月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

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10年振りに、南ぬ島へ



 誕生日を迎える瞬間。それはプレゼントをもらえる喜びに浸ったり、これまでを振り返って親に感謝したり、はたまた彼女にとびっきりのサプライズを画策してドキドキしたり。特に節目節目の誕生日ってのはその人にとって大きな意味を持つだろう。
 先日、私もその貴重な節目の誕生日を迎えまして、20代から30代へとジェネレーションをまたぐこととなりました。その客観的にもオジサンと呼ばれてしまうステップを着実に上り、社会的な責任も大きく問われる年齢となってきてしまった世代に突入。

 その貴重な誕生日へと日付が切り替わる “ その瞬間 ” を、ある人はカップルでゆっくり過ごしているだろう。またある人はバースデーパーティーで飲み明かしてベロベロになっているだろう。はたまたある人は温かい家庭を築いて、奥さんに瓶ビールを注いでもらいながら、息子に 「 今度の日曜日はディズニーランドに連れてってよ 」 とせがまれているだろう。
 さて、かく言う私はというと。その時、日付が変わる “ その瞬間 ” 。

 私は羽田空港の天井を眺めていた。



羽田空港


 そう、20代最後の瞬間を、羽田空港の床で仰向けになって過ごすことになろうとは、20代の、そして、10代の私は思いもよらなかっただろう。

 なぜそのような経緯になったかというと、まぁいつものパターン。翌日の早朝便に乗り込むため、夜な夜な空港にやってきて夜を明かそうという魂胆だ。20代の私から、 【 弾丸石垣島遠征 】 を30代の私にプレゼントしたのだった。


 ---------------------------  羽田空港の天井を見ながら迎えるバースデーの、およそ3時間前。仕事を終えて町から出る羽田空港行きの最終便の高速バスに乗り込んだ。最終便は国内線が飛ばない時間帯の便なので国内線ターミナルには寄らず、国際線ターミナルへの直行便というのもあってか、同じバスに乗り込んでいるのはアジア系旅行者4人と私だけだった。
 そのどこか異国の長距離バスにも似た異様な雰囲気で、私の旅はスタートした。




バドワイザー
バドワイザー


 空港で眠るには、やっぱりお酒の力を借りたい。ということでミックスナッツをポリポリ齧りながらあっさりとしたバドワイザーで流し込む。退屈な空港までの移動時間をそれで潰そうというわけだ。
 ボルネオ行く時も、深夜便に乗り込む前はバドワイザーだったし、何だか願掛けとかジンクスみたいな感じになってきたな、バドワイザー。冷房も効きまくりだったし、よくわからん言葉が飛び交ってるし、ますます異国の長距離バス感が漂う車内。



 空港に着いても国際線ターミナルはまだまだ賑わいを見せており、浮浪者どもが寝静まるには少し時間が早いようだった。あっちでは中国人のオバちゃんがでかい声でペチャクチャと、こっちではタイ人のオバちゃんが猫撫で声でペチャクチャと。インバウンド消費の恩恵はこういう方々からいただいているんだろうな、と思うと、そう藪から棒に彼女らを嫌そうな目で見るのも気が引ける。
 そこで少し休憩しようと腰をかけたところがあいにく悪く、モスバーガーの真ん前だったのでおデブの悪いクセが出てしまった。

 『 まだ時間があるし、ハンバーガーでも食って暇を潰そう 』

 そう思いたってテリヤキバーガーセットを注文。何気なくもさもさと食べていると、何やら隣の席の会話が気になる。私と同い年くらいの女性2人が何かについてアツく語り合っていて、それが嫌でも耳に入ってくるのだ。 「 ピョンスがどう 」 とか、 「 サヒョンがこう 」 とか。どうやら盗み聴きするに、男性韓流アイドルにお熱な “ 韓流オタク女 ” だった。

 「 やっぱりピョンスはサヒョンのことを面白く思ってないよね ? 」
 「 うんうん。でもサヒョンはみんなの、グループとしての輪を大切にしたいんだと思うよ。 」
 「 だよねー、だけど、そんな気分屋さんのピョンスがアタシ的にはツボなんだよねー。 」

 と、わけのわからん母性なのか評論家気取りなのかわからない会話が続いたかと思うと、ゴソゴソとトランクケースからウチワやらCDやらを取り出しては悦に浸っていた。
( ※ 注意 : ピョンスやらサヒョンは実在する人物ではなく、私がそれっぽく聞こえた人名を片仮名表記にしているだけですので悪しからず。 )


 『 うぎゃー、こういう女って相当キツいなー。 』 とか嫌気がさしたけど、2年前にほぼ同じ席で、深夜に両爬屋の後輩と沖縄本島行きの飛行機を待っていた際に、 「 ミミズ食いのヘビが沖縄には2種もいて、うまいこと棲み分けたりしてるんだろうか 」 とか 「 最近はハコネサンショウウオ属もだいぶ分割されたけど、まだ ●● 地域とかも分割されるとか聞きましたよ。 」 とかダラダラしゃべっていたのを思い返すと、全くの他人からしたらそれはそれはエグい会話してるなと思われていたのだろう。

 『 うぎゃー、こういう爬虫類オタク男って相当キツいなー。 』 とか蔑まれていて当然な気がして、急に恥ずかしくなった。 “ 人のふり見て我がふり直せ ”  ですな。




寝床


 そんなこんなをしてたらいよいよ空港内も落ち着き出したのでゴソゴソと寝床を確保する。 『 いよいよこれで、20代最後か。 』  感慨深い気持ちになりながらも、 『 20代最後の晩餐がモスのセットとは。せっかくならもっと良いモンにすれば良かったかな ? 』 なんて後悔も抱きつつ、床に敷いた銀マットへ横になりゆっくりと目を瞑る。心の中で小さく 『 Happy birthday 』  そうつぶやいて、脳内にあるロウソクをそっと吹き消し眠りについた。





 のはずだったが、眠れん。全く眠くない。バドワイザー飲んだし、モスで満腹だし、寝られるはずなんだが ・・・・・ なぜだ︎ ?!




 チクショー、思い当たるとしたらあの “ 韓流オタク女 ” だ︎ !!  じゃなくて、その隣でテリヤキバーガーセットを食ってたからだ。いつものクセでセットドリンクにアイスコーヒー頼んでしまったから、そのカフェインで全然寝られなくなってしまったようだ。
 ということで、コーヒー飲んだら眠れなくなるお子ちゃまみたいな夜が、私の30代初夜。 ( in 羽田空港 )

 結局横になるだけで一睡もできないまま、無情にも朝は呼んでもないのにやってくる。人もまばらな保安検査所を、気怠いのか無関心なのか人形みたいな保安検査官の横を通り抜けてまずは乗り継ぎの那覇まで︎。



 そしてまたもやよくわからん女二人組みに巻き込まれる。那覇行きの飛行機で窓側にいる私の隣に座ったパンク系関西女2人。露出しまくった肌の艶が、水なんか全然弾かないであろう年齢を物語っている。 ( おぉ、年齢のわりに頑張ってらっしゃる。 ) まぁファッションだし、そこに疎い私が彼女らに対してとやかく言うことはないんだけど、着陸態勢に入った途端、1人がズビズビ泣き出すわけさ。

 『 え、何、なに、どした ?? オレの心の声が漏れ出てた ??』

 いや、そうではない、たぶん。おそらく精神的なモノなんだろう、隣の片割れ女がそっと慰めるように肩をさすっていたからなんかしらの事情があるっぽいけど。だけど突然そうなるとこっちもリアクションに困ってしまうわけで、とりあえず機内誌の全く興味のないコスメのページをぼーっと眺めるしかできなかった。


 “ 韓流オタク女 ” とか “ 号泣パンク女 ” とか、クセの強い女2人組に旅の早々からやられまくりだ ・・・









A&W


 乗り継ぎの那覇空港ではちょっと遅めの朝食ということで A&W へ。数時間前にモスでハンバーガー食ってたのにまたハンバーガーっすよ。今度はチキンサンドバーガー。
 目的はもちろんルートビアだったんだけど、空港店はジョッキじゃなかった。ストローじゃないんだよ、ストローじゃ ・・・ ルートビアは [ ストローちゅうちゅう ] ではなく [ ジョッキごくごく ] で飲むモノだと改めて再認識させられた。もちろんおかわりはさせていただいたんだが、 “ これじゃない感 ” がぬぐい切れぬ。



 そしてもう一度飛行機に乗れば目的地である石垣島に到着。空港の床でバースデーを迎えたおかげで、昼から活動ができるのは嬉しいかぎりで、弾丸遠征ではこういうところで時間を確保していかなければ。

 果たして、10年振りに訪れる石垣島ではどんな生き物が待っているだろうか。
 島の景色はどのように変化しているだろうか。
 島人たちは変わらずそこで暮らしているだろうか。

 様々な期待を抱いて、すっかり様変わりした 【 新石垣空港 】 の自動ドアを抜けていく。カラッとした強い日差しは、やっぱりあの頃と同じで刺すように暑い。




組写真




いざ、南ぬ島 !!


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Category: 蟲類  

オオミズアオ と かぐや姫




 春の夜。山の路面は濡れていた。


 平日に退屈なサラリーマンを演じてパソコンをカタカタ叩いていると、夕暮れ時にザッと雨が降っているのが事務所の窓から見えた。ただのサラリーマンならば 「 帰りの電車は蒸してるだろうなぁ 」 「 今日は折りたたみを忍ばせておいて助かった 」 程度の感想しか抱かないだろうが、私は違った。ウキウキしてたまらない。
 気温も高くなってきて、この夕立ちだ。これなら夜は両爬たちが這い出てくるだろう。そう思うと仕事なんぞ手がつかなくなって、いかに残業時間を圧縮できるかが本日の最優先事項となる。


 そんなわけで、夜の林道を愛車でどんどこ登っているというわけだ。夜には小雨程度に弱まり、散策にはうってつけの気候となっていた。


 カエルは絶好調だった。自分の中では最も早い時期でのモリアオガエルRhacophorus arboreus との出会いだったり、形の良いカジカガエルBuergeria buergeri の発見だったり、雨らしく両生類の出は良かった。
 一方でヘビの方はからっきしで、5匹目のヤマビルHaemadipsa zeylanica japonica に対するデコピンにもかなりの力がこもるほど、この日はダメだった。というか車での林道流しだってのに、何でこんなにもヤマビルが這い上がってくるのさ。車降りてるのなんてせいぜい長くても 5 ~ 10 分だぜ ?  いよいよ自分が異常なんじゃないかと疑うレベルだよこれ。


 翌日も仕事を控えているため、最後に街灯があるポイントをチラリと覗いて今日は帰ろうとハンドルを切って車を走らせると、光源の周りを飛び回りながら、その光を反射させているのか透かせているのか、はたまた霧散させているのか、幽玄な薄緑色の残像を残して飛ぶ蛾がいるのが目に入った。






オオミズアオ
オオミズアオ Actias aliena


 それはかつて、ギリシャ神話の “ 月の女神 ” を意味するアルテミスartemisという種小名があてられていた美しくも妖艶な蛾。

 これまで大陸産と同種とされていた日本産のオオミズアオだが、その後の調査によってタイプ産地であるロシアのグループとは別種であることが 2007 年にわかった。分割された日本産のオオミズアオについては本州産の亜種にあてられていたアリエナ aliena という亜種小名を種小名に昇格させているようだ。
 このアリエナという亜種小名は 【 外国の ~ 、 異邦の ~ 、 】 という意味のラテン語で、基亜種のロシアに対して外国の亜種という意味でつけられたのではないだろうか。ラテン語読みではなく英語読みするならばaliena はエイリアナ。そう、あの “ エイリアン ” と同じ語源の言葉である。


 “ 月の女神 ” が剥奪されて “ エイリアン ” の名を冠することになるとは、印象がガラリと変わってしまって、昔 「 アルテミス !!  アルテミス !! 」 と崇め祀っていた虫屋たちも、今となってはさぞ落胆していることだろう。虫屋じゃない私でさえゲンナリだよ。一応、月に関連したブログ名でやらせてもらってるもんで。

 ただまぁ、英名では [ Luna moth / Moon moth ] なんて呼ばれたりすることもあるので、月との縁が切れたわけではないのだろう。






 バタバタと翅を上下に動かし始めるのを見ると、そろそろ飛び立つ準備だろうか。そう思っていると案の定、重そうな体がパッと宙に浮き、再び街灯を目掛けて狂ったように周遊を始めた。



 すると今度は日本人の我々にとっては月に所縁のある竹にピタリととまった。



オオミズアオ
オオミズアオ


 まるでかぐや姫を思わせる美しさがそこにはあった。彼らのあの薄緑色は竹に関連があるんじゃないかと世迷い事を言いたくなるくらい良い色合い。
 街灯に照らされて、竹の一部が輝いているようにも見えるその光景は、まさしく竹取物語。


 そういえばかぐや姫も、 “ 月からの姫 ” という存在の他に、結局誰とも結婚せずに無理難題を吹っかけて月に帰っていくことから “ 宇宙人 ・ 侵略者 ” だったのではないかという俗説もあるとか。











小望月
小望月


 そう思うと、かぐや姫もアルテミスではなく、アリエナだったのではないだろうか ・ ・ ・    もしかしたらオオミズアオと同じように、いつかは正体が明らかにされる日がくるのかもしれない。そんなオオミズアオとかぐや姫に共通点があるのではないかと空想してしまう春の夜。

そうしてオオミズアオは月に向かってゆっくりと、夜空を登っていった。




Category: 両生類  

土塊 ( つちくれ ) に鳴く


 昼はサギたちに怯えながら鳴いていたカエルたちも、陽が落ちれば耳を塞ぎたくなるほどの大合唱。夜な夜な懐中電灯片手に里山を散策すれば、あちこちで 「 コロコロ 」 「 ゲコゲコ 」 鳴いている姿を観察することができる。


ニホンアマガエル
ニホンアマガエル Hyla japonica


 ニホンアマガエルはもう狂ったように鳴く。鳴嚢と腹に空気を入れてしまったら最後、 【 鳴嚢 ⇔ 腹 】 の空気の移動でずっと鳴いている。私が近づこうがお構いなしに、一度鳴き出したら止められなくなってしまうようだ。
 小さい体にも関わらず鳴き声は大きく、それが何個体も鳴いている里山は壮観だ。






シュレーゲルアオガエル
シュレーゲルアオガエル Rhacophorus schlegelii


 湿地や田んぼの地面からは 「 コロコロ 」 と鳴り響き、昼と違って近寄っても止むことはそうない。大抵は畦道に盛られた土の隙間だったり、耕されて重なり合った土塊の隙間などで鳴いていることが多く、実際に鳴いている姿を見るのが難しかったりもする。そんなわけで安心しきっているためか、ちょっとやそっとじゃ鳴き止まないというわけだ。
 なので鳴き声を頼りにちょっとずつちょっとずつ近づいていくことで、その発信源を特定していく見つけ方をよくやる。そしてある程度、 『 この辺で鳴いてるな 』 ってのがわかると、耳の次は目を使って、鳴嚢が膨らんでいたり水面に波紋がある場所を探していくと、運良く見つけることができる。上の写真もそれで見つけた個体だ。






シュレーゲルアオガエル
シュレーゲルアオガエル


 夜は警戒心が薄いのか、私に見つかろうとも鳴き止むことはなかった。逃げ隠れしている間に他のオスにメスを取られるのが嫌なのか、モゾモゾと少しの距離を移動しながらも、その間に懸命に鳴き交わしていたのを見て、彼らの必死さが伝わってきた。

 普段は緑色の [ The アオガエル ] といった体色だが、地面にいる時間が長いと、このように紫色に体色変化を起こしている個体も多い。実はこれがシュレの魅力でもあって、他のアオガエル属Rhacophorus は草上や樹上で鳴くことが多いため、このような体色変化を目にすることは殆どない。そしてシュレも個体によっては黄色のスポット状の斑点を持つ個体がいるのだが、そいつがこのように紫色の体色変化をしても、その黄色のスポットは色が変わらないのでなんとも鮮やかなのだ。夜な夜な、そんな星空みたいな体色のシュレを見つけると、すごく幸運な気分に浸れる。
 残念ながら今回は星空体色の個体ではなかったものの、鳴いているシーンが撮れたので満足満足。




シュレーゲルアオガエル
シュレーゲルアオガエル


 こちらは湿地の茂みで鳴いていた個体。1つ前の個体と違ってイメージ通りの緑色の個体。
 人類の農耕文化の発展により各地で稲作が始まり、畦だったり土塊の重なりだったりシュレが隠れながら鳴き交わすには田んぼは都合の良い場所になったため、そういったところでシュレも鳴くようになっていったのだろう。しかしその稲作が始まる前というのは、シュレにとっての繁殖適地は山裾の湿地みたいな環境だったのではないだろうか。そういった環境で身を隠せるところとしては岸辺や水上にある茂みなどがあたるので、この個体はそのような“昔ながら”の鳴き方だったりするのかもしれない。

 器用に草に捕まって中空で鳴く姿は面白く、なかなか見ない姿なのでこれは興奮した。韓国にいるスウォンアマガエルH. suweonensis も同じように草にしがみついて、もっとアクロバックに鳴いていたりするので、湿地適応としてはありなのではないだろうか。 ( あれ、いつの間にかスウォンアマガエルはH. immaculatus のシノニムになったのか ? )






シュレーゲルアオガエル
シュレーゲルアオガエル


 ということでこの紫色のシュレというのも、比較的新しい時代のファッションなのかもしれない。稲作が始まる前だったら、 「 え、何あのオス ? 紫色とかキモくなーい ? 」 とか言われちゃったりするんだろうな。
 はてさて、次は何色がブームになるのだろうか。










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