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月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 菌類  

春のモリーユ



 キノコと聞いてイメージするのは、椎茸だったり松茸だったり、食用のモノをイメージする方が多いのではないだろうか。次いで毒キノコのイメージも健在で、その見た目の毒々しさに注目を浴びる場合も多い。



タマゴタケ
タマゴタケ Amanita caesareoides


 また野山で見つける、こういった傘が開いた種類もキノコっぽさがあって、フィールドではよく目を惹く。その一方で、一口にキノコと言っても千差万別で、時に奇妙な造形のキノコが、ふとしたところににょきりと顔を覗かせていることがある。
 今回はそんな奇妙なキノコの仲間でも、春に見かけるあるキノコについての話。





チャアミガサタケ
アミガサタケ Morchella esculenta


 春らしさと言えばやはりこのアミガサタケだろう。ヨーロッパのほうではポピュラーな食用キノコで、香りが良いためあちらでは高級食材とされているようだが、日本ではあまり知名度も高くなく、一部のキノコ好きの方が春先にひっそりと食べているようなキノコ。種小名のesculenta は 【 食用の 】 という意味である。
 このウルトラマンに怪獣で出てくる “ シーボーズ ” みたいな見た目がなんとも印象的で、骨っぽいイメージがこのキノコにはあって覚えやすい。品種で言えばこの個体はチャアミガサタケM. e. var. umbrina とされるタイプだろうか。


 実はこのアミガサタケ、初めに初心者向けの簡単な掲載種の少ない図鑑で調べて同定していたもんだから、こういった 【 網網のキノコ =  アミガサタケ 】 という認識だったので、改めて調べなおした時に使った図鑑を見てみるとずいぶんと種類があることに驚いた。
 春はマムシグサやらランを求めて野山に入ることの多い季節なだけに、このアミガサタケの仲間を見かける機会にも恵まれていたのだが、全然ちゃんと観察していなかったし、ロクに写真記録もないので 『 あの時のあのアミガサタケの仲間は何だったのだろう 』 という後悔の念で日々寝られないとか、寝られるとか。
 なので過去の写真フォルダに “ アミガサタケ ” と名前をつけている、かろうじて写真が残っているキノコたちを改めて見直していくことにした。


トガリアミガサタケ
トガリアミガサタケ M. conica


 こちらもてっきりアミガサタケの種内変異の範疇だと思っていたが、色々と調べてみるとどうやら別種らしいことが分かった。落ち葉に埋もれ、クタッとなっているので種類がわかりにくいが、トガリアミガサタケだと思われる。今になってアミガサタケと見比べたら全然違うじゃんと思うけれども、ぼんやりとしたイメージしか持たず、あまり熱意を持っていた分類群でもなかったので、フィールドでちらりと見かけた程度じゃ安易な同定だけで終わらせてしまっていたな。
 生き物の同定には知識ももちろん必要だけど、好奇心を抱いて熱心に観察することも十分に必要であろう。




ヒロメノトガリアミガサタケ
ヒロメノトガリアミガサタケ M. costata


 網の部分が大柄で広く、特に縦脈が長いのが特徴のアミガサタケ。見比べると本種がこれまで見た中では1番カッコいいな。いかに盲目的な同定をしていたのかがよくわかる。

 アミガサタケの仲間には前述した3種以外にも、オオアミガサタケM. smithiana 、オオトガリアミガサタケM. elata 、コトガリアミガサタケM. angusticeps 、アシブトアミガサタケM. crassipes 、など複数種が含まれている大きなグループでもあるので、今後については興味も出てきたことなので、しっかりと見ていきたい。







オオシャグマタケ
オオシャグマタケ ( ホソヒダシャグマアミガサタケ )  Gyromitra gigas


 また別グループのキノコではあるが同じく 【 アミガサタケ 】 の名前が付くシャグマアミガサタケの仲間も図鑑に載っていない種があったので、間違って覚えていたキノコでもある。



オオシャグマタケ
オオシャグマタケ ( ホソヒダシャグマアミガサタケ ) 


 この脳みそのようなシワシワの見た目が特徴的で、これは変なキノコを見つけたなぁと帰ってから同定したのだが、その時はシャグマアミガサタケG. esculenta だとばかり思っていたし、何よりこの見た目のキノコはそれしか載っていなかった。しかしアミガサタケ属と同様に、違う図鑑では別種も掲載されており、この写真のキノコがシャグマアミガサタケではなくオオシャグマタケだということが判明した。
 シャグマアミガサタケは頭部が赤褐色だが、オオシャグマタケは黄土色で、ヒダの入り方も異なる。


 アミガサタケと同じくシャグマアミガサタケのesculenta という種小名も、 【 食用の 】 という意味があるように、北欧では缶詰になって売られているほどの食用キノコでもあるのだが、このシャグマアミガサタケの仲間にはジロミトリン ( 名前からして本属由来の命名ものと思われる ) という毒成分が含まれおり、毒抜きが必要なキノコでもある。生食はもちろん危険なのだが、毒抜きで煮沸させると加水分解してモノメチルヒドラジンという揮発性の猛毒になり、本場の北欧でも調理中に揮発したモノメチルヒドラジンを吸い込んで死亡する事故も発生しているとのこと。揮発するモノメチルヒドラジンを吸い込まぬよう、風通しの良いところでしっかり茹でこぼせば毒抜きができるようで、食べるまでにはそれなりのリスク・工程を経る必要があるようだ。
 この食うまでの過程がフグ鯨やオゾン草などの特殊調理食材みたいで面白く、機会があればチャレンジしてみたいワクワク感がある。 ( リスクあり過ぎておそらくやらないと思うけど。 )


 アミガサタケ類、シャグマアミガサタケ類の件を受けて、絵合わせ同定は全種 ( あるいはかなり網羅している ) 図鑑でやらないと、結構な漏れが出るなというのを実感した。ヒロメノトガリアミガサタケにしてもオオシャグマタケにしても、掲載していない図鑑も多数あるので、今回のような誤同定があったんだろうなぁ。
 種内変異か種間変異かを判断するにも、属内あるいは近縁種の構成を理解していないと、消去法での絵合わせ同定では失敗する可能性が大いにあるわけだ。


 片手間にやるにはキノコ類はなかなかにハードルが高そうだから、まぁほどほどに楽しもうと思う。



※ キノコの同定には子実体を検鏡する必要がある場合があります。筆者は菌類の同定知識に乏しく、またブログに掲載している種類については特に検鏡せずに同定をしているため、誤同定の可能性があります。野外で採取したキノコを食べる際は当ブログの情報を参照せず、きちんと同定できたものを適切な調理法で召し上がるようお願いします。




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Category: 鳥類  

価値観の檻


 春の草花を追いかけて、向かうフィールド向かうフィールドで変な面白い草でもないかと、ついついそればっかりに目が行ってしまうので、ピント調整機能というか、ある固定の距離感でしかモノを見なくなってしまう状態に陥ることがある。特に動かない植物というのは、自分が観察しやすい距離にまで移動してからじっくり見るため、ほとんど同じ焦点距離のまま森を歩くことになる。

 すると不意に少し遠めの所に鳥が出てきても、その影を捉えるのが精一杯で全く眼のピント合わせが追いつかず、結局さっき出たのが何だったのかが分からず仕舞いになってしまうことが度々あった。ある程度、広い分野の生き物をそのフィールドで見たいと思っている私なので、やはりそれは悔しいし、そういうのにも対応できるようにして色んな生き物をフィールドで見つけ出せるような生き物屋になりたいなぁと最近は思っているわけで。なので集中してある種の生物群を探すのも大事なんだけれど、時々そこから目を離してピント調整機能をほぐすというか、広いレンジを見られるようにリラックスするのも大切だということを近頃感じるようになった。

 そんなことを、シュンランCymbidium goeringii 探しの最中 “ 桜の花びらの絨毯の上を優雅に歩くツグミTurdus naumanni ” を取り逃がした悔しさから学び、植物探しの最中でも積極的に鳥を探すようにして得られたつい先日のフィールドの話をしようかと。






オオルリ
オオルリ Cyanoptila cyanomelana


 先週桜の絨毯を歩く冬鳥のツグミを見たかと思えば、翌週にはもう夏鳥であるオオルリが気持ちの良い鳴き声を空に響かせていた。植物も季節を感じられて良いが、鳥類もなかなかに季節季節で面白い表情を見せてくれる。
 特にオオルリなんて、こんなに早く来ているだなんて思ってもみなかったので、とりあえずフィールドに出ていろいろ見てみるもんだなぁと実感させられた。




 植物探しではほとんど使わない耳を澄ませれば、近くでなんだかやかましい声がするではないか。登山靴のソールをゆっくりと踵から地面につけて忍び寄り、草木の隙間からその音源を確かめる。




ガビチョウ
ガビチョウ Garrulax canorus


 やはり騒々しいのは、想像していた通り、ガビチョウだった。外来種のレッテルを貼られてしまい、それだけで生き物の価値観としては世間一般から酷評される存在の鳥だけど、白いアイリングや過眼線は特徴的でカッコ良く、コソコソと林床の落ち葉をひっくり返しては餌探しに勤しむ姿が面白い鳥だ。また複数の鳴き声のバリエーションを持っているので、観察していても魅力的。

 そんな彼らについて調べたくて、改めて私が持っている日本の鳥図鑑 2 冊を見てみると、なんとガビチョウが載っていないではないか。こんなにフィールドで出会う機会の多い鳥なのに、こんなに特徴的で初心者が調べたくなる鳥なのに、外来種の項目にも載っていないし、 【 今後記録される可能性のある鳥 】 なんて項目があってもそれにすら載っていないという。なんて悲しいことだ。

 近いところだと台湾にも分布している鳥で、いくら移動能力が低く渡りをしない種だとしても、日本に来ない可能性が “ 0 ” というわけではないだろう。沖縄の留鳥であるリュウキュウサンショウクイPericrocotus divaricatus tegimae が、温暖化の影響かどうかはわからないがこれまでよりも分布を拡大し、近年では九州や四国だけでなく神奈川県でも見られる例があるように、台湾や中国のガビチョウの個体群が分布域を広げて日本に来ることだって何ら不思議なことではないように思える。
 そうした場合、1980 年代に外来種として日本に広まった 【 かご抜けのガビチョウ 】 と、台湾や中国から分布を広げてきた 【 自然分布のガビチョウ 】 とを日本国内のフィールドで見分けることは可能だろうか。ましてやガビチョウを 【 日本の侵略的外来種ワースト100 選定種 】 と区分する以上、保全の観点からはその 2 つのグループを識別できなければ、自然分布の生き物の命すら奪いかねない。

 【 自然分布のガビチョウになら在来種のシロハラT. pallidus なんかのニッチが奪われるのは仕方が無いが、かご抜けのガビチョウは許さない 】 なんて意見を持つ方なんかもいるんだろうか。それぞれの考え方というのは色んな人に話を聞いてみないと分からないから、シンポジウムとか時間を見つけて参加したいなぁ。

 ただまぁ私個人が思うこととしては、地理的障壁の影響を受けにくく分布域については流動的になりやすい鳥類においては、安易に 【 外来種 】 というレッテルに翻弄されず、果たしてその人為分類が “ 真 ” なものかも分からない状態で、その生き物に対してマイナスイメージを持ってほしくないということ。それによって本来ある魅力的な部分に目を向けられなくなってしまうのは、生き物好きの一人として悲しいことだなと思うわけです。
 保全上の善悪はあるかもしれないけれど、 『 この鳥カッコ良いな 』 という生き物好きの感性を、不確かな価値観で歪めてほしくないんだよね。




 とまぁカッコ良い鳥の鳴いているシーンが見られたのに、図鑑に載っていないもんだから愚痴をダラダラ書いてしまった。話をフィールドに戻そう。






 林道のミミガタテンナンショウArisaema limbatum は相変わらず不気味な紫色の色彩で、いろいろマムシグサを見てきて改めて異様さに気がついたが、あの耳たぶと言われる仏炎苞の奇妙さが、なんとも春のフィールディングを楽しくしてくれる。初めて見たマムシグサがミミガタテンナンショウであり、私を珍奇な植物の世界に迷い込ませた植物こそ、ミミガタテンナンショウだ。

 しばらく歩いていくと湖の縁近くまで来られるところに差し掛かる。ここはあの鳥のポイントだ。話には聞いているが、これまで何度と訪れていてもその姿どころか鳴き声すら確認できなかった。
 あまり待ち伏せて鳥を探すのが得意ではなく、歩き回って探す方が楽しいタイプの私だが、今回は休憩もかねてしばらくそこで待ち構えていたら、この日は運良く狙い通りの鳥が姿を現してくれた。






ヤマセミ
ヤマセミ Megaceryle lugubris


 それは気休めの特茶に 3 口目をつけている時だった。湖の奥から 「 プゲゲゲ、プゲゲゲ 」 と、アオゲラPicus awokera に似た鳴き声が近づいて来ているのに気がつき、音がする方の湖面を覗き込む。すると白黒の縞模様を持つ鳥が、水面すれすれを飛翔している姿が目に飛び込んできた。この状況 ・ この色彩 ・ このサイズから、瞬時に狙っていた鳥だということを理解して、急いで飛んでいった先へと追いかけて走る。
 湖面から突き出た古木の枝先にとまっているのを認め、距離はだいぶあるもののそれがヤマセミであることがわかった時、嬉しさのあまりほったらかしたままにしてきた特茶のことなんて一瞬で頭の中から消えてしまった。

 距離があったので望遠レンズで撮影して、さらにそこからトリミングしてこの程度にしか写っていない証拠写真ではあるけれど、初めて出会うヤマセミの存在感は別格だった。写真じゃ伝わりにくいがカワセミAlcedo atthis とは全然サイズが違っていて、ハト大と評されることが多いように本当にデカい。
 『 あれ、この感覚どこかでも感じたなぁ 』 と思ったらアレだ、初めてオキナワイシカワガエルOdorrana ishikawae を見た時と同じ感覚だ。アイツもあんな宝石みたいな綺麗な色彩でこじんまりとしたカエルなのかと勝手に想像していたが、蓋を開けてみればホルストガエルBabina holsti ・ ナミエガエルLimnonectes namiyei と肩を並べる “ 山原三大巨蛙 ” の一角ではないか。
 ヤマセミが来る前に、同じくらいの距離の枝にカワセミもとまっていたのを見ていたため、よりそのサイズ差を感じさせられたのだった。

 色彩は水墨画みたいに綺麗だし、他のカワセミ類と違って冠羽があるのも、よりヤマセミのキャラクターを際立たせている要因だ。この冠羽がカッコ良くて、羽というよりかはトゲが生えているみたいで、白黒の色彩といいヤマアラシ科Hystricidae に属するヤマアラシ類のトゲそっくりなのもポイント。



 あぁ、なんて良い鳥なんだ。一度見てしまうと、もっと近くで見たいという欲が出るな。鳥屋みたいに生息地や移動ルートを見極めて、ブラインド待機して撮影とかしてみたいけれど、そんなレベルに全然達してないから無理だなぁ。それに自分の性分的にも、待っていられなさそう。
 まぁとにかくヤマセミが見られたのは本当に運が良かった。


 帰り際、放置していた特茶のところまで戻り、ペットボトルを拾いがてら興奮でのどがカラカラになっていたので、一気に流し込む。ヤマセミの興奮と特茶の一気飲みで、なんだかほんの少しだけ痩せたような気がした。  うん、ほんのちょっとだけ。


Category: 草本類  

黄色い春



 春が来た。植物をやってると本当に春が待ち遠しい。生き物を求めてフィールドに出るようになった初期の頃は、両爬一辺倒な生き物屋だったので、冬のアカガエルやサンショウウオの産卵を観察したり、春のシュレーゲルアオガエルRhacophorus schlegelii の合唱に耳を傾けることによって、季節感を感じたり春の訪れを実感していた。
 それでも十分に春を堪能できるのだが、植物に興味を持ってからというもの、毎年毎年やってくる春の、あの爆発的な生命力の喝采がたまらなく好きだ。



草


 なんて事のない下草も、青々と伸び放題に生え始め、


シダ新芽


 シダの新芽がグルグルと起き上がってきては展開し、


ウラシマソウ
ウラシマソウ Arisaema urashima


 カンアオイやウラシマソウなどの妖しい花がこっそりと顔を覗かせて、


キブシ
キブシ Stachyurus praecox


 クヌキQuercus acutissima やキブシの花が野山を黄色く染めていく。




 踏み固められた散歩道からひょいと外れて雑木林に入り込み、少し薄暗くなった林床をみていくと、春になったら真っ先に会いたいあの蘭がお待ちかね。



シュンラン
シュンラン Cymbidium goeringii


 木々の間から差し込むスポット光を時々浴びながら、暗い林床で輝くように咲いていた。この明暗差のある情景がとても美しく可憐である上に、数十秒もすれば木漏れ日は別の場所を照らし出してしまうので儚くもある。
 静かな雑木林の林床に座り込み、ひとり味わう贅沢な春のひとときを。


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