月明かりにヤモリ

Moonlight Gecko

Category: 哺乳類  

めくるめく天狗のねぐら


 いよいよパンイチで寝るにはお腹が冷えすぎる季節。フィールドに出るにしても、朝晩の冷え込みを考慮して上着を持って行く必要が出てきた頃だ。真夏も過ぎて季節の変わり目。姿を見せる生き物たちもゆっくりとメンバーが変わってきている。
 ということで、この時期に咲く、毒々しくも美しい秋の花たちを探しにお山へ。






マムシグサの一種
マムシグサの一種 Arisaema sp.


 怪しげなマムシグサたちは仏炎苞を枯らし、トウモロコシのような実が緑から赤へと徐々に色が変わっていく。この色づきを見ると、紅葉した木々を眺めるのと同じように私は 「 あぁ、秋が近づいてきたんだなぁ 」 と感じる。赤く熟して美味しそうだけども、かぶりつけば口内や喉をシュウ酸カルシウムの針にやられ、のたうち回るだろう。




ホトトギス
ホトトギス Tricyrtis hirta


 2つ前の記事で載せたサガミジョウロウホトトギスT. ishiiana とは打って変わってこの毒々しさ。ヤマホトトギスT. macropoda やタマガワホトトギスT. latifolia なんかもこんなにはならない。この紫の斑点に覆われた花がいくつも垂れ下がっていて、多い株だと10個以上もの花を咲かせていることがある。
 鳴かぬなら 咲くまで待とう ホトトギス




ヤマトリカブト
トリカブト Aconitum japonicum


 そして秋の毒草といえばやはりコレ、トリカブト。こちらが本命で山へと出掛けたのだが、見つけたのはこの小さい株だけ。もっと花をたくさんつけて、だらりと垂れ下がる姿が見たかったのになぁ。
 そんなトリカブトを求めてきょろきょろしていると、 『 むむむ、あの葉は ・・・・・ 』 と、気になるモノが目に飛び込んできた。



 以前からある生き物を見つけるために論文やら文献などを読んでは、記述にあったそれの手がかりになるものをフィールドで探していた。そしてその手がかりとなる植物を見つけては、 『 もしかしたらココにいるんじゃないか 』 と淡い期待を抱いて “ 葉をめくっていた ” 。
 ただそう簡単には見つからずに何年も出会えずじまい。今回も半信半疑のまま、その植物を見つけたらほぼ慣例的にやっている 【 葉をめくる 】 という行為を何の気なしにやってみたのだが、でも今回は違っていた。


 その中には求めていたあの生き物が。







コテングコウモリ
コテングコウモリ Murina ussuriensis


 ついに出た !! 初めてコテングコウモリのこの習性を知ってからずっと見たい見たいと思っていたこの姿。 【 BAT TRIP  ぼくはコウモリ  中島宏章 著 】 を始めとする中島さんの美しい写真を見る度に憧れていた光景。ようやく自分の力で見つけ出すことができた。

 私の手が写っているからおおよそのサイズがわかると思うが、親指と同じくらいの大きさ。小っさい、そして可愛い !!




コテングコウモリ
コテングコウモリ


 つぶらなおめめに、ふっくらとした白い胸毛、まぬけそうに飛び出した筒状の鼻。こんな生き物がスヤスヤと枯れ葉のハンモックで寝ているだなんて、最高すぎるだろう。
 半信半疑で枯れ葉をめくっていたから、見つけたときに思わず信じられずに一度枯れ葉を元に戻したけれど、もう一度開いてもみてもやっぱり現実だった。本当にこんな感じでいるんだ。思わず 「 やった !! 」 と、その場で一人飛び跳ねて喜んでしまった。



コテングコウモリ
コテングコウモリ


 よく見ると、枯れ葉を開く前から、所々に空いた穴からコウモリの毛がビヨンビヨンとはみ出ているではないか。たださすがに熟練じゃないし、初めましてなので開く前から発見はできなかったが。
 たくさん見つける方は、枯れ葉を開く前からだいたい入っているかどうかがわかるとか。




 なるほど、こりゃ感動だぜ。数年越しにようやく夢見ていたシチュエーションで出会えた。


 『 この地域のやつらは、やはりあの植物にいるようだ 』 と、確信に変わった。


 しかし植物に興味を持って良かった。植物に興味を持っていなかったら、きっと今回のような発見はなかっただろう。トリカブトを探すため、植物目線でフィールデイングしていたおかげだ。
 やはり日頃、生き物に関する知識は入れていかなきゃいけないなと実感。論文や文献でその生き物の生態を調べ上げ、そして手がかりになるものを探していく。今回で言えばコテングコウモリが入る植物が何なのかを理解して、それをフィールドで見つけ出して、あとは根気強くめくりつづける。
 その植物が頭の片隅にあったから、トリカブトを探しながらでも 『 あっ、あの植物は ・・・ 』 と紐付け紐付けでコテングコウモリを思い出したのだ。いろんな生き物に興味を抱いて、様々な知識を持ってフィールドに赴けば、何気ないヒントから面白いモノが見つけられるかもしれない。だから色んな本を読んだり、他の生き物屋さんの話を聞いてみたりして、知識をたくさん入れていかなきゃいかんなぁと。
 まぁ自分でアレコレ勉強して試行錯誤するのは良い経験だな。それで狙い通り出せるのは嬉しすぎる。



 興味は広ければ広いほど
 知識は深ければ深いほど



 きっと虫屋さんなんかは、昔からその虫を捕るために食草や食樹を学んで、虫を捕るためにまず植物を覚えたんだろう。
 ジャコウアゲハAtrophaneura alcinous を捕るために、ウマノスズクサAristolochia debilis を覚えたように。
 ギフチョウLuehdorfia japonica を捕るために、カンアオイAsarum spp.を覚えたように。





 そして、周りを見渡せば、まだ開けていない “ 宝箱 ” がいくつもあるではないか。本当にいることがわかってしまうと、 「 アレも怪しい、コレも怪しい 」 とすべての枯れ葉が超絶気になりまくる。
 そしていくつか枯れ葉をめくっていくと、なんと2個体目。今度は外見ではわからなかったが、枯れ葉を持った瞬間わずかに重みを感じて、 『 ・・・・・ これは !? 』 と思って開いてみれば案の定。




コテングコウモリ
コテングコウモリ


 こちらはまだ眠たそうにしていてクリクリおめめじゃなくてショボショボ。しかし体色は枯れ葉そっくりだなぁ。こんなにセオリー通り見つかると面白い。
 やはり生き物の習性だなぁ。



 他にもこの日は地面からモコモコ出てくるアズマモグラMogera imaizumii も写真に撮れたし、哺乳類運がすごい日だった。
 あと涼しくなってきたおかげでジムグリEuprepiophis conspicillatus にも下山時に出会えたし、爬虫類も楽しい素晴らしき日だった。
 帰りのバス待ちで一緒になった登山に来たじいさんと生き物話ができたし、人との触れ合いも素敵な日だった。



 さぁ、一度見つけてしまえばこちらのモノ。感覚が鈍らないうちにまた今度別のフィールドでも探してみよう。


 世間じゃいつの間にかバレンタインよりも経済効果を生み出すと言われているハロウィンの時期がいよいよやってくる。おうちでハロウィンパーティー、通称 “ ハロパ ” で盛り上がるのも良いけれど、ちょっと足を秋の山に向けてみてはいかがだろうか。中国じゃ、漢字から蝙蝠 ( こうもり ) は幸福の象徴とされているし、ハロウィンっぽい生き物に出会えるかもしれませんよ。




 枯れ葉のお宅を訪ねては、 「 Trick or Treat 」 とめくり開けてみよう。そこには幸福の可愛い生き物が、スヤスヤ寝息をたてているかも。
 さぁこの秋、君もめくるめくコテングコウモリの世界へ。




コテングコウモリ
コテングコウモリ




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Category: 未分類  

GX200 の モノクローム


重たくて煩わしい一眼レフカメラを置いて、軽快なGX200をポケットに入れて。




モノクロ


街角のラクガキとかステッカーとか。
何処かの誰かが何かの為に。




モノクロ


何でもないようなモノもカメラのファインダーを通せば、それは全くの別物として、違った表情を見せてくれる。
・・・と思ったけれど、やっぱり何でもないようなモノだった。
それ以上でも以下でもない。


あぁ、やっぱり楽しいなGX200。
そして何よりRICOHのGRⅡが欲しいんだな、私は。
本当に欲しい。
アレをポケットに忍ばせてプラプラ歩いたらどんなに楽しいことか。





Category: 草本類  

小雨降る魔の絨毯と高嶺の花

 
 あ~、くそったれー。  「 ・・・ バチンッ !! 」 


 15回目を超えてからは数えることすらしなくなってしまった長靴へのデコピン。もうかれこれ数十回は私の中指がしなってるだろうか。そんなことをぶつくさと考えている間に、もう片方の長靴にも。  「 ・・・・・・ バチンッ !! 」 


 「 はぁ、これじゃあ休んでる時が休まらないな。 」



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 野生植物を求めてフィールドに出るようになると、目的とする対象種の花期によっては 『 ある時期 』 の 『 ある地域 』 の 『 ある環境 』 の 『 ある時間 』 の、という制限によって、限られた条件下でないと発見が難しくなる。ある種のサンショウウオ狙いのフィールドにも通づるような、微細な条件を見極め、かつ自分の休日がそれと重なる時でないと野外で出会うのは難しい。
 とは言っても全ての条件が出揃う事などほとんどなく、 『睡眠 』 だったり 『 金銭 』 だったり 『 体力 』 だったりを犠牲にして、無理矢理にでも条件を揃えるしかないのが現実だ。



丹沢


 今回のフィールディングで言えば、時期がかなり限られた花だったこともあり、私のスケジュールで行ける休日はたったの1日だけだったので、悪条件であったものの決行することにした。前日の雨を引きずった小雨降りしきる山を登り、目的の花が自生する沢を目指す。
 「 途中タゴガエルRana tagoi tagoi が出そう 」 とか、 「 渡渉する沢が増水していそう 」 なんていうのは、さして気にするところではない。こんな天候の時は、ヤツらが活発に蠢き出すからイヤになっちゃうんだ。本当にね。




ヤマビル
ヤマビル Haemadipsa zeylanica japonica


 丹沢はヒル地獄だよ、まったく。こいつらがうじゃうじゃいなけりゃ良い山だってのに、こんな日にはヤツらの餌食にならない方が難しい。今回は 【 ヒルとの戦い 】 という犠牲を払う事となった。こいつらを追っ払うために、幾度となく長靴にデコピンをしていたのだ。
 初めからヤマビルには警戒していたので長靴にヒルスプレーを噴霧し、足を止めることなく歩いていたのだが、それでも5分もすれば長靴の上をヤツらは這っている。靴底が地面に接地している時間なんて1秒前後だから、実質は踏んだその場所にでもいない限りは登ってくるだなんて不可能なはず。それなのにちょっと歩くだけで2,3匹ついているとか、どう考えたって異常だよ。
 まるで毛一本一本がヤマビルになっている絨毯の上をひたすら歩かされているかのような状態。



滝



 それでも嫌というほどデコピンしながら長靴登山を続けて目的の沢まで辿り着く。前日から降り続く雨によって多少は増水していたものの、降雨量自体が少なかったのか思ったよりも沢の水量は多くない。
 「 これなら沢登りができそうだ 」

 沢を登って生き物を探すというのも、やはりサンショウウオ的で楽しいし、一度沢に降りてしまえばヤマビルからの猛威からも解放されるので、それがなにより私を喜ばせた。いくつか難所を乗り越えて、沢に面した崖を丁寧に見ていくと、目的の黄色い花が咲いているのが目に付く。





サガミジョウロウホトトギス
サガミジョウロウホトトギス Tricyrtis ishiiana


 小雨がぽつぽつと、そして沢筋に沿って上がってくる霧に霞みつつ、その花は岩壁から垂れ下がるように咲いていた。細長く伸びる葉一枚一枚が雨に濡れ、葉先に雫を灯している。もちろん自慢の黄色い花も、水滴を纏ってとても幻想的だ。
 追い求めた光景がそこにはあった。小雨に霞む林内と、滝が起こす水の飛沫と、沢筋を上がってくる霧と、それらが作り出す湿度たっぷりの空間で、潤いに満ち満ちてぷっくりと花を咲かせるこの光景は、まさにサガミジョウロウホトトギスとその生息環境を表した情景だった。




サガミジョウロウホトトギス
サガミジョウロウホトトギス


 実はこの丹沢の貴婦人、再開できたのはかなり久しぶりである。前に見たのが2013年なので4年も前だ。それまでの間は時期が合わなかったり、探しに行っても見つからなかったりで痛い目を見ていたので、感動の再会である。
 そして奇しくもこの花についての記事の更新日が4年前と同じ日付という。 ( まぁ途中で気がついて微調整したんだけども 笑 )






サガミジョウロウホトトギス
サガミジョウロウホトトギス


 下から覗き見る、霧散した太陽光を透かす葉の美しい事よ。葉だけでも観賞するには十分なほど、私はこの花にゾッコンらしい。

 これまで見てきた植物の中では、このサガミジョウロウホトトギスが私は一番好きな種である。見つけるまでの条件が厳しかったり、探しに行くまでの苦労が多かったりして、そういった苦難を乗り越えたという達成感が乗っかっているのは間違いないけれど、フィールドに行って生き物を探しに行く人って、そういう過程を経ているからこそ、その生き物を好きになることって多いと思う。単純なビジュアルだけじゃなくってね。




サガミジョウロウホトトギス
サガミジョウロウホトトギス


 一番素敵な株は崖のだいぶ上の方に咲いていた。なんとか写真を撮りたかったので、折れそうな頼りない細枝に命を預けて崖を登って行く。下は沢のゴツゴツした岩場だし、足下は雨で濡れて滑りやすいし、危険な状況だったにも関わらず、やはりアドレナリンという脳内物質は恐ろしいね。恐ろしいことを恐ろしいと認識できなくなるほど興奮していたみたいで、気がつけばレンズが曇ってしまうほど湯気をほとばしらせていた。




 そんな状況を楽しんでいると、過ぎていく時間はあっという間で、加えてこの日は小雨だったので一気に陽が傾いてきてしまった。 「 こりゃあいかん 」 と、慌てて帰り支度をする。何といってもここから2時間は山を下らなくてはならないので、いつまでも沢でおちおちしていられないのだ。

 短髪にしているけれど引かれるモノはあるようで、後ろ髪を引かれながら黄色い花に別れを告げる。帰り道の足取りはもちろん軽い。ボウズと違って良い成果が得られた日は気分が高揚しているからという精神的な部分もあるが、すばやく歩かないとまたヤツらの餌食になってしまうからだ。
 入渓して花探しをしたために、長靴に噴霧していたヒルスプレーの効果は流され水の泡になってしまったので、ほぼ無防備状態。下草が繁茂しているところを通る時なんかは、10 m 歩いてはデコピンしないと間に合わないほどに、うじゃうじゃと這い上がられる。

 「 これが雨の丹沢の洗礼か ・・・ 」

 最後の方なんかはもう気が狂いそうになるくらいに這い上がられて、数十秒したら長靴を確認しなければ落ち着かなくなってしまうほどだった。






ヤマビル
ヤマビル


 それでも、そんなに確認してでも、何故か引っ付いていやがるヤマビル。もうね、山中一人で発狂しちまうよ。こんなに防除していると思っていたのに、膝下になんだかひんやりとイヤな感覚があるなぁと、おそるおそるズボンをめくってみると2匹もついているんだもの、くそったれ。
 見苦しいスネ毛は勘弁してもらって、とにかくこの忌まわしい吸血の瞬間を取るよりも撮ってやりたかった。まぁやられるのは慣れてますから、ヤマビルホイホイの私は。いつものように汗ふきシートをあてがってやればイチコロなんだけど、血が止まらないしムズ痒いのは不快極まりない。

 なんとかその後はダッシュで下山したけれど、右足にもう1匹付いているのをアスファルト道に出てから気がついて絶望した。それでもあの花を見に行く価値はあると思う。払った代償も大きいことは確かだけど。






サガミジョウロウホトトギス
サガミジョウロウホトトギス


 最後の写真が私の汚いスネ毛と不快な吸血生物ってのも後味が悪いので、もう一度サガミジョウロウホトトギスを。うん、やっぱり好きだなぁ、この花。







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