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月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 爬虫類  

セマルハコガメとこれからの両爬屋


●カラッカラ空梅雨の南ぬ島●
1. 10年振りに、南ぬ島へ
2. 奇蟲の森
3. 小心者に口笛を、王様には冠を
4. セマルハコガメとこれからの両爬屋




 朝のカンムリワシSpilornis cheela の勢いに乗りたい2日目。唯一フルで活動できる日なので、この快晴のタイミングで色々見ていきたい。




海


 海に向かって走る下り坂。初夏の沖縄、窓全開で潮風を浴びて走る下り坂は贅沢以外の何物でもない。こういう風に、登り坂から急に視界が開けて海が見えるあの爽快感に、何か名前がないものだろうか。コレすごい好き。

 ラジオではひっきりなしに沖縄の空梅雨の話が持ち出され、 「 ダムの貯水率が50% 以下 ( 私が行った時で47% ほど ) になっていますので節水のご協力を。 」 とか、まるで雨乞いのように 「 こんな空梅雨なので、雨に関連した曲をリスナーの皆さんにリクエストしてます。 」 といった内容が飛び交っているので、余計にこちらまで暑くなってくる。





イシガキトカゲ
イシガキトカゲ Plestiodon stimpsonii


 美しい海の青を見た後は、鮮やかな青い尾を持つイシガキトカゲを。バスキングが好きな彼らでさえ、午前中早々に切り上げて日陰を走り回ってる。尾の青さは国産Plestiodon の中でも濃い青を持っているトカゲで、普段見慣れているヒガシニホントカゲP. finitimus に比べて1.2 倍くらい青い ( 当社比 )
 と言っても国内ではバーバートカゲP. barbouri に勝る青さはおらず、バーバートカゲこそ国産Plestiodon 随一の青さであり、そこと比べてしまうとシマヘビElaphe quadrivirgata のいない青ヶ島のオカダトカゲP. latiscutatus の尾なんて 【 半分、青い。 】 レベルである。 ( 当社比 )


 夢中で追いかけている時は良いが、ふと我に返ると大粒の汗が頬からボロボロとこぼれていくのに気がつく。これは今日のフィールディングはなかなかにキツイだろうというのが容易に想定できる。





ハチジョウシュスラン
ハチジョウシュスラン Goodyera hachijoensis


 和製ジュエルオーキッドことシュスランの仲間は、きめ細かく入った葉脈が美しいラン科植物で、本州にもミヤマウズラG. schlechtendaliana やベニシュスランG. bifloraなど宝石のような葉を持つ近縁種がおり、愛好家も多いランである。海外ではマコデスMacodes spp. 等のランがジュエルオーキッドの名で通っていて、これら宝石蘭たちは熱帯地域の系統で、古くからその葉体を愛でてこられたグループだ。
 日陰になった林床に群生があり、いたるところで宝石が展開している光景を独り占めできる嬉しさは暑さも和らぐ。





サキシマキノボリトカゲ
サキシマキノボリトカゲ Japalura polygonata ishigakiensis


 今回はキノボリトカゲに関しては小さい個体ばかりで、あまり大きな個体を見ることがなかったのが残念だった。彼らがモリバッタと同じような類縁関係を地理的に示したら面白いだろうなぁ。
 2つ目の記事で書いたモリバッタの話を最初の記事にもちらっと登場する両爬屋の後輩に話してたら、 「 アオヘビ属Cyclophiops とかどうなんでしょうね ? 」 という助言をもらった。なるほど、リュウキュウアオヘビCyc. semicarinatus ・サキシマアオヘビCyc. herminae ・タイワンアオヘビCyc. major の類縁関係か。たしかにサキシマが遠縁ならばモリバッタと同じだなぁ、これは面白そうなトピックを教えてもらったな。
 やっぱりこういう話ができる友人大事。



 午前中ですでに汗ダクダクだ。とりあえず次のポイントに行く間に水分と塩分を補給しにメシ屋へ行こう。




知花食堂 そば
知花食堂 そば(大)


 メニューは八重山そばとトーフチャンプル他2種類くらいしかないシンプルなメニュー欄で、私はそば(大)を注文。おばちゃん1人で切り盛りしているみたいで店内はこじんまりと静かで、沖縄の離島の食堂といった趣。
 肝心の八重山そばは非常に優しい味付けでカツオ出汁が活きるシンプルなそば。具材の卵焼きもほわほわで、優しい味とはこのことか。


知花食堂 生姜
すりおろし生姜


 具材で面白いのが、すりおろし生姜が入っていること。紅生姜は結構入っている沖縄そば屋も多いのだが、こういったすりおろした生姜が入っていることはあまりなく、最初はかなり恐る恐る溶き入れていたんだけど、ここのシンプルなカツオ出汁のスープに合う︎んだこれが。というかシンプルな味付けだからこそ生姜が際立ち、またカツオ出汁の良さを全力で縁の下から盛り上げてくれているような旨さ。そしてこれで450円という破格の安さ。
 都内にある沖縄料理屋の沖縄そばとか、うまいけど全然庶民価格じゃないんだよなー。うぅ、沖縄そば屋があるだけで、沖縄移住したい。


 遠征に出かけるとブログ記事もグルメ要素がだいぶ増える傾向にあるようで、次の記事もグルメ要素ありの予定。やはりせっかく旅するならその土地の美味しいものをいただきたいし、忘れないように写真撮って記事にしたい。





 八重山そばでしっかり充電したら午後の部スタート。



ヒカゲヘゴ
ヒカゲヘゴ Cyathea lepifera


 午後は太陽の高さも一段と上がって、ジャングルに入っても射し込む太陽の光でだいぶノックアウト気味。そんな [ 気怠さ ] と [ 生き物見たさ ] を天秤にかければ、かろうじて [ 生き物見たさ ] が勝っているのでなんとか頑張れるが、結構しんどいレベルで暑さにやられてる。というか精神力でなんとかフィールディングしてる感じ。
 もし心が折れてたら石垣港近くにあるクーラーの効いたA&Wに引っ込んで、ルートビアを浴びるようにおかわりしまくってるレベルだよ、この暑さ。空港店はジョッキじゃなかったしね、飛行機に乗り遅れるレベルでおかわりしまくりながらダラダラしてた思い出の店だったから今回も行きたかったんだけど、残念ながら時間を捻出できず。まぁ、また西表島行く時とかに寄っていこう。



タニワタリ
タニワタリの一種 Asplenium sp.


 欝蒼とした日陰で一休みは絶対大事。こんな暑い中でガツガツとジャングルトレッキングしてたらどこかでぶっ倒れちまうわ。
ぬるくなったさんぴん茶を流し込み一休み一休み。
 そしたら遠くで何やらガサゴソ落ち葉の音が聞こえてくる。これは何か動物が落ち葉の上で行動しているに違いない。
そう思って忍び足で駆け寄ってみる。




ヤエヤマセマルハコガメ
ヤエヤマセマルハコガメ Cuora flavomarginata evelynae


  「 セマルぅーーー︎ !! 」 おぉ、愛しのセマル。カンムリワシに続いてまたも天然記念物との出会い。

 この時はイヌビワの実か何かをガシガシと首を伸ばして食べていたところで、その動きに連動して落ち葉がガサゴソと音を立ててしまっていたようだ。その音に気がついてすぐにそっと近づいて私はセマルを認識したのだが、それとほぼ同時にセマル自身が “ 私に認識されたことを ” 認識した。すると、大きく口を開けてイヌビワにかぶりつこうとするその瞬間に目が合ってピタリと動きが止まり、トムとジェリーのワンシーンのようにあんぐり口を開けたまま静止 ( しているよう感じたが、残念ながら実際には口は閉じてしまった。現実はそうコミカルにいかないな ) 。 いわゆる石化けだ。
 彼ら陸生カメ類がやる危険回避行動の一つで、外敵の存在を察知するとピタリと動きを止め、周囲の石や落ち葉に溶け込む [ 石ころ帽子 ] 的なテクニック。案外これをやられると気がつかないもので、以前も友人たちとヤンバルを歩いていて林道の真ん中にいたリュウキュウヤマガメGeoemyda japonica が石化けをしていたら、前を歩く4人は気がつかないでそのまま素通りして、最後尾にいた私が気がつくということがあった。それほど 【 動かない 】 というのは武器らしい。
 ただまぁ、今回はこちらが先に気配を察知して発見してしまったので、今さら石化けは通じないんだな。

 前日夕方に逃げられて悔しい思いをしていたところで、久々のセマルは嬉しすぎる。畑とか路上とかで見かけることが多いだけに、こうして森の中で出会えるのは言うまでもなく最高で、私が大学1年の西表島合宿最終日になんとか念願だったセマルを森で見つけた感動が思い出された。




 両爬との邂逅を胸に抱きながら生き物系サークルに入って、 「 見たい生き物は ? 」 と問われれば馬鹿みたいに 「 セマルです︎ ! 」 と返答していたあの頃の私にとって、セマルハコガメというのは憧れの、いやそれ以上の存在になっていたんだと思う。図鑑で見ていた “ それ ” が目の前で歩いていて、腹甲を閉じて箱になって、実際に同じ空間にいることができて、西表島合宿の最終日は今までの人生では味わうことがなかった 【 達成感 】 が得られる瞬間だった。





ヤエヤマセマルハコガメ
ヤエヤマセマルハコガメ ( 当時初めて出会った個体 )


 あの時のセマルは甲長にして10 cm ほどのまだまだ小さい個体だったが、思えばもう10年以上も前の出会いだったからきっと今は良いサイズの個体になっているんだろう。カメラの設定なんて全然わからずにシャッターを切っていた時代だったので写真こそあれだが、それでもやっぱり思い出深い個体だったので思い出すだけで感動する。
 一眼レフを手にしてから写真の質に目が向きがちになってきてしまっているが、綺麗に撮れなくても写真は写真であって、 『 好きな生き物に出会った 』 という記憶には違いないのだから、こういった思い出を大切にしていきたいね。やっぱりセマルは良いよなぁ。



 そうやって悦に浸りながら更新しようとしたところで、Yahooニュースにタイムリーなセマルの記事が。どうやら石垣島のヤエヤマセマルハコガメを無許可で捕獲し飼育していた輩がいて、文化財保護法違反の疑いで書類送検されたとか。ヤエヤマセマルハコガメは国指定の天然記念物であるため、捕獲はおろか触れることさえ文科省の許可が必要な生き物である。


 石垣島の於茂登岳では、それこそ10年前は 【 アサヒナキマダラセセリOchlodes asahinai を採らないで 】 というポスターが貼られていたくらいだったが、今回の旅では石垣市の教育委員会の方が常駐されていて、声掛け運動やチラシ配布まで行っていた。
 石垣島では自然環境保全条例に基づき、保全種と保護地区が指定され、2015年より対象種および保護地区内での全ての動植物の捕獲は原則禁止とされていて罰則規定もある。石垣市希少野生動植物保全種は要注意種を含めて爬虫類で7種、両生類で4種が指定されており、個人的な感想としては非常に警備強化・条例強化されている印象だったので、こういった話題を目にすると残念で仕方ない。


 我々、両爬屋としてはこれは重大な事件だと受け取らなくてはならない。いくら真面目に条例を守っていようとも、こういう不祥事が起きてしまっては信頼回復するのはなかなかに難しく、世間の目は今後益々厳しいものになっていくことは必至である。
 生き物屋も、マニアも、写真家も、業者も、登山家も、観光客も、それぞれの境界線・区分は曖昧な部分もあり、件の不届き者と一緒にされたくはないが世間一般の目にはみんな 【 容疑者 】 として映ってしまうこともあるだろう。ルール違反を犯さず身の潔白を証明できるよう、ルールの認知は最低限必要である。
 この記事を読んでいる両爬屋のみならず生き物屋の方々には、改めて条例や法律のルールの再確認を、せめて遠征などで訪れる土地については行なってほしいと願います。我々生き物屋としては昔に比べて非常にやりづらい趣味になってきてしまったのは事実ではあるが、時代が時代なので文句ばかりを連ねるのではなく、なんとか模索してルールの範囲内で最大限楽しめるようにしていきましょう。



 大好きなセマルがネガティブイメージのニュースで発信されているのが辛すぎる。




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Category: 鳥類  

小心者に口笛を、王様には冠を

●カラッカラ空梅雨の南ぬ島●
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 ----------------- スネークフックがない。
 これから夜のフィールディングを始めようって時にこの紛失は痛手だ。石垣島の毒蛇といっても高が知れているわけだが、足元の藪を払ったり眼前の蜘蛛の巣を払ったりと、何かと棒状の装備というのは便利で、加えて言えば有ると無いとでは精神的な安心感が違う。
 いわば精神的な支柱なのだ。





鶏ソーキそば
八重山とりソバ [ 麺や とり次郎 ]


 晩飯で入ったそば屋で珍しい [ カツオ出汁 + 鶏白湯 ] という沖縄そばをうまいうまいとすすりながら、スネークフックについて思案していたが、やはり必要だという結論に至り、100均で急遽材料を集めて自作することに。合計300円の即席スネークフック。
といっても、持ってきていたスネークフックも同じく300円の自作品だけど 笑






マリーブ
マリーブ [ マリヤ乳業 ]


 そして夜食のジューシーやマリーブをスーパーで買い込んで、いざ夜のフィールドへ ! スネークフックの作製で遅い出発となってしまったが、やはりスネークフックは精神的な支柱。これがあるのとないのでは気の持ちようが違うわけなんだ、これが。

 そう思って急ごしらえで準備したのに、出ない出ない、ヘビ出ない。毒蛇云々ではなくヘビが出ない。





ナンバンギセル
ナンバンギセル Aeginetia indica


 ぬらっとおばけみたいな大きいナンバンギセルに出会っても、こいつらにスネークフックを使うわけにいかないし。




オオヒキガエル
オオヒキガエル Rhinella marina


 オオヒキ、多すぎ。こちらは以前にも増して道路上にわらわらと出てきている。それもかなり恰幅の良い大型個体がゴロゴロしてる。こりゃあちょっとやそっとのサイズのヘビだったら呑まれちまうだろうなぁと、コイツらに八つ当たりしたい気分だったが、ヘビが出ないのは純粋に実力不足。
 昼間に下見しておいた山を散々歩きまくっても全く出る気配ゼロ。こりゃーいかんわ。


 道中私に構ってくれるのは、やっぱりオスのこいつだけ。 






リュウキュウコノハズク
リュウキュウコノハズク Otus elegans


 昔の記事でも書いたけど、南西諸島の夜は口笛さえ吹ければ彼らが相手をしてくれる。どこかでオスの「コホッ、コホッ」という声が聞こえたならば、口笛でそれを真似てみれば 「 むむ、オレ様の縄張りに別のヤローが︎ !! 」 と、嫉妬深いオスが偵察にやってくる。

 遠くにいたとしても、こちらが口笛吹けばだんだんと 「 コホッ、コホッ 」 が大きくなり、すぐ近くまでやってくる。4時まで粘ってヘビを探してみたが、相手をしてくれたのはこのリュウキュウコノハズクたちだけだった。

 うーむ、これはキツイ。そう思いながらも、前日羽田空港で寝られなかったツケが着実に瞼を重くしてくるので、一旦眠ることに。寝不足と夜間フィールドの疲れで爆睡必須。
 今回はダイハツのトールを借りられたので、座席を倒してフルフラットにできるため、これまでの車中泊よりも格段に快適な車内空間になっていた。

 あぁ、こりゃ最高。今まで欲しい車といったら 【 ジムニー 】 一択だったが、この快適さを味わってしまうとフルフラットになる車も捨てがたいなぁ。新型ジムニーの発売を受けて、現行モデルが安くなるかなぁと思っていたが、車中泊に重点を置くなら [ 悪路走破性 < 車内空間 ] もありだなぁ。それぐらいバツグンの寝心地。

 車中泊ってどうも寝つくまでに時間がかかってしまうが、 【 フルフラット + 銀マット 】 の組み合わせは下手なカプセルホテルよりも快適だった。ただそれでも車中泊は車中泊なので、朝陽を浴びればグングン車内の温度は急上昇。結局3時間くらいしか寝られないままに、お天道様に起こされることになる。
 起きちまったもんはしょーがないので、とりあえずたらっと朝めしをスーパーで買ってお山に出向くとしよう。


 林道を車でゆっくり走っていると、開け放った窓の外から 「 キョロロローン 」 という鳴き声。昨日山で聞いたのと同じだ。どこか寂しげな、後半に尻すぼみになる切ない声。




リュウキュウアカショウビン
リュウキュウアカショウビン Halcyon coromanda bangsi


 声の出どころを見てみると、やっぱりあの鳥がいた。これからの暑さを憂いているかのような寂しげな声とは裏腹に、僅かな朝陽を浴びているその体はこちらのテンションをグングン上げてくれるような鮮やかな赤色。

 途中、車内にバズーカ ( 望遠レンズ + 三脚 ) を入れた鳥屋らしき人とすれ違ったが、窓を閉め切りクーラーがんがんだった。 『 悪いがそれじゃあリュウキュウアカショウビンを見つけられないんじゃねぇの? 』 なんて嫌味を飲み込んで、こちらはこちらで楽しもう。






タカサゴシロアリの巣
タカサゴシロアリ Nasutitermes takasagoensis の巣 ( 写真右上 )


 道中見つけたリュウキュウアカショウビンの巣。彼らは樹上にあるタカサゴシロアリの巣を利用して営巣する生態を持つ。タカサゴシロアリは木の幹表面を這うようにトンネル状の蟻道を作り、樹上にキイロスズメバチVespa simillima xanthoptera の巣と同じくらいの大きさの巣を設ける。






タカサゴシロアリの巣
タカサゴシロアリの巣


 そうやって苦労して作ったタカサゴシロアリの巣にリュウキュウアカショウビンはクチバシで穴を開けて巣にするわけだ。顔出さないかとちょっと待ってみたものの、やはりそう簡単にはいかない。





タカサゴシロアリ
タカサゴシロアリ


 巣の主人。兵蟻はとんがり頭でその先からネバネバの粘液を出すとか。こんな珍妙な生態のシロアリとリュウキュウアカショウビンが結びつくなんて、自然というのは本当によくできたシステムだなぁ。





 朝ならではの鳥たちの時間。暑くて自発的に起きたわけじゃないけれど、これはこれで石垣島を堪能できていて良い良い。望遠レンズを持って来た甲斐があった。
 段々と朝の探鳥が面白くなってきたところでこの島の大本命が姿を現わす。







カンムリワシ
カンムリワシ Spilornis cheela


 森の中でカンムリワシとの邂逅。よくある出会いはロードキルの生き物や、道路を横断する生き物を狙って電柱にとまっているのを見かけるのが定番なのだが、こんな感じで森の中の枝にとまった姿を、それも同じくらいの高さから写真が撮れるとは。おそらく今後カンムリワシの写真でこれ以上は私は撮れないんじゃないかというくらいにバッチリ撮れた。

 なんたる威厳、この島の頂点に君臨する者の存在感。英名では 【 Crested Serpent Eagle 】 と呼ばれるようにヘビを好んで捕食する猛禽類で、両爬屋としては憎き仇でもあるこのワシに、石垣島中のヘビを喰い尽くされたもんだから昨晩は1個体もヘビが出なかったんじゃないかと因縁をつけたくなるほどだった。
 なのにそんな訳の分からん言い訳がすっ飛ぶような素敵な情景。まぁ実際、胃内容物調べた調査だと、カエルやらカニなんかが多いみたいだし、私の八つ当たりは完全なる濡れ衣なんだけど。




カンムリワシ
カンムリワシ


 枝の下まで来ればここまで寄れる。雲間から朝陽が差し込めば、キリッとした顔の造形がクッキリと浮かび上がる朝の顔。カンムリの名が示すように、白い冠羽が勇ましい。
 もうクチバシの基部から眼の周りにかけての地肌が見える黄色いとことか、そこだけ見れば恐竜そのもの。カッコ良すぎでしょ、この造形。ミクロラプトルMicroraptor とかアーケオプテリクスArchaeopteryx とかとほぼ変わらないんじゃないってくらいダイナソー感があるよ。
 電柱にいるところばかり見てきたから、こんな風に森の中で会うと断然風格があって、らしさがあって、生命感があって、とにかく最高だった。やはり写真は背景大事よね。鳥は背景については運の要素がかなり比重を占めているから、1枚目のカンムリワシ写真みたいなのは今後そうそう撮れないんだろうなー。

 いやはや、ヘビ全然出なかったというのに、カンムリワシ写真が良すぎて朝から満足感でいっぱいだ。これからからっきしだった両爬の成果を少ない滞在日数であげなきゃいけないってのに。

 でもやっぱりお気に入りだなぁ、カンムリワシ。


Category: 蟲類  

奇蟲の森

●カラッカラ空梅雨の南ぬ島●
1. 10年振りに、南ぬ島へ
2. 奇蟲の森
3. 小心者に口笛を、王様には冠を
4. セマルハコガメとこれからの両爬屋



 まず初日は下見がてら、目星をつけたポイントをいくつか巡ることにした。レンタカーのラジオからは沖縄訛りのゆる~い声が飛び交って、たわいもないトークテーマについてゆる~くコメントしている平和なドライブ。 
 窓を開けて走れば牧場の香り、フロントガラスを突き抜けて刺してくる太陽の光、Oh、これぞまさに石垣島。





イシガキモリバッタ
イシガキモリバッタ Traulia ishigakiensis ishigakiensis


 まずは 【 イシガキ 】 を冠するこの蟲がお出迎え。カラフルでよく注目を浴びるお隣西表島に棲むイリオモテモリバッタT. ishigakiensis iriomotensis とは亜種関係にあるイシガキモリバッタ。比較してしまうと多少地味ではあるものの、この配色とこのフォルムには南西諸島にやってきたことをありありと感じさせてくれる。
 国内にはアマミモリバッタ、オキナワモリバッタ、イシガキモリバッタ、イリオモテモリバッタ、ヨナグニモリバッタの5種類のモリバッタが奄美群島から与那国島の島々に分布しており、これまではそれぞれが亜種関係にあるとされていたが、現在では前2亜種と後3亜種で別種とされるようだ。

 アマミモリバッタ T. ornata amamiensis
 オキナワモリバッタ T. ornata okinawaensis
 イシガキモリバッタ T. ishigakiensis ishigakiensis
 イシオモテモリバッタ T. ishigakiensis iriomotensis
 ヨナグニモリバッタ T. ishigakiensis yonaguniensis


 ここで学名をみて 『 おや? 』 と思う方がいるかもしれない。 『 アマミモリバッタやオキナワモリバッタが属するornata の基亜種はどこに? 』  実は日本のモリバッタ5亜種がTraulia ornata にまとめられていた時、日本だけでなく世界に目を向けてみると、このモリバッタは台湾にも棲息していて、そのタイワンモリバッタT. ornate ornata が基亜種である。
 つまり以前は台湾~奄美群島までに棲息するモリバッタはT. ornata とされており、それぞれ6亜種に分かれるモリバッタだった。それが現在では2種に分割され 【 台湾・沖縄諸島・奄美群島に分布するT. ornata 】 と 【 八重山諸島に分布するT. ishigakiensis 】 に分けられる。さらにその後、台湾ではT. ornata の新亜種としてchui も見つかり、琉球列島におけるモリバッタは2種7亜種となって複雑さを増してきた。





モリバッタ 図
琉球列島におけるモリバッタ類の分布


 なんだかわかりにくいのでざっくり図示。左図はこれまでのT. ornata の6亜種の分布で、右図がそこから分割された2種のぞれぞれの亜種と分布。一応島の配置も上が北、下が南になるように配列。
 こうみると真ん中の南琉球だけボコッと別種になっているのが、地理的にみると不思議な分布。ただ絶滅種も含めた上で議論しないと生物地理って偏った見方になってしまうので、現存種しかいない上の図だけではよくわからない。 ( 例えば北琉球や九州なんかにも過去にモリバッタがいて絶滅したとか。列島を繋ぐ陸橋の改廃で南琉球がモリバッタの拡散タイミングで早くから孤立していたとか。 )

 また台湾にいるモリバッタ2亜種だが、台湾で分化したのではなく、祖先集団が2度にわたって大陸から台湾に侵入し、最初に入った集団が高地型chui に、後から入った集団が低地型ornata 分化したらしい。台湾も島だから、大陸からの流入タイミングも何度かあるのだろう。そう考えると台湾の両爬相も大陸・琉球列島との類縁を見ていけばかなり面白いことになりそう。

 そう考えると、こんな感じで中琉球と台湾が共通で南琉球が別種の両爬っていたっけな?  よく南琉球と台湾の共通性が面白いなぁと思って、台湾のこいつは八重山のコレに近いとかの話はするけど、考えてみると意外とこの [ 中琉球と台湾が共通で、南琉球が別種 ] っていう分布パターンはいないな。
 属レベルでの話で、かつ南琉球に近縁種がいないって条件だったら、

[ 中琉球にナミエガエルLimnonectes namiyei 、南琉球なし、台湾に仮称フッケンクールガエルL. fujianensis ]
[ 中琉球にアマミアカガエルRana kobai 、リュウキュウアカガエルR. ulma 、南琉球なし、台湾に仮称アシナガアカガエルR. longicrus 、仮称ザウテルアカガエルR. sauteri ]
[ 中琉球にヒメハブOvophis okinavensis 、南琉球なし、台湾にアリサンハブO. makazayazaya ]

 なんかが出てくるけど、結局どれも近縁種が南琉球に現存種でいないのが残念というか評価のしようがない。

 唯一見つけた可能性としては、種分割されているわけではないけどキノボリトカゲがいわゆる左図と同じ状況で、

中琉球・南琉球・台湾で共通種リュウキュウキノボリトカゲJapalura polygonataが分布。
亜種に
 オキナワキノボリトカゲJ. p. polygonata [ 奄美 + 沖縄 ]
 サキシマキノボリトカゲJ. p. ishigakiensis [ 石垣 + 西表 ]
 ヨナグニキノボリトカゲJ. p. donan [ 与那国 ]
 キグチキノボリトカゲJ. p. xanthostoma [ 台湾 ]
がいる。

 今後もしモリバッタのように [ サキシマ + ヨナグニ ] が別種になったりしたら、なんて妄想してしまう。キノボリトカゲがモリバッタを捕食しているのをよく見るし、その捕食・被食関係のまま同じようなルート・タイミングで分化していたら面白いな。


 自分でも思わぬ方向に飛び火したな、モリバッタ。さらっと紹介程度のつもりで記事を書いていたら、調べる程に面白い生き物で、ついには両爬についても考えさせられることになるとは正直思わなかったぜ。こういう見方で両爬の分布を見たことなかったから新鮮だ。










 両爬屋に対して八重山にいる道中、もしくは行ってきたっていう話の際に 「 ワモン出た !! 」 という、ジョークというか罠がある。当然そんなテンションで言われると、幻のイワサキワモンベニヘビSinomicrurus macclellandi iwasakii のことを指して略して 「 ワモン 」 と言っているもんだと思って嫉妬し心拍数が上がるのだが、実はコワモンゴキブリPeriplaneta australasiae のことを 「 ワモン出た !! 」 と言っているだけだったというオチ。わかっていてもドキッとするからやめてくれ。嫉妬の炎で焼け焦げそうだ。

 その形式のジョークでいうと私は八重山に行って 「 ヤマネコを見た !! 」




ヤマネコハエトリ
ヤマネコハエトリ Pancorius submontanus


 もちろん西表島に行ったわけではないのでイリオモテヤマネコPrionailurus bengalensis iriomotensis のほうではない。このヤマネコハエトリだ。
 第一脚が長くすらりとした印象で、以前に載せたハエトリ記事のマスラオハエトリThiania suboppressa にも似た体型。八重山諸島の特産種のようで、こちらまで出掛けないと見られないハエトリグモらしい。





山頂
山頂からの眺め


 森に入って登山道を登りつめていく道中、いろいろな蟲たちに出くわして夢中になって先を進むと、いつの間にか頭上に覆いかぶさっていた木々のトンネルが開け、途端にゴロゴロとした岩場が出てきた。どうやら山頂が近いようだ。折角ならとテッペンまで登り切ってみれば、そこから見える景色は南西諸島ならではの、海と空との境界線が曖昧なほどの清々しい青さと、深くて濃い森の緑が視界いっぱいに広がっていた。蒸し返すような暑さだった森で十分すぎるほどの汗をかいたので、風が抜ける頂上は想像するより遥かに心地好い。
 一人旅の良いところは思いつきで何でもできるところであって、こういう気持ちの良い場所で好き勝手にダラケられるのがいいところ。弾丸遠征で来たものの、気持ち的にはゆったりとしたい性分でもあるので、岩の上でたらっと息抜き休憩。いつもTVやらパソコンやらスマホやらに囲まれて情報が飛び交ってばかりいる社会からいったん抜け出して、一度リセットするかのように深呼吸をすると、言葉では言い表せない清々しさがある。

 少しばかり休息を挟んだら、下見も下見なので次の山へと向かう。途中自販機でさんぴんちゃを買うもあっという間に飲み干してしまうほどこの日は暑く、空元気で 「 なんくるないさぁ~ 」 とか言ってもなんともならん暑さだったよ、まったく。





ヤエヤママルヤスデ
ヤエヤママルヤスデ Spirobolus sp.



 蒸し暑い森の中を歩けば、この赤と黒の縞々が方々の木についているのが目につく。個人的には西表島よりも石垣島のほうがよく見られるイメージがあって、この山に登ればだいたいコイツらがあちこちの幹で蠢いている。
 ぱっと見の奇蟲感があって、八重山に来たなぁと実感できる。





タイワンサソリモドキ
タイワンサソリモドキ Typopeltis crucifer


 奇蟲といえばこちらも当然。モドキとついて名前負けしそうだが、鋏とか頭胸部は相当にカッコイイ。センサーのような第一脚を伸ばして広範囲を探りながら夜な夜な徘徊している姿は怪獣映画にでも出てきそうな造形で、 【 キングコング 髑髏島の巨神 】 のちょい役で良いから出てきてほしいな。
 センサーあるし、ハサミあるし、酢酸噴出するし、ギミック満載だから見せ所あると思うんだよなぁ。サイズもそれなりにあるので、日本にいる真のサソリである2種よりは見応えのある姿。




ヤエヤマサソリ
ヤエヤマサソリ Liocheles australasiae


 本家サソリ目といえばこのヤエヤマサソリ。オガサワラヤモリLepidodactylus lugubris と同じく単為生殖で増えるちょっと変わったサソリでもある。
 あまり自然に興味のない方にとっては 【 サソリ = 外国の砂漠のムシ 】 という印象があるとは思うが、日本にもサソリは生息しており、このヤエヤマサソリでいうと岩の下や樹皮の隙間など、ある程度湿潤なところにいる。

 岩の下にいるこの個体を見つけた時、後ろ向きに逃げるもんだから、枝に引っかかって毒針を振りかざすような姿勢になってしまった。普段はこんな姿勢にはならないが、いわゆるサソリのポーズっぽくてついつい 「 ぽいなー 」 とかブツブツ良いながら撮っていた。


ヤエヤマサソリ 毒針
ヤエヤマサソリ


 やっぱりモドキにはない本家の毒針を携えているのが何といっても魅力だ。ただ頭胴長で2cmくらいという小さいサイズのサソリなので、元来みんなが抱いている 【 サソリ = 凶悪 】 には当てはまらず、毒針も小さいので我々の皮膚には突き刺さらないという。






 節足動物たちがとにかく日本離れというか、外国っぽい熱帯アジアの雰囲気を持っているので、亜熱帯のジャングルに来たんだということを実感させてくれる。それが楽しくって懐かしくって、下見でさらっと島内を周遊しようかと思っていたのにあっという間に陽が暮れてしまった。

 夕暮れ時、山を下る車内から路上を渡るヤエヤマセマルハコガメCuora flavomarginata evelynae を目撃した。それもちょうど渡りきって藪に入るその瞬間。車を停める場所が周囲になかったため、セマルが入っていった藪を確認してからバックで 100 m ほど戻って駐車した。
 急いで現場に駆けつけようと、カメラと藪をかき分ける用にスネークフックを持って外に飛び出る ・・・・・ つもりだったのだけれど、スネークフック、スネークフック ・・・・・ 。


 ・・・・・ スネークフックがない ??!!


 車内にも、バッグの中にも無い。まぁ相手はカメだから必須アイテムではないし、とりあえずセマルを気にしてそちらに向かったが、もう姿も見えず藪に突っ込んでも見つからない。なんてこった。
 残念な気持ちのまま車に戻って改めて探すもスネークフックはやはり無い。

 おいおいおいおい、これから夜のフィールドで使うってのにどこいっちまったんだよ。奇蟲に夢中になって、地べたにゴロゴロしているときにコロンとバッグから落っこちてしまったのだろうか。



 スネークフックは精神的支柱なのに ・・・・・ どうしよう ・・・・・






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