月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 草本類  

ぼくのわたしの、スプリングエフェメラル


 台湾から帰国し、関連記事を書いている内に年をまたぎ年度をまたぎ、ついには半年以上も経ってしまった。ようやく通常運行となるわけだが、季節は夏から春へと移ろいで、いつしか生き物たちの忙しい季節に突入している今日この頃。帰国後もちょこちょこ面白いフィールドがあったのだが、せっかく通常運行に戻るので少しは季節感のある記事でも。



 “ スプリングエフェメラル ” という言葉がある。雪解け間もない早春に花を咲かせ、夏頃には葉も落として休眠してしまうような、春植物のことで、フクジュソウAdonis ramosa やニリンソウAnemone flaccida などがそれにあたる。その春先にしか姿を現さない儚さや美しさから 『 春の妖精 』 などと例え親しまれている。
 この言葉が普及し始め、段々と春の代名詞のような使われ方になってきて、早春に羽化するギフチョウLuehdorfia japonica やミヤマセセリErynnis montanus などの蝶類も同じくスプリングエフェメラルと呼ばれたりすることもある。なので、広い意味で捉えるならば、このスプリングエフェメラルという言葉は、その人にとっての “ 春を告げる生き物 ” ともとれるわけで、それぞれの人にとってコレという生き物がいても良いと思う。

 ということで、陽だまりの芝生に寝転がれば最高に気持ちの良い昼寝ができるこの早春の、私にとってのスプリングエフェメラルたちをご紹介。



キノコバエ?
キノコバエ?


以前 『 キノコバエで繋がる妖しい花たち 』 でも書いたが、この季節といったらやはりカンアオイとテンナンショウの珍奇植物たち。今年に入って続々と地上に姿を現し始めている。







ランヨウアオイ
ランヨウアオイ Asarum blumei


 普段良く見る冬時期のカントウカンアオイA. nipponicumとは異なり春咲きのカンアオイ。花が大きく縦筋が良く目立ち、ボテっと崖についていた。咲き始めなので右の花はようやく口を開けた寄生獣みたいな様相。



ランヨウアオイ
ランヨウアオイ


 正面から覗きこむとこれまた妖しげ。肉質といい、血色といい、なんとも淫靡な花。






タマノカンアオイ
タマノカンアオイ As. tamaense


 こちらはタマノカンアオイ。多摩丘陵に産する珍奇植物で、薄暗い林にひっそりと群生を作っていた。カンアオイの妖しさに魅了されていまうと、花がついていなくともその特徴的な葉の形ですぐに目に入ってくる。今まで風景としか見ていなかった場所も、この葉があるだけでまったく違って見えるしワクワクする。
 生き物を知って視野が広がり、こんなにも世界が違って見えると面白くてたまらないし、この感覚が中毒的過ぎて新しい生き物にのめり込んでいくのだろう。



タマノカンアオイ
タマノカンアオイ


 ランヨウアオイもなかなかの迫力を持っていたのだが、タマノカンアオイはまた別格。まるでラフレシアのような萼裂片と口に多数のつばを携える異形の花。バケモノが口を開いて飲み込もうとするような、とにかく珍奇植物に相応しい。
 きっとこれは万人受けするタイプの花ではないが、好きな人はものすごく好きなはず。私もその中の一人。








テンナンショウの一種
テンナンショウの一種 Arisaema sp.


 テンナンショウたちがニョキニョキと地面から這い出る。彼らには生えるというより這い出るが相応しい。




ミミガタテンナンショウ
ミミガタテンナンショウ Ar. limbatum


 西日を浴びるミミガタテンナンショウ。葉よりも先に仏炎苞が展開するので、咲き始めはなんとも妖しげな姿になる。
 ただ、こう西日が当たると雰囲気も柔らかく、 「 マムシグサ !! 」 と毛嫌いするにはもったいないほど。




ウラシマソウ
ウラシマソウ Ar. urashima


 シダの新葉が展開するよりも早く、ウラシマソウは釣り糸を垂れる。仏炎苞は葉よりも下に咲くので、グッと目線を彼らに合わせてやらねばならない。




オドリコテンナンショウ
オドリコテンナンショウ Ar. aprile


 伊豆半島に産する素晴らしい和名を持つテンナンショウ。仏炎苞も緑色で、さらに踊り子と付けられたこの植物は、肩身の狭い日本のテンナンショウ界ではなかなかに類を見ないプラスイメージの持ち主。背丈もそう大きくならず、なんとも可愛らしいテンナンショウ。
 初めはユモトマムシグサAr. nikoense かと思っていたが、偽茎開口部が襟状に開出する点で見分けられるようだ。





ムサシアブミ
ムサシアブミ Ar. ringens


 日本のテンナンショウの中でも奇抜な仏炎苞。いったい我々人間の誰がこんなデザインを思いつくであろうか。和名は馬具の鐙に似ていることに由来する。









ナガバマムシグサ
ナガバマムシグサ Ar. undulatifolium


 そして今春イチバンの植物はこのナガバマムシグサ。細長い小葉がたくさん連なり、中央には白い斑入りの葉。ホソバテンナンショウAr. angustatum よりも長い葉は他のテンナンショウが持ちえない最大の特徴で、とにかくスタイリッシュでかっこいい。さっそく私のスマホの待ち受けはこの写真だもの。
 こんな素敵なテンナンショウが伊豆の山では多く見られ、山道を歩けばそこかしこで鋭い葉を展開しているのだ。植物に興味がないときの私だったら両爬がなかなか出ないツマラナイ山道だったであろうが、今の私にとってはよだれが止まらん場所だ。

 ここら辺のヘンテコな植物にハマってから、フィールディングが牛歩の如くのんびりになった。というか面白いのがありすぎて前に進めない状態。今まで地図をみて2時間くらいだろうなと見当をつけた道も、今では5時間ほどかかってしまう始末。まぁ幸せな時間だし、山頂に行くことを目的としないので満足したら下山したらいい。
 この植物が見たいがために伊豆まで車を走らせたが、やはりあの土地は山が深く関東の山々の中でも雰囲気が違う。なかなか良い環境だなぁ、伊豆半島。







 とこんな様子で、いろいろ珍奇植物を堪能している春となっている。


カタクリ
カタクリ Erythronium japonicum


 もちろんこんなポピュラーなスプリングエフェメラルも堪能しているが、やはり私は珍奇なスプリングエフェメラルに心が躍る。ここ2か月中にこんなにもたくさんの植物に出会える幸せ。





スプリングエフェメラル



 ってダラダラしてたら5月になってた (笑) さぁ日本の素晴らしい生き物を堪能しよう。







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Comments
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うわぁ、いいですねいいですね!
こんなに沢山ぶっこんで、なんて贅沢なスプリングエフェメラル!

テンナンショウとカンアオイの合わせ技なんてズルいです。
ウラシマソウの写真、後ろの若いシダが怪しさを増大させてますね。
そしてホソバテンナンショウ、それも斑入り葉の紫花でトドメですか。

素晴らしすぎる。
玉ボケの美しいカタクリの写真も素敵ですが、、、
やっぱりこっちですね。



Edit
>> クマGさん

やはりこっちですね。
というよりクマGさんの描写で私はこっちに惹き込まれたようなもんですから笑


ちなみにトドメのテンナンショウはナガバマムシグサです。
初めに知ったのはホソバテンナンショウの方なので、ボクも当時は“ホソバマムシグサ?”とか混乱して呼んでいました。
「ナガバ - ホソバ」「テンナンショウ - マムシグサ」どちらも意味的には似た名称なのでややこしいです。


ウラシマソウのシダやっぱり良いですよね。
メキメキと妖しい春が動き出しそうでたまらない場面に出くわしました。


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