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月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 蟲類  

夕刻は山腹で蝶を追いかけて


● ずぶ濡れひとっ風呂 安達太良山 山行記 ●
1. 早朝は源流の山椒魚を掘り当てて
2. 夕刻は山腹で蝶を追いかけて


 バンダイハコネサンショウウオOnychodactylus intermedius との出会いにより、沢での時間をギリギリまで使ってしまったので、午後からの安達太良山登山はカツカツの行程となった。安達太良山を含む安達太良連峰は鉄山中腹の標高 1,350 m ほどのところに 【 くろがね小屋 】 という山小屋が建てられており、この日はそこまで登って一泊し、翌日、安達太良山山頂へアタックする予定としていた。
 チェックインは 16 時までなので、 [ 奥岳登山口から小屋までのコースタイム 2 時間 ] + [ 散策時間 1 時間 ] を考慮して逆算してみると、遅くとも 13 時には登山を開始している必要があった。サンショウウオが名残惜しい沢から安達太良山は少し距離があるため、急いで車に戻ってエンジンをかける。
 途中、鶏醤油カツ丼と食後に福島のソウルドリンク 【 酪王カフェオレ 】 をパパッといただき、登山口に向けて車を走らせた。

 沢ではパラパラとした小雨に降られ、安達太良山への道中スコールのようにドサーっと雨が降ったりもしたものの、駐車場に着く頃にはピタリと止んでいた。 『 登山中だったらキツかっただろうな 』 と胸を撫で下ろしながら、ちょうど予定の 13 時ちょうどには準備を整えて出発することができた。


奥岳登山口
奥岳登山口

 もともと晴れ予報だったので、先ほどまでの雨はいわゆるゲリラ豪雨のようなものだと思われるが、登山口では気持ちの良い快晴へと転じており、山を登るにはうってつけの天候だった。初めはカラマツLarix kaempferi が整列するように並ぶ直線的は樹林帯で、次第にミズナラ Quercus crispula などが混ざり複雑な樹種構成へと変化していく。


ミズナラ
ミズナラ


 この晴れ渡る青空と、青々としたミズナラの葉が、気持ちの良いトレッキング気分にさせてくれる。葉の形でいえばミズナラは結構好きな部類で、葉柄から先端に向かうまでに横幅が広がるのがカッコいい。だからカシワQ. dentata とかも好き。



アサギマダラ
アサギマダラ Parantica sita


 林内にはたくさんのアサギマダラが飛来しており、薄暗い林内を弱々しく、ふわふわと漂っていた。なかなか止まってくれず、写真はブレブレだったが、チェックイン時間を考えるとそこまで粘れないので、諦めてズンズンと上を目指す。
 勢至平まで登ってくると頭上に枝葉がかかるような、背の高い木々はほとんどなくなり、夏の強い日差しが容赦なく照りつけてくる環境となった。だいぶ早起きして沢登りした後の登山なので、これがなかなかにこたえるのなんのって。



ゴヨウマツ
ゴヨウマツ Pinus parviflora


 ただこの辺りから、針葉樹はゴヨウマツに置き換わり、場所によってはハイマツPi. pumila のように矮性化した個体も出てくるのでこれが案外面白い。またハイマツのように針状の葉が5本まとまって束生するのも似ていて良いよね。



ウラジロヨウラク
ウラジロヨウラク Menziesia multiflora


サラサドウダン
サラサドウダン Enkianthus campanulatus


 また、ウラジロヨウラクやサラサドウダンなどのツツジ類はちょうど花期を迎えており、赤 ~ ピンクの様々な色味の小さな提灯のような花をつけていた。そういった木本類がカンカン照りも関わらず健気に咲いている姿に背中を押されながら、勢至平分岐を過ぎてもうすぐ山小屋が近くなったところで、山らしい蝶に出会った。



クジャクチョウ
クジャクチョウ Inachis io


 学生時代に戸隠で見て以来、あまり見た記憶がなかったけれど、久々に見たら目玉模様の迫力もさることながら、その周辺に散りばめられた宇宙を連想させるような色合いも綺麗なことに感動した。ここ最近は山に登ることが増えてきたが、そういえばその時々でも見かけることはなかった、もしくは意識の外側でひらひら飛んでいたのかもしれない。左後翅に欠損はあるが、久しぶりの再会なので、ただただ嬉しい。
 近づくとすぐに逃げてしまうものの、すぐ近くにまた止まるので、飛んでは追いかけ、飛んでは追いかけを、カンカン照りの中繰り返していたら、ついに飲み物が底を尽きた。


 まずい、これは急がなければ。撮影に時間を食ってしまったので、チェックインまでの時刻も残り 30 分に迫る状況。

 安達太良山は活火山でもあり、山頂西側にある沼ノ平という火口を中心にいくつも噴気地帯が存在する。山小屋のすぐ近くにも点在するため、一部立ち入りが禁止されているエリアもあるくらいなので、近づくにつれて硫黄の臭いがし始めると事前に調べた書籍には書かれていた。その硫黄臭が鼻につくようになると、いよいよ山小屋の屋根が見えてきた。


くろがね小屋
くろがね小屋


「 おぉ、まるで要塞だな。 」

 山小屋といえば私の中でのイメージでは、槍ヶ岳山荘や蝶ヶ岳ヒュッテなどのように、赤 ~ オレンジ色の暖色系の屋根が角度をつけて構えているイメージがあるのだが、ここはフラットに近い屋根部分にそこからストンと落ちるような四角い造形の山小屋である。その姿形が山岳地帯で敵を迎撃するために作られた要塞のようでもあってカッコいい。


くろがね小屋
くろがね小屋


 横から見ると屋根には多少の傾斜がみられるが、それでも四角い印象のままなのでカッコよく、日光があたる南側の側面にはソーラーパネルが甲冑の大袖のように並ぶ。
 このくろがね小屋は 1953 年に開業された歴史ある山小屋で、もともと 2020 年や 2021 年に建て替え工事が入る予定だったようだが、コロナの影響など様々な理由によって延期となっており、2022 年 6 月時点では来年 4 月からの着工となっているらしい。
 せっかく延期になって夏山の安達太良連峰を山小屋泊で登ることができるということだったから、実は元々泊まりたいと思っていたので、今のうちにこの山小屋を訪れたというわけだ。

 ギリギリ 10 分前くらいに駆け込み、無事チェックインを済ませることに成功した。よしよし、山行としてもなんとかなったな。




くろがね小屋


 2022 年 6 月現在はコロナ禍のため寝具の貸し出しはないため、寝袋などの持ち込みが必要となる。テント泊と違って寝袋だけで良いのでパッキング自体は軽く、ついでにマットやエアーピローなども持参。さてさて、ベッドメイキングもささっとできたので、これからがお楽しみのメインイベント。
 実はこのくろがね小屋には温泉がついているので風呂の時間だ。登山ルートも一部立ち入り禁止になるほど源泉が近く、そこから湧き出す温泉を小屋に引いている源泉掛け流しの温泉付きの山小屋なのである。普通の山小屋泊だったら風呂などには入れず、ボディーシートで気休め程度に身体を拭くくらいしかできないのだが、ここでは存分に汗を流すことができる。
 ( ※ 山のため下水設備があるわけではないため、石けんやシャンプー、歯磨き粉なども基本的には使用しない。 )



風呂札
風呂札


温泉もコロナ対策で男女各 3 人までしか入ることができないよう制限をかけているため、入浴する際は受付でこの札をもらって入る。
もらいに行った時、札の残数が 2 枚だったので、どうやら先客が 1 人いらっしゃるよう。




温泉


 これが今回の安達太良山登山最大の目的 !!  山奥で入る源泉かけ流しの気持ち良さは本当に格別だ。源泉がすぐ近くでそのまま流れ込んでいるようなものなので、湯の花を多く含んでいるこのお湯は白く濁るだけでなく、湯の花の固形感もある。その上、硫黄の匂いはそこまでキツくなく、ずっと入っていたくなる温泉である。
 沢での石起こしで腰には十分過ぎるほど疲労が溜まっていた上に、少し急ぎめに登ったのでふくらはぎもパンパンだ。それが一気にほぐれていく最高の温泉。


 先客は 60 代のおっちゃんで、初めはお互い探り探りな距離感だったが、登山という同じ趣味を持つ者同士で風呂に浸かれば、気がつくと話が弾むようになる。おっちゃんは素泊まりのベテランハイカーのようで、 「 晩飯は二本松インターチェンジを降りたところにあるヨークベニマルで肉と鰹のタタキを買ってきたから、酒飲みながら 1 人で宴なんだ。 」 とか、 「 稜線上のテン場で風が強くてどうしようもない時は、ポールを引き抜いてペシャンコのまま朝までやり過ごすのが得策。 」 などと教えてくれた。
 私は私で、 「 ここら辺にはこんなサンショウウオがいる 」 とか 「 この山にはあんな花が咲いていて面白いんすよ 」 という具合に、お互いがしゃべりたいことをただただくっちゃべっているだけだったが、なんとか会話は成立していたように思える。
 また、この山小屋は冬季もやってくれているので、山好き酒好きがストーブの周りに集まって冬場は相当賑わうらしい事も聞いた。まだ冬山登山は全然なんだけれど、話を聞いているとやってみたくなる。前にも山でおばさまと蘭の話をしながら、雪山登山の楽しさを熱弁され、 「 チェーンスパイクだけでいけるレベルの山でも感動すること間違いなし。 」 とまで言われたので、いつかチャレンジしてみたい。冬羽のニホンライチョウLagopus muta japonica とか、冬毛のオコジョMustela erminea とか見られたら最高だしね。

 風呂も気持ち良いし、ソロ遠征の私にとっては良い話相手におっちゃんがなってくれるので、いつまでも入っていられるところだったが、私は1泊2食付きにしているので、そろそろ夕食の時間だ。



カレー
くろがね小屋カレー


 そしてくろがね小屋のもう1つのお楽しみが、この名物のカレーライスだ。ビーフのコクにポークの甘み、そしていやらしくないクミンの香り、万人受けを極めた味に仕上がっていて最高すぎる。山小屋のカレーって底知れない魅力があるよな。
 ここのカレーは結構有名みたいで、 “ 絶品秘境メシ ” などと賞されることもある。



スーパードライ
スーパードライ

 そんなうまいカレーには、やはりビールも合わせたいので、追加でこちらも注文させていただきました。山で飲むキンキンのビールは本当に最高。
 『 山登り ⇒ 温泉 ⇒ ビール 』 という最強コンボを繰り出し、天に昇りそうなくらいな爽快感が得られる。

 それでいて山小屋の主人からは 「 おかわりもしてください。 」 という温かいお言葉があったので、私含め 3 人の男性ハイカーは 2 回もおかわりをして、合計 3 杯も食っていたわけだが、最高すぎませんかね、そんなに食べられるって。年配の女性でも 1 回はおかわりしていて、みんなやみつきになりながら食べていたのが印象的だった。
 温泉とカレーがあるからここに泊まったと言っても過言ではないほどの満足感。





くろがね小屋


 陽が落ちて辺りが真っ暗になると、小屋のランプが灯り、そのぼわんとした温かみのある暖色の光で小屋の中は満たされる。その雰囲気もとても落ち着いていて、純喫茶のような優しさがあり、どこか懐かしくもあるような空間である。



くろがね小屋


 内装が木材ベースだからか、ランプの暖色とすごく相性が良いんだろうな。壁に飾られた四季折々の花の写真や、干されている手ぬぐい、注意書きの張り紙、そのどれもがこの小屋と調和していて、なんとも言えない心地好さがある。



スキットル


 せっかく良い空間なので、持参したスコッチと行動食兼つまみのミックスナッツで 2 次会を 1 人でしっぽり開催。消灯の 21 時までは 1 時間半ほどあったので、宮田珠己の 【 旅の理不尽 アジア悶絶篇 】 を読みながら、異国の地を脳内でトリップする。
 あぁ、どうしてタマキングはしょーもない旅でも面白く旅行記として書けるのだろうか、相変わらず最高だなぁ。指に残ったミックスナッツの塩気をちゅぱちゅぱと舐めながらスコッチを飲んでいたら、いよいよ消灯時間が近づいてきたので寝袋に潜り込む。

 十分すぎるほどの休養が取れたので、明日の安達太良山山頂アタックには万全の体制で臨めそうだ。早起き ・ 疲労 ・ 温泉 ・ 酒 ・ 満腹、そのどれもが爆睡の要件を満たしていたため、寝袋に入った瞬間、気を失ったように一瞬で眠ってしまった。
 さてさて、明日はどんな生き物が待ち受けているのだろうか。







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Category: 両生類  

早朝は源流の山椒魚を掘り当てて




 去年訪れた東北南部の山でのトレッキングがあまりに心地好くて、今年も東北の山を狙っていこうではないかと 【 安達太良山の山小屋泊登山 】 を計画していた。


● ずぶ濡れひとっ風呂 安達太良山 山行記 ●
1. 早朝は源流の山椒魚を掘り当てて
2. 夕刻は山腹で蝶を追いかけて





 平年よりも少し早い梅雨明けとなった 2022 年の 6 月。仕事の都合で月曜日も休みにできた 3 連休があって、土曜日の午前中だけ所用が入っていたが、午後からはフリー。パッキングを済ませて夕方くらいから高速に乗り、東北自動車道をのんびりと北上していく。 2.5 日分の休日での遠征だ。

 ちょこちょことサービスエリアに寄っては休憩し、少し早めの夕食をとったりするが、最近はどこも小綺麗になっているのには感心する。特にトイレが清潔にされているのはありがたいよなぁ。
 北へ北へと進んでようやく福島県入りし、ある程度車を走らせたら、適当なパーキングエリアで仮眠をとる。時刻にして 22 時過ぎ。私にしてはずいぶん早い就寝時刻だ。
 別に 『 運転が長くて眠気が限界 !! 』 とか 『 お肌に悪いから 0 時前にはきちんと寝なくちゃ 』 とか、そんな理由ではなくて、実は安達太良山近くの沢で “ あるサンショウウオ ” を早朝に探して、午後から安達太良山に登る計画を立てていた。そのため初日はとても健康的な就寝時刻に仮眠をとることとした。


 大型のサービスエリアとは違って、コンビニも無く、トイレと各種自販機 ・ 交通情報モニターくらいしかないようなパーキングエリアは停まる車もまばらで、駐車場の端に停めて仮眠していれば全く周りは気にならなかった。 1 発目のアラームで難なく起床し、まだ街路灯が灯る薄明かりの東北自動車道を進んで沢を目指す。



 沢の入り口には 6 時くらいに着いた。うん、想定通りだ。実は過去に狙いのサンショウウオを求めて、ここら辺一帯でフィールディングしたことがあるのだが、なんとかこの沢で幼生を見つけたものの、他の沢は見る影もなく惨敗に終わったことがある。
 あんまりの成果で、何しに来たかわからないくらいだったので、さざえ堂を観光したり、名物のソースかつ丼を食べたり、朝ラー文化で喜多方ラーメンを食いまくったりと、それ以外の観光部分で充実させていた。




遠征組写真
組写真
①②
③④

① 会津ソースかつ丼
② 喜多方ラーメン
③ 米沢牛焼肉定食
④ 会津さざえ堂 ( 円通三匝堂 )


 「 何やってるんだよ、観光ばっかりじゃん 」 「 そんなことしているから見つけられないんだ 」 なんて意見が飛び交っていたりするかもしれない。私としてはなかなか福島に行く機会も少ないわけだし、フィールドは丸坊主の可能性も十分に考慮してだね、そもそもさざえ堂は前々からすごく造形的に興味があった上に、 『 遠征先でグルメは必須でしょ 』 の考えなので、賢明な判断というか、むしろ初めから観光を軸に旅程を組んでいた節さえある。挙句、急遽ビジネスホテルを取ってサウナとビールを満喫してさえいた。 ( まさに観光旅行だな )

 まぁ、それはそれで良いのだ。観光とフィールドのどちらがメインだかわからない旅だったが、遠征としては失敗ではない。そう、決して失敗ではない。


 話は戻るが、その時に見つけておいた沢でリベンジといこうではないか。幼生がいるということはこの流域で産卵しているのは間違えなく、成体もこの一帯にいるということだ。
 今回、成体の発見に至れば、前回の 【 福島観光旅行 】 、もとい 【 福島山椒魚遠征 】 も無事に実を結ぶことになるだろう。


 6 月の福島はすでに夏の装いで、 6 時の段階でも沢にしっかりと日光が届き、動きやすい明るさになっていた。記憶を辿りながら沢沿いを歩いていると、まずは大好きなオニグモの仲間が網を張っているのを見つけた。




イシサワオニグモ
イシサワオニグモ Araneus ishisawai


 オレンジ色と朱色の中間くらいの鮮やかなオニグモで、似た種類があまりいない見た目にインパクトのある種なので、個人的には結構好きなクモである。山地性のため低地ではなかなか見かけない種類で、私は過去 3 回とも沢沿いもしくは沢の岸辺で見つけているので、なんとなくそういった環境が良いんだろうなぁと思っている。案外、両爬屋とは相性の良いオニグモかもしれない。




沢


 沢の周囲はスギCryptomeria japonica の植林地も隣接する混交林になっており、水際に沿ってホオノキMagnolia obovata がパラパラと点在し、水中に大きな葉を落としている。光の入り方も綺麗でとても雰囲気の良いフィールドなのだが、内心はサンショウウオが出て来ず焦っていた。

 前回の経験通り、幼生はチラホラと姿を見せてくれるので良さそうな匂いはしているのだが、未だに私の前には成体の姿を見せてくれていない。沢の両サイドを背の高いササに覆われている箇所も通過するのだが、東北はクマが出て来そうでビクビクしていた。 『 人里離れた沢の中でクマにやられたとしたら、きっとしばらくは発見されないんだろうな。 』  そんな不安と、サンショウウオの成体が出ない焦りに加えて、この後に安達太良山へ登るというタイムリミットまで迫ってきているので、精神的にはあまり穏やかではなかった。

 だいぶ源流へと遡っていき、ところどころ伏流水になったり、流れが細くなってしまったりして、探索も終わりを告げようとしていた。伏流になる少し手前の、ほんのちょろちょろになった流れのところで、急に見られる幼生の数がグッと増えた。

 『 あれ、この感じは前にも別のサンショウウオでもあったな・ ・ ・ ? 』

 頭の片隅でその記憶を辿っている最中、思い出すより先に現実の石の下から狙っていたサンショウウオが現れた。




バンダイハコネサンショウウオ
バンダイハコネサンショウウオ Onychodactylus intermedius


 よっしゃ、ようやくのご対面。見つけられそうな予感がした先ほどのシチュエーションは、以前シコクハコネサンショウウオO. kinneburi を見つけた時と酷似するものだった。この感覚はやっぱり大事なんだなぁ、ちゃんと覚えておこう。

 さてバンダイハコネサンショウウオである。東北北部に生息するキタオウシュウサンショウウオO. nipponoborealis と関東のハコネサンショウウオO. japonicus に挟まれる形の分布域を持つことから、 【 中間の~ 】 という意味のintermedius という種小名が与えられたサンショウウオ。 (Yoshikawa and Matsui 2014)   その中間と言われる地域の、タイプ産地周辺である磐梯 ( ばんだい ) 山が和名の由来となっている。
 長らくこのOnychodactylus 属は、日本ではjaponicus ただ 1 種だけだと考えられていたが、 2012 年のキタオウシュウサンショウウオの分割を皮切りに、分類学的な再検討が行われ、続々と新種記載が続いた。 ( 包括的な再検討により新種記載されたのは吉川らが記載したツクバハコネサンショウウオO. tsukubaensis 以降のハコネサンショウウオ類であり、キタオウシュウサンショウウオについては、元々は吉川らが東北北部型として以前から扱っていただけに、なんともモヤモヤする新種記載となってしまったので、研究的には “ キタオウシュウサンショウウオを皮切りに ” というわけではないことは付け加えたい。 )
 そして 2022 年の今年、これまで遺伝的に分化していることが分かっていた隠蔽種の “ 近畿型 ” と呼ばれていたグループも、晴れてホムラハコネサンショウウオO. pyrrhonotus として記載され、国内のOnychodactylus 属が 7 種にまで増えた熱い分類群でもある。 (Yoshikawa and Matsui 2022)

 そんな年にまだ見られていなかったバンダイハコネサンショウウオのリベンジが果たせたのは、なんとも胸が熱くなる展開だ。この調子でどんどん挑戦していきたいね。




バンダイハコネサンショウウオ
バンダイハコネサンショウウオ


 パッと見の印象としては、背中の黄土色の模様がベッタリと乗っていて、尾は他のハコネサンショウウオ類と比べて短いので、模様の入り方や形態から、以前見つけたツクバハコネサンショウウオに似ている印象を持った。分子生物学的に比較してみると、他の 6 種の中ではタダミハコネサンショウウオO. fuscus が近縁らしく、次いでツクバハコネサンショウウオに近縁なようである。 (Yoshikawa and Matsui 2022)
 まぁ、今回はやっとこさ 1 個体見ただけなので、バンダイハコネサンショウウオを語るには、まだまだ私は経験が浅すぎる。

 それでいて、今回見たのはまだ若い個体なので、繁殖期特有の発達した爪や、オス個体の肥大化した後肢なども見てみたいところ。本種については、初夏産卵型と初冬産卵型の2パターンがあるらしく、そういった謎に満ちた部分を持ち合わせているので、機会を見つけて深掘りしていきたいな。



 数十分ほど夢中になって撮影していたところで、ポツポツと雨が降って来た。沢の中では、土砂降りになって鉄砲水を食らったり、そこまでいかないにしても沢下りの危険度は増してしまうため、一旦キープして下流へ向かう。
 上半身が比較的びっしょりとなってしまったものの、なんとか怪我もなく無事に下りて来られた。その間に雨も小降りへと変わってきたので、せっかく出てきてくれた遠地のサンショウウオだから、ちょっとでも写真は粘っておきたい。(午後からは安達太良山を登るためそこまで時間が余っているわけではなかったが。)



バンダイハコネサンショウウオ
バンダイハコネサンショウウオ


 あぁ、なんて可愛らしい生き物なんだ。順調に見られた喜びと、前回のリベンジが果たせた達成感でより輝いている。図鑑でなんとなく眺めている感覚とは違って、フィールドでの感情も乗せた思い出補正が、その生き物をより魅力的に感じさせる。だから知っていることも大切だけれど、それと同じくらい、実際に出会っていることも重要な意味を持つ。これからもいろんな生き物に、自分の足で、自分の眼で、実際に会いに行きたいね。


 さて、そろそろ区切りをつけて出発しなければ、午後の登山に支障をきたしてしまう。名残惜しいが、サンショウウオと沢には別れを告げて、今回のメインディッシュ安達太良山を目指そうではないか。




 ■ 参考文献 ■ 

Yoshikawa, N., & Matsui, M. (2014). Two new salamanders of the genus Onychodactylus from eastern Honshu, Japan (Amphibia, Caudata, Hynobiidae). Zootaxa, 3866(1), 53-78.

Yoshikawa, N., & Matsui, M.(2022). A New Salamander of the Genus Onychodactylus from Central Honshu, Japan (Amphibia, Caudata, Hynobiidae). Current Herpetology, 41(1), 82-100



Category: 鳥類  

種の在処


 コブシMagnolia kobus の花が開き、キブシStachyurus praecox の花序が垂れ下がってくる早春の雑木林。



kコブシ
コブシ



キブシ
キブシ


 私はシュンランCymbidium goeringii やミミガタテンナンショウArisaema limbatum を探して、下ばかり見ながらのんびり歩いていた。以前より増え始めたムサシアブミA. ringens の生命力に圧倒されながら林内を巡っていると、落ち葉をガサガサ揺らす音を耳にする。
 ここではよくガビチョウGarrulax canorus が結構な音を立てて落ち葉めくりをしているのを目撃するので、今回もそうだろうと思っていたが、どうにも小さいガサゴソ音のようで、ガビチョウとは違う気がする。それに 「 チッ、チッ、チッ 」 という鳴き声もする。ゆっくり近づいて目線を落としてみると、そこには違う鳥が地面にいた。




アオジ
アオジ Emberiza spodocephala


 アオジだ。藪に潜行していることの多い鳥なので、近くで見られる良いチャンス。実はこの時、望遠レンズを持っておらず、マクロレンズで撮影してこの距離なので結構寄れていた。
 ある程度近づいてもあまり飛んで逃げるようなことはなく、むしろ何かに執着するようにあまり場所を変えない。



アオジ
アオジ


 時折、地面をついばんだりしているのでしばらく観察していると、どうやら地面に落ちた植物の種子を食べているらしく、それが目当てで逃げなかったようだ。アオジらしく地面をピョンピョン跳び回り、落ち葉をどかしては種子を探り当てて食べている姿が目の前で展開している。
 いつもはそれが藪の中で行なわれていて、なかなか見づらいので良い機会に恵まれた。




アオジ
アオジ


 この個体はオスで眼の周りが黒くなるのが特徴。本種が属するホオジロ属Emberiza の他のいくつかの鳥でも、同じようにオスの眼の周りが黒くなっている種がいるので、何かしら生態的に意義のあるカラーリングなのかもしれない。繁殖期は縄張りを形成したり、地表や藪に巣を作ったりなど、地表でいろいろと行動することも多いから、太陽光が地面から反射してくるのを軽減するために、アメフト選手なんかがやるアイブラックみたいな効果があるんだろうか。

 まぁ、考察するのは面白そうな鳥ではある。地面に這いつくばって撮影していたので、ズボンも T シャツも土まみれになってしまったが、楽しい食事シーンでした。
 結局、何の種子だったか分からなかったけど、ここら辺も分かってくるともっと面白いんだろうな。戦略的にこういう地表で採食する鳥類に種子を運ばせることで、分布を広げた植物もいるんだろう。









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