱帯という気候がもたらす豊富な資源によるものなのか。
理由はわからないがみんな平和そうに騒がしい。


ムクドリには縁があって結構好きな鳥なので、
この旅ではいろんな仲間が見られて楽しかった。
何より身近でコミカル。
そして鳴き声も下品なんで親しみがあると個人的には思う。


そういえば鳴き声に関連して。
なんと本種、キュウカンチョウGracula religiosa のように人の声マネもするみたい。
以下はネットで見つけた動画↓
インドハッカの声マネ

ちゃんとタイ語で「ありがとう」の意味である「コップンカップ」を、
お辞儀しながらおしゃべりしてる姿が素敵すぎてたまらない。

なんだか今まで以上に彼らを好きになりそうだ。





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苦労して烏の爪

crow claw
カラス属の一種 Corvus sp.


大学時代の放課後。
裏の里山に出かけて生き物を探すも、
そんなに興味のないバナナ虫ことツマグロオオコバイBothrogonia ferruginea だとか、
目の回るようなミスジマイマイEuhadra peliomphala くらいしか見かけなかった。

「クサギカメムシHalyomorpha picus すら出ないなー、」とぼやいていると、
苦労の末、ようやく面白いモノを発見することができた。


カラスの爪である。


そうクロウ(crow)クロー(claw)である。

“苦労してcrow claw”なんですよ!!。


なんか売れないインディーズラッパーのカップリング曲のタイトルみたい。
私は嫌いじゃないよ、こういうの(笑)




この場所はオオタカAccipiter gentilis が巣を作っており、たまに鳴き声も聞こえる。
きっとそんな猛禽類に彼は襲われたのだと思う。
おそらく鷹の爪でも食らったんだろう。


さぞ辛(から)かったろうに・・・
いや辛(つら)かったろうに・・・




しかしカラスって魅力的。
動きとか見ていて飽きないし、キャラクター性に富んでいる。
ズル賢い性格とか人を馬鹿にした態度とかたまらない。
彼らは自分のキャラ位置がわかっているのではないかというほど個性溢れる。

そして何より恐竜テイスト。
チャチャッ、チャチャッ、と興味津々に近づいて来る様や、
首をかしげてこちらを見つめたりしてきたりする様などが、
映画ジュラシックパークに登場したディロフォサウルスDilophosaurus みたい。
実際はもう少し大きいのだが、あのディロフォサウルスのイメージで固定されてしまった。
フリルついてて可愛いし、何より仕草がたまらん。
あんなディロフォサウルスと遊びたい。
木の棒を取ってきてもらいたい。




Category: 鳥類  

平和の象徴

チョウショウバト
チョウショウバト Geopelia striata


大地震から今日で1週間。
テレビをつけてもほとんどが被災関係。
どうか希望を持って、少しでも前を向いて。

この鳥はタイの広場や公園なんかでよく見られた鳥。
日本で見る一般的なドバト Columba liviaより一回りくらい小さく、
体型もスマートなのでより小さい印象。
おめめもまん丸でキョロキョロしながら、
短い足でぽてぽて歩いている。
あまり飛ばずにちょこっと羽ばたいては、またぽてぽて・・・

なんて可愛らしいんだ!!
サイズといい動作といい可愛すぎる!!
こんな生き物を日向でポカポカしながら眺めて異国の謎ジュースで喉を潤していると、
なんだか本当に癒されてくる。
ハトというのはどこに行っても平和な生き物だこと。


帰国してから同定するにあたり、リンク先のタロさんのブログ「まんだりんおれんぢ」を参考にした。
以前にマレーシアへ行かれた時の記事が綴られており、
タイの鳥類相(Avifauna)とある程度かぶる種もいるのではと思って。
そうしたらまさにビンゴ。
おかげで同定できました、ありがとうございます。




チョウショウバトは英名で「Peaceful Dove」。
まさに平和の象徴である。

今、日本各地で買い占め等いろいろ問題が起きている。
皆さんもっと落ち着いて。
絶対に安心ということはないが、冷静になって行動することが大切である。
希望や安堵を心に抱いていただきたく、
1週間経った今、平和のイメージがあるチョウショウバトの記事を綴る。



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遺跡を眺めて何想ふ

オオハッカ
オオハッカ Acridotheres grandis


― まず、東北関東大震災の被災者の方々には心からお見舞い申し上げます。 ―



タイへの卒業旅行を終えてしばしの休息をしてから、
11日は新宿に出掛けることになっていました。
その日は祖母が就職祝いにスーツを新調してくれるということで、2人で新宿伊勢丹に。
買い物と昼食を終え、少し時間もあるということでビル5階にあるフルーツパーラーで休憩することに。

注文後3分ほど経って、先の大地震が襲いました。
食器は床に落ち、向かいのビルは大きく揺れていました。
このような地震は初体験だったので心から恐怖を感じ、
またこの時は守らなければならない人がいるという状況だったため、
自分の中では考えられないくらいのプレッシャーで押しつぶされそうでした。

その後交通機関は麻痺。
また情報も乏しく、どうすれば良いのかもわからなかったが、
足の悪い祖母もいるので無理はできない。

なんとか新宿にある『京王プラザホテル』に辿り着くことができました。
一時は駅の改札付近で一夜を明かす事も考えましたが、
寒さ・居心地・トイレ等を考慮すると、『京王プラザホテル』で本当に良かったと思います。
ホテルはすでに満室だったものの、ロビーや廊下・宴会場等を解放していただき、
また椅子やシーツなどまで提供していただいたおかげで、
なんとか無事に夜を明かすことができました。
テレビやスタッフの方から情報を流してもらったため、
このような十分な環境がなければ、私たちは無事に帰ることはできなかったと思います。

この場を借りて、『京王プラザホテル』関係者の方々にはお礼を申し上げたいと思います。
本当にありがとうございました。


その後、朝になりようやく昼過ぎ頃に帰宅。
家族との対面がこんなにも心を温めるものだとは思いもしなかった。


しかしまだ解決したわけではなく余震や原発の問題等もあるので、
気を抜かずに冷静に行動しなくては。
また被災者の方々はもっと問題が山積みのはず。


なので私のできることと言えば当ブログを更新することぐらいなので、
少しでも生き物の素晴らしさを伝えていければと思います。




ということで、写真の話。
この個体はタイ旅行のアユタヤ遺跡で見つけたハッカ。



この鳥は荒廃した遺跡を見て何を思うだろう。
決して悲観しているわけではない。
きっと前向きに必死に生きようとしているだろう。




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真逆の季節

ベニマシコ
ベニマシコ Uragus sibiricus


最近はもう暑くてどうにもよろしくない。
なんたって去年よりもおなか周りがグレードアップしましたからね。
おかげで少し歩くだけで、豚丼汗だく。

まるで写真の鳥の様にぷくぷくになっている。
本種は冬鳥として日本にやってくる。
あのフワフワした感じと鮮やかな紅に、心がほっこり。
冬の澄んだ空気の中で、山の木々にとまる本種を探すのが、
どんなに気持ちが良く清々しいことか。
あぁ、冬っていいなぁ。
汗かかないし、寒ければ服を重ねれば良い。

しかし夏はそうもいかず、最後の分厚いセーターを脱ぐことができない。
このプニプニ君をどうにかしないと、今年の夏を乗り切れないんじゃないかと危惧している。
まぁこの肌色のセーターのおかげで、冬はそれなりになんとかなっているんだけども。


でも結局、冬になったら夏が恋しいとかのたまうのだろう。

あぁーーー、厚いお肉で暑い!!



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ウミスズメ

スズメ
スズメ Passer montanus

タイトルの通り海スズメでございます。
決してチドリ目のウミスズメSynthliboramphus antiquusでもなければ、
フグ目のウミスズメLactoria diaphanaでもございません。

ただの海にいたスズメPasser montanusです。
でもまじまじみると良い鳥だ。


まぁ、特に写真と関係ないのだが鳥つながりということで。
先日、友人含め5人でレンタカーを借りて鳥見に。
自分の周りには鳥屋さんが結構熱心でして、そういう人と行くフィールドというのは、
あまり鳥に興味のない自分でも引き込まれるモノを持っている。

目的はケアシノスリButeo lagopus
ポイントに着いてからすぐには見つからなかった。
その間、近縁種 ノスリButeo buteoが近くを旋回。
ケアシノスリの同定ポイントとなるサイズや斑をノスリやトビを見ながら教えてもらった。
実際図鑑を見ながら学ぶより、わかりやすく実践的。
おかげさまでその後出てきたケアシノスリをより一層感動しながら観察することができた。


しかし残念ながら2日前の風邪をぶり返した。
体に鞭を打ちつつ研究室へ足を運び実験をして、
ヘトヘトになりながら家路に着いていたから。

熱を計るとイヤになって研究室に行きたくない気持ちに潰されるから、
計らないで「病は気から」にならないように。

体はいたわりつつ、
心はいつわりつつ。

たとえ喉がガラガラで辛くとも、風邪じゃないと信じて明日も頑張ろう!!



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