月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

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虎とか豹とか虎とか

 ● 亜細亜の熱帯雨林、ボルネオの旅 ●
プロローグ. 暗黒大陸への渡航
1. 旅の終わりは、旅の始まり
2. エアアジアの激情
3. それぞれの乾杯で繋がる世界
4. 伏線のポッポヘジュセヨ
5. 森の人の恩返し
6. ジープが停まる理由
7. Monster Monkey Morning 
8. まるまるこのもり
9. 虎とか豹とか虎とか
10. 熱帯猿紀行
11. ジュラシック・リバー・クルーズ
12. クルーズ拒まず、サルを追う
13. 真っ暗闇に漕ぎ出して
14. 真っ暗闇を抜け出して
15. おはようボルネオ
16. 花束を君に





 昼過ぎのジャングルは上がりきった気温を保ち続け、暗い林床にいたとしても熱帯だという事を忘れさせてはくれない。むしろ、木々が湿度を保持しているために、森の中はなかなかに過酷だ。
 それは我々人間だけでなく、他の生き物たちもそうなのだろうか、午後の散策ではあまり成果をあげられなかった。それでもなんとか出てきてくれたのは、珍蟲たちだった。


ネッタイタマヤスデ
ネッタイタマヤスデの一種 Sphaerotheriida sp.


 林床をモゾモゾと動くのはダンゴムシとおぼしきヤスデ。ただよく知るオカダンゴムシArmadillidium vulgare より一回りも二回りも大きいその蟲は、まるでその堅い鎧が無敵だと言わんばかりにのんびりと這いまわる。



ネッタイタマヤスデ
ネッタイタマヤスデの一種


 まるまるとピンポン玉くらいの大きさになり、ダンゴムシたちとは異なって頭をすっぽりと体の内側に入れるのがタマヤスデの特徴のようだ。一度丸くなるとこれがまた厄介で、なかなか警戒心を解いてはくれずに固まってしまう。こうなるともう彼との我慢比べになるのだが、こちらが早々に敗北宣言をする結果となるのは目に見えていた。
 ダンゴムシより多いわしゃっとした足たちを再び見ることなく、我々は先を進む。



タイガーリーチ
タイガーリーチ Haemadipsa picta


 悪名高き熱帯の吸血鬼。熱帯のジャングルでフィールディングするといったらこの連中は忘れてはいけない。事前に調べたところではやはりこのタイガーリーチの猛威がすごいようで、足を血まみれにされた画像をいくつも見てきた。
 丹沢の山々ですでにたくさんの血を流してきている “ ヤマビルほいほい ” の異名を持つ私としては、こいつを警戒しないわけもなく 【 長靴 + ヒル除けスプレー 】 という装備でボルネオに挑んだ。
 警戒した装備の甲斐あってか、この旅では一度もやつらに献血してやることなく無事に帰国することができたのは奇跡に近い。

 これはヒル除けスプレーの効能がすごいのだろうと、帰国後に同じ装備で丹沢を歩いてみたら、数分としないうちにユラユラと群がられた。ただスプレーが濃く残る部分は突破できないようで、長靴の縁のところでふよふよして終わるだけだった。
 ボルネオではそこまで集客しなかったので、改めて丹沢の恐ろしさを目の当たりにした。


 イマイチ成果を挙げられずただただ体力を浪費するばかりだった。宿に戻ると背の高い木々の奥にある分厚い雲が、ゴロゴロと音を立てて近づいてきているのが、夕食待ちで昼寝していた私の腹の虫と共鳴するのを感じた。前日もそうだったが、ここでは毎夜雨が降っていて、昨晩はナイトサファリの後に、今晩はそれより早くシトシトと降りしきっていた。
 そして今夜はナイトハイク。小物狙いでこの天候は期待できるではないか。


 ナイトハイク出発前にガイドのルディから 「 ナイトハイクの集合時にはレインコートを用意しておいてください。なければ宿の売店で売っているので準備しておくように。 」 と忠告を受けていた。それは前述したように、毎夜雨が降ってくるし、今晩は今にも降り出しそうな雰囲気が出ていたため当然の忠告だった。
 案の定、トレイルの木道を歩き始めると、すぐに雨粒が肩を叩いてくるのを感じたので、 「 ここで一旦レインコートを着ましょう。 」 とルディの声がかかる。各々レインコートやらポンチョやらを着込んでいると、後ろから素っ頓狂な声で 「 アレっ ? 」 なんて声がする。
 どうやらルンチョロサンはザックに入れたと思っていたレインコートを部屋に置いてきてしまったようだった。それでも彼のザックには折りたたみ傘が入っていたので 「 これで大丈夫です。 」 と伝えたが、なかなかルディは首を縦に振らない。ガイドという身の安全も確保しないといけない仕事柄に加え、根っからの生真面目な性格である彼の人柄もあって、こういったルール外のことはあまり認めたがらないようだった。仕舞には 「 戻って売店で買うか ? 」 なんて話もしてくるくらいだった。それでもなんとか説得して、折りたたみ傘での散策を許可してもらった。
 このやりとりをみるだけで、いかにルディが真面目な人間なのかがよくわかった瞬間だった。






オナガマウス
オナガマウスの一種 Haeromys sp.


 まず現れたのは小型哺乳類。 1m 前後の低木がいくつも生えているエリアで茶色い毛玉を発見。よく見ると長い尻尾がだらんと垂れ下がる ( 写真では写っていないが ) 特徴の、オナガマウスの一種であることがわかった。
 手元のボルネオ哺乳類図鑑 【 A Field Guide to the MAMMALS of BORNEO 】 によるとボルネオに生息するオナガマウスはHaer. margarettae ( 英名 : RANEE MOUSE ) と一回り小さいHaer. pusillus ( 英名 : LESSER RANEE MOUSE ) の2種がいるようだ。無論そのどちらかは捕まえて見ないことにはわからないだろうが、図鑑に 『 計測からして、もしかしたらこの2種は同種かもしれない 』 という記述もあるので、迂闊に同定できない。再検討の必要性を論じているので、分類がまだ整理されていないグループなのかもしれない。
 何にしても、野外観察だけで同定できるわけではないので、とりあえずはオナガマウスというところまでで。


 実はこの時、しっかりと “ ネズミ ” と認識するまで、私はある生き物と勘違いしていた。それはボルネオに着いてすっかり哺乳類熱にあてられ、見たい見たいと切望していたニシメガネザルTarsius bancanus かと思っていたのだった。
 事実この時はメガネザルを探して低木が乱立するところを散策していたもんで、樹上の毛玉を見つけた瞬間にメガネザルの英名 “ ターシャ ” を連呼し 「 ターシャ ?! ターシャ ?! 」 と喚き散らしていた。
 たまに本屋の園芸コーナーで見かける「ターシャの庭」という老婆のガーデニング本とかけて、同じタイトルでブログの記事を書いてやろうと目論んでいたものの、結局メガネザルを見ることは叶わず、捕らぬ狸のなんとやらに終わってしまった。



シロアゴガエル
シロアゴガエル Polypedates leucomystax


 しばらく散策して宿付近の小さな池に辿り着くと、どこか聞き覚えのある 「 グギー、グギー 」 という汚い声。これはこれはシロアゴガエルではないですか。なんだか馴染みのあるカエルの登場に、異国の地で日本人に会うような、そんなホッとする出会いだった。外来種として日本で扱われているため、あまり良い印象付けがされていない本種だが、原産のアジア地域では非常にポピュラーなカエルで、鳴き声こそアレだがなかなかに可愛らしい姿をしている。
 池の周りを覆う柵に何個体もついているのが目についた。



ヒョウトビガエル
ヒョウトビガエル Rhacophorus pardalis


 こちらは初めましてのカエル。最初の宿でアドリュー少年が見たというカエル。飼い犬が如く、彼の 「 Be quiet ! 」 に従っておとなしく擦り足でフィールディングしたにも関わらず、見られなかったそのカエルである。それがようやく目の前に。
 本種は日本に生息するモリアオガエルR. arboreus やヤエヤマアオガエルR. owstoni やなんかと同属のアオガエル属に属していながら、彼らとは違って派手な体色をもつ。よく見る個体はオレンジの地色に黄色いスポットがある体色なのだが、この個体はオレンジ色がまばらに入る体色で変わった色味をしていた。ただ水かきは本種のそれで、鮮やかなオレンジ色を呈した広い水かきを持っている。

 日本でよく見る前述のアオガエルたちと顔の印象も異なっており、どちらかというと寸詰まりな吻端で目がクリっと大きい。また表現が難しいが下顎が薄いような感じなので、雰囲気としてはアイフィンガーガエルKurixalus eiffingeri みたいな顔をしている印象だった。
 池の周りには何個体か集まっており、束の間の雨を大いに喜んでいるように見えた。




アースタイガー
オオツチグモ科の一種 Theraphosidae gen. sp.


 道中はこんなタランチュラなんかにも遭遇する。この手の生き物はガイドが気がついてくれるから良いものの、単独だったら踏んだり石ひっくり返したら襲われたりなど、対策がうまくとれるか不安なヤツらである。もちろんこういった危険を内包しているジャングルだからこそ、冒険するワクワクが、探険するドキドキが、得られるというもの。

 東南アジア地域のタランチュラはアースタイガーの総称で呼ばれるらしい。ここら辺の分類の生き物は良くも悪くも、ペットトレードの絡みで情報は多いだろうから同定出来そうな気もするが、やはり素人には難しい。



 そうしているうちにナイトハイクは終了。絶好のコンディションだと思ったのにヘビは1本も見られず・・・
 これが西表島だったらサキシママダラDinodon rufozonatum walli やらサキシマハブProtobothrops elegans がウヨウヨ出てきてもおかしくない状況なのに、どうしてこの生物相の濃いジャングルではうまく見られないのか。前にサークルの先輩が言っていたことだが、 「 海外は何気にヘビを見るのが難しい。フィールドが鬱蒼とし過ぎていてどこを探したら良いのかわからなくなる 」 と。まさにその通りだなと思った。
 一応池周りでカエル食いのヘビを、低木が連なるところでは樹上性のヘビを、といろいろ探しては見たものの、これは惨敗だなと言わざるを得ない。台湾の旅でそれなりにヘビを見られたのは、感覚的に八重山の延長だったからだろう。
 こうもジャングルジャングルしていると、どうにも違った視点・違った探し方でアプローチしないといけないようだ。むむぅ、熱帯のヘビ探しの難しさを痛感した夜だった。




バー
Bar


 ロクにヘビが見られなかった悔しさ半分、欧米人たちに紛れて少しセレブな気持ちになっていた勘違い半分で、今夜の同定会は宿にある素敵なバーで。我々だけじゃあ外出しちゃいかんし、せっかくこんなとこがあるんだからさ、1回くらい行ったってバチは当たらないだろうと、明らかに浮きまくった小汚いアジア人2人で酒を飲む。


バー
ビール


 つまみはルンチョロサンが成田で買った濃いお菓子。これがとにかくビールに合う !! また初日の夜にルディ一家やガイドたちと飲んだ時にも書いたが、この暑い熱帯だとアジアンビール特有のさらりとした飲み口が、次へ次へと飲み進めさせるので、あっという間に酔っぱらう。お酒は好きだけど割と弱い私でも、1杯目はあっという間に飲み干し、喉が渇いているのもあっていつもよりかなり早いペースでお酒が進んでしまう。
 それでいて今日は1日中ジャングルだ、それも軽いトレッキングもしてだ。そりゃあ酔っぱらっちまうよ、気がつけば生き物の話じゃなくて 「 スゲーとこ泊まってんなー、車中泊がベースのオレらじゃないみたいだなー。 」 なんて話をしたり。良い感じで気持ち良くなったので、この日は早めに寝ることに。翌日は朝食前にルディたちと散策があるので早いのだ。


 部屋に戻り、ご機嫌で鼻歌まじりに、まるでしずかちゃんのようにシャワーを浴びていたら、実はその最中に来客があったようだった。風呂から出るや否やルンチョロサンに 「 先輩、コレ ・・・ 」 とスマホを渡された。どうやらベロベロに酔っていたようで、バーのイスにスマホを忘れてきたらしい。そんなのも気がつかずに鼻歌がエコーするのを楽しんでいるとかどれだけアホなのか ・・・
 というか海外でスマホ失くして戻ってくるのが奇跡に近い。普通はこういうのは戻ってこないのだが、さすがは良いお宿。治安も良く皆さんお上品なもんなんで従業員といえど、お客様の忘れ物は届けてくれるらしい。きっと持ってきてくれたのはバーの店員だろう。品格が違いますな、品格が。

 何よりルンチョロサンがあまり言葉数少なく、呆れているのにはわけがある。実はこの忘れ物、 “ 2回目 ” なのさ。この宿に着いた時、あまりの高級リゾート感に浮かれ、ロビーのフカフカのイスでその沈み具合に酔いしれていたら、いつの間にかポケットから落ちたんだろうね、自分たちの部屋に案内されてから、 「 あ、スマホがない 」 と気づいたもんさ。慌ててロビーに戻ってみると、ふんわりとしたイスの生地に包まれているスマホちゃんを発見し、無事回収したってわけ。


 きっとルンチョロサンはそんな私が不安だったに違いない。だって私自身、自分に対してこんなポンコツで大丈夫かよと思ったぐらいだもの。でも酔ってたからそんなに反省もせずに寝ちゃったよ、明日早いしね。




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今、ふたたびのヤンバル車中泊



 初めのリュウキュウヤマガメGeoemyda japonica が石化けから解けた時、イボイモリEchinotriton andersoni を見つけていた最中だった。夏に見つけたのは初めてで、以前は春の繁殖期付近で移動中の個体を見つけていただけだった。
 今回は林道脇にある大きめの石を捲ると、体格の良いイボイモリが体表に土埃を纏い、文字通り 【 生きた化石 】 として静かに身を潜めていた。



イボイモリ
イボイモリ 


 張り出した肋骨部分の先端はうっすらと赤みを帯び、扁平な頭部は同じくヤンバルに生息しているシリケンイモリCynops ensicauda とは似つかない風格がある。古の時代より生き抜いてきたその力強さがその風貌から漂い、彼らを通して太古のヤンバルを見ているようなそんな感情を抱かせる。





ホルストガエル
ホルストガエル Babina holsti


 小さい幼体からガッシリした成体まで、スコールの後だったため多くの個体が夜の路上にむすっと佇んでいた。基本的に路上に出ているホルストはあまり逃げなかった。目を開けたまま寝ているんではないかと思うほどジッとしているが、しばらくすると何かを思い出したように急に慌てて跳んで逃げていく。





ナミエガエル
ナミエガエル Limnonectes namiyei


 私の好きなカエルにも出会えた。やっぱりナミエは良いやね。顔のフォルムも体のフォルムも好みだし、サイズも大きいので見つけた時の手ごたえが良い。



 あとオキナワイシカワガエル Odorrana ishikawae が見られれば、ヤンバル三大巨蛙をセットで見られたはずだったが、昼間の沢でヒメハブOvophis okinavensis にドキリとした体験が頭の隅から抜けきらず、夜の沢登りを断念したために今回は出会えず。またの機会に、気持ちを整えて沢登りをしようと思う。
 怪我をしてしまったら “ 次回 ” が来ないかもしれないからね。




 フラフラと下山し初日は車中泊。翌日からは観光づくしなので、フィールディングはこれにて終了。少ししかない生き物探しの時間にしてはそれなりに見られたので、私としては満足感があって良かった。
 やはり大学時代の友人たちと、ヤンバルでフィールディングするってだけで良い旅だったと感じさせるわけだけども、この後の沖縄旅も存分に楽しむことができたので、この記事のあとに載せようかと。

 なんだかここ数年、本当に良い旅に行かせてもらっている幸せ。








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好物を舐る


 というわけで、四国に山椒魚探しに行ってきた。狙いとしては四国の深山に産する流水性サンショウウオ3種。


  イシヅチサンショウウオ Hynobius hirosei
  コガタブチサンショウウオ H. yatsui
  シコクハコネサンショウウオ Onychodactylus kinneburi



 私が生き物を熱心に追い求めるようになった大学時代はそれぞれがまだ、

  オオダイガハラサンショウウオ H. boulengeri
  ブチサンショウウオ H. naevius
  ハコネサンショウウオ O. japonicus

 と、分けられる前の名を冠していた。ここ数年で我が国に産する有尾類の種数は細分化により急増し、情報収集を怠ればあっという間にその土地の山椒魚が何サンショウウオなのかがわからなくなるような状況になっている。といってもそこに棲まう山椒魚自体は代わることのない存在で素敵な生き物なのだけども。






コガタブチサンショウウオ
コガタブチサンショウウオ


結論から言えば3分の1の成果。このコガタブチが出てくれなければ、惨憺たる結果で四国を後にすることになっていた。とはいっても初の四国でのフィールディング、それもサンショウウオ探しだ。1種でも見られれば良い方ではないか、と自分を慰めてやる。

 ということでコガタブチ。ブチサンショウウオから分けられたコガタブチサンショウウオだが、一口にコガタブチといってもいろんなヤツがいるのは図鑑を見れば一目瞭然だろう。ある程度、地域や沢によって見た印象が異なるのがサンショウウオなので、 『 種 』 という単位でみるよりも個体群、さらには個体毎にみる必要があるように感じる。
 初日に1個体、最終日に別の沢で2個体と見られたわけだけど、ここいらのコガタブチはいわゆる四国の高標高に生息するタイプの個体群のようで、黄白色の斑紋を持つ。私が見たどちらの沢も標高1500m付近の源流域で、かつ水量が少なくところどころ伏流になるような枝沢での発見だった。
 共通認識しやすいのは図鑑だと思うが、私が学生時代から愛用している通称 “ 両爬の赤本 ” である 『 決定版 日本の両生爬虫類 内山りゅう他 』 のブチサンショウウオの頁に載っている愛媛県と徳島県の写真に近い。


 四国の流水性サンショウウオでは本種が見つけづらく、他の2種をよく見るなんて話を散見するが、今回の旅では逆の結果となった。おそらく予定通りにフィールディングが出来ていれば同じような感想が漏れ出たかもしれないが、林道の通行止めや登山道の閉鎖など、目星をつけていた沢への行く手をことごとく阻まれていた。
 そのためイチから沢探しを現場でする羽目になり、地図と足とでやっと見つけた沢だった。




コガタブチサンショウウオ
コガタブチサンショウウオ


 1個体目は沢にある大きめの石をめくると下にも石があり、その水中ではない隙間で休んでいるところを見つけた。残りの2個体は同じ石の下にいたのを見つけて、わずかに水が浸み出る沢の脇にある石が彼らの隠れ家だった。
 どちらの発見も水中ではなく石下の空隙で、円錐状の尾の形状からみてもあまり泳ぎは得意そうではないことが窺い知れる。反対に、残りのターゲットであったイシヅチサンショウウオやシコクハコネサンショウウオは水量の多い沢にいるイメージで、やはり好む環境が微妙に異なるのだろう。それゆえに各サンショウウオに対して適切に環境選びをする必要があるので、あの深い山々が連なる四国でのサンショウウオ探しというのは、ちょろっと数日遠征するだけではそううまくはいかないようだ。まぁまた四国に行くキッカケになったのだから、懲りずにまたチャレンジしよう。




コガタブチサンショウウオ
コガタブチサンショウウオ


 それにしてもここの個体群は斑紋が美しい。まるで金粉を散らした伝統工芸品かのような模様。この金ピカが最も輝く瞬間は、自分の手によってこのサンショウウオを掘り当てたその瞬間こそである。
 沢でのサンショウウオとの出会いは歓喜だ。そして図鑑では見ていたが実物を自分で発見した時の喜びと言うのは筆舌にし難いほどの感動があり、相変わらずだが1人沢にて雄たけびを発してしまった。

 シコクハコネサンショウウオの種小名 kinnneburi は鉱物の採掘場所の近くで見つかることから 『 金を舐る ( ねぶる ) 』 という意味で 【 キンネブリ 】 という地方名からつけられたものである。道中私もキンネブリを探していたが、ついに叶うことはなかった。しかしこのコガタブチサンショウウオもまた、金に関連するような色彩の斑紋を持っているので、こいつも鉱物を舐るのではないかと思っていて、ひそかにキンネブリと呼んでやりたい気分だった。



 素敵な出会いがあったが、まだまだ四国のサンショウウオは見られていないままである。また訪れる口実もできたわけだし、機会を見てリベンジしたいところだ。
 はぁ、それにしても四国の山は深すぎる・・・


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色とりどりの花咲き誇る

~ 麗しの島、台湾の旅 ~
1. 小汚いバックパッカーとダーティー兄ちゃん
2. トカゲたちの異なる境界線
3. 極彩色 Richly colored
4. 翡翠の純心
5. 蝦蟇が来たりて、夜は更ける
6. 翡翠の邪心
7. 谷を渡って飾り付け
8. 木登り蜥蜴の陰と陽
9. 至高のグルメ
10. 色とりどりの花咲き誇る
11. 斑蛇の明と暗
12. 既視感のオアシス
13. 蓮池や 咲いては消える 亀の華
14. 鼻先蛙は蛇の気配
15. モノクロームの鎮魂歌
16. 最終夜の晩餐
17. 老人と湯



スウィンホーハナサキガエル
スウィンホーハナサキガエル Odorrana swinhoana


 夜中、台湾の山中を車で走っていると、よく姿を現すのがこのカエル。属名をみればわかるように、本種は日本に生息するハナサキガエルO. narina やアマミハナサキガエルO. amamiensis などに近縁なニオイガエルの仲間で、琉球列島の地史や系統関係の話でよく登場するカエルである。

 遭遇の仕方としては、沖縄本島でのハナサキガエルみたいな感じで、夜に車を走らせているとポコポコ路上に出てきている。林道を歩けば小さな沢付近の湿度が高いところでよく見つかり、ジャンプの能力は高いがオオハナサキガエルO. supranarina ほどの跳躍力ではないので、シチュエーションが悪くなければ捕獲はそこまで難しくない。
 そういう意味でもやはりハナサキガエルに近い印象である。


スウィンホーハナサキガエル
スウィンホーハナサキガエル


 出会い方としてはハナサキガエルに似るが、系統的にはコガタハナサキガエルO. utsunomiyaorum に近縁らしい。日本と台湾のハナサキガエル類の起源としては、琉球列島に生息する4種にスウィンホーハナサキを加えた5種の祖先種が、台湾を通じて琉球列島へと分布を広げ、まず南北で分化したようである。そこからさらに南側でコガタハナサキとスウィンホーハナサキが、北側でハナサキ+アマミハナサキの祖先種とオオハナサキが分化したという。
 その後、オオハナサキが八重山に侵入したことで現在のように八重山諸島にはハナサキガエル類が2種生息する。大きな種が後から入ってきたことにより体サイズは二極化し、コガタハナサキはより小さく、オオハナサキはより大きくなることでそれぞれのニッチを獲得して共存に至るというわけだ。この手の話は島などの隔離された環境下では起こりやすく、爬虫類でいえば同じ八重山で、イシガキトカゲPlestiodon stimpsonii とキシノウエトカゲP. kishinouyei もその関係にあたるように、いろいろな生物群で起こり得る分化のしかたである。



スウィンホーハナサキガエル
スウィンホーハナサキガエル


 日本のハナサキガエル類と同様色彩変異はバリエーションに富んでいて、1枚目の黄色味のある個体や2枚目の茶褐色の個体のような色彩がよく見られ、あとは個体差で緑色の地衣状紋が多寡はあれど入る。しかしたまにこの個体のようにベタ塗りの緑色の個体に出くわすことも少なくない。仲間内で呼称しているいわゆる “ サビ入り ” 個体だ。
 よく目にするサビ入りは体側線と体側線の間の背面にベタっと緑が入る個体が多いのだが、この個体に関してはそれを越えて横っ腹も緑色になっているのでまるで別種のようである。ただ特別珍しいというわけでもなく、分母が大きいためかそこまで少なくなかった。でもやっぱりサビ入り個体を見つけるとなんだか嬉しくなるのは日本も台湾も同じである。



 本種は毎晩見かけるほど数の多いカエルで、今回の旅で最も目にしたカエルであり馴染みのカエルとなった。色彩にバリエーションが多いので見ていて飽きず、また見慣れてくると遠目でライトを当てた瞬間に 「 あ、ハナサキだ 」 とわかるようになってくるのは沖縄での体験と同じである。やっぱりハナサキ姿勢をしているんだな。
 これだけ数が多いのだから、彼らはきっと良い餌資源になっているのだろうとも感じさせられた。そんな背景を想像しながら、どんなやつらがこれから現れるかワクワクしながら2日目の夜はどんどん更けていく。









スウィンホーハナサキガエル
スウィンホーハナサキガエル





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蝦蟇が来たりて、夜は更ける

~ 麗しの島、台湾の旅 ~
1. 小汚いバックパッカーとダーティー兄ちゃん
2. トカゲたちの異なる境界線
3. 極彩色 Richly colored
4. 翡翠の純心
5. 蝦蟇が来たりて、夜は更ける
6. 翡翠の邪心
7. 谷を渡って飾り付け
8. 木登り蜥蜴の陰と陽
9. 至高のグルメ
10. 色とりどりの花咲き誇る
11. 斑蛇の明と暗
12. 既視感のオアシス
13. 蓮池や 咲いては消える 亀の華
14. 鼻先蛙は蛇の気配
15. モノクロームの鎮魂歌
16. 最終夜の晩餐
17. 老人と湯


 「 晩飯食っていざ行かん、漆黒の宇宙に浮かぶ星々を。 」 ぐらいのロマンスを胸に抱き、夜の台湾を歩く。

 普通旅先に着いてまずすることといえば宿のチェックインである。荷物置いたり寝床確保が優先されるのだが、我々はそれをせずに陽が暮れてもフィールドに出ている。

 それはなぜか?

 当ブログをちょくちょく覗きに来てくださる方ならば薄々気づいているかもしれないが、今回も行動優先にするため相変わらずの車中泊旅だからである。そりゃあチェックインもなければチェックアウトもない。制限されるのはレンタカーの利用時間とフライト時間だけだ。初の海外フィールディングなので、安全面・衛生面を考慮するならば、というか最初は無難に考えて宿をとるべきなのだが、両爬屋としては夜も外せないため、眠くなるまでギリギリ活動できる車中泊というチョイスをした。
 かなり冒険的な試みで無謀な計画ではあったが、欲望には勝てず車を宿にして突き進む。

 初日の夜は陽明山の中腹に車を停めて林道を歩く。感動の瞬間だ。夢にみた瞬間だ。海外でナイトハイクしているだなんて。夜風は湿気を含んでいて柔らかく、いかにも冒険心をくすぐるような雰囲気しか漂っていない。そして待ち受ける海外の両爬たち。





バンコロヒキガエル
バンコロヒキガエル Bufo bankorensis


 小さなヒキガエルがぴょんぴょん跳ねる。我々日本人が見慣れているヒキガエルと同じような姿のチビガマ。
ポピュラーなカエルのようで台湾各地で見られた。



バンコロヒキガエル
バンコロヒキガエル


 こちらは成体。彼らは台湾固有種で、色彩が淡白なニホンヒキガエルB. japonicus といった感じ。立ち振る舞いやしぐさはニホンヒキのそれと同様で、 “ むんずっ ” と胸を張っているのはやはり良い。
 系統的には日本にも亜種を持つアジアヒキガエルB. gargarizans に近縁なようなのだが、そうなってくるとミヤコヒキガエルB. g. yiyakonis の分布を考察するとなかなかに難解っぽくて面白い。



●現在のヒキガエルの分布
大陸 : アジアヒキ
台湾 : バンコロヒキ
八重山 : なし ( 移入種であるオオヒキガエルRhinella marina は除く )
宮古 : アジアヒキ
沖縄 : なし
奄美 : なし
トカラ : なし
屋久島 : ニホンヒキ
九州 : ニホンヒキ
朝鮮半島 : アジアヒキ



 こうやってみると、大陸・台湾・八重山・宮古のそれぞれが、もしくは同時期に陸橋で繋がっていた時にアジアヒキガエル ( もしくはその祖先種 ) が分布しており、島が分かれた後で分化したり絶滅したのかもしれない。 ( 下図のような動き )



●陸橋形成●        →       ●陸橋消滅●
大陸 : アジアヒキ             大陸 : アジアヒキ
台湾 : アジアヒキ             台湾 : バンコロヒキ
八重山 : アジアヒキ           八重山 : 絶滅
宮古 : アジアヒキ             宮古 : アジアヒキ ( ミヤコヒキ )



 ミヤコヒキガエルは有史以前の化石が宮古島から発見されていることから、移入種ではないと推論しての予測。台湾と宮古島では環境も競合種も異なるため分化速度に違いがみられて、大陸におけるアジアヒキガエルに対して、別種と別亜種という異なるレベルで分化したのかもしれない。陸橋形成・消滅の時代やヒキガエル内の分化レベルなんかも合わせていろいろ考察できたら面白いんだろうなぁ。
 まぁ知識のない私が勝手に妄想するとこんな感じ。


 とりあえずまぁバンコロヒキに対しての感想としては普通のヒキガエル。贔屓目に評価して親しみやすい蝦蟇と言ったところだろうか。





ヘリグロヒキガエル
ヘリグロヒキガエル B. melanostictus


 台湾に生息するヒキガエルはもう一種いて、それがこのヘリグロヒキである。バンコロヒキが平地 ~ 3,000 m までの広い垂直分布を持つのに対し、本種は平地 ~ 600 m ほどの低標高地域に生息している。
 陽明山では標高 500 m 前後のフィールドだったため両種が混生しており、ヘリグロヒキを見つけた数百 m 先で、バンコロヒキが見つかるような、ヒキガエル好きにはたまらないフィールドだった。

 特徴的な濃い顔立ちの男前ヒキガエル。眉にあたる部分と口にはヘリグロの名の通り黒いラインが入り、指先も黒く染まっている。
 先述のバンコロヒキは人当たりの良さそうな優しい顔立ちだが、本種に至っては娘さんを貰いに行ったら 「 君にお父さんと呼ばれる筋合いはないっ !!」 とちゃぶ台をひっくり返して一蹴されてしまいそうな剣幕だ。
 オオヒキガエルなどの厳つい中南米のヒキガエルがナンベイヒキガエル属Rhinella に分類された今、ヘリグロヒキはBufoの中でもかなり男前な部類に入るのではないだろうか。


ヘリグロヒキガエル
ヘリグロヒキガエル


 昼間陽明山で見た個体。小さいながらも顔はあまりにも男前で、やはり眼周辺の黒い隆起が彼らの顔が締まって見える所以であろう。
 こんなにカッコイイ顔しているくせにヒキガエルなもんだからおなかはぽっちゃりしていて、たぽたぽの膨らみを岩に乗せてカッコつけてる。このちょっとしたゆるさがたまらんね。ゆるキャラにしたらいいさ、こういうカエルは。本種は台湾でぜひとも見たいカエルであったので、この出会いは非常に嬉しかった。
 ただ両種とも成体オスに会えずじまいで、リリースコールの会会員としては非常に悔やまれる。もっといろんなオスを抱きたかったぁ~ !!




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雨待ちcloudy


 梅雨がやってくる。
 アオガエルがやってくる。


 雨につられてカエルがやってくるのか。
 はたまたカエルが雨をつれてやってくるのか。





卵塊
モリアオガエル Rhacophorus arboreus の卵塊


 見上げればもうすぐ夏を予感させるような雲と、木々にはふわふわの卵塊。モリアオガエルたちは捕食者に狙われぬよう卵を樹に産み付け、その泡の中で発生が進んでオタマジャクシたちは成長する。そして幾度かの雨で卵塊の粘着性も失われ、真下にある水辺へと溶けて落ちてゆく。オタマジャクシの冒険がスタートする。

 そんな生態を知ってか、捕食者たちも策を講じる。あるヘビは、水場にせり出した卵塊を産みつけそうな樹の枝先に先回りして待ち伏せ、鳴いているオスやペアになったカエルたちを次々に呑み込んでゆく。あるイモリは、卵塊が産み付けられた真下の水辺に集まり、降ってくる卵やオタマジャクシを天からの恵みのように貪りつく。





アカハライモリ
卵塊に貪りつくアカハライモリ Cynops pyrrhogaster


 ちぎれた卵塊片が水面に浮かんでいて、わずかに動いているように見える。よく目を凝らすと、卵塊に頭を突っ込んでいるイモリの姿があった。彼らにとっては、またとないチャンス、かなり栄養価の高い食事であろう。この卵塊はまだ産んだばかりだと思われ、卵の発生はまだまだである。しかし、ひとたびちぎれて水面に落ちればイモリの餌食。

 運も実力のうちってやつだ。

 ・うまく成長してから解き放たれるやつ。
 ・水中に入ってイモリに食われなかったやつ。
 ・水が干上がらず、餌資源がわずかでも共食いで勝ち残ったやつ。
 ・変態して上陸し、夏の猛暑も冬の寒波も乗りきったやつ。
 ・サギやヘビ、イタチなどの猛攻を掻い潜ってきたやつ。
 ・大声で鳴き続けたり、たくさんの卵を作ったりして、異性と出会い子孫を残せるやつ。

 その何千・何万という中の一握りの実力者だけがまたサイクルを回すことができ、新たな生命の生き残りをかけた弱肉強食の舞台が幕開けになる。

 だから抗え。 そして生き残れ。





モリアオガエル
モリアオガエル


 だから私は、寂しくか細い声で鳴いているあぶれオスを笑ったりなんかしないよ。そんな立派な成体になるのだって、相当の苦労があったはずさ。だから来年がんばれよ、きっと良い出会いに恵まれるさ。帰り道のヘビには気をつけろよ。
 そう願って別れを告げた。


 それでも彼は空に向かってか細く鳴いた。まだメスがやってくると信じて、最後のひと雨を待っているかのように。







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水と共に生きる

ダム
ダム湖


 奈良はまるでダムの国だ。雨の多い紀伊半島の中央に位置し、いくつもの名滝を有している。その豊富な水がダム湖へと注ぎ込まれ、人々の生活を豊かにしているのだ。国道はダムや河川に沿って走っていて、そのダム環境に沿って人々の暮らしがある。山道沿いに何か所もある名水の汲み場では地元の人がたくさんタンクに汲んでいる姿をよく見かけた。昼メシで入ったお好み焼き屋でもそういった名水は振舞われ、一口飲めばソースとマヨネーズでコテコテな口の中が一瞬でスッキリとリセットされた。


滝


 この豊富な水量に支えられて、多くの生き物たちが育まれている。山も深く、多くのダム、渓谷、滝、沢などの水環境を作り出しているため、目星をつけたフィールド間の移動には時間がかかるのだが、それに見合うほどの自然がそこにはあった。山自体はスギの植林が多く、もう1, 2 ヶ月早く訪れていたら、私の鼻からも名滝が見られたであろう。しかし、コケ・シダがとても豊富なので、そこらへんの知識があればもっと楽しめたのになぁと後悔するほど。



滝





 そしてその豊かな水源の下、ナガレヒキガエルBufo torrenticola に会う手筈だった。そう “ だった ” 。結局会えず仕舞いではあったのだが、もちろんせっかくの三連休なので他の両棲類・爬虫類もみたいわけで、時期から奈良を選んだのには実はもうひとつの目論みがあった。ただそれはナガレヒキを見つけた後の余力で、運良く見られればラッキーだなと思っていた程度だったのだが、夜ナガレヒキが産卵に来るであろう沢のよどみを探して、いたるところの沢を登っていたおかげだろう、今回はむしろそちらを見つける事となった。


 前回の記事の写真やナガレヒキ探しで沢に登っている点で、お気づきの方も多いだろう。そして何より皆様はこの辺境なブログを覗きに来てくれているという変わり者なわけだから、「いつまでも勿体ぶるなよ、だいたいわかるよ。」とさえ思っていらっしゃるかもしれない。
 そうです、サンショウウオです。沢の登っている最中に偶然水中にいるのを発見したのです。









オオダイガハラサンショウウオ
オオダイガハラサンショウウオ Hynobius boulengeri


 この青紫に艶めく体躯がゆっくりと水中を歩いているのを目にした時は、頭の片隅に出会える可能性を置いておいたはずなのにまったく思考が追いつかず、しばらく呆然と動けなかった。このように偶然素敵な生き物に会うと、時が止まるとは言わないが、 『 無音の空間でその対象物から目をそらせない 』 不思議な瞬間が存在する。
 私が初めてヒダサンショウウオH. kimurae の成体を見た時も、石を起こして発見したのではなく、偶然水中を移動しているところに出会ったのだ。まさにあの時と同じ状況で、やはりあの時も無音の世界でサンショウウオを見つめていた。
 ふと我に返り現実の時の流れに戻ってくると、袖をまくるのも忘れて水中へと手を差し伸べている自分がいた。




オオダイガハラサンショウウオ
オオダイガハラサンショウウオ


 驚くべきはやはりその大きさだ。トウキョウサンショウウオH. tokyoensis やヒダサンショウウオでも全長が15cm前後の大きさなのに対して、本種は20cmにも達する大型のサンショウウオでオオサンショウウオAndrias japonicus を除く小型サンショウウオ類では国内最大種である。ハコネサンショウウオ類Onychodactylus も全長でいえば大きいのだが、非常に華奢な体躯のためオオダイガハラの重厚感を前にすると霞んでしまう。なのでパッと見の大きさだけで明らかに他のサンショウウオと異なる上、斑紋なども持たない妖しい青紫の体色は他のどのサンショウウオにもない艶めきがある。
 本種の分布はこれまで紀伊半島、四国、九州という少し変わった場所で、中央構造線に沿って分布しているなんて言われていた。調べてみると植物はそのような分布をする種が多く、中央構造線以南・フォッサマグナ以西の範囲に生息する共通性を “ 襲速紀 ( そはやき ) 要素 ” と呼ぶらしい。

襲速紀とは、

襲 ( そ ) :熊襲 ( くまそ ) 【 九州南部 】
速 ( はや ) :速水瀬戸 ( はやすいのせと ) 【 豊後水道 九州-四国間の水道 】
紀 ( き ) :紀伊 ( きい ) 【 紀伊半島 】

という3つの地域から一文字ずつとったものでちょっと耳慣れない組み合わせだが、意味がわかると使いたくなってしまうような不思議な言葉。植物だとシコクスミレViola shikokiana やハガクレツリフネImpatiens hypophylla などがこの襲速紀要素にあたり、このような分布をする植物は多いようである。
 そして本題に戻るが、オオダイガハラサンショウウオもこの襲速紀要素の動物であるというのが、私の大学時代に言われていたことであった。各地域で分化している小型サンショウウオ類の分布は生物地理を理解する上では重要な要素で、オオダイガハラサンショウウオが襲速紀要素の地域に生息しているということから、これらの地域は現代の日本地図とは異なり陸続きだったことを示唆している。
 その3地域 ( 九州・四国・紀伊半島 ) に生息するオオダイガハラサンショウウオが、2010年に四国の個体群がイシヅチサンショウウオH. hirosei として分離され、去年2014年には九州の個体群が祖母山系・天草諸島・大隅半島の地域でそれぞれ、ソボサンショウウオH. shinichisatoi ・アマクササンショウウオH. amakusaensis ・オオスミサンショウウオH. osumiensis の3種に分割されたのだ。近年のハコネサンショウウオの分割もあって日本の小型サンショウウオ類の種数が非常に増えた中で、その分類を追いかけるのに必死である。

表
オオダイガハラサンショウウオ種群



 一昔前ではオオダイガハラサンショウウオは襲速紀要素の広域分布種を指していた和名であったが、昨今 ( 2015年5月現在 ) では紀伊半島の個体群のみを指す狭義の意味で使われる。つまり今回見つけたサンショウウオもこの狭義のオオダイガハラサンショウウオである。
 ただ記載論文で示される内容では九州グループはイシヅチやオオダイガハラ ( 狭義 ) よりもベッコウサンショウウオH. stejnegeri に近いという結果らしく、オオダイガハラ種群そのものの分類学的な位置づけが私の中でイマイチわからなくなっている。もう少し勉強しないとアカンなぁ。




 奈良県の川上村、吉野川水系のオオダイガハラサンショウウオについては県指定の天然記念物となっているのだが、私が見つけたところは熊野川水系であったので、特に保護されているというわけではなかった。ただ本当はそれこそ天然記念物に指定されている大台ケ原周辺を、安直な私はまず今回の旅で目指した。登山道にもナガレヒキが現れるのを見ている人もいるし、何より大蛇嵓という展望地で景色を眺めたかったのだ。生き物探しももちろんなのだが、やはりせっかくの旅なのだから少しくらい余裕を持ってトレッキングして、雄大な景色を眺めながら缶コーヒーでも飲みたかった。
 ただし、無計画で直感的に旅をスタートさせたため、まだ大台ケ原の登山道は閉鎖されているという情報を私が入手できていなかった。実際にダム沿いに車を走らせ、 「 いざ大台ケ原 ! ! 」 っていう分岐の道路には閉ざされた堅牢なゲートが立ち尽くし、そこには 【 冬季閉鎖 】 の文字が。国立公園だけでなく、そこに通じる国道さえ閉鎖されており、しかも開放になるのが訪れた日の1週間後だったので、非常に悔しい思いをした。ニアピンじゃねえか。そんなわけで別の水系へとフラフラ出掛け、なんとか見つけた次第である。





オオダイガハラサンショウウオ
オオダイガハラサンショウウオ


 今回見つけた個体には頭に大きな傷があったのだが、もしかしたら同種間での争いが激しいのかもしれない。 ( オオダイガハラの写真1枚目を参照 ) そう思わせるのはこの個体の気性だ。今まで出会ったサンショウウオであれば捕まえようとした時には必死に逃げようとするのが普通であったが、オオダイガハラのこの個体に関してはある程度掴んでいると体をくねらせて私の手に噛みついてくるのだ。
 また、ヘビの成熟しきった個体の頭部が大きく分厚くなるように、彼らの頭も大きく、下顎の付け根から首にかけてボテっと筋肉がついており、噛む力が強いことが窺える。 ( オオダイガハラの写真2枚目を参照 )
 そんな強そうな個体でさえ傷を負っているのを考えると、彼らはそれなりに激戦を繰り広げているのではないかと思う。


 あと、種間闘争が激しいのかどうかはわからないにしても、噛む力が強いのはきっとそうなのだろう。話によると彼らはずいぶんと大きいシーボルトミミズPheretima sieboldi をも食らうらしい。
 小さい頃にミミズをトングで捕まえる遊びをしていたのでわかるのだが、ミミズというのは案外力が強く、地中から引っこ抜くには子供ながらも苦労したのを覚えている。もちろん地面にボテっと落ちていればなんてことないが、ヤツらはどこかに身体が潜っていれば恐るべきパワーを秘めているのだ。そんなヤツらを食うのなら、顎の力も当然必要であるし、同時に引っ張る全身の力強さも兼ね備えていなくてはならない。
 そう考えると、オオダイガハラは想像以上にパワフルなサンショウウオなのかもしれない。以前はPachypalaminus 属に分類されたこともあるように、どこかHynobius 属と違った見方をしてしまう。まぁそれはイメージからなんだろうけど。




 今回の奈良の旅ではナガレヒキに出会えず、成功とは言い難いものの、オオダイガハラという素敵な生き物の知られざる一面を垣間見ることができたので良い旅だった。理想はやはり、 『 大蛇嵓の展望 』 に 『 ナガレヒキの繁殖池の発見 』 なので、またこの奈良に行くとしよう。
 奈良行きの夜行バスも時間帯的にはすごく予定が合わせやすいので、あとはシート前後の客次第だろう。 「 いま、ふたたびの奈良へ。 」 となるように、今度は事前準備をしっかりして向かうことにする、というよりしなければならないな。







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麗かな春の房総 


 オオキンカメムシEucorysses grandis が見たい。そう思いメジャーな越冬地である房総半島に行く計画を立てた。この計画は房総に住む友人(TOGUくん)の協力を得る算段だったのだがなかなか予定が合わず、気がつけば3月も中旬に差し掛かってしまった。その時期になんとか房総フィールドへ行く約束をこぎつけたのだが、季節がひと月もふた月も進んでいるような温暖な房総半島ではおそらくオオキンカメは越冬を終えているだろう。
 そこで他に房総で面白いものはないかと調べているうちに、 “ あること ” を閃いた。友人に前日ギリギリにその話を持ちかけ、装備を整えてもらい、私は翌日の始発電車に備えて早々に床に就いた。

 予定通り高速バスも順調にアクアラインを越え、駅でTOGUくんに拾ってもらって目的地へ車を走らせた。途中コンビニでメシを買うつもりでいたのだが、バカ話をしているうちにあれよあれよと通り過ぎ、目的の山付近ともなるとコンビニ自体がなくなった。そう、今回は昼飯抜きなのだ。唯一の食糧は私がおやつ用に購入しておいたホワイトチョコのアルフォートのみ。






沢沿い


 到着していざフィールディング。千葉県の最高峰は愛宕山(408m)で、都道府県別の最高峰の山の中で最も標高の低い山であるため、千葉県はどうも山のイメージがなかった。しかしよく調べてみると、房総半島は山に高さがないものの谷は切れ込みが深く、結構面白いところであることがわかった。
 今回は薄暗い谷底から沢を遡る。


アズマヒキガエル
アズマヒキガエル Bufo japonicus formosus


 道すがら蝦蟇に会う。背中はツルっと滑らかで黄色い体色をしていたので、リリースコールの会としては掴まずにはいられない。しかし明らかにオス個体でありながらも、リリースコールを発せず、あろうことか皮膚から乳白色の毒液まで出されてしまった。なんたる嫌われよう。いつも通りに接しても、うまくいかないときもあるもんですね。ついに私はオスのヒキガエルにさえフラれるようになってしまった。
 合戦を終えてお疲れだったのか、お尻をグリグリ泥にめり込ませて潜って行ってしまった。もうひと眠りして春を待つのだろうか。



小滝


 行く手を阻む倒木を越え、細い岩壁を伝い、上流を目指す。予想以上に困難なルートで一向に前へ進まないが、ある程度登り詰めて陽の差す沢を眺めると心が洗われる。岩肌は明るいモスグリーンで覆われて、キラキラ反射する水面をアメンボが無邪気に踊る。



トウキョウサンショウウオ卵囊
トウキョウサンショウウオ Hynobius tokyoensis の卵囊


 途中沢でトウキョウサンショウウオの卵囊を見かける。事前に調べた情報だと房総のトウキョウサンショウウオは比較的田園環境に依存していて、山間の田んぼなんかでよく卵囊が見つかるという話だったが、今回はそれなりに流れのあるところで見つけた。
 直線距離で近い三浦半島の個体群も以前にこういった流水環境で産んでいるのを見たことがあるので、もしかしたら両個体群は遺伝的に近いんじゃないかな。更新世後期にこの2つの半島が陸続きになっていた経緯もあるわけだし、その時代に分散したんじゃないだろうか。


 そして卵囊の中では着々と発生が進み、外鰓ができていたのでもう少ししたら幼生が出てくるのだろう。さすが房総半島、産卵も早かったことが窺える。果たしてここの幼生たちはどのようにこの流水環境で成長していくのだろうか。




林道


 両棲類たちで楽しい沢登りに別れを告げて、ここからは谷底から上がってグングン標高を上げる。こんな山道を歩いていると『千葉も捨てたもんじゃないな』と改めて考えさせられる。
 ただ今回の目的は両棲類でもハイキングでもない。あるポイントを目指して険しい沢沿いを登ってきたのだ。










































隧道



 そう、この暗闇のために・・・

                       To be continued.



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ひとしずくの生存者たち



 花粉吹き荒れる啓蟄。虫たちの這い出てくるこの季節に、鼻水が湧水のようにこんこんと垂れてくるのをティッシュを詰めて抑えながら早春の里山を歩く。私が探す虫は山椒魚。彼らとの思い出にはいつも鼻をグズグズさせた私がいて、今年も例年通りティッシュが手放せないようだ。


 初めに見た産卵数の多いお決まりのポイントを除いて、彼らが産卵しそうな場所にはほとんど卵囊は見当たらなかった。あるのは発生が進んでオタマジャクシが出てきたりもしているアカガエルRana の卵塊くらい。お決まりのポイントでは小さい場所ながら20対以上もの卵囊があったので、時期としては産卵していてもおかしくないはずだが、ほとんど見られなかったのはなぜだろうか。
 不安に駆られながらも産卵池を巡って行く。すると少し山に分け入った杉の倒木に、なんだか嫌な黒い塊を見つけた。


アカガエルの卵塊
アカガエルの卵塊


 アカガエルの卵塊だ。彼らは水中で産卵する生き物なので、こんな乾燥する倒木に産むはずがない。そもそも水中で吸水してこのゼラチン質が形成されるのだから、これがこんなところにあるというのは、 “ 誰か ” がここに移動させているはずだ。
 果たして誰なのか。

タチの悪い人間が遊び半分ですくってきた卵塊をここに打ち捨てたのだろうか。
カラスCorvus が持ち去って食い散らかしたのだろうか。
それともこの里山での被害が大きいアライグマProcyon lotor が興味本位ですくって放置したのか。



アカガエルの卵塊


 環境としては山間を流れる小さな沢の上に架かる橋渡し的な倒木の上だ。思いつく図としては、ここを移動経路として利用するやつが、帰り際にイタズラで持ち帰った卵塊を弄ぶようなイメージ。縞々の尾を持つ輩を想像させる。
 もちろんそれを目撃したわけでもなく、物証があるわけでもないので、そやつを犯人だと決め付けるには些か早合点かもしれないが、どうにも嫌な想像をさせる。


アカガエルの卵塊
アカガエルの卵塊


 大半の卵は乾燥により黒ずんで死滅しているように見受けられたが、こぼれ落ちそうな先端のいくつかの卵には、水分が流れて集まってきたのか、まだ透き通った状態のものがあった。そして下には冒頭で説明したように小さな沢が流れていて、それが元の産卵池に注ぎ込んでいるので、うまく雨が降って流れ落ちればなんとか生き残れるのではないだろうか。
 この “ ひとしずくの生存者たち ” の幸運を祈りたい。




 嫌なモヤモヤを抱えて残る産卵池に向かって歩を進めると、また見たくないものを見つけてしまった。



トウキョウサンショウウオ死体
トウキョウサンショウウオ Hynobius tokyoensis  の死体


 次の被害者は探していた山椒魚の番だった。まさかこんな形での再開になるとは。なんだか胸が痛くなる。それも四肢をもがれて尾は欠けて、内臓まで引きずり出されて死んでいるだなんて。誰がこんな惨いことを。
 思い当たる節がないわけではない。こんな残酷なやり方はアイツのやり口によく似ている。食糧を求めて水際にやってきて、探るように両の前足で水底をあさる。何かに当たればとりあえず口に入れてみて、適当に噛みしめ、口に合わなければそのまま打ち捨てる。その動作が何かを洗うように見えることからついたあの名前が脳裏をよぎる。ヤツのやり口で無惨にも命を落としたカエルやサンショウウオの写真を見たことがあるが、それらの死体と非常に酷似する。
 この連続殺害もまさかアイツの仕業なのだろうか。




トウキョウサンショウウオ卵囊
トウキョウサンショウウオの卵囊


 魔の手にかからず、わずかに残された次世代の卵たち。少ない水量の沢の水が、ゆっくりと流れるところに産みつけられていた。あまり産みに来そうなところではないので卵囊の数は少ないが、あまりにも他の場所で卵囊を見かけなかったのでありがたみを感じる。なんとかひそかに生き残るしかないんだろう、それで命を繋いでいくしか。
 この時期の弱い日差しが暖かく包み込む、なんとも美しい光景だった。




トウキョウサンショウウオ
トウキョウサンショウウオ


 田んぼの脇を流れる水路にまだ成体が残っていた。これから山へと帰るのだろう。卵を産むだけが産卵ではない。ちゃんと山に帰るまでが産卵なのだ。
 彼は水路にあった丸太の裏で卵囊に寄り添っているところを見つけた。手に取ると本当に魚のように体をくねらせ、活きの良い姿を見せる。そういえば3年前はこの魚の如き活きの良さで、落ち葉の下に潜り込まれて逃げられた記憶があった。今回もその二の舞で泥の中にぐんぐん潜って行かれて逃げられるところだった。ただ今回は再発見の後、写真を撮ることもできたので満足だった。
 そして彼もまだ帰り道という試練が残っている。無事に戻れることを祈りたい。



 それにしても今回はあまりに卵囊を見かけなかった。背景に何が起こっているかは想像するしかないが、非常に危なっかしい事態になっているように思える。
 少ない卵からなんとか出てきた幼生たちも、みんながみんな成体になれるわけではない。その中のほんの一握りだけが大人になれるのだ。そんな彼らもまた、 “ ひとしずくの生存者たち ” なのである。
 その過酷な生存競争の中で、なんとか生き延び私の目の前に現れたのだから本当にありがたいと思わなくては。


 ようやく春が近づいてきました。虫たちが這い出るこの啓蟄、今年も色々な生き物たちに出会えることを期待したい。













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毛穴詰まっちまってる

ナガレタゴガエル
ナガレタゴガエル Rana sakuraii


 ――――― 新しい炭の洗顔石鹸はどんな感じなんだろう。
 買って来たばかりのパッケージを見て、シャワーを浴びながらぼんやりと考える。そんなことに思考を巡らせながら、いつものルーチンでヒゲ剃りを始める。
 「【炭スクラブで毛穴ごっそり】って割には、やけにふわふわと柔らかい肌触りだなぁ・・・」と考えたあたりで、ようやく自分がシェービングフォームを顔全体に塗りたくっているのに気がついた。

 あぁ、もうダメだこりゃ。なんか自分が情けなくってしかたないぜ。

 ヒゲ剃りのあと、楽しみにしていたはずの新調した洗顔石鹸を使ってみたものの、どうにもスッキリしなかったのはつまりそういうことだ。

 食器洗剤のJOYみたく「キュピキュピッ」とお肌が弾けてるってのに。 心の毛穴まではごっそりとはいかなかった。





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観察に伴なう喜びと憂い

ヒダサンショウウオ
ヒダサンショウウオ Hynobius kimurae


 両生類カテゴリーもついに100件目。記念すべき記事は先週、粉雪が時折パラつく寒い沢で見つけたヒダサンショウウオ。
 冷たい水の中に手を入れ、そこから青紫色に妖しく艶めいた山椒魚を取り上げたとき、ようやく私の冬がやってくる。見つけた興奮で全身から湯気がほとばしり、それが外気との温度差で可視化されてモクモクと私を取り囲む。そう、この外気と私とのギャップこそが冬であり、その靄の中にいる山椒魚は冬の化身なのである。それも卵を腹に持った抱卵メスだったので、なんともありがたく、かといってこれから産卵なので撮影によって負担をかけ過ぎないようにしなくてはならない。うっすらと卵が体内から浮かび上がり、その部分だけが青紫の体表を赤紫に変える。


 久々にコケの上で図鑑で見るような写真を撮った。産卵のため沢に降りてきた山椒魚は石の下に身を潜めているため、あまり生態的な写真ではないのだが、図鑑等で見慣れた光景なだけにむしろ違和感がなくなってきた。もしかしたら沢に降りる際に、水分を多く含むコケの上を移動してやってくるかもしれないので、キッパリと不自然だとも言い切れない。
 ただ実際にフィールドで見つけている人間からしたら 「 あぁ、コケに乗っけて写真撮ったのね 」 ってな印象だろう。そんな気持ちもあって今まであまりそういう撮り方を率先していなかったが、案外フワフワのコケの上に黒眼がちな山椒魚ってのも可愛くて良いなぁと思った。



ヒダサンショウウオ
ヒダサンショウウオ


 こちらは “ 流水性 ” というのを全面に出した写真。このパターンのはよく撮りがちで、写真を見返してみると多い構図。説教臭いというか説明的なもので、実際にこのシーンを見ることはほとんどないのだが、脳内のイメージとしてはこれが流水性山椒魚。流水に産卵しに来ますよーって。

 本種を探しているとたまに渓流魚を見かける。今まではヤマメOncorhynchus masou が多かったように思えたが、今年はイワナSalvelinus leucomaenis が多く、小さい個体はヒダサンショウウオに似ていて紛らわしい。というのもイワナの体表面には明るい斑点が散りばめられていて、ヒダサンショウウオの黄色い斑模様に酷似する。
 渓流に棲まう生き物同士、同じようなパターンを持っているので何かしら生態的に有利に働く形質なのかもしれない。上からのパッと見が似ているので、水上からの隠遁効果があるのだろうか。それとも水中で異性に出会う確率を上げるために、認識しやすい模様なのか。はたまた単なる偶然の一致か。


 渓流魚は増えているが、幼生をほとんど見かけない。今回なんて越冬幼生は1個体も出会えていない。果たしてそこに因果関係はあるのだろうか。
 単純に考えるなら渓流魚が食ってそうなもんだけど、産卵期に探しに来ているので私のフィールデイングが彼らの産卵に影響している可能性も当然捨てきれない。観察は少なからず環境改変にも繋がっているので、大げさに言えば自然破壊でもある。私が沢に入ることで山椒魚は落ち着いて産卵できず、結局うまくペアリングできずに終わってしまうこともあるだろう。そしたら翌年には越冬幼生には出会えず、幼生に出会えないということはその前年の産卵がうまくいかなかったのかもしれないということ。
 越冬幼生が見られなかったのを渓流魚のせいにして自分は無関係、という姿勢をとるのは容易だが、それはあまりにお粗末というか悲しいなと感じた。なんだか非常に申し訳ない気持ちになった。自然との距離間だとか自分の立ち位置だとか、そこら辺のバランスを改めて振り返らなくてはなと思う。
 新年早々のフィールドで課題が浮上。自然にとって悪い行ないだとは思う一方、それでも楽しみたいという自分がいる。
節度を守って付き合っていくんだろうけど、その節度がいかほどか。ゆっくり考えよう。





凍滝(いてだき)の

 春を待ちたる

  山椒魚

            月光守宮








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あめあめふれふれ

 今回の西表島はずいぶんと乾燥していた。森の中はあまり潤っておらず、以前から足繁く通っている林道は長靴を履いていかないと途中の川を横断できないほどの道だったのだが、今回はいたるところで分断されカラカラに干上がっていた。長靴はただただ暑くて歩きにくい履物にすぎなかった。今年は大きな台風が数回来ただけで、あとはあまりまとまった雨が降らなかったようで、滞在中に「節水しないと断水しちゃうさー」的な島内放送が何日にも渡り響き渡っていた。旅の途中に出会った虫屋の方もやはりこの乾燥に頭を抱えられていて、あらゆる生き物、そしてあらゆる生き物屋に影響を与えているようだった。
 おかげでカエルとの遭遇率は低く、雨に行動を左右される生き物と、それを獲物とするヘビとの出会いともなると困難を極める。かくいう私もそういったヘビには恵まれず、今回特に見たかったサキシマアオヘビCyclophiops herminae には出会えずじまい。滞在期間後半の2日間は朝夕でスコール的に雨が降り、待ちに待った潤いによってようやくカエルたちが顔を覗かせた。



オオハナサキガエル
オオハナサキガエル Odorrana supranarina


 遠目で見てもわかるその体躯。ここ西表島で1番大きなカエルで、日本に生息するハナサキガエルの仲間では最大である。
 現在同属にイシカワガエル2種(O. ishikawae およびO. splendida )が含まれているが彼らは類縁は遠く、アカガエル科最大のRana 属を細分化する際にハナサキガエル類と共にお引っ越し。実はイシカワガエル類はイマイチ分類しがたいグループのようで、未だ謎に包まれている。細分化するのは分類が進んでいるので良いことだとは思うが、大きくなり過ぎた分類群の場合、網羅的に分類しなければ残された分類群の類縁がめちゃくちゃでよくわからなくなる。といってもそれは理想論なわけで、現実的には少しずつ少しずつ分けていく他ないのだろう。


オオハナサキガエル
オオハナサキガエル


 ハナサキとは吻が長いことからつけられた名前で、この流線形の体は新幹線で言えばひかりの700系みたいな顔立ちで、ひとたび危険を察知すると “ ばびょーん ” と凄まじい推進力で姿をくらます。観察時は遠くからそろりそろりと悟られないように近づく。彼らに跳びそうな素振りなどなく、距離感を見誤り警戒区域に足を踏み入れると、途端に “ ばびょーん ” だ。









ヤエヤマアオガエル
ヤエヤマアオガエル Rhacophorus owstoni


 西表島のカエルといったらやはりヤエアオ。見た目も鳴き声も可愛らしいったらありゃしない。
図鑑Tシャツでもイラストにされていて、もちろん私も持っている。ただ6年も着ているためヨレヨレのボロボロになってしまったけど。



ヤエヤマアオガエル
ヤエヤマアオガエル


 実はこのアオガエル、沖縄や奄美にいるオキナワアオガエルRh. viridis よりも台湾にいるモルトレヒアオガエルRh. moltrechti に近縁で、実際画像検索してみると腹の色や後肢の模様、顔の丸みなどよく似ているのがわかる。
 先に紹介したハナサキガエル類にもスウィンホーガエルO. swinhoana という近縁種が台湾にいる。他にも台湾には何種もの近縁種・共通種が生息していて、その類似をみるのは面白い。それでいて大陸要素の生き物も入り乱れているので、彼らの生息環境は複雑で、我々に馴染みのある生き物がその中でどのようなニッチを獲得して暮らしているのかが気になるところ。やっぱり八重山へ行くと比例して台湾に憧れを抱いてしまう。




 ヤエヤマハラブチガエルRa. okinavana やアイフィンガーガエルKurixalus eiffingeri は鳴き声はすれど姿は見られず。見られると高を括っていた分、痛い目を見る羽目となった。むしろ途中雨が降ってくれなかったら、今回の旅では両生類の成果は壊滅的だったと想像するとゾッとする。なんとか素敵なカエルたちに出会えて良かったと、ありがたみを噛みしめて今夜は眠るとしよう。


1. 圧倒的生命力に溶けてゆく
2. セマルで合わせる “ 島時間 ”
3. WINGS
4. あめあめふれふれ
5. 待ち人 来たる
6. 川底の大鋏
7. ネズミのいなかったその島で
8. 第二の故郷はいつ帰っても暖かい



Category: 両生類  

シュレの肖像

シュレーゲルアオガエル
シュレーゲルアオガエル Rhacophorus schlegelii


 同じアオガエルという土俵に立つためか、どうもモリアオガエルRhacophorus arboreus よりも粗雑な扱いを受けやすい存在となっているシュレーゲルアオガエル。体色も似た身近なニホンアマガエルHyla japonica に紛れ、気づかれずに見過ごされたり、そもそも別のカエルだと思われなかったり。



シュレーゲルアオガエル
シュレーゲルアオガエル


 よくよく見れば魅力的で愛嬌があり、それでいて身近に接することのできるカエルなのだ。





シュレーゲルアオガエル
シュレーゲルアオガエル


 森の中で鮮やかに緑色を輝かせているときもあれば、



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シュレーゲルアオガエル 


 田んぼの畦道で鳴いているのを捕まえれば土の色に体色を合わせていて、いつもと違う雰囲気もある。これだと一見しただけでは何ガエルだかわからないが、シュレ特有の黄色い斑点が多い個体は斑点がより目立って非常に美しい。



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シュレーゲルアオガエルの卵塊


 泡に包まれた卵を田んぼの畦など目につきにくいところに産む特殊な産卵形態なのだが、樹上に泡を産みつけるモリアオの方が脚光を浴びやすい。シュレもすごいと誰か言ってあげて。



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シュレーゲルアオガエル


 一雨降らば競い鳴く




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シュレーゲルアオガエル


 吻端はニホンアマほど寸詰まりでなく、かといってモリアオほどアヒル口ではない程よいフォルム。丸くてコロコロしていてちょうど良い大きさなんだな、彼らは。改めて生き物で好きな大きさってどのくらいだろうと考えたら、私の場合は大体ガチャポンサイズな気がする。手のひらに収まるくらいのサイズと考えたら、シュレはベストサイズ。


 写真たくさんだと、なんか煩雑気味やなぁ。まぁ楽しいからいいか。1つの記事でいろんなシュレが見られるのは書いていて面白い。



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雄の屍と痩身の雌、そして眼下に無数の次世代

ニホンアカガエル卵塊
ニホンアカガエル Rana japonica の卵塊


 ウバユリ Cardiocrinum cordatum の記事を2つも書いていたのは、アカガエルたちの産卵にうまいこと遭遇できなかったから。2月下旬の記事の時はまだまだ産卵が始まっていなかったが、それから3週間後にはあっという間に終わっていて、田んぼには無数の卵塊と戦で力尽きたオス1個体、卵塊を見守る痩せこけたメス1個体という凄然たる光景が広がっていた。やはりもっとこまめに通わなくてはなぁ。
 今年は「お、ついに春か!?」と思うような暖かい日もあれば、急に冷え込んでくる寒い日もあってなかなか生き物の動向がわかりにくかった。それでも彼らには共通の“キッカケ”があるようで、一瞬で事を済ませてしまう。そして気がつけば春は訪れ、各地から桜の開花情報が舞い込んでくる。季節の移ろいはなんと早いのだろう。

 次回の記事はもう春のモノ。




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静かなる沢のよどみで

ナガレタゴガエル
ナガレタゴガエル Rana sakuraii


 そういえばついヒダサンショウウオHynobius kimurae に会えたのが嬉しくて先にそちらの写真を載せてしまったが、実は今年の初ハペはこのナガレタゴガエル。ヒダサンショウウオを見つけるおよそ2時間ほど前、捕まえてもすぐにスルリと手から逃げこぼれて、なかなか思うように扱えなかった。それほど今回の個体は元気が良くて、これから繁殖開始なのかやる気満々のオスであった。
 今回の沢登りでは多くのヤマメOncorhynchus masou masou を見た。石ころを転がせば結構な確率でシュッと素早い魚影が飛び出す。それでいてヒダサンショウウオの越冬幼生があまり見られなかった。そこに因果関係は見出せないが、もしかしたら結構食われているのかなぁと。丹沢大山総合調査でも直接の関係は示していないものの、やはりヤマメなどの渓流魚が放流された流域では減少が目立つという報告があるし、栃本(1993,1996)ではヒダサンショウウオとハコネサンショウウオOnychodactylus japonicus が渓流魚に丸飲みされたという報告もある。まぁだからといって「渓流魚に食われて減っている!!」と声高らかに叫ぶのもどうかと思う。やはりヤマメの腹を開いて中にサンショウウオがいるなど関係のわかるものがなければならないし、それで食われているのがわかってもそれがサンショウウオにとってどれだけ影響のあるものなのかもわからない。そもそも捕食者というのは大概の生き物にはいるわけだからヤマメを悪者にするというのもどうかと思うし、全くもって科学的ではない。
 保護の観点からだとまた難しくて、因果が明らかになったときには手遅れな場合もある。難しいねここら辺の問題は。まぁでも何でも“駆除だ駆除だ”ってのは私としては気乗りしないんだよなぁ。

 気がつけばナガレタゴガエルの話がだいぶ初期からブッ飛んでいるけど、良いカエルだよ彼ら。生態も面白いし探すのが過酷だから見つけた嬉しさが倍になるし。あとは非繁殖期での観察ができれば良いんだけどなかなか難しい。以前5月頃に紀伊半島へ行ったときにそれっぽい個体を見たのだが、未だにちょっとモヤっとした同定なんだよなぁ。



 ま、とりあえずタゴ系の顔大好きってことで。




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安長靴は凍傷のもと

ヒダサンショウウオ
ヒダサンショウウオ Hynobius kimurae


 寒かった寒かったぁ。午後からみぞれの予報だったけど、行けそうな日が今日くらいしかなかったので凍えながら沢登り。沢に着くまでは登山なわけだけど、防寒バッチリでヒートテックまで着込んでいたら、汗ダクダクの湯気ポカポカでむしろ暑くて大変だった。ぽっちゃりにはミートテックが搭載されてるから、ヒートテックはいらんわけだな。しかしこんなに暖まるとはすげーな、ヒートテック。
 打って変わって沢の水は非常に冷たく、先程大量生産した熱が指先からグングン持っていかれて、あっという間にヒートテックのありがたみを痛感する。そんで長靴が安物でゴムが薄いのか、浸水してないはずなのに凍傷になるんじゃないかってぐらい寒い。ゴムは薄いほうが良いというのを聞いたんだが、それは長靴の話ではなかったみたいだね(笑)


 コンディションとしてはなかなか厳しかったが、生き物が見られればなんとかなるわけで、これでボウズだったら辛かったなぁ。見つけてからは湯気との戦い。ヒートテックと興奮状態のおかけでまぁーモクモクと写真に写り込んできやがるんですよ。うまいこと湯気を払って撮っていたけど、最終的には安長靴から体温を奪われ、カケラも出なくなったからなんとかなったが。
 そういや帰り際にニホンリスSciurus lis 見た。沢を横切るかたちでスギが倒れていて、その上をチョンチョンチョンと軽快なステップで渡ってた、それも2個体。あのフワフワの尻尾がなんとも暖かそうで羨ましかった。


 帰りの電車降りたら粉雪パラパラ。どうりで寒いわけだ。



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ガマ親分の子分

ツチガエル
ツチガエル Glandirana rugosa


 この前の個体の別カット。カワイイ路線がなかなか難しいので渋カッコイイ路線で。
 うーむ、所詮イボガエルと呼ばれるだけあって、この方向性だとやはりガマガエル先生がいらっしゃるので幾分見劣りしてしまうなぁ。“むんずっ”とした口元や体表面の隆起など、ガマガエルに類似しているがサイズがサイズなので、子分役くらいに留まってしまう。そう思うとヌマガエルFejervarya kawamurai と共にヒキガエルBufo の子分をやってるイメージが出来上がってしまった。地表性三蛙のユニットでやっていこうじゃないか、ガマ親分。


 そういやせっかく一眼にしたのにブログに掲載する時はロゴ付けるのに画質が落ちちゃってるんだよなぁ。パソコン詳しくないからテキトーにパワポでロゴ付けしてるんだけど、コレがダメみたいね。別の方法を考えないとなぁ。



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グランディラナへの道

ツチガエル
ツチガエル Glandirana rugosa


 今までRana が属名として用いられていたツチガエル種群だったが、先月の両爬学会の改定で新たにGlandirana があてられた。亜属としてRugosa が使われたり、サドガエルG. susurra の記載の際は属名としてRugosa があてられたりしたツチガエル種群であったが、ラナボックスの細分化の中で混乱していたツチガエルについに新属が。私のサドガエルの記事のときは保守的にRana を用いていてRugosa は使わなかったが、この改訂をみると無難な判断だったように思える。まぁ学会がすべてにおいて正解だとは言わないが、Glandirana は海外でツチガエル種群にあてられているのをよく見るし、何より名前がツチガエル種群に合った“名は体を表す属名”で、ちゃんとその生き物の特徴がよく出ていて気に入っている。グランディラナだぜグランディラナ。これからはツチガエル見つけたらついつい口走ってしまいたくなる名前だよコレ。私個人としては基本的に日本の両爬学会に沿って考えたいと思うので、Glandirana を使っていこうと思う。。
 Glandirana は元々Ra. minima にあてられた属だったが、水かきの形態から他のツチガエル種群rugosaemeljanovitientaiensis とは統合しなかったのだが、ツチガエルがGlandirana ということはここら辺のカエルたちはすべてGlandirana に統合されたということなのだろうか。すると現在のGlandirana の構成種はrugosasusurraemeljanovitientaiensisminima の5種ということになるのかな。


 おそらくこの細分化の流れだとトノサマガエルRa. nigromaculata とかヤエヤマハラブチガエルRa. okinavana あたりもそろそろだろうか。個人的にはBabina との関係から、ハラブチをなんとか新属にしてやりたいと思う。あとはカエルじゃないけどElaphe とかもね。何でも細分化すりゃあ良いというわけでもないが、ある程度は分けて考えたほうがわかりやすいし面白い。



 しかし地味だなツチガエル。この個体は寒空の下、少し水が浸み出る程度の沢のよどみに寒さで体を強張らせながら寒中水泳をしていた。顔なのか口元なのかなんか渋い表情をしているから、どうも寒い時期に水中にいる本種をみると辛そうに感じてしまう。どうにか“カワイイ”や“カッコイイ”の部分を引き出してやりたいんだが、どうも地味というイメージが先行してしまう。似たポジションのヌマガエルFejerbarya kawamurai には“カワイイ”が奪われているので、これからは渋カッコイイくらいを狙っていきたいところですな。


 それにしても幻の迷蛇トゲウミヘビLapemis curtus が外されたのは残念だなぁ~、夢がないなぁ~。


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そしてこの樹洞に棲まうカエルを

アイフィンガーガエル
アイフィンガーガエル Kurixalus eiffingeri


こう秋も深まってくると夜に涼しい風を受けながら、のんびりと考え事をしてしまう。
そして結局行き着くところは“南の島に行きたい病”なのだ。

特に西表島。

あの島は他のどの島にもない魅力が詰まっている。
それは環境だとか生物相だとか島の風土だとか、そういったものだけではない。

何より“思い出”。

学生時代に合宿で何度も訪れた土地であり、
私の爬虫両生類への興味・関心が爆発した土地なのだ。
思い返せば、もう5年もあそこの土を踏んでいないんだなぁ。



初めて目にする様々な生態を持った爬虫両生類。

琴を奏でるカエルを、
海を自由に泳ぐヘビを、
甲羅をフタで閉ざすカメを、
葉上で佇む緑のカナヘビを、
キャンプ場にも潜む毒ヘビを、
樹皮の隙間に隠れてるヤモリを、
ヘビと見紛うほどの大きなトカゲを、
大木を螺旋に駆け登ってゆくアガマを、


そしてこの樹洞に棲まうカエルを。



本当に愛して止まない生き物たち。
もっともっと深く彼らを知っていきたい。
ゆっくり時間をかけてでもしっかり向き合っていきたい。
テレビでもラジオでもなく、自分の目で耳で。



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そこどけ、そこどけ

シュレーゲルアオガエル
シュレーゲルアオガエル Rhacophorus schlegelii


予告通りまたまた懲りずにアオガエル。
梅雨入りしたものの、待てども待てどもそれっぽい天気にならなかった日が続いていたが、
ようやく最近はシトシトと湿っぽくなってきて絶好のカエル日和。
その湿気に誘われるようにして夜な夜な近くの里山へカエル探し。


この日のカエルの状況は鳴き声からして、

【40%】 ニホンアマガエルHyla japonica
【30%】 シュレーゲルアオガエル
【20%】 ウシガエルRana catesbeiana
【10%】 トウキョウダルマガエルRa. porosa porosa

といった感じだった。
まぁ大半がアマとシュレで、池の方から「ブォ~ン」とウシが鳴いていて、
田んぼの外れで早出出勤でやる気満々のダルマがわずかに「ぐげげ、ぐげげ」と笑っている。


一気に鳴き止んで静まり返った後、最初にアマが鳴けば田んぼは「ゲェゲェゲェ」で包まれ、
最初にシュレが鳴いたら「コロロ、コロロ」と田んぼ中に広がる。
『アマだらけの田んぼ』になるか、『シュレだらけの田んぼ』になるかの2択なのだ。
だからピタッと鳴き止んだ時に次はどちらが鳴き始めるかを予想するのが面白くて、
無駄にガサゴソ歩いてみたりもしたが、結構これが当たらない。
これも物欲センサーがあるのか、『シュレ鳴け!!』と思えばアマが鳴くし、その逆も然り。
たまに空気を読まないでイレギュラーに「ぐげげ、ぐげげ」とダルマが嘲笑う。


小心者の男たちの集まりなもんで、誰かが勇気を出して鳴いてくれないと自分も続けないみたい。
人間にもそういうタイプいるよね~。
あぁ情けない男どもよ、それじゃああぶれちまうぜ。
憐れみの気持ちを抱きながら田んぼを散策していると、少し変なシュレの鳴き声を耳にした。
なにやらこもったような鳴き声で、全然響いていない音が3m先くらいから聞こえてくる。
そろりと近づいてみると2匹のオスが潰しあいながら醜く鳴き争っていた。
おそらく先程聞いたのはリリースコールだったのだろう。
オスだとわかった瞬間、互いに相手の上に乗り上げながら「コロロ、コロロ」と鳴き、
下になったらうまくすり抜け再び潰しにかかる。
私が見始めて12回戦くらいしたところで、写真右の個体が逃げ出して決着がついた。
可愛い声で鳴いているから、さぞ可愛らしい性格をしているのかと思いきや、
どーしようもない醜さだったな、本当に醜い争いだった。
なんかカエルって四肢の駆動域がなんとも人間臭くて、
それでいて動きがコミカルだから余計に滑稽に見えてしまうし、擬人化して見てしまう。



でもまぁこのくらい激しく愛を囁かなくては、生涯のパートナーは見つけられないのかもしれない。
私ももっと一生懸命になって鳴囊を膨らませないといけないなぁ。
そこら辺アカンからなぁ、どういうわけか来年“ベトナム嫁探しの旅”とか行きそうだし。
私としてはフィールディングでもなく観光の予定なのだが、
謎の思惑で良からぬ方向に行くかもしれん(笑)




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森の猛獣が腹を空かす時

モリアオガエル
モリアオガエル Rhacophorus arboreus


植物は時期モノで大変だなぁとか以前言っていたけど、
そういや両生類なんかも結構時期モノだったね。
なんだか“慣れ”といったら驕っている感じだけれども、
ずいぶんと彼らのリズムがわかってきたように思える。
まぁ未だにハコネサンショウウオOnychodactylus japonicus の成体はダメだけど・・・
ということでこの前見てきたモリアオガエル。


モリアオは遠くからでもよく通る鳴き声で鳴いていて、
たった1個体でもずいぶんと存在感がある。
シュレーゲルアオガエルR. schlegelii はたくさん集まって『もののけ姫』のこだまみたく、
「カラカラ・・・コロロ・・・」と鳴いているのとは違って、
本種は「ゴロロ・・・グルル・・・」みたいな唸るような感じで鳴いている。
以前後輩と本種を探しに行って際、鳴き声を頼りに草をかき分けて進んでいたら、
ちょうどお昼時ということもあって私の腹から「ぐぅ~」と空腹のアラームが鳴った。
その時は腹が鳴ったのが恥ずかしいという感情よりも、
あれ、こんな近くにもモリアオがいるのかという疑問が浮かんだ。
そして我々は『モリアオの鳴き声は腹が減った時の音』という結論に達したのだった。
だからモリアオの鳴き声はどんなだと問われれば、迷うことなく“空腹”と答えるだろう。




最近はアオガエルの流れがきてる気がする。
ということで次回もアオガエルです~。【次回予告】





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菖蒲のハンモック

シュレーゲルアオガエル
シュレーゲルアオガエル Rhacophorus schlegelii


目的の昆虫を探すために食草や植樹を見て回るという方法があるが、
カエル探しでも似たように、好みの植物から見つけ出したりすることもある。
アオガエルの類いは剣状の平行脈の葉の上で休んでいることが多い。
特にアヤメの仲間は湿地に生えていて葉の横幅もカエルが収まる広さなので、
それらの葉を太陽に透かしながら見ていくと、楕円型の影が浮かび上がるのを発見できる。
それをめくってみれば大体アオガエルが手足を縮こめてお休みしている。


この時もキショウブ Iris pseudacorus が鮮やかな黄色の花を咲かせているその下に、
それっぽい影を見つけたのでそっと葉をめくってみたらシュレがいた。
葉の緑と体色が見事に同化しているからこそ、堂々と真昼間から隠れもせずに寝ているんだろう。
予期せぬ来訪者に対して寝むそうなヤギ眼で一瞥をくれただけで、
すぐさま新しいハンモック探しへと出掛けていってしまった。




 黄菖蒲に

  揺れる寝起きの

   蛙かな


            月光守宮



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あの日、脳裏に浮かんだモノ

アカハライモリ
アカハライモリ Cynops pyrrhogaster


私はあまり本を読むほうではなかった。
今でこそ、多少なりともミステリー小説などを読むようにはなったものの、
幼い頃はそりゃあ全くで、マンガか図鑑くらいしかページをめくらなかった。
そもそも読みたいという欲も無ければ、本というモノを気にしてさえいなかったわけだが、
小学生のうちはイヤでも本を読まなければならない場合があった。
そう、読書感想文というシュクダイだ。
図書室に行っても図鑑か、唯一のマンガであるはだしのゲンくらいしか手に取っていなかったから、
まずどの本を選べば良いか全然わからなかった。
あの頃から生き物が好きだったから何か生き物の本が良いなと模索していて、
ファーブル昆虫記にしようかとも思ったが、長そうなのでとりあえずパスした。
そうこうしているうちに目に留まったのが「イモリの天気予報」という本だった。
この本は児童書なので文章量も多くはなく、とても読みやすそうなのでコレにすることにした。


本を読むことがなぜ苦手だったかというと、たぶん想像力に欠けていたからだと思う。
ただただ文字を読むだけで、それを脳内にビジョンとして描けないからよくわからず、
既に完成されたビジュアルを持つマンガや図鑑に流れていたんだろう。
だから最初はこの本を読むのにも苦労したわけだが、
途中途中に挿絵が入るためどうにかこうにか読み進められたんだと思う。
内容としてはイモリを飼育している中で、その行動が気象と関連があるのではないかと気がつき、
それを自由研究のテーマにした話だった。
イモリが水の中にいれば翌日は“晴れ”、水槽の壁を登っていれば翌日は“雨”。
読めば読むほどに惹き込まれていて、それは私にとって“想像力が必要なお話”だけではなく、
“知的好奇心を満たすことのできるサイエンス”でもあったからに他ならない。
この本を読んで以降、イモリという存在は私にとって憧れの生き物となっていて、
近所の池や小川に探しに行ってみたものの、
近年はイモリも珍しく姿が見られなくなった生き物の1つだったので、
結局見つけられないで憧れのまま、図鑑を開くことでしか会えない生き物だった。



初めて野生のイモリを見たのは大学生になってからだったから7,8年越しくらいで願いが叶った。
1年次の実習で尾瀬を訪れた時、湿地にウヨウヨと泳いでいる姿が見てとれた。
プカプカとただ浮いている個体もいれば、盛んに泳ぎ回っている個体もいて、
想像よりも水深の深いところに棲んでいるんだなぁと感心しつつ、
ようやく念願が叶って感動がこみ上げてきて仕方がなかった。
出会う機会が増えてきても、やはりイモリに会えるのは何度でも嬉しいし、
見つけると本のことを毎回思い出してしまう。
読書嫌いの私にとってはそれほど印象に残った本なのだろう。
つい先日もイモリを見つけてそんなことを思い出した。
休耕田の水たまりでモリアオガエルRhacophorus arboreus のオタマが降ってくるのを、
心待ちにしていたイモリをひょいとすくい上げて写真を撮ったのがこの写真。
初めて撮ったはずなのだが、どこか見覚えのある構図だった。
うーんどこだったかなぁと悩んでいたら、急にフラッシュバックしてきた映像が、
先程から書いている「イモリの天気予報」という本だった。
挿絵で直接この絵があったわけではないが、著者が初めてイモリを見つけた地図の挿絵があって、
状況やら環境やらが細かく書いてあり、そこから汲み取ったイメージというのがまさにこの写真だった。
読書が苦手ながらもどうにかこうにか想像していたそのビジョンを、
10年以上も経った今、なんとか写真でそれを表現しようとしていた自分に驚いた。
こんなことってあるもんなんだ。
写真っていうのも芸術だから、その人の感性が大きく関わっているわけだけど、
その源に気がついたってすごく貴重な体験だと思う。
おそらくこれまで撮ってきた写真も、今回のように本の中のイメージかもしれないし、
映画のワンシーンかもしれないし、誰かが撮った写真かもしれないし、
何かしらのビジョンが影響しているわけだ。
そう考えると写真は如実に人を表わすモノだなと。
きっと自分の中にある何かを、カタチにしたいんだと思う。
案外、無心で撮っていた初期の写真も、拙いが自分に訴えかけるモノを持っていて素敵なはず。



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タゴガエル類の性差

タゴガエル
タゴガエル Rana tagoi tagoi


真っ赤なタゴガエル。
トマトでも流れてきたのかと思ったよ。

ハコネサンショウウオOnychodactylus japonicus 探しで幼生がわんさか見られているのに、
あと一歩で見つからないのは相変わらず。
そしてその道中タゴガエルに出会っているのも相変わらず。
そういえば去年の今頃もそんなことしていたなぁ。
グゥグゥ鳴いているし真っ白な卵塊もたくさん産み落とされているし。
やはりタゴガエルは泥質な場所を好んで産んでいるように思う。
礫質とか岩がゴロゴロしてるようなとこよりも、
ちょびっと地面から水が浸み出てくるようなあまり水深のないところが産卵ポイント。
対してハコネサンショウウオはガレ場のようなところにいて、
今回は産卵していそうな伏流水の手前まで辿り着いたが、どうも成体が見られん。
幼生は溯上能力がほとんどないと言ってもいいだろう。
そんな幼生が急傾斜のわずかな水の浸み出るガレ場で見つかるなんて、
もうその浸み出てくる先で産卵しているに違いないだろう。
幼生は下へ下へと下っていくことくらいしかできないのだから。
むむむ、なかなかご縁がないねぇ。



話は戻ってタゴガエル。
この個体はメスだったのだが、このような色彩には性差があるように感じる。
オスは往々にしてくすんだ緑色っぽい。
これはナガレタゴガエルRana sakuraii にも言えることで、
タゴ系統はおそらくそういった色彩に性差があるんではなかろうか。
だからパッと見の色で雌雄がわかるようになってきた。
サンショウウオをハズし続けてきたからこそ、見えてくるモノもあるんだなと。
そう自身を慰めてやらないとやっていけないよ。
でもなんだかんだタゴガエル好きだーーー!!



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今年のトレンドは水玉模様

ナガレタゴガエル
ナガレタゴガエル Rana sakuraii


なんか変なナガレタゴを見つけた。
コバルトブルーの斑点を纏ったこの個体。
斑点のパターンはシュレーゲルアオガエルRhacophorus schlegelii にみられる、
黄色い斑点と同じようにも感じられる。
以前ヒダサンショウウオHynobius kimurae の色彩変異個体を見つけた沢と、
同じところなんだよね、なんだか不思議な沢だなぁ。
でも知らないところで恐ろしいことが進行しているような焦燥にも駆られる。
沢というある程度閉鎖された環境だけに、イレギュラーは目立ちやすいものなのかもしれない。


水中だとこのコバルトブルーは鮮やかさを増して、一層美しく目立つのだ。
こんなナガレタゴ見たことないけど、どういう状態なんだろう。
はて、存在意義なんて求めるモンじゃないと思うがこやつは何者なんだ・・・




それにしてもストロボ強すぎたな・・・





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