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月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 菌類  

クモタケの侵攻



 前回のオオトリノフンダマシCyrtarachne akirai や、以前のカラスハエトリRhene atrata を見ている里山で、クモにフォーカスして散策していると、クモそのものだけでなく、彼らと関係を持っているヤツらの存在にも目がいくようになる。
 それほどまでにクモ関係の面白いフィールドであり、それにハマっている私。





クモタケ
クモタケ Purpureocillium atypicolum


 トタテグモ類を中心に寄生する冬虫夏草。写真はキシノウエトタテグモLatouchia typica から発生したクモタケで、宿主であるキシノウエトタテグモが掘った地中のトンネルから子実体が顔を出す。そのトンネルの奥底では菌糸に包まれたトタテグモが眠っている。
 面白いのが、キシノウエトタテグモが作った出入り口の蓋をパカっと押し上げて生えているのが見どころだ。



クモタケ
クモタケ


 一つ見つければ周囲の崖から複数見つけられるので、細いの太いの、長いの短いの、様々な顔をトンネルから覗かせている。この時期にクモタケを見つけておくと、うまく偽装されたトタテグモ類の巣のありかが判明するので、その集合住宅の番地さえ覚えておけば、後日その崖地で生きたトタテグモの巣を発見できるという寸法だ。


  むらさきの

    墓標頼りに

        トタテグモ








 次にオオトリノフンダマシが多産するススキ原で、いつもの通り何かしらのクモがいないかと散策していると、葉上に妖しげなクモの影が。



コエダクモタケ
???


 不完全型の冬虫夏草がクモの腹部を覆い尽くしている。菌糸は薄いレモン色を呈していて、表面にはオレンジ色のツブツブが散見される。
 またクモの糸なのか菌糸なのか、周辺部に白い糸状の物質が網状に点在し、よく見るとそこからも同様にオレンジ色のツブツブが発生しているようにも見える。ということで、この糸状のモノも菌糸なのかなぁと思うところ。

 宿主となっているクモは、ススキ原という生息環境面や、上顎の太さ・第一脚の長さなどの形態面、頭部前面に入るオレンジ色の色彩面から、カバキコマチグモCheiracanthium japonicum あたりがやられているのではないだろうかと想像している。さすがにこの状態のクモを見分けられるほど、クモの勉強が捗っているわけじゃないので、もちっと修行が必要だなぁ。


 これを見たのが7月の最終週で、その2週間後の8月初旬にも、クモを探しに同じ里山を訪れたので、 『 あ、そういえばあのクモ生の冬虫夏草はどうなったかな? 』 と思い、ぼんやりとした記憶を頼りに例のススキ原を目指すと、変わり果てた姿になった冬虫夏草が待ち構えていた。




コエダクモタケ
トルビエラ属の一種 Torrubiella sp.


 薄いレモン色を呈していた2週間前とは違ってレモン色は濃くなって、腹部を覆う形状さえもがレモン型になっている。少ない情報から考察するに、コエダクモタケT. leiopus あたりかなぁと個人的には考えている。もしくはこの後にもっと色が濃くなるならミカンイロクモタケT. aurantia とか。
 まぁ正確な同定を行なうには分生子を検鏡する必要があるので、断定は避けておく。



コエダクモタケ
トルビエラ属の一種


 もうちょっとだけ近づいてみて観察してみると、子嚢殻は卵形をしていて中心部はより濃いオレンジ色を呈している。レモン形の腹部にさらに小さなレモンがポコポコと発生しているようで面白い。
 また脚の節々からもレモン色の菌糸が出ているので、もう少し時間が経過したらもっと菌糸に覆われるのだろうか。

 機材的にはもう少し拡大できるはずなんだけど、なんかあまり寄れないんだよね。この手の集合体的なモノになぜかマニュアルでもピントが合わなくて、マムシグサの果実とかもアップで撮りたいけど全然ダメなんだよなぁ・・・



 様子を見にその翌週も訪れてみたが、不安定な草上ということで、ススキごと倒れてなくなっていたのが残念でならない。こういう冬虫夏草は定期的に覗きにいって経過観察するのが面白いのに。
 まだまだ生き物の世界は奥が深い事を実感させられたので、クモというフィルターでフィールドを見ていくのも結構奥深いかもしれない。







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Category: 蟲類  

トリノフンダマシの監視



 最近のクモ熱に当てられて、ついに前々から悩んでいた図鑑を購入。なかなか金額的に踏ん切りがつかなかったが、フィールドで出会う種々のクモ類を見ていると、やはり物欲が押し寄せてくるのでついに 【 ネイチャーガイド 日本のクモ 増補改訂版 新海栄一 著 】 を購入することに。
 荷物としては増えてしまうものの、これを持ち歩いてフィールドに出向くのが、最近でのブームになりつつある。

 ハエトリグモも面白いんだけど、丸いフォルムのクモたちも結構好きなので、今回はそんなクモたちについて。ちなみに、今回のクモたちは少し前に載せたハエトリグモ 2 種と同じ里山で見つけたもので、多様なクモが見られるお気に入りの場所なので勉強フィールドとしてはうってつけでもある。



ヤマシロオニグモ
ヤマシロオニグモ Neoscona scylla


 まずは種数も多いオニグモから。本種は変異が多すぎて、パッと見ではどれも別種に見えるくらいに変異パターンがある。なので図鑑だけでなく、ネットでも多様な画像を拾って大まかなパターンを掴んでおくのも大事なように感じている。そうすると、なんとなくの感覚であたりをつけられるようになる気がしていて、個人的には腹部に三日月状の模様が対で並んでいると、まずは本種を疑うようにしている。




マルヅメオニグモ
マルヅメオニグモ Araneus semilunaris


 他のオニグモ類よりは一回りか二回りほど小ぶりなオニグモ。小さいながらも造形は格好良く、硬質な雰囲気の腹部でストロボ光を反射するような光沢のある見た目。腹部前半部にある白色の帯模様が爪状に見えることに本種の和名は由来する。
 最初は何かの糞の隣にいたから、文字通りトリノフンダマシの仲間かと思っていたが、図鑑で調べてみるとオニグモの仲間だということがわかった。腹部の形といい、サイズ感といい、トリノフンダマシ感がすごいんだけどなぁ。 ( と思っていろいろ調べていたら、 wiki にもトリノフンダマシとの類似性について言及されている。 )  特にシロオビトリノフンダマシCyrtarachne nagasakiensis とか、白い帯状紋もあってすごい似ていると思うし、違うグループで似たような模様が発達するということは何か生態的に有利なことがあるのだろうか。




オオトリノフンダマシ
オオトリノフンダマシ Cyrtarachne akirai


 そしてこちらが本家トリノフンダマシ。この里山は本種が多く、毎回 3 , 4 個体が得られた。多くはススキなどの単子葉類の葉裏についているのを見かけたが、ススキ原に隣接している木本類の葉裏についているのも散見したので、必ずしも休息する葉を選ぶというわけではなさそうだ。
 パッと調べて出てくる学名はC. inaequalis とされているが、谷川先生によって2013年に種分割されたっぽいな。
C. inaequalis はインド、中国、韓国、ミャンマーに分布するようで、こちらで見るオオトリノフンダマシ C. akirai は日本 ( 本州、四国、九州、南西諸島 ) 、台湾、中国に分布するようだ。加えて分割した時の記載論文に載っているマギイトリノフンダマシ C. jucunda という新種は沖縄本島に産するという。こちらも見てみたい。
 系統地理的にみてもC. akirai が本州 ~ 台湾 ~ 中国に分布する中で、C. jucunda が沖縄本島でどのようなプロセスを経て分化したのかが気になるところ。



オオトリノフンダマシ
オオトリノフンダマシ


 特徴的な目玉模様であるが、実はコレが動くのが面白い。目玉本体というか、丸い模様がグリグリと動くわけではなく、周りの黒い紐状の模様がウニョウニョと動くのでなかなかに不気味で気持ち悪い。それが遠目には目玉が動いているようで、なんとも “ 監視カメラの妖怪 ” みたいなんだよね。

 この里山では以前、トリノフンダマシC. bufo を一度見つけたことがあるのだが、それっきり見かけていない。他にもシロオビトリノフンダマシとかアカイロトリノフンダマシC. yunoharuensis とかも見つけたいんだけど、まだまだ修行が足りぬ。

 とはいえ、ビギナーズラックで過去に、日本七大珍蜘蛛の一角であるツシマトリノフンダマシParaplectana tsushimensis を見つけているので、このナゲナワグモ科のグループはもうちょっと頑張っていろいろ見ていきたい。あと日本七大珍蜘蛛でいうなら、次はキジロオヒキグモArachnura logio を見たいなぁ。






オオトリノフンダマシ
オオトリノフンダマシ


 そして私がそんなクモたちを求めて滑稽に葉裏を覗き続けている姿は、きっとどこかからグリグリと目玉を動かして監視されているに違いない。






Category: 爬虫類  

双頭の蛇




 空は青々と澄み渡り、分厚く背の高い入道雲の合間からは煌々と真夏の太陽光が差し込んでくる。里山は、ようやく夏の装い。今年は曇りがちだった梅雨のジメジメした期間が長かった分、真夏日だろうと貴重な夏だからと自分に言い聞かせて外へ出てきた。

 しかし暑い、暑すぎる。 500 ml のソルティライチが、早々に空っぽだ。

 大粒の汗が額から流れ落ちるのを感じながら苦悶の表情を浮かべている私の横を、前から虫カゴと虫捕り網を持って走ってきた少年2人は、汗でビッチリ髪の毛が張り付いているにも関わらず屈託のない笑顔で通り抜けていく。夏休みの魔力はとても雄大で、その只中にいる彼らの底知れぬパワーは相当な原動力・行動力になっているようだ。
 そんな眩しい輝きに当てられて、こちらもあの頃を思い出してひと踏ん張り。



木漏れ日


 カンカン照りの直射日光が当たる場所は、午前中ならまだしも、午後には殺人的な温度になっているので、日陰になっている谷戸を散策することにした。風の吹く谷戸は幾分涼しく、日陰のありがたみを実感すると共に、時間帯的にも気温的にも爬虫類はこちら側だろうなというのが体感レベルで分かる。

 サツマノミダマシNeoscona scylloides が隠れる葉っぱを覗き込んだり、木の幹をちょこまかと走り回るデーニッツハエトリPlexippoides doenitzi を追いかけたり、最近めっきりお気に入りのクモたちと遊んでばかりいると、足下をスルリと細長いモノが這っていくのが見えた。
 それも少し赤色を纏ったような。


 “ それ ” は勢いそのまま、畦道を通り抜けて水を張った田んぼの中へと入っていく。この時期は稲の生長もめざましく、稲と稲の間隔がギチギチに狭くなるほどで、小動物にとってはある種の森のように鬱蒼としている。

 『 奥に入られたらマズいな 』

 距離を詰めすぎて警戒されることで、奥の暗がりに逃げ込まれてしまわぬよう、少し遠巻きに動きの先へと回り込むように追いかけて “ それ ” が進む斜め前でぶつかるような位置取りをする。動き的にはヘビだろうし、チラと見えた赤い模様からしてヤマカガシRhabdophis tigrinus tigrinus だろうと当たりをつけているが、実際にこの目でちゃんと見るまでは確証は持てない。
 特に暗がりを進む流線型の生き物なんて、よっぽどの動体視力が無ければ見間違える事なんてざらにあるだろう。



 先回りをしてスルスルと近づいてくるそのヘビを待ち構えていると、鮮やかな赤を纏った小さなヤマカガシが巧みに泳いでやってきた。




ヤマカガシ
ヤマカガシ


 水辺のヘビは涼しくて良いね。赤色を持つヘビだけれど、周りの稲の緑色が反射して全体的に緑がかった写真だから余計にそう感じてしまう。
 上陸したてのブサイクなニホンアマガエルHyla japonica の幼体でも狙っていたのだろうか。

 ヤマカガシが動きを止めると稲が防風林が如き役割をして、ピタリと止まったその波紋を最後に、水面を揺らすモノは無くなった。すると眼の大きな可愛らしい頭部が水面に美しく反射して、まるで双頭のヘビのような姿が目に映る。



 そんな幻想的な光景を、暑さも忘れて眺めていた。 数枚シャッターを切るとヤマカガシは私に気がついたようで、田んぼの中心部である稲が密生した暗部へとゆっくりと消えていく。
 ぼんやりとさっきまでヤマカガシがいた辺りに赤い残像が残っている。まるで夏の陽炎みたいに、ぼんやりと。









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